胃と腸 47巻3号 (2012年3月)

今月の主題 咽頭・頸部食道癌の鑑別診断

序説

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はじめに

 食道癌の早期発見が進み,その大部分を占める扁平上皮癌の上皮内癌・粘膜癌の形態と病態が明らかになった.この結果,多くの食道粘膜癌が内視鏡治療で根治可能となり,食道癌の治療において食道機能の温存と長期生存が両立することになった.咽頭癌は頭頸部癌の一部を構成するが,その頻度は,食道癌に比べて低い.しかし食道癌と頭頸部癌,なかでも咽頭癌は,密接な関係を有しており,同時性あるいは異時性に合併する頻度が高いことは周知の事実である.このため,早期食道癌の治療計画時だけでなく,内視鏡治療後の経過追跡にも咽頭癌を早期に発見し,治療することが不可欠な要件となった1).また,喉頭癌は50歳以上の男性に多く,しかも増加傾向が明らかな疾患である.既にそして急速に高齢化の進むわが国では,今後,咽頭癌の早期発見が重要性を増すことは間違いない2).上部消化管の内視鏡検査の高機能化,デジタル化により実現した画像強調観察法・拡大観察法により咽頭癌の早期発見は確実に容易になった3).同時に,この領域特有の難しさも存在する.これまでの成果を整理して,残された課題を明らかにすることに大きな意義がある.

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要旨 近年,内視鏡機器および手技の発達とともに,咽頭領域の詳細な観察が可能になってきており,咽頭領域の肉眼観察とその病理診断においても診断精度向上や詳細な症例解析が要求されつつある.咽頭・口腔・頸部食道領域において,悪性腫瘍の組織型は扁平上皮癌が大部分を占める.しかし,各癌取扱い規約における浸潤様式の記載は,一様ではない.そこで,今回筆者らは,咽頭癌・頸部食道癌・口腔癌の外科切除材料を比較検討し,その浸潤様式の差異を示した.加えて,咽頭領域・頸部食道領域にみられる良性疾患(乳頭腫・グリコーゲンアカントーシス・異所性胃粘膜など)について解説した.

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要旨 咽頭は複雑な形態であるうえ,嘔吐反射の影響を受けるため,食道や胃より観察が難しい.本稿では咽喉頭,頸部食道観察法に関して解説した.口蓋垂観察時には被験者に息を吸ってもらうと,良好な視野確保が可能となる.次に中咽頭,喉頭蓋の舌面を愛護的に観察した後に,声門を観察する.NBIでは暗く,声門を十分に観察することは困難であるため,白色光観察も併用する必要がある.また,呼吸時の声門の動きにも注目する.左右の梨状陥凹を観察する際には,患者に「息止め」をしてもらうか,「イー」と発声してもらうと声門が前方へ移動するため観察が容易となる.短時間で効率よく咽頭を咽頭観察するための手順を身につけることが重要である.

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要旨 当教室では,咽頭反射が少なく画質が良好な広角経鼻内視鏡を用いて口腔~咽喉頭~食道入口部観察を行っている.まず口腔内を十分観察した後,経鼻ルートで内視鏡を中咽頭まで挿入し,大きく息を吸った後,息を吐き続け,両頬をできる限り膨らませると(Valsalva法),喉頭が挙上し,左右の梨状陥凹から下咽頭後壁,輪状後部,食道入口部を連続的に観察しうる.頸部食道はスコープを少しずつ抜きながら送気・伸展させて,FICEを併用しながら観察する.経鼻内視鏡により32例40病変の頭頸部表在癌を発見した.画質のさらなる向上も期待でき,経鼻内視鏡は,標準的な咽喉頭~食道入口部のスクリーニング検査法となる.

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要旨 ヨード染色が困難な中・下咽頭における表在癌の内視鏡診断は,NBI観察によるbrownish areaの拾い上げと,NBI拡大内視鏡による血管パターンの評価による.基本的には食道で適用しているIPCLパターン分類を,咽頭にもそのまま適応することができる.咽頭における鑑別診断の特徴は,リンパ装置が発達していること,乳頭腫が多いことなどである.その典型像の鑑別は容易である.しかし,時に乳頭腫と上皮内腫瘍の鑑別が困難な場合がある.

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要旨 近年開発された狭帯域光技術(NBI)などの内視鏡技術の向上により,これまで困難であった咽頭表在癌の発見が容易になった.咽頭表在癌をNBI観察した際の特徴は,1つは周囲との境界が明瞭な褐色調の領域として認められること,もう1つは病変内部に異型血管増生像が認識されることである.拡大機能をもたない咽喉頭用内視鏡でも,NBI観察によりこれら2点の特徴は十分視認可能であるため,咽頭表在癌の拾い上げ診断は可能である.咽頭表在癌との鑑別を要する病変として,low grade intraepitherial neoplasiaやglycogenic acanthosis,乳頭腫などがある.挿入経路の違いから,咽喉頭用内視鏡は上部消化管内視鏡と比べ軟口蓋裏面や舌根部の観察には優れているが,咽頭後壁の観察には工夫を要する.

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要旨 2007~2010年に経験した頸部食道表在癌16例(男性15例,女性1例)を対象に,検討を行った.内視鏡検査は,スコープ挿入時は白色光を主体に,抜去時はNBI観察で行った.他院発見例を含め,通常観察発見 : 12例(75%),NBI発見 : 4例(25%)であった.同時性多発食道癌 : 5例(31%),異時性食道癌5例(31%)であり,他臓器重複癌の既往を11例(69.0%)に認めた.2例に化学放射線療法,14例にEMR/ESDを行い,EMR/ESD施行14例で詳細な検討を行った.病型は,0-IIa型 : 5病変(36%),0-IIb型 : 1病変(7%),0-IIc型 : 7病変(50%),0-I型 : 1病変(7%)であった.深達度は,T1a-EP : 6病変(43%),T1a-LPM : 3病変(22%),T1a-MM : 2病変(14%),SM2 : 3病変(21%)であり,SM2の2病変は脈管侵襲陽性であった.頸部食道表在癌を効率よく拾い上げるには,食道癌のハイリスク群を中心に,鎮静剤使用や,NBI併用,透明フード装着などの工夫を行い,注意深く観察することが必要である.また,狭い頸部食道では,壁伸展による病変の形態変化の評価が困難なため,拡大観察やEUSを用いた深達度の評価が有効である.

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要旨 頸部食道を第1生理学的狭窄部(食道入口部)から約4cmの範囲と定義し,内視鏡的に切除した頸部食道癌21例を対象として,臨床・病理学的特徴を検討した.自施設発見15例中,挿入時に発見したものが11例(73%),抜去時に発見したものが4例(27%)であった.内視鏡型は0-IIb型が少なく,少し厚みをもつ0-IIc型と0-I型がやや多かった.鑑別するべき病変は,乳頭腫,異所性胃粘膜と粘膜筋板由来の平滑筋腫であった.深達度はEP/LPM癌が12例(57%),MM/SM1癌が7例(33%),SM2癌が2例(10%)で,胸部表在型食道癌に比べてやや進行した状態で発見されていた.深達度診断にはNBI/FICE併用拡大内視鏡による微細血管診断が有用で,深達度正診率は85%であった.導管伸展由来の浸潤など,表面構造を保ちながら深部浸潤する症例で誤診がみられた.リンパ節再発はMM/SM1癌の7例中1例(14%),SM2癌の2例中1例(50%)にみられたが,頸部上縦隔リンパ節郭清で根治でき,原病死はなかった.頸部食道癌では内視鏡治療を適応拡大して選択することが多いため,多角的な診断方法で厳重に経過観察する必要がある.

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要旨 咽頭表在癌を拡大内視鏡やNBIで観察するためには光量の問題などから,主に近接で咽頭をくまなく観察することが必要である.しかしながら,咽頭は患者の反射の影響を受けやすく,長時間細かく内視鏡観察することはしばしば困難である.i-scanはデジタル法に分類される画像強調技術であり,特にTE-eモードは扁平上皮癌の領域をbrownish areaとして描出できることが特徴である.光量豊富なEPK-iシステムとmegapixel内視鏡を組み合わせることによって,咽頭全体を短時間に見渡し観察することができる.そのため,患者の苦痛が少なく,咽頭・頸部食道癌を拾い上げることが可能である.

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要旨 近年,従来発見困難であった中・下咽頭の表在癌が多く発見されるようになった.筆者らは乳頭腫との鑑別が困難であった下咽頭表在癌症例を経験したので報告する.患者は81歳,女性.早期胃癌に対する治療目的に当院へ紹介され,治療前の精査内視鏡検査時に下咽頭後壁に隆起性病変を認めた.内視鏡的に下咽頭乳頭腫と診断し,経過観察したが,腫瘤の増大傾向と,生検病理でも細胞異型の増悪を認めたため,全身麻酔下精査を施行した.下咽頭から食道入口に達する表在癌と診断し,ESD+ELPSのhybrid内視鏡治療を施行した.病理組織学的にはsquamous cell carcinoma,INFa,EP,ly0,v0であった.

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要旨 患者は46歳,女性.検診で便潜血陽性を指摘され,大腸内視鏡検査で直腸肛門部に発赤調の潰瘍形成性腫瘤を指摘された.内視鏡像から低~未分化癌を疑ったが,生検診断で類円形~多角形の腫瘍細胞が充実性に増殖する像を認め,免疫染色でHMB-45(+),Melan-A(+)であった.メラニン色素産生は認めず,無色素性悪性黒色腫と診断した.注腸X線造影検査,超音波内視鏡検査,拡大内視鏡観察を行い,深達度MPと診断した.CT,MRI検査上はリンパ節転移や遠隔転移は認めなかった.D2郭清を伴う腹会陰式直腸切断術を施行した.「大腸癌取扱い規約」に準じ,2型,深達度MP,N0,H0,M0,Stage Iであった.潰瘍型を呈する無色素性悪性黒色腫は比較的まれであり,過去13年(1996~2008年)の本邦報告96例の検討を含め報告する.

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要旨 患者は62歳,女性.胃食道逆流症のためランソプラゾールを内服していた.突然の左下腹部痛,水様下痢と血便がみられたため受診した.腹部造影CTで横行結腸に粘膜下層を主体とした浮腫による著しい壁肥厚と深い裂創を認め,少量のガス像が腸間膜内にもみられた.内視鏡検査では中部横行結腸から脾彎曲部にかけて一条の深い縦走潰瘍が認められた.保存的治療で改善したが,11日後に同様の症状で受診した.2回目の内視鏡検査では横行結腸の縦走潰瘍は治癒していたが,S状結腸に新たな縦走潰瘍が認められ,生検の結果collagenous colitisと診断された.急性腹症を契機に診断されたcollagenous colitisは極めてまれである.

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要旨 患者は60歳代,男性.検診異常のため近医にて上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃前庭部大彎に径1cm大の粘膜下腫瘍(SMT)様隆起を指摘され,精査加療目的で紹介となった.SMT様隆起は表面平滑な山田I型隆起で,超音波内視鏡検査では,第2層から第3層浅層に限局する境界明瞭な低エコー腫瘤として描出された.生検でも確定診断に至らず,内視鏡的粘膜下層剝離術を施行した.病理組織学的には,SMT様隆起は粘膜下層を主座とする多量のムチンを伴った高分化型腺癌で粘液癌と診断された.大部分は正常粘膜で覆われ,粘膜面への癌露出が乏しかったため術前診断が困難であった.

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1 概念,病態

 特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis ; IMP)は1991年小山ら1)により静脈硬化症による虚血性病変として報告され,その後1993年に岩下らが新しい疾患概念として提唱した.2000年にYaoら2)は静脈硬化性大腸炎と命名し,2003年にIwashitaら3)により,病理学的に炎症所見が認められないことから特発性腸間膜静脈硬化症(IMP)との呼称が提案されている.

 基本的な病態として腸間膜静脈の石灰化に伴う腸管循環不全による虚血と考えられるが,成因として肝疾患,血管炎,糖尿病などの関与が考えられる.また,Chang4)は,漢方薬長期内服も原因の1つと報告している.国内外の文献を1991~2010年まで検索した症例106例の集計(Table 1)では,82例(77%)の症例に腹痛・下痢・嘔気などの自覚症状を認め,やや女性に多く認められる.報告例はすべて本邦を含むアジア人であり,アジア人特有の疾患である可能性も考えられる.

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 GIST(gastrointestinal stromal tumor)は,1998年Hirotaによってc-kit変異の関与が報告され,その5年後にはイマチニブが本邦で承認され多くのGIST患者の命を救っている.消化管の病気の中で,近年これほど急速に病態の解明が進み,治療法が発展したものは他に例がない.

 c-kit変異の発見によってGIST研究に明るい日差しが差し込んできたとすれば,暗闇から抜け出す直前に世に出た「胃と腸」が,この第30巻第9号「胃の平滑筋腫と平滑筋肉腫─新しい視点を求めて」(1995年)であった.ここには,胃の平滑筋腫瘍がどんなものであるか,どういうものを悪性にするか,などについて当時使える医療機器や免疫染色の結果を最大限に駆使して述べられている.しかし今や“平滑筋腫瘍”という言葉があまり使われなくなり,当時はまだ使われていなかった“GIST”が頻用されるようになってしまった.わずか16年前の雑誌であるのに,隔世の感がある.

画像診断道場

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症 例

患 者 : 70歳代,男性.

主 訴 : 検診要精査.

既往歴 : 特記すべき事項なし.

現病歴 : 近医の検診で上部消化管内視鏡検査を受けたところ,多発胃潰瘍瘢痕の他に胃の粘膜下腫瘍様病変を指摘された. 現 症 : 異常所見を認めなかった.

海外だより

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 2. Green Templeton College(GTC)

 川崎学園とオックスフォード大学の1つであるGTCが姉妹校の関係にあり,今回の私の留学となりました.私が留学の手続きを進めておりましたときはColin Bundy先生が学長でしたが,その後,Sir David Watson先生へと変わりました.Sirの称号をおもちなので緊張した面持ちで挨拶に参りましたが,大変気さくな,紳士的な先生で,家内が郵便局でお会いしたときも,気さくに声をかけていただきました.Watson先生とは,GTCのディナーで何度かお会いしました.私はゲストですので,学長の横に座らせていただくことが多く,川崎ブランドの強さには驚きました.クリスマスディナーでは,Watson先生がピアノを弾き,全員でクリスマスキャロルを歌いました.ピアノが弾けないとオックスフォードでは学長になれないのかなーと,キャロルを歌いながら思いました.水曜日と木曜日がディナーの日となっており,学長は両日参加しなければならないので,体重のコントロールが大変だと言われていました.

 GTCでは,当日朝に申し込んでおくと,割安でランチを腹いっぱい食べることができます.また,水曜日と木曜日にディナーが開催され,電話あるいはパソコンで申し込みができます.私も,1人のゲストを連れて行くことが許されておりましたので,酒豪の家内と出かけておりました.ワインを飲まなければ無料,飲む時は16ポンドが必要です.医学の分野だけでなくいろいろな先生方と会食ができますが,皆さん話される声が大きく,テーブルを挟んだ会話は大変でした.12月のディナーで,たまたま横に座られたのが元JR病院消化器科教授のJewell先生で,現在のIBDに関する診療と研究の基盤を作り,さらに発展させた偉大な先生です.また,消化器外科や循環器内科の教授もディナーによく参加されており,親交を深めることができました.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

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 松井敏幸,松本主之,青柳邦彦先生の編集による『小腸内視鏡所見から診断へのアプローチ』という著書が医学書院から2011年10月に発刊された.八尾恒良先生,飯田三雄先生による『小腸疾患の臨床』(2004年発刊,医学書院)に続く,形態学のリーダーシップを取る九州大学/福岡大学グループの小腸疾患診断学のバイブル第2弾である.『小腸疾患の臨床』が発刊されたとき,なかなか経験することが少ない小腸疾患を美しい画像で系統的にまとめた教科書として強いインパクトがあったが,本書は,また違った意味で,非常に個性のある素晴らしいテキストに仕上がっている.

 近年,バルーン内視鏡やカプセル内視鏡が広く普及・一般化して以来,多くの小腸病変が診断されるようになってきたが,所見はあるものの意外と診断に至らない症例が多く,小腸病変の病態の奥深さを感じる今日このごろである.一方,最近X線造影検査が不得手な若い先生が増えて小腸内視鏡検査ばかりに走り,小腸X線画像診断がやや軽視されている傾向がある.もっとも,これは小腸に限らず全消化管共通の極めて深刻な課題であるが…….

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

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 消化器疾患に携わる臨床医が日常の診断・治療をより確実に行ううえで,画像診断は避けて通ることのできない重要な診断法のひとつである.初心者にとって画像診断は興味深く,最初は画像診断の参考書などを片手に診断を行い,ある程度の診断能力を身につけることはできるが,必ず突き当たるところは画像所見と病理所見の対応であり,病理学的知識のなさが原因で画像所見の理解・評価に難渋してしまうことになる.画像診断には病理学的所見との対応が必要であることがわかり,一念発起して病理の教科書を読み始めても途中で挫折してしまい,画像診断の実力アップが叶わないままの臨床医はかなり多いと思われる.

 そこでお薦めの病理教科書が『臨床に活かす病理診断学──消化管・肝胆膵編第2版』である.本書は病理学的知識のあまりない肝・胆・膵,消化管などの消化器病の臨床にこれから携わろうと志す医師を対象としている.まず各臓器の正常組織像や疾患の概念を解説し,次に病変のマクロ写真,病理組織写真・シェーマ像を数多く提示のうえ,わかりやすく解説してあり,初心者でも途中で挫折することなく,比較的容易に画像診断に役立つ病理学的知識を得ることができるよう工夫された内容となっている.実際の臨床の場で本書を片手に画像所見と対応させながら,繰り返し,繰り返し読んでいくと,普通ではなかなか習得の難しい病理学的知識がみるみる身につき,それに並行して病理学的所見を考慮した画像診断を行うようになり,いつの間にか画像診断の実力が向上しているであろう.

第18回「白壁賞」論文募集
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 「胃と腸」編集委員会では,故白壁彦夫先生の偉業を讃え,「白壁賞」を設け,優秀な研究・論文を顕彰しております.今回は「白壁賞」の論文を下記の要領で公募いたしますので,奮ってご応募ください.英文誌に発表された消化管の形態・診断学に関する論文が応募の対象となります.

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 癌研究会附属病院病理部の中村恭一先生に病理の教示を願って,九州より上京された馬場保昌先生は,臨床内科医として胃X線二重造影法創始者の一人である熊倉賢二先生に師事するまでの約2年間(1971~1973),癌研病理部に所属され,そこでお二人は,切除胃の全割と検鏡に明け暮れておられました.その後,馬場先生が病理から内科に転科する際に中村先生から要望がありました.それは,臨床面からの胃癌組織発生の意義についての研究です.

 馬場先生は転科してすぐ胃癌組織発生の観点から早期胃癌のX線・内視鏡所見と切除胃の肉眼所見と組織所見との対比を行いました.そして,馬場先生がX線的に見た陥凹型早期胃癌の組織型別肉眼形態の違いについて報告したのは,この全割症例の観察に基づいてなされた研究の一つです.すなわち,馬場先生は,IIc型早期胃癌の肉眼所見とX線・内視鏡所見との対比を癌組織型別に行ったところ,IIc型粘膜内癌の典型例あるいは質のよい写真とされているX線・内視鏡写真は未分化型に多く,それに反して,同じ条件下で撮影されているにもかかわらず,IIc型分化型早期胃癌の多くは質の悪いX線・内視鏡写真とされていることに気づきました.linitis plastica型胃癌(LP型胃癌)は未分化型癌ですから,このことはLP型胃癌の早期発見に大きな味方を神はなされたと私は思っています.才に恵まれた馬場先生を愛弟子とされた中村先生,熊倉先生は共同研究者でもあり,人生のよき相談相手ともなっています.

学会・研究会ご案内

投稿規定

編集後記 鬼島 宏
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 本特集「咽頭・頸部食道癌の鑑別診断」は,咽頭・頸部食道の観察・診断に自信を与えてくれる一冊となる企画である.上部消化管内視鏡検査で通過する領域とは言え,咽頭・頸部食道は,解剖学的に複雑な形態を呈することから,苦手意識がもたれがちである.これは内視鏡医のみならず,われわれ病理医も同様である.今回の特集を一読すると,食道疾患の観察・診断の延長として,咽頭・頸部食道疾患があることが理解できよう.「胃と腸」40巻9(2005年8月)号の特集テーマが「表在性の中・下部咽頭癌」であり,当時の最新動向が紹介されているが,改めて本号と読み比べると,この6年間余りの咽頭・頸部食道領域の診断学の飛躍的向上も実感していただけるはずである.

 さて,各論文を振り返ってみよう.吉田による序説では,食道癌との類似性と偏り,早期癌・表在癌の定義など,咽頭・食道癌の課題が示されている.諸橋らの論文はこれらの課題に呼応して,咽頭では粘膜筋板を欠くなど咽頭から食道にかけての解剖学的・組織学特徴や差異を解説し,咽頭・食道癌の発育浸潤様式の特徴を提示している.

次号予告

基本情報

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胃と腸
47巻3号 (2012年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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