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書評「linitis plastica型胃癌その成り立ちと早期診断」
新海 眞行
1
1半田内科医会名誉会長
pp.438-439
発行日 2012年3月25日
Published Date 2012/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113140
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癌研究会附属病院病理部の中村恭一先生に病理の教示を願って,九州より上京された馬場保昌先生は,臨床内科医として胃X線二重造影法創始者の一人である熊倉賢二先生に師事するまでの約2年間(1971~1973),癌研病理部に所属され,そこでお二人は,切除胃の全割と検鏡に明け暮れておられました.その後,馬場先生が病理から内科に転科する際に中村先生から要望がありました.それは,臨床面からの胃癌組織発生の意義についての研究です.
馬場先生は転科してすぐ胃癌組織発生の観点から早期胃癌のX線・内視鏡所見と切除胃の肉眼所見と組織所見との対比を行いました.そして,馬場先生がX線的に見た陥凹型早期胃癌の組織型別肉眼形態の違いについて報告したのは,この全割症例の観察に基づいてなされた研究の一つです.すなわち,馬場先生は,IIc型早期胃癌の肉眼所見とX線・内視鏡所見との対比を癌組織型別に行ったところ,IIc型粘膜内癌の典型例あるいは質のよい写真とされているX線・内視鏡写真は未分化型に多く,それに反して,同じ条件下で撮影されているにもかかわらず,IIc型分化型早期胃癌の多くは質の悪いX線・内視鏡写真とされていることに気づきました.linitis plastica型胃癌(LP型胃癌)は未分化型癌ですから,このことはLP型胃癌の早期発見に大きな味方を神はなされたと私は思っています.才に恵まれた馬場先生を愛弟子とされた中村先生,熊倉先生は共同研究者でもあり,人生のよき相談相手ともなっています.
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