胃と腸 40巻13号 (2005年12月)

今月の主題 いわゆる側方発育型大腸腫瘍の治療法を問う

序説

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大腸上皮性腫瘍の発育形式には多様性があるが,大きく分けて腸壁に対して垂直方向へ発育する腫瘍と水平方向に成長するものがある.腸管の水平方向に向かって発育し,背が高くならず扁平な形態を呈する病変に対して,large sessile polyp,顆粒集簇様病変,IIa 集簇様大腸病変,creeping tumor,花壇様隆起,水平発育型腫瘍,結節集簇様病変,側方発育型大腸腫瘍,表層拡大型腫瘍など,様々な呼称がされてきた.名称は異なるにせよ,われわれもその形態をイメ-ジできるように疾患概念は定着してきている.

本誌でも27巻4号(1992 年)において「大腸のいわゆる結節集簇様病変」,31巻2号(1996年)では「いわゆる表層拡大型大腸腫瘍とは」と題する主題が企画された.本号でも「いわゆる側方発育型大腸腫瘍の治療法を問う」となっており,いまだに「いわゆる」を冠につけている.このような水平発育する腫瘍に対する過去の討論において,名称ひとつにしても決着がついていないからであろうか? それとも過去の討論の経緯に配慮したからであろうか?名称だけでも議論が多い分野である.

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要旨

 大腸上皮性腫瘍の中には,ポリープのように上方向発育するものと,IIc のように下方向発育するものの他に,側方に発育進展していく腫瘍群がある.その中で腫瘍径10mm を超える同腫瘍群が LST(laterally spreading tumor)と称する.LST は顆粒型(granular type)と非顆粒型(non-granular type)に分類されるが,前者は以前,顆粒集簇型あるいは結節集簇様病変とされていた腫瘍群に相当する.一方,それ以外にも顆粒・結節を形成せず側方発育形態をとる腫瘍群が認められるようになり,LST非顆粒型と呼称される.側方発育型の特徴を有する両者を総称しLSTとされた.近年様々な施設で,病理学的・遺伝子学的解析が行われるようになり,その臨床像が明らかになりつつあり,EMR・ESD など内視鏡的治療が進化し続ける今日において,腫瘍の質的・量的診断は不可欠である.LSTにおいても今後さらなる解析のもとに適切な治療法が選択されることが重要である.

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要旨  いわゆる側方発育型大腸腫瘍(LST)の病理形態学的特徴を明らかにするために,術前未治療の LST 該当238例238病変を,工藤らの定義に従って顆粒型205病変(このうち顆粒均一型は73病変,結節混在型は132病変)と非顆粒型33病変に類別し,年齢分布,性別頻度,占居部位,癌併存率,組織型,腺腫の細胞異型度,組織型別の癌併存率,癌併存例の壁深達度および腺腫構成細胞の胞体色調と癌併存率について比較検討した.両群の類似点としては①病変の大きさの割には丈が低く,組織学的には腺腫成分の比率が高いこと②癌併存例では粘膜癌の占める割合が高いことが挙げられた.一方,相違点としては,①顆粒型は大腸の両極(直腸と上行結腸近位部・盲腸)に好発するのに対し,非顆粒型は横行結腸に多く,両者の大腸内分布が異なること②非顆粒型は顆粒型に比べて病変の大きさが小さいこと,③非顆粒型と顆粒均一型は管状腺腫が主体であり,結節混在型は管状絨毛腺腫が主体であること④非顆粒型と結節混在型は顆粒均一型に比べて癌併存率が高いことが挙げられた.以上の解析結果から LST にはある程度の大きさになっても癌併存率の低い顆粒均一型,大きさの増大に伴い癌併存率が高くなる結節混在型,そして小さくても癌併存率が高い非顆粒型の3群が包含されており,必然的に臨床的対応も異なると結論づけられた.

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要旨

 いわゆる側方発育型大腸腫瘍(LST)について,その臨床病理学的所見を踏まえた X 線深達度診断について検討した.LST 顆粒型は,ほとんどの病変が腺腫成分を伴っていたが,結節均一から不均一,粗大結節型になるに従い,担癌率や深部浸潤癌の頻度は増加していた.深達度診断の指標としては,陥凹所見が重要であったが,X 線での描出は低率であった.X 線側面変形像も毛羽立ちのため偽陽性(深読み)が少なからず認められたが,粗大結節型では側面変形所見は有用な指標であった.一方,LST 非顆粒型では,腸管短軸方向に併走するひだ集中様所見が認められたが,十分な読影を行えば,従来の表面型腫瘍における X 線深達度診断は有用であった.LST の治療法に関しては,各施設における内視鏡医の技量や設備を考慮したうえで,可能な方法を治療の選択肢に加え臨機応変に対処すべきと考えられた.

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要旨

 側方発育型腫瘍(LST)に対する治療法の選択を考えた場合,病変に対する病理学的特徴を把握したうえでの質的診断が重要である.LST をその肉眼形態的に顆粒型(granular)と非顆粒型(non-granular)に大きく二分し,さらに前者を homogeneous(以下 LST-G-H),nodular mixed(以下 LST-G-M)の2群に,また後者を flat(以下 LST-NG-F),pseudo-depressed(以下 LST-NG-PD)の2群の分け,計4群に分類して検討した.LST-G-M と LST-NG-PDでは担癌率,sm癌率とも他の群と比較して高い傾向にあり,各群とも腫瘍径の増大とともにこの傾向は顕著となり,sm深部浸潤癌の比率も増加した.pit patternの検討では,顆粒型は IV 型が中心に構成されていたが,非顆粒型では IIIL-2型が主体を成しており形態の成因を示唆するものであった.いずれの形態でも IIIL 型,IV 型にはsm 癌は存在せず,内視鏡的切除は容認される.特に腫瘍径20mm 以下の病変では十分に一括切除できるため積極的に切除すべきと考えられた.一方VN 型を示した病変は sm 癌であり内視鏡の適応から除外できると判断できた.しかし VI 型を示した病変では粘膜内癌を中心に中等度異型以下の腺腫から sm 癌まで幅広く存在し,特にLST-G-M 群と LST-NG-PD群ではsm癌の比率が他の群よりも高い結果を得た.以上よりVI型を示す病変では,LSTの形態を考慮した診断が要求され,腫瘍径が20 mm 以下であってもsmが存在し,かつ深部浸潤癌も存在するため安易な治療は避けなければならないと考え,切除したとしても十分な病理評価,特に粘膜下層の評価が行えるように切除する必要があると思われた.

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要旨

 いわゆる側方発育型大腸腫瘍(LST)117病変における高周波細径プローブ(HFUP)の深達度診断能について検討した.腫瘍径別の検討では,30mm 未満の病変が,肉眼型別の検討では,顆粒均一型の深達度正診率が高かった.腫瘍径・肉眼型の組み合わせで検討すると,深達度正診率は,顆粒均一型(100%),30mm未満の結節混在型(90.9%),20mm未満のpseudo-depressed type(88.9%),flat elevated type(81.8%)の順で診断能が良好であった.誤診例27例(23.1%)の検討では,その平均腫瘍径は誤診群がより大きく,誤診原因は描出不良(10例),深部減衰(7例),線維化(4例)などであり,肉眼型では結節混在型が多かった.以上の結果から,HFUPの診断能は腫瘍径と肉眼型に規定され,描出不良例と深部減衰例に対する克服が課題であると考えられた.

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要旨

 スネアを用いた従来の EMR は比較的短時間,かつ安全に施行でき,側方発育型大腸腫瘍(IIa集簇型およびIIa非顆粒型)に対する標準的な内視鏡治療手技である.当科ではその治療方針を腫瘍径・肉眼型で区別している.すなわち,内視鏡的に良好な視野が確保可能であれば,30mm 未満の病変については技術的に一括切除可能病変と考え,IIa集簇型・IIa非顆粒型のいずれの肉眼型に対しても一括切除を試みている.また30~60mmのIIa集簇型には計画的な分割切除を行っている30mm以上のIIa非顆粒型はsm浸潤の可能性が高率であり,60mm 以上のIIa集簇型に関しては技術的にスネア EMR の限界と考え,これらに対しては腹腔鏡下腸切除術を選択している.スネア EMR は新しいデバイスの使用,局注液,治療手技の工夫により,大きな病変であっても一括切除率の向上が期待できる.当科での治療手技の実際と成績について述べる.

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要旨

 いわゆる側方発育型腫瘍(LST)の治療指針について考察した.一般に,従来のスネアEMRによって平均最大径20mm くらいまでは一括切除可能であるが,それよりも大きな病変に対する対応が問題になる.近年,拡大内視鏡の進歩など詳細な診断学の進歩によって,分割切除が容認される病変と一括切除すべき病変の判別が術前に可能になった.具体的には,腺腫性のLST-Gは分割切除で十分であるが,LST-NG,特にpseudo-depressed typeは一括切除で治療すべきである.径20mm 以上の病変を確実に一括切除する方法としては,ESDや腹腔鏡下切除術・開腹下外科的切除がある.現時点では,いずれも術者の技量に大きく影響されるので,どれを選択するかは術者の技量や施設の状況に応じて決定すべきであり,技量を超えた無理な治療によって,これら新しい治療法の発展・標準化にブレーキをかけることのないようにしたい.

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要旨

 近年の内視鏡治療技術の進歩は目覚ましく,大型腫瘍においてもESDによる治療の適応拡大が可能となった.大腸腫瘍の中で,LSTは側方への発育を主体とする腫瘍であり,内視鏡治療の良い適応と考えられるが,LST-NGの場合はsm浸潤のリスクが高くなるため,ESDによる一括切除が望ましいと考えられる.しかし,ESDは偶発症のリスクも高いため,拡大内視鏡等によるきちんとした術前診断を行ったうえで,術者や施設を限定して実施すべきものと考えられる.

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要旨

 側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)の多くは粘膜内あるいは粘膜下層にとどまる早期癌の状態で発見されることが多い.したがって,治療は内視鏡的切除が基本だが,外科的治療も病変の確実な切除と安全で低侵襲な方法が選択されるべきである.その点で,腹腔鏡下大腸切除術(LAC),経肛門的切除術(TAR),経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)はいずれも開腹手術(OC)に比較し低侵襲手術として優れた治療法である.そこで,治療法を選択するにあたり,各々の適応を明確にしておくことが重要である.

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は じ め に

 側方発育型腫瘍(LST ; laterally spreading tumor)は,顆粒型(LST-G)と非顆粒型(LST-NG)に分類されている1).前者は大きくとも浸潤癌の頻度は低く内視鏡的治療の対象とされる病変が多く,後者は側方に発育する性質を有するも深部浸潤傾向もみられ,おのずと治療法の選択には差が生じる.ここでは私個人の考え方を中心に述べる.

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切除方法と適応

 いわゆる側方発育型大腸腫瘍は,水平方向への発育が優位なため大型を呈することが多い.したがって,内視鏡あるいは EUS(endoscopic ultrasonography)での深達度判定で明らかな浸潤所見を呈さない場合は大型腫瘍でも内視鏡的切除の適応となる.切除にあたっては,一括切除法だけでなく分割切除法も適用される1).分割切除に際しては,一括切除に比較してより詳細な内視鏡観察で完全切除を期す.次に,すべての切除標本の回収と原型に近い再構築による組織学的検討で,粘膜内腫瘍と診断すれば完全治癒切除に準じた扱いとする.さらに一括切除法による完全治癒切除の場合と比べてより短期の間隔で内視鏡的に経過を観察する.以上の指針で遺残腫瘍は極めてまれであり,たとえ存在しても内視鏡での追加処置により最終的には治癒状態への導入がほぼ可能である.しかし,以上の取り扱いには内視鏡的切除に対する適応判定が重要である.まず絶対的適応として,深達度が粘膜内か粘膜下層微小浸潤に限定される.さらに内視鏡的腫瘍切除における技術的条件を満たす必要がある.すなわち,一括あるいは分割切除法の施行に際しては,➀腫瘍境界の同定が可能であること,➁病変全域の観察が可能であること,➂粘膜下注入で病変が明瞭に挙上すること,が挙げられる.また腫瘍の大きさについても,➀ 長軸方向では2ひだにまたがらない,➁短軸方向ではほぼ半周にとどまる,といった条件が必要であろう.

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側方発育型大腸腫瘍の分類と特徴

 側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)とは工藤が提唱した大腸腫瘍の発育形態分類で “上方向発育に比較して側方向への発育傾向が極端に強い丈の低い隆起性病変である” と定義されている1).大腸癌取扱い規約の肉眼的分類2)にあてはめると無茎型(Is´)の中のいわゆる結節集簇様病変(nodule aggregating lesion ; NAL)と表面隆起型(IIa´)の一部の病変が LST に相当すると思われる.その後工藤は LST の大きさの定義を1cm 以上とし,形態学的にLSTを顆粒型(granular type)と非顆粒型(non-granular type)に分類し,さらに顆粒型を顆粒均一型と結節混在型に,非顆粒型を flat elevated type と pseudo-depressed type に細分類している3)

 われわれの経験では顆粒型は病巣の大部分が腺腫であるが,結節混在型の中の大きい結節や発赤の強い部に一致して癌の存在することがよくあり,同部に緊満感を伴う場合や明瞭な陥凹が存在する場合は粘膜下層以深にmassiveに癌が浸潤していることが多い.非顆粒型は顆粒型より組織学的異型度が高い病変が多く,腺腫内癌や腺腫の併存しない癌が少なからず存在する.特にpseudo-depressed typeでは病巣の数か所で癌が粘膜下層に微少浸潤している場合がよく存在する.粘膜下層以深にmassiveに癌が浸潤すると顆粒型と同様の浸潤所見を呈するが粘膜内病変が低い分,その診断は非顆粒型のほうが容易である.

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は じ め に

 内視鏡治療技術の発展とともに,以前は外科手術の適応となっていた腫瘍径の大きな側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)に関しても内視鏡治療の適応が拡大されつつある.LSTは顆粒型(LST-G)および非顆粒型(LST-NG),それぞれの肉眼型で生物学的性質が異なると考えられている1)2)ものの,治療方針に関していまだ統一した見解はない.今回,各肉眼型別に治療成績,臨床病理学的検討を行い,治療指針を明らかにする.

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大腸腫瘍性病変の治療の現状

 大腸腫瘍性病変(腺腫,早期癌)の治療には,局所治療とリンパ節郭清を伴う腸切除がある.治療前に“深い浸潤”の粘膜下層浸潤癌(sm 癌)と診断されれば,リンパ節郭清を伴う腸切除を行うことは言うまでもない.局所治療〔内視鏡的切除(ER ; endoscopic resection),TEM(transanal endoscopic microsurgery),経肛門的切除,腹腔鏡補助下腸切除など〕の適応病変は,腺腫,粘膜内癌と臨床的に深達度診断の難しい“浅い浸潤”のsm癌である.局所治療されたsm癌は,切除標本の詳しい病理組織検査によってその後の治療方針が決められる.局所治療のうち,ERの適応は,内視鏡で切除断端を陰性にできる病変に限られる.治療の成否には,病変の形態,大きさ,存在部位が影響する.

 ERには,一括切除と分割切除がある.一括切除は,標本の回収を容易にし,病理組織学的にも詳しい検討ができる.一方,分割切除は,分割回数が増えるに従い標本の回収が難しくなる.さらに,標本の再構築も難しくなり,水平,垂直断端や脈管侵襲などの病理組織学的評価が困難になりやすい.そのため,特に癌の切除は,一括切除が原則と考えるのは当然と言える.しかし,snareを用いるpolypectomyとEMR(endoscopic mucosal resection)で,一括切除できる大きさには限界がある.大きさの限界は3cm 程度だが,この大きさになると腸管穿孔の危険と隣り合わせの状態で行うことになり,安定した治療を期待できない.現実的な限界は,2cm 程度と考えるのが一般的である.大腸は,食道や胃と異なり,屈曲やひだが多く,ERをするうえで障害が多い.大腸癌治療ガイドライン(2005年)1)には,適応の原則として腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあることが記載されている.加えて,治療前の診断に限界があることも考慮する必要がある.そのため,明らかに異型度の低い腫瘍は別として,一括切除できない病変に対しては,分割切除よりもより確実な治療を求めて他の局所治療が行われる現状もある.

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大腸内視鏡で側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)を発見した場合,通常観察や拡大観察による表面構造の詳細な観察,超音波内視鏡を適時施行し組織型や深達度の評価を十分に行ったうえで,術前評価により内視鏡治療で根治が期待できる症例に関しては積極的に内視鏡治療を行っている.内視鏡治療は手術療法と比較して低侵襲であることが大きなメリットである.実際内視鏡治療を選択する場合,第一に安全であり次に確実な治療効果が期待できる点が重要であると考える.確実な治療効果を期待する症例は,基本的には内視鏡治療で根治する症例である.また,確実な治療効果を期待するという点を広い意味で解釈すると,内視鏡治療を行い切除された病変を詳細に検討したところ脈管侵襲などの所見があり追加腸切除を行った場合も,最終的には根治が期待できる治療が選択できたことになる.もちろん,術前に診断技術を駆使することにより,外科的腸切除が必要な症例をできるだけ選別するよう努力することは言うまでもない.逆に,安全性を欠いた(すなわち合併症の多い)内視鏡治療や,局所再発の多い内視鏡治療,あるいは切除標本を詳細に観察しても根治性の有無が確実に判定できない内視鏡治療などは避けるべきである.早期胃癌において,ESD(endoscopic submucosal dissection)による病変の一括切除を目指した内視鏡治療の重要性は広く認識されている.一方,大腸LSTに対する内視鏡治療法として,ESDを用いた病変の一括切除法と,スネアリングによる分割切除法(特に計画的分割切除法)がしばしば比較される.安全性に関しては,ESD治療による大腸穿孔は一般に頻度が高く,克服すべき重要な問題である.ただし,最近の学会,研究会における報告では,ESD治療に熟達した専門施設における成績は,われわれの施設も含め適切な手技により安全性確保が可能であることを示している.一方,分割切除は従来局所再発率が多いことが問題視されていたが,最近の報告ではこの点も改善されつつある.

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当科では20mmを超えるような大腸病変にFlex ナイフを,最近ではFlush ナイフ1)2)を用いる方法でESD(endoscopic submucosal dissection)を施行している.2003年1月に局注剤をヒアルロン酸ナトリウムに変更以来現在まで,深部浸潤による中止例を除き152例連続で一括完全切除が得られており,難易度・危険性が高いとされる大腸においても一部の困難例を除きスムーズな切除が可能になっている状況である3)4)

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いわゆる側方発育型大腸腫瘍(lateral spreading tumor ; LST)は granular type と non-granular typeに大別される.granular type の担癌率は低く大部分は tubular adenoma であるが,non-granular type では癌を合併する危険が高く,一部にsm浸潤を伴うことが知られている.したがって,non-granular typeでは一括切除による詳細な病理組織学的検索が必須となる.

 従来のsnare EMR(endoscopic mucosal resection)では切除面積に制限があるため,腫瘍長径が1cmを超えると一括切除は難しくなる.一方 ESD(endoscopic submucosal dissection)は一括切除率が高いという特徴を有すが,大腸には,➀ 管腔が屈曲している,➁ ひだがある,➂ スコープの操作性が悪い,➃ 固有筋層が薄いという臓器的特徴があり,大腸 ESD は胃の ESD より難しい.この困難を克服するために山本は局注液にヒアルロン酸ナトリウムを用い,矢作は flex ナイフを開発し,筆者はhook ナイフを開発した.

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近年,いわゆる側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)は肉眼型を反映しない用語や定義の曖昧さから,学会や研究会で多くの研究者より批判されてきた.しかし,大腸 LST は内視鏡的切除の重要性より,内視鏡治療の現場で自然と使用されていった.特に,内視鏡治療の見地から学会や英文原著論文の報告がなされていった1)~3).大腸 LST は,現在ESD(endoscopic submucosal dissection)の適応の論議も含めて,大腸の内視鏡治療上最も重要な病変群である.今回,大腸 LST の内視鏡治療に関して,一括・分割切除の問題も含めて,当科のデータをもとに私見を述べる.

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要旨

 LST-G,LST-NG と他の肉眼型の大腸腫瘍について,臨床病理学的,分子生物学的な検討を行った.LST-G と LST-NGは,臨床病理学的特徴,K-ras変異,p53蛋白核内異常集積の発現様式の相違から,LST-G,NGを区別する意義を有すると考えられた.また,LSTと他の肉眼型にも,これらの特徴にいくつかの相違点を認め,LSTを1つの肉眼型として表現する必要があると考えられた.一方で,LST-GのK-ras変異率は腫瘍径別にみると隆起型腫瘍(I 型)とほぼ同率であり,LST-Gは隆起型腫瘍(I 型)と同質性を示し,LST-NG は,10~19mmの病変で p53蛋白核内異常集積の発現様式がびまん性で,E-cadherinの発現が減弱した病変が多く,表面陥凹型腫瘍(IIc)と同質性を示した.

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大腸癌研究会「内視鏡摘除の適応」 プロジェクト研究班設立の背景

 表面型大腸腫瘍の発見頻度や sm 癌に対する内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)件数の増加に伴い1)~3),大腸sm癌の根治基準が変更されることとなった.すなわち従来の大腸癌取扱い規約における“smにわずかに浸潤した癌(200~300μm程度に相当)”4)から,sm癌取り扱いプロジェクト研究委員会から提唱された“sm垂直浸潤距離1,000μm未満で脈管侵襲を認めない病変” 5)とされ,新しい大腸癌取扱い規約にも記載される予定である.われわれ臨床医にとって今後はこのsm垂直浸潤距離1,000μmの術前診断精度の向上が重要となる.大腸sm癌の深達度診断に拡大内視鏡6)7)や,超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography ; EUS)8)が有用であることは疑いの余地はないが,一般臨床家においては時間的な制約や技術的な問題もあるため,実際にはこれらの検査を行っている施設は全体からみると少ないのが現状である9)10)

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欧文目次

編集後記 田中 信治
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 本号では,大腸の側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor ; LST)の治療法および治療法選択のための診断学を中心に述べられている.LST の定義や理解はまだまだ議論の多いところで,既存の肉眼型との関連が学会で大きな問題となっているが,内視鏡治療の大きさの限界を論じる場合は非常にわかりやすい言葉である.

 多くの先生方が述べているように,病変の臨床病理学的特性に基づいて,腺腫性の LST-G はたとえ大きな病変でも分割 EMR で十分根治可能であるし,LST-NG,特に pseudo-depressed type は ESD または外科的に一括切除が必要であろう.ただし,これらの治療法の選択には正確な術前診断が必須であり,病変の肉眼型・部位・大きさなどを考慮して,X 線診断,通常内視鏡観察・拡大観察,超音波内視鏡などを適宜選択し正確な術前診断をしなくてはならない.正確な術前診断なくして正しい治療法選択はありえない.

基本情報

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胃と腸
40巻13号 (2005年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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