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編集後記
大倉 康男
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1杏林大学医学部病理学教室
pp.1463
発行日 2012年8月25日
Published Date 2012/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113588
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食道癌に関する主題としては,これまでに診断,治療,発育進展などの様々なものが取り上げられてきている.本誌35巻4号(2000年)で“食道癌の発育進展─初期病巣から粘膜下層癌へ”が主題にされ,食道表在癌の発育進展が検討されているが,本号は食道癌の初期浸潤について焦点を当て,より早期の段階における発育進展を解明することを目的にして企画されている.食道癌が浸潤し始める微細な変化をとらえて検討する必要があるが,早期癌の診断が一段と進歩したこと,各施設において検討しえる切除例が数多く蓄積されてきたことによって,ようやく取り上げることが可能になったテーマである.
その内容であるが,食道癌のエキスパートが様々な視点から初期浸潤について検討し,興味深い結果が示されている.高木らはX線の立場から,有馬らは通常内視鏡と拡大内視鏡の立場から,小山らは拡大内視鏡の立場から初期浸潤像の診断について検討している.肉眼型別では,千野らは0-IIa型癌,平澤らは0-IIc型癌の発育進展を検討している.門馬らは微小癌あるいは小癌からの発育進展を検討し,竹内らは表層拡大型癌の発育進展を検討している.さらに,長井らはまだら食道を背景とした食道癌の初期浸潤所見について検討している.また,熊谷らは血管新生の見地から発育進展について論じている.いずれも最新の結果が示されており,読み応えのある論文である.10数年前に取り上げられた発育進展の解析がさらに進み,現時点での食道癌の初期像が明らかにされていると言える.それぞれの論文に対する臨床的立場からのコメントは,井上先生が序説に書かれているので,そちらをご覧いただきたい.
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