胃と腸 53巻13号 (2018年12月)

今月の主題 EUSによる消化管疾患の診断—現状と最新の話題

序説

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 本誌でEUSをテーマに取り上げるのは2012年4月(47巻4号)の特集「消化管EUS診断の現状と新たな展開」以来6年ぶりである.従来議論のあったEUS(endoscopic ultrasonography)に対応する日本語名称としては“超音波内視鏡”が定着した感がある.英語名称との対比においては違和感を拭えないが,超音波画像を得るための内視鏡と理解すれば腑に落ちる.内視鏡は体腔内からイメージを取り出すという,いわば“眼”の延長として発明されたものであるが,可視光以外のイメージを捉えることができたのは超音波が最初であったという点でも画期的な手法であった.

 EUSの源流は1950年代にさかのぼるが,超音波振動子の小型化が実現され内視鏡に搭載可能となったのは1980年前後である.1982年には本邦でプロトタイプが市販されたが,複数の技術の融合はいずれもが一定の水準に達して初めて実現されるものである.その後,現在までに40年近くが経過しているが,この間に超音波の周波数,走査角,走査方式,スコープの構造などさまざまな点で改良が加えられてきた.さらに,1990年には鉗子孔から挿入可能な細径プローブが実用化され,専用機を使用しなくてもEUSが簡便に実施できるようになり,普及に拍車をかけた.

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要旨●超音波内視鏡(EUS)は,深達度診断やリンパ節転移診断など,食道癌診療のさまざまな場面で使用されている.深達度診断には主に細径プローブが用いられ,内視鏡による通常観察や拡大観察に比べてやや高い診断精度が報告されているが,EUSを加えた際の上乗せ効果がどの程度かはあまり検討されていない.しかし,通常観察と拡大観察で粘膜筋板以深への浸潤癌と診断される病変は,通常観察と拡大観察だけでの診断精度は十分でなく,EUSを加える意義はあると考えている.今後はより信頼性の高い研究で,EUSの診断精度や上乗せ効果を明らかにする必要がある.

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要旨●胃癌のEUS診断における,機器の選択,描出方法,正常胃壁の層構造,早期胃癌および進行胃癌の深達度診断と潰瘍瘢痕(UL)の評価について解説した.また,早期胃癌のEUS診断能について検討した.当院で2006年9月〜2017年8月にESDまたは外科手術を施行した早期胃癌のうち,術前にEUSを施行し,病理組織学的に検討可能であった早期胃癌1,010病変を対象とした.EUS画像が描出不良で評価できなかった病変は11.0%であった.描出不良はL領域に多くみられ,0-I型病変でも多い傾向だった.内視鏡診断,EUS診断いずれもSM2以深の診断が不良であった.ただし,内視鏡診断の深読みをEUSで修正し,ESDで切除できた病変もあり,over surgeryを避ける目的でもEUSは有用と考えられる.

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要旨●大腸癌の内視鏡診断に際してEUSは,深達度を客観的に評価できる利点を有する.特に早期大腸癌に対しては,内視鏡的摘除の適応判定などに活用できる.EUS診断を行った早期大腸癌866病変の検討では,治療法の選択という面での正診率は90%と良好であった.また,潰瘍性大腸炎関連腫瘍に対するEUSの診断成績も良好であった.EUS診断は,描出困難病変が多いなどの問題点があるが,大腸腫瘍に対するESDの普及もあって大腸pT1b癌に対する内視鏡治療の適応拡大が議論されており,EUSの意義が再評価されている.なお,大腸癌に対してEUSがその能力を十分発揮するためには,大腸用のEUS機種の改良が必要である.

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要旨●小腸腫瘍の治療前評価における超音波内視鏡(EUS)の役割は,質的診断と腫瘍深度診断であり,内視鏡治療に直結するため重要である.しかし,小腸腫瘍は上皮性腫瘍,非上皮性腫瘍共に発見時に内視鏡治療になる可能性は低いため,臨床でのEUSの使用は限られる.一方,Helicobacter pylori陰性者が増加する中で,十二指腸腫瘍を発見・治療する機会が増えている.特に表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(SNADET)の治療においては,腫瘍のサイズ,形態,リスク・ベネフィットを考慮して治療法を選択するが,EUSは手技の安全性を確保する上で重要である.本稿では,小腸腫瘍に対する診断・治療について,実臨床で比較的遭遇する疾患を中心に解説する.

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要旨●粘膜下腫瘍(SMT)は,上下部内視鏡検査において偶然発見されることが多く,その内容は多岐にわたる.SMTの診断は,通常の内視鏡下観察および生検では困難であることが多い.SMTに対するEUSでは病変の主座やエコーレベルに留意して観察を行うことが重要である.EUS-FNAは,超音波内視鏡ガイド下に腫瘍を確実に穿刺できる安全かつ正確な組織検査法であり,SMTの組織診断において有用な検査法である.20mm以下であっても,第3層以深の低エコーを呈する充実性腫瘍はEUS-FNAの適応となる.

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要旨●食道表在癌に対してESDの適応を拡大する際には,転移のリスクがある腹部・縦隔・頸部の3領域リンパ節の系統的な検索が必要である.リニア型EUSはコンベックス型より食道壁および近傍の描出に優れ,食道癌の検索に適している.消化管に対して長軸方向の画像が得られるため,噴門部や頸胸境界部の検索にも有効である.EUSによる検索は,周囲臓器の解剖学的位置関係を把握することが大切で,各位置でメルクマールとしている臓器を確認しながら周囲を検索する.EUSは,リンパ節の形態や内部構造を吟味できることから,リンパ節転移診断の質を向上させる効果がある.EUSによる3領域リンパ節の検索は,食道表在癌のESD適応拡大症例の転移・再発の早期診断につながると考えられる.

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要旨●食道の平滑筋腫や顆粒細胞腫を中心とする間葉系腫瘍は粘膜下腫瘍(SMT)様の形態を示す.一方,食道癌にもSMT様の形態を示すものがあり,特に癌が表面にほとんど露出していない場合,通常の内視鏡検査やEUSでは間葉系腫瘍との鑑別が困難で,生検でも癌と診断できない場合がある.今回,SMT様食道癌とSMTの鑑別において,EUSで1/9層が連続して視認できるかに注目して検討した.間葉系腫瘍のうち,平滑筋腫3例では1/9層が全例で明瞭に描出された.GCT3例では1/9層は描出されていたが,一部で菲薄化していた.SMT様食道癌11例では1/9層が全例で断裂,菲薄化していた.食道SMT様病変のEUSで1/9層に着目することで,質的診断につながる可能性があると考えられた.

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要旨●EUSを行わずとも,食道・胃静脈瘤の治療は可能である.しかし,治療前にEUSによる静脈瘤局所の血行動態を把握することは,より安全かつ効果的な治療遂行につながる.また,治療後のEUS観察は,通常内視鏡観察では判断が難しい静脈瘤内残存血流についても情報を与えてくれるため,追加治療の必要性が理解できる.このように,“丁寧な静脈瘤診療”において,EUSは欠かせないツールである.また,近年では,EUSは診断のみならず静脈瘤治療にも応用されている.EUS-FNA(EUS-guided fine needle aspiration)の技術を応用したEUSガイド下胃静脈瘤内コイル留置術は今後の新たな内視鏡治療としてその発展が期待されている.

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要旨●消化管粘膜下腫瘍の質的診断はその形態から容易でない.超音波内視鏡検査(EUS)では,発生由来層,内部エコーパターンを観察することで診断を行うが,すべての鑑別を行うことは難しい.EUS-EG(EUS elastography)は組織硬度を色として映像化する技術であり,EUSと組み合わせることで質的診断の補助となりうる.当施設における胃での経験ではGISTや神経鞘腫は硬い傾向にあり,青を主体とした腫瘤として描出される.両者の鑑別には通常のEUS所見を加味して診断を行う.また,平滑筋腫,異所性膵では軟らかい腫瘤として描出され,赤や緑が主体となる.今後,症例集積によりEUS-EGが診断の一助となることを期待する.

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要旨●EUSは上部消化管粘膜下腫瘍(SMT)の診断に用いられているが,上部消化管SMTの良悪性鑑別には限界がある.本稿では,造影ハーモニックEUSによる上部消化管粘膜下腫瘍の診断に関する前向き研究1報と後ろ向き研究6報の合計7報の研究をもとに上部消化管SMTの鑑別診断について調べた.造影ハーモニックEUSによるGISTとそれ以外の上部消化管SMTの鑑別診断に関する3つの報告では,hyper-enhancementがGISTの造影ハーモニックEUS所見であり,診断能は感度84.5〜100%,特異度73.3〜100%であった.一方,low-grade malignancy GISTとhigh-grade malignancy GISTの鑑別診断に関する4つの報告では,造影ハーモニックEUSによるhigh-grade malignancy GISTの診断能は感度53.8〜100%,特異度63〜100%であった.またhigh-grade malignancy GISTでは造影ハーモニックEUSにおいてirregular vesselsが高率に認められた.hyper-enhancementか否かおよびirregular vesselsの有無を確認することで上部消化管SMTの鑑別診断が可能であることが示唆された.

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要旨●患者は60歳代,男性.201X年盲腸癌術後のスクリーニング大腸内視鏡検査でRaに5mm大の,中央に発赤調を呈し半球状に隆起する粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.10か月後の経過検査では病変の大きさに変化はみられなかったが,中央隆起部は前回の半球状の発赤した隆起から辺縁平滑な急峻な下掘れ状陥凹へと形態変化を認めた.EUSでは低エコー腫瘤は粘膜下層3,000μmまでの浸潤所見を認め,固有筋層との間にはspaceを認めた.EUS上ではT1b癌と診断したが,病変が小さく,EUSで腫瘍と固有筋層との間にはspaceを認めたことからESDを施行し,断端陰性での一括切除が可能であった.病理組織学的には大きさ5×3mm大の0-IIa+IIc型病変で,癌は粘膜下層には浸潤せず,粘膜筋板の内反によりSM内に押し下げるように粘膜内で増殖した高分化腺癌,pTis,ly0,v0,HM(−),VM(−)であった.

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要旨●患者は40歳代,女性.子宮内膜症の術前に施行した骨盤MRIで下部直腸に隆起性病変を指摘された.下部消化管内視鏡検査を施行し直腸下部に約40mmの粘膜下腫瘍を認め,当科に紹介され受診となった.超音波内視鏡(EUS)でGISTや平滑筋腫が鑑別となり,超音波内視鏡下穿刺吸引生検法(EUS-FNAB)を施行し,GISTの診断となった.直腸下部で周囲の骨盤臓器と接しており,また子宮内膜症による癒着もあるため,縮小手術目的に術前化学療法でイマチニブ開始となった.イマチニブを8か月間投与を行い腫瘍の縮小が得られ,外科的切除が施行された.

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患者

 60歳代,女性.

主訴

 2か月前から上腹部痛を自覚し,近医で上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)を施行したところ,異常を指摘され当院を受診した.

既往歴

 気管支喘息,子宮筋腫.

生化学的検査所見

 血清抗H. pylori(Helicobacter pylori)抗体<0.3 IU/ml未満,便中H. pylori抗原陰性.

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目次

欧文目次

「今月の症例」症例募集

早期胃癌研究会 症例募集

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 2018年9月19日(水),東京の笹川記念会館で開かれた早期胃癌研究会の席上にて,2017年「胃と腸」賞の授賞式が行われ,梅野淳嗣氏(九州大学大学院医学研究院病態機能内科学)らが発表した「非特異性多発性小腸潰瘍症/CEASの臨床像と鑑別診断」(「胃と腸」52巻11号:1411-1422頁)が受賞した.

学会・研究会ご案内

次号予告

編集後記 斉藤 裕輔
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 「胃と腸」53巻13号は「EUSによる消化管疾患の診断—現状と最新の話題」を特集した.EUSの開発から40年近くが経過し,EUSは消化管疾患の診断,治療方針の決定における補助診断法として,それなりに発展を遂げてはいるものの,拡大内視鏡や画像強調内視鏡,バルーン内視鏡,カプセル内視鏡など,内視鏡機器の進歩と比較すると,大きく停滞している感は否めない.そこで,消化管疾患の診断・治療におけるEUSの現状の再確認と今後期待される最新の機器などの話題について取り上げ,今後のEUS診断の進んでゆく方向性を探ることが本特集号の目的である.

 序説で清水は,EUS診断学の歴史と,近年のEUS診断が衰退をたどるに至った経緯,さらには,診断基準の時代的変化に対応可能なEUS診断のflexibilityをはじめ,新たなEUS診断機器の導入も含めた今後のEUS診断の進歩への期待を熱く語っており,筆者も本特集号への期待が高まった.

基本情報

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胃と腸
53巻13号 (2018年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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