胃と腸 47巻9号 (2012年8月)

今月の主題 食道癌の発育進展─初期浸潤の病態と診断

序説

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 食道癌の発育進展が本号のテーマである.特に“初期浸潤の病態とその診断”に的が絞られた.振り返えると“早期癌は粘膜癌である”という概念が定着してからは,「粘膜癌の内視鏡像とは」が長らく内視鏡診断の大きな話題の1つであった.これも先達のたゆまぬ努力の結果である.今では,深達度別の粘膜癌の診断や臨床上最も重要となる粘膜下層癌の内視鏡所見も熟知するレベルまで到達した1)2)

 そこで,取り上げられたのが“初期浸潤の病態とその診断”である.そもそも欧米では,癌と診断するに当たって,その浸潤像をもって癌とするという考え方の病理医が多数であることは周知のとおりである.この観点では,欧米の病理医は癌の定義を最も厳しく(狭く)とらえているとも言える.その意味では,本号のテーマと一致すると言うこともできる.欧米の立場からは,治療が必要な癌は浸潤を呈するものということになり,それはある意味では,“臨床的”な癌を的確にとらえているとも言えよう.

主題

食道癌の初期浸潤像とは 大倉 康男
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要旨 食道癌の初期浸潤については明確な定義がない.初期浸潤像は上皮内癌からどのように浸潤し,病変がどのように発育していくのかを知る手がかりになる.また,癌の組織診断基準を確立するうえで重要な所見である.しかし,その病理学的判定方法は病理医間で一致をみていない.食道を専門とする病理医の間では,上皮内癌をより厳密に定義するようになりつつある.日本食道学会病理組織検討委員会では,粘膜固有層に進展する癌上皮は連続性を有していてもpT1a-LPM癌と判定する案が検討されている.その定義はpT1a-LPM癌の病理診断にみられる問題点を解決するものである.まだまだ解決すべき点が多々あるが,臨床医とともによりよい診断基準の確立を目指していきたい.

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要旨 食道粘膜癌の局所浸潤部におけるX線所見について,38例(T1a-LPM癌 : 17例,T1a-MM癌 : 17例,SM1癌 : 4例)を見直し検討した.その結果,31例(82%)は透亮像を呈して浸潤し,陰影斑のみによるものは7例(18%)と頻度が低かった.深達度別の透亮像の大きさは,T1a-LPM癌では1~3mmと4~6mmが半数ずつで,T1a-MM癌では2~8mmと様々であった.T1b-SM1癌の4例中3例は4~6mmであった.粘膜癌の局所浸潤部の診断には,X線の弱~中伸展像における透亮像に着目することが重要と考えられた.

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要旨 食道T1a-LPM癌36病巣を対象として,初期浸潤の内視鏡像を検討した.LPM浸潤の程度を基底層周辺のわずかな浸潤(micro-invasion),LPM中層まで浸潤するもの(downward growth),LPM深部まで浸潤するもの(deep invasion)として評価した.micro-invasionは通常内視鏡ではとらえられず,拡大観察でも浸潤部を同定できないことが多かったが,35%の病変で500μm以下のAVA(AVA-small)の集簇が観察された.downward growthは拡大観察でAVA-smallを形成する頻度が増加したが,通常観察で白色微細顆粒や褪色調肥厚として認識できたのは20%にとどまった.deep invasionは通常観察で褪色調の顆粒状隆起,肥厚面や粗糙な領域として認識できた.拡大観察ではnon-looped irregular vessels〔食道学会分類Type B2〕で構成される3mm以下のAVA(AVA-middle)やType B2血管が観察された.腫瘍塊が大きくなって浸潤が進むとType B2血管で囲まれたAVAの大きさが増すが,micro-invasionのレベルでもdroplet infiltrationを示す病変では,Type B2血管で形成される微細なAVAを形成することが明らかとなった.

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要旨 日本食道学会では,より簡便な拡大内視鏡分類を作成することを目的とし,「拡大内視鏡による食道表在癌深達度診断基準検討委員会」を設立し,日本食道学会分類を作成した.本論文では,日本食道学会分類に基づいて拡大内視鏡所見と食道扁平上皮癌の深達度診断の相関を検討した.陥凹内隆起を呈する症例では色調と血管異型が深達度と相関があり,白色隆起は血管異型にかかわらず深達度T1a-EP~LPMであったが,赤色隆起ではB1血管を呈する場合はT1a-EP~LPM,B2血管ではT1a-MM~SM1であった.

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要旨 0-IIa型食道表在癌の内視鏡所見と病理所見を対比し,肉眼形態と癌胞巣の浸潤について相互の関連性を検討した.また,0-IIa型食道癌の臨床病理学的特徴からその病態と発育進展形式について考察した.0-IIb,0-IIc型を随伴する0-IIa混合型が高頻度であった.基底層型上皮内癌から粘膜上皮全層置換型の0-IIb型または0-IIc型を介し,癌胞巣の一部がup-ward growthを示し分化勾配と角化傾向を伴って肥厚性上方発育をとり,0-IIa混合型に発育進展して粘膜固有層以深に浸潤する形式が考えられた.また,0-IIa単独型は少なく,de novo発癌形式と考えられる.白色顆粒状隆起および白色扁平低隆起は深達度T1a-LPMを示しており,白色調0-IIa病巣は粘膜癌の代表的病型と考えられる.一方,基部にくびれを有する赤色小結節状隆起の深達度はT1a-LPMからSM1程度で,基部が裾を引く赤色結節状0-IIa隆起は粘膜下層癌を示した.

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要旨 食道表在扁平上皮癌の初期浸潤例にみられる肉眼形態や血管形態の変化を検討することを目的とした.当科でESDを行った表面型の食道表在扁平上皮癌78病変を対象とし,腫瘍径,肉眼形態,組織学的深達度,血管形態に関してretrospectiveに検討を行った.血管形態に関しては食道学会分類(案)をもとに分類を行った.0-IIa型と0-IIb型は腫瘍径が小さい傾向で,深達度はT1a-EPの占める頻度が高く,血管形態はほとんどがType B1であった.一方,0-IIc型は腫瘍径が大きく,T1a-LPM以深の病変が多かった.以上から,0-IIa型と0-IIb型は0-IIc型と比較して浸潤傾向が少ない,もしくは0-IIc型の先行病変だと考えた.0-IIc型は深達度がT1a-EP~T1b-SM2まで存在し,血管形態も多彩であったが,癌が浸潤するに従い (1) Type B1+AVA none→(2) Type B1+AVA-small→(3) Type B2+AVA-small→(4) Type B2+AVA-none→ (5) Type B3となる傾向を認めた.(1) はEPかLPM,(2)(3) はLPM,(4) で半数強がMM,(5) でSM浸潤が多くみられた.

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要旨 食道癌の初期像,および発育形態をみるため,2007年4月から2012年3月の5年間に,病巣発見から経過観察,内視鏡治療を行った異時性食道癌33例を対象に検討を行った.病変は,非拡大の白色光とNBI観察で拾い上げた.33例の内訳は,T1a-EP癌20例,T1a-LPM癌7例,T1a-MM癌3例,SM2以深癌3例であった.発見病巣の大きさが5mm以下で,6か月以上経過観察した23例の病型は,0-IIa 1例(4%),0-IIb 8例(35%),0-IIc 14例(61%)であり,0-IIbを食道癌の初期像と仮定すると,0-IIcや0-IIaへの分化は非常に早く,微小病変の時期から始まっていた.病変は,発見後1~2年で増大を始め,2~3年で倍増するようになるが,増大しても大きさが10mm以下の場合,80%以上は粘膜癌であり,粘膜癌の時期は少なくとも3年以上続くと推測された.病型の変化が確認できた7例は,0-IIbから0-IIcへ変化したT1a-EP癌3例,0-IIcから0-I+IIcへ変化したT1a-MM癌1例,0-IIbから0-IIc,0-IIc SM2に変化したSM2癌2例と,0-IIc LPMから0-IIc SM2へ変化したSM2癌1例であり,病型は0-IIbから0-IIc T1a-EPになり,T1a-LPMを経過し,0-IIcの形態のまま, T1a-MM/SM1あるいは,SM2へ進展した.検討例の内視鏡像から,(1) 樹枝状・敷石状に拡がる病変,(2) 表面に白色調の付着物を有する病変,(3) 粘膜下に拡がる病変は,増大が早く,早期に浸潤する傾向があり,注意が必要な病変であった.

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要旨 ESDにて切除した表層拡大型食道癌(以下,表拡群)45病変において,臨床病理学的背景因子,ヨード不染帯(Lugol-voiding lesions ; LVLs)の頻度,同時性・異時性多発癌の割合,さらに同時性多発癌において主病巣近傍に併存する割合,腫瘍内ヨード染色部の有無と分布,深達度T1a-MM以深部での病理組織学的所見について,同時期にESDを施行した腫瘍径10~30mm食道表在癌(以下,非表拡群)と比較検討した.表拡群におけるmultiple LVLsの頻度は非表拡群と同等に高く,多数の腫瘍内ヨード染色部が網目状に分布することが特徴的であった.同時性多発癌や主病巣近傍の併存病変,異時性多発癌は非表拡群で有意に高く,深達度T1a-MM以深浸潤部での病理組織学的違いは認めなかった.以上より,表拡群の多くはまだら食道を背景にmultifocalに癌化がはじまり,次第に癒合したものと考えられた.非表拡群ではmultiple LVLsが約半数に認められ,併存病変かつ異時性多発癌を表拡群より多く認めたことは,側方に進展・癒合し,表層拡大型食道癌へ発育する過程をとらえている可能性がある.

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要旨 食道内にヨード不染部が多発するまだら食道には,食道癌が多発しやすいことが知られている.筆者らはまだら食道に対する定期的な食道癌のサーベイランス中に初めて癌と診断できるようになった粘膜固有層浸潤癌を初期浸潤癌として検討を行った.通常内視鏡観察で初期浸潤癌は0-IIb型もしくは極めてわずかに陥凹した0-IIc型を示し,上皮内癌と鑑別するのは困難であった.一方,NBIで観察すると初期浸潤癌には“延長したループ状血管”が7/12病変,“ループ状血管に囲まれた小さなAVA様所見”が5/12病変にみられ,上皮内癌に比べ高率であったため,初期浸潤癌に特徴的な所見と考えられた.

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要旨 NBI拡大内視鏡で観察される食道病変の微細血管形態の変化を血管新生の見地から文献的に考察した.食道における血管新生の第1のスイッチは,前癌病変よりONになる.食道炎,異型上皮,T1a-EP,T1a-LPM食道癌の血管像は“拡張延長した既存のIPCLと新たに誘導されたIPCL様の幼弱血管の集合(IPCL様異常血管)”であり,その血管形態は典型像はあるものの明瞭な境界は認めない.T1a-MM食道癌以深でみられる血管形態は,いわゆる“腫瘍血管”の条件を満たす(新生血管).主要な血管新生因子も粘膜下層癌で強発現するものが多く,この時点で血管新生の第2のスイッチが入ると考えられ,食道癌発癌初期に多段階の血管新生が起こっている.

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要旨 患者は67歳,女性.市の胃がん検診にて異常を指摘され,前医を受診.上部消化管内視鏡検査にて胃体中部に1型胃癌を指摘され,精査・加療目的にて当科へ紹介され受診となった.胃X線検査では,胃体中部大彎に35mm大の急峻な立ち上がりを示す1型病変とその周囲に浅い陥凹性病変の拡がりが認められた.上部消化管内視鏡検査においても,胃体中部大彎に粘液の付着を伴う40mm大で発赤調の隆起性病変と周囲に拡がる浅い褪色調の陥凹性病変が認められ,病変全体は軽度の隆起上に存在していた.NBI拡大観察では,隆起部分には口径不同を伴わないネットワーク状の太い血管が観察され,周囲の陥凹部には口径不同を伴う螺旋状の細い血管が観察された.生検組織において,隆起部分では低分化腺癌が,周囲の陥凹部では中分化管状腺癌が認められた.深達度はMPと診断し,幽門側胃切除術,およびD2リンパ節郭清を施行した.切除標本において,隆起病変部は粘膜下層での著明な線維化を伴う非充実型低分化腺癌細胞の増殖により形成されており,病変の表面は肉芽組織で覆われていた.また,隆起病変部辺縁から周囲の陥凹性病変部の粘膜固有層内には中分化管状腺癌を認めた.深達度はSEであった.本症例のように非充実型低分化腺癌が潰瘍形成を伴わない隆起型進行癌を呈する例は非常にまれであり,その病理組織学的所見について文献的考察を含めて報告する.

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1概念,病態  内視鏡検査時,胃粘膜に,あたかも鶏の毛をむしり取った後の皮膚のように,胃粘膜に均一な小顆粒状隆起が密集して認められるものを鳥肌状胃粘膜と呼び,その所見は胃角部から前庭部に認められることが多い.1962年に竹本ら1)は,20歳女性の胃カメラ所見で初めて“とりはだ”なる表現を用い,その後,“内視鏡的鳥肌現象”として報告した.硬性鏡検査時によく観察され,若い女性に多く,検査に対して精神的緊張が強いために起こるのではないかと当初は考えられた.そのため,鳥肌状の胃粘膜を認めても,若い女性に多い生理的現象であると理解され,病的意義は少ないと理解されていた2).竹本らの報告後,小西ら3)は“鳥肌状胃炎”と呼び,若年者に認められる化生性胃炎の初期像として,さらに,1985年に宮川ら4)は21例の鳥肌状胃粘膜症例を検討し.組織学的に腺窩上皮の過形成がほとんどの症例にあり,リンパ濾胞形成が多く認められたことを報告している.その後,鳥肌胃炎は,H. pylori(Helicobacter pylori)感染によって起こる,若年者に好発する胃炎の一形態であることが明らかになった.海外では小児のH. pylori感染例に好発する前庭部の結節状粘膜をantral nodularity,あるいはantral nodular hyperplasiaと表現し,nodular antritisやnodular gastritisと診断されてきた.本邦における報告でも,小児のH. pylori感染の内視鏡所見は結節性変化(nodularity)が特徴的で,リンパ濾胞の増生がその本体であり,除菌により変化は消失することが明らかにされている.胃炎の国際分類であるUpdated Sydney Systemでは内視鏡所見としてnodularityは取り上げられているが,胃炎の診断分類には残念ながら取り上げられていない.

 鳥肌胃炎の頻度については,筆者らの検討5)では,16歳以上の成人97,262例の上部消化管内視鏡検査の結果,187例(0.19%)に鳥肌胃炎を認めた.年齢分布では20代,30代に多く,男女比は1 : 2.82で女性に多く認められている.H. pylori感染はほぼ全症例で陽性であり,また,組織学的に粘膜内のリンパ濾胞の増生と腫大を認める.187例のうち,22例は消化性潰瘍を,2例には胃癌を,1例に胃MALTomaの合併を認め,器質的疾患の合併は高率であった.また,187例中151例(81%)に腹痛や腹部不快感などの症状を伴っており,除菌により内視鏡所見とともにその症状は明らかに改善を認めた.時に,Helicobacter heilmannii感染が鳥肌胃炎の原因となっていることがある.

画像診断道場

大腸(炎症) 岩男 泰
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症 例

 患 者 : 30歳代,男性.

 主 訴 : 粘血便.

 既往歴・家族歴 : 特記すべきことなし.

 現病歴 : 4か月前に粘血便を自覚し近医を受診し,大腸内視鏡検査で潰瘍性大腸炎と診断された.5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤の投与を受けたが症状の改善なく,入院のうえプレドニゾロン50mgの投与を受けた.症状が一時軽減したため退院したが,すぐ増悪がみられ再入院となり,シクロスポリンの経口投与を開始されるも臨床症状の改善はみられず,当院を紹介され受診した.受診時10行/日以上の粘血便を認めていた.

早期胃癌研究会

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 2011年10月の早期胃癌研究会は10月12日(水)に笹川記念会館国際会議場で開催された.司会は門馬久美子(がん・感染症センター都立駒込病院内視鏡科)と小林広幸(福岡山王病院消化器内科),病理は江頭由太郎(大阪医科大学病理学)が担当した.また,画像診断教育レクチャーは,高木靖寛(福岡大学筑紫病院消化器内科)が「精密食道X線検査について」と題して行った.

学会印象記

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 第83回日本消化器内視鏡学会総会は,小原勝敏会長(福島県立医科大学附属病院内視鏡診療部教授)主催のもと,“より安全かつ効果的な内視鏡医療の追及─Global Awareness,Innovation and Renewed Spirit─”をメインテーマに2012年5月12日(土)~14日(月)の3日間,グランドプリンスホテル新高輪・国際館パミールで開催された.私は丸3日間本学会に参加し,多くの知見と感動をいただいたのでここに報告したい.

 【大会1日目】6時始発のあさまに乗り,7時40分に東京駅へ着いた.いつもながら新幹線は速い,長野も便利になったものだとつくづく感じる.会場は臨床消化器病研究会でもお馴染みとなったグランドプリンスホテル新高輪・国際館パミールだ.いつもは汗だくで歩く品川の街もこの日は肌寒い.8時過ぎに会場に到着すると,すでに参加者であふれていた.まず受付で目をひいたのは東日本大震災のパネル写真であった(写真1).被災地は今でも復興が遅れている,学会にも参加できず地域医療を支えている医師がいる,決して忘れてはならない.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

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 本シリーズの総編集を担当する青笹克之先生はユニークな感覚をもって人体病理学に取り組んでいる病理学者である.青笹先生の提唱されたPAL(pyothorax-associated lymphoma膿胸に随伴する悪性リンパ腫)は慢性の肺疾患である肺結核に伴う悪性リンパ腫で,1例を丹念に解析された後に,長年の忍耐強い疫学調査を基盤に解明されたものである.1例1例の診断の重要さを物語っている.

 この「病理診断プラクティス」の各シリーズは臓器別に取り扱われ,写真,シェーマ,図・表を駆使した実践的なアトラスの面と,各疾患を系統的に解説する教科書的な面を併せ持つ力作である.写真は大半が光学顕微鏡のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色の組織像であるが,X線写真,内視鏡写真,肉眼写真なども積極的に取り入れ,また随所に免疫組織化学写真も加えられている.

学会・研究会ご案内

投稿規定

編集後記 大倉 康男
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 食道癌に関する主題としては,これまでに診断,治療,発育進展などの様々なものが取り上げられてきている.本誌35巻4号(2000年)で“食道癌の発育進展─初期病巣から粘膜下層癌へ”が主題にされ,食道表在癌の発育進展が検討されているが,本号は食道癌の初期浸潤について焦点を当て,より早期の段階における発育進展を解明することを目的にして企画されている.食道癌が浸潤し始める微細な変化をとらえて検討する必要があるが,早期癌の診断が一段と進歩したこと,各施設において検討しえる切除例が数多く蓄積されてきたことによって,ようやく取り上げることが可能になったテーマである.

 その内容であるが,食道癌のエキスパートが様々な視点から初期浸潤について検討し,興味深い結果が示されている.高木らはX線の立場から,有馬らは通常内視鏡と拡大内視鏡の立場から,小山らは拡大内視鏡の立場から初期浸潤像の診断について検討している.肉眼型別では,千野らは0-IIa型癌,平澤らは0-IIc型癌の発育進展を検討している.門馬らは微小癌あるいは小癌からの発育進展を検討し,竹内らは表層拡大型癌の発育進展を検討している.さらに,長井らはまだら食道を背景とした食道癌の初期浸潤所見について検討している.また,熊谷らは血管新生の見地から発育進展について論じている.いずれも最新の結果が示されており,読み応えのある論文である.10数年前に取り上げられた発育進展の解析がさらに進み,現時点での食道癌の初期像が明らかにされていると言える.それぞれの論文に対する臨床的立場からのコメントは,井上先生が序説に書かれているので,そちらをご覧いただきたい.

次号予告

基本情報

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胃と腸
47巻9号 (2012年8月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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