胃と腸 41巻1号 (2006年1月)

今月の主題 早期胃癌に対するESDの適応の現状と今後の展望

序説

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胃癌の経内視鏡的切除術はスネアポリペクトミーをその嚆矢とするが,jumbo biopsyを目的として始まったendoscopic mucosal resection(EMR)と endoscopic submucosal dissection(ESD)の考案で飛躍的に進歩したことは周知である.今日ではESDを積極的に行う施設が増加しているが,その適応,conventional EMRと腹腔鏡下手術などとの住み分けなど検討すべき問題はまだ数多く残っている.本号ではこれら山積した問題に正面から取り組むことを目標としているが,殊にESDの先進的施設より,術後3年以上の成績が報告されることが楽しみである.

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外科切除された未分化型早期胃癌534例より未分化型腺癌に対する内視鏡的切除の適応を検討した.リンパ節転移は,深達度SM,ly・vあり,30mm以上,porあるいはpor+sig,Ki-67局在なし,二層構造(MUC5AC/MUC6)なしで多かった.SM浸潤率は,porあるいはpor+sig,Ki-67局在なし,二層構造なしで高かった.M癌のみではUL(+)でリンパ節転移が多かった.M癌でリンパ節転移を認めた15例中14例でULを認めた.ULなしの1例は,長径80mm,粘膜全層性,Ki-67局在なし,二層構造なしの症例だった.以上よりM癌で ①ULの有無を問わずに大きさ10mm 以下,②UL(-)かつ Ki-67局在あり,③UL(-)かつMUC5AC/MUC6二層構造あり,④UL(-)かつ sigのみ,がリンパ節転移のない条件と考えられた.

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胃癌EMRの適応病変が2cm以上に拡大されることにより内視鏡でm癌と考えられる病変でも,X線像を加えることにより粘膜下浸潤を判断する必要がでてきた.X線検査によりsm以深の癌を除外することに焦点を絞り,sm浸潤の判定のポイントを述べ,症例を呈示した.隆起型では①隆起の側面像で胃壁に明らかな変形や硬化を伴う例,②IIcの一部が隆起する混合型,③隆起全体が粘膜下腫瘍様に台形状変化を伴う型では,sm癌と判定する.隆起型における診断のポイントは陥凹病変随伴の有無と粘膜下腫瘍様に隆起を認めるかどうかであった.陥凹型でひだ集中の伴わない場合,sm癌では陥凹の程度が深く陥凹内に粗大隆起を伴ったりするので,陥凹底の模様が均一ではなく,陥凹辺縁部が粘膜下腫瘍様に隆起を示したり,陥凹病変全体が台形状隆起を示す.一方,陥凹型でひだ集中を伴う場合,sm層の線維化の程度が強ければ胃壁が厚く観察されるので,sm癌と診断する傾向となる.X線像では空気量が十分な二重造影や圧迫像など胃壁を伸展させた状態でのひだ先端の太まりや癒合はsm以深の所見とする.

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分化型早期胃癌379例(M癌283例,SM癌 96例)のうち,長径2cmを超え,UL(-)のM癌38例とSM 癌33例の内視鏡検査(超音波内視鏡検査)に対する深達度および浸潤度診断を行った.内視鏡診断によるM癌の診断能は感度86.5%,特異度85.2%,正診率77.5% であった.M癌をM癌と正診できなかった4例のうち3例は病変の丈の高い例であった.一方,SM癌をM癌とした5例は粘膜下層内への粘膜筋板からの浸潤距離が浅く,浸潤範囲も狭い例であった.粘膜下層内への浸潤範囲が狭いと,病変の大きさが広くなるに従い,相対的に粘膜下層内での癌の割合が小さくなるため診断は不良になると考えられた.

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当院開院以来の3年間にESDが施行された早期胃癌513例557病変のうち,多発胃癌および再発胃癌を除いた,単発早期胃癌353例を対象とし,術前適応別治療成績と切除困難例の特徴を検討した.適応病変,適応拡大病変,適応外病変における一括断端陰性切除率は,それぞれ,98%,94%,76%,治癒切除率は87%,68%,12% であり,適応および適応拡大病変に対するESDの成績は選択可能な治療の1つと考えられた.切除困難例を施行時間が120分を超える病変と120分以内の病変に分けて検討した結果,切除片が大きい,ULがある,部位がU+M領域にある,ことが切除困難予測因子となりうると思われた.またデバイス,治療用スコープ,高周波装置の開発により,明らかに手技が改善されており,種々の機器開発がESDをより簡便化・普遍化させてゆくと思われた.

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ESD困難例で十分な根治性と安全性を維持してESDが実施できているか否か明らかにするために,当院でESDを行った胃癌181症例,182病変を対象に検討を行った.EMR相対適応である大きな病変や潰瘍瘢痕を有する病変,噴門部など ESD操作困難部位の病変をESD困難例と想定し,ESD症例を層別化して比較検討した.切除粘膜径5cm以上群vs5cm未満群,ESD困難部位群vsESD容易部位群の比較では,一括切除率,水平断端陰性率,完全治癒切除率,粘膜下層浸潤率,穿孔発生率に有意差は認めなかった.潰瘍瘢痕群vs非瘢痕群では,潰瘍瘢痕群において有意差はないが水平断端癌陰性率が低い傾向にあった.適切な手技に基づけば困難症例でも十分なESD成績を得ることが可能であることが示された.穹窿部頂部病変やUL-IIIs以深の潰瘍瘢痕症例は今のところESDが不可能であるが,より振り幅の大きいmulti-bending scopeや内視鏡的全層切除手技の開発によって,将来内視鏡治療が可能となるものと推測される.

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ESD切除胃腺癌221病変を用いて,その切除成績,分割切除例の特徴,切開断端に発生する組織熱変性の範囲,および内視鏡医による範囲診断困難例の特徴につき,臨床病理学的立場から検討した.221病変の一括完全切除率は84.2%(186/221病変)であった.一方,分割切除率は5.4%(12/221病変)で,肉眼型別のそれは隆起型10.3%(8/78病変),陥凹型3.0%(4/135病変)と前者に有意に高かった(p<0.05)がその原因は明らかでなかった.また潰瘍瘢痕合併は分割切除の危険因子ではなかった.対象とした全64病変の切開断端に生ずる熱変性の範囲は平均1,203μm長で,部位別ではU領域(1,515μm)のそれが最も長く,次いでM領域(1,241μm),L領域(1,153μm)の順であり,U領域とL領域のそれの間には有意差を認めた(p<0.05).病変範囲診断困難例の特徴としては,①大きな病変(31mm≦),②平坦型(IIb)もしくは平坦な領域(随伴IIb)を有する病変,③低異型度の癌,④粘液形質が胃型もしくは胃型優位胃腸型の病変,および⑤腫瘍腺管が正常上皮に覆われている部位を有する病変などが挙げられた.このうち,④か③の特徴を有する癌が範囲診断困難例の約9 割を占めていた.以上の結果より,( 1 )一括完全切除率は確かに高率であるが,まだまだ診断・技術の向上の余地が残されている,( 2 )十分な病理学的検索に耐える標本を得るためには,病変範囲より2.0mm以上の余裕のある距離をもって切除されることが望ましい,( 3 )胃型形質もしくは低異型度の病変は範囲診断困難となりやすい,と結論した.

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内視鏡的粘膜下層剝離術(以下ESD)による偶発症の現状と対策について述べた.術中出血は必発であるが,視野を確保しながら地道に血管処理を行うことにより治療時間の短縮が図れる.術後出血は,切除後の潰瘍底を細い血管までくまなく止血することで予防が可能である.穿孔は適応病変0.9%,適応拡大病変1.6%と低率であるのに対して,適応外病変18.8%と有意に高率であった.また,precutによる穿孔例もあり,十分な注意が必要である.ESDでは治療に長時間を必要とするため,鎮静剤と鎮痛剤を併用した注意深い術中管理が要求される.長時間の鎮静による合併症(誤嚥性肺炎,褥創,深部静脈血栓症)の予防として,低反発マットの使用,頻回な口腔内分泌物の吸引,治療時間が2時間を超えた時点で体位変換,下肢マッサージ,膀胱カテーテルの留置を行っている.ESD施行医は十分かつ安全な鎮静を行うための知識と配慮が必要とされる.

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ESDにおける主な偶発症は出血と穿孔である.いずれも術中に発生する場合と術後遅発性のものとがある.術中穿孔は速やかなクリップ閉鎖による保存治療が可能で確実かつその後の処置の妨げにならないようスペースを作った後に行う.術中出血はESDの能率に影響し,成否を分ける.出血の原因となる粘膜下層の血管パターンは前庭部,体部小彎,体部前後壁(内側縦斜走筋群分布領域)の3群に大別され部位別に手順,剝離深度を設定することが攻略のカギである.ITナイフを用いる場合もアタッチメントで視野を確保しForcedあるいはSwift凝固による剝離(凝固モードトリミング)を併用することで出血の少ない処置が可能になった.遅発性穿孔は過通電による全層の凝固壊死が原因と考えられる.面積をもって筋層が脱落するため外科的対応を要する.術後狭窄に対する拡張術は穿孔も来しうるので注意しなければならない.後出血は前庭部や体部小彎に集中し占拠部位の要因が大きい.

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2000年1月から2002年10月までにESDを施行した胃癌のうち,ガイドライン適応胃癌群(以下適応群),適応拡大群を対象とした.適応群は68例であり,男性56例,女性12例.年齢中央値:69歳.平均観察期間:3.6年であった.適応拡大群は43例であり,男性30例,女性13例,年齢中央値:72歳,平均観察期間:3.8年と患者背景に差はなかった.ESDに伴う主な偶発症は出血と穿孔だが,輸血を要した大量出血は両群ともになく,適応群に1例の穿孔を認めたが両群間の偶発症発症率に有意差を認めなかった.適応群の一括完全切除率は95.6%(65/68),適応拡大群では 90.7%(39/43)であり,両群間に有意差を認めなかった.適応群,適応拡大群ともに原病死はなく,両群ともに他病死を5例認めた.他病死を含む3年生存率は適応群で95.2%(平均観察期間3.63年),適応拡大群で 89.8%(平均観察期間3.67 年)であった.両者間には有意差を認めず,他病死を除く3年生存率はともに100%であった.

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ESDは早期胃癌に対してより大きな病変を一括切除できる点において有益な治療法である.しかし,その適応を誤り不完全に切除された場合には生命予後を大きく左右する危険性を含んでいる.1999年1月から2002年8月までに国立がんセンター中央病院にて術前適応を満たし,ESDが施行された671病変588症例を対象に根治度と長期経過の検討を行った.対象病変中,525病変(78.2%)が病理学的にガイドライン治癒切除もしくは適応拡大治癒切除であった.122病変(18.2%)が非治癒切除で,24病変(3.6%)が病理学的に判定不能であった.対象症例中481症例が当センターで経過観察されていた.これら症例の長期経過では,治癒切除例のうち分割切除となった1例で局所再発を認めたが,現在までに胃癌死は認められていない.非治癒切除例のうち2例,判定不能例のうち1例に遠隔転移再発による胃癌死を認めている.よって,一括にて切除され治癒切除が病理組織学的に証明された場合においては,ガイドライン病変のみならず適応拡大病変においても高い根治性があると考えられる.

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早期胃癌に対するESDは,2cm以上の病変でも一括切除が可能であり,根治性を保ちながら胃を温存できる治療法である.安全・確実に治療を行うためには,まず癌進展の正確な診断能力と,十分な内視鏡操作技術が必要である.さらに,ESDに関する知識の習得,シミュレーション,豚切除胃を用いたトレーニング,指導者のもとでの実際の治療といった一連の修練が必要である.ESDは素晴らしい治療手技であるが,現時点では保険適応になっておらず,EMRの診療報酬の中で処置具や薬剤を使用しなければならないため,財政上の負担を強いられている.患者のQOLや医療費の観点から,ESDによる治療のメリットは大きく,早期の保険診療認可が待たれる.また認可後に爆発的な実施件数の増加が見込まれるため,リスクマネージメントの観点からも,トレーニングシステムの構築が急務であると考えられる.

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“現状” に対する危惧

 ESD(endoscopic submucosal dissection)に対する隠れた批判は少なくない.特に外科医はESDの合併症のみでなく,poor riskあるいは手術拒否という理由で内視鏡治療が行われ,follow upされ,進行癌に成長したあとで手術させられた症例や,明らかなsm2~3癌,どうかすると,進行癌に対して内視鏡治療を行ったあとで手術を依頼された症例などの経験を有している人が少なくないからであろう.

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はじめに

 過去40年の胃癌研究を通じて,早期胃癌に関する多くの成績が集積されてきた.その1つに早期胃癌のリンパ節転移率が粘膜内癌で2~3%,粘膜下層浸潤癌で15~20%という成績がある1)~3).そして,転移陽性と転移陰性の早期胃癌の病理形態学的特徴が明らかになってきた.最近では,これら転移陰性の特徴を有する早期胃癌に対して内視鏡的切除術が盛んに行われるようになってきた.内視鏡的切除術に要求されることは “病巣の完全摘除が組織学的に証明できる切除材料であること,およびリンパ節転移陰性の予測が評価できる切除材料であること” である.EMR(endoscopic mucosal resection)では,この条件を満たす病変として,“2cm未満の大きさで,潰瘍所見のない,粘膜内癌と考えられる高分化型腺癌” が挙げられてきた1).しかし,粘膜内に限局する2cm以上の大きさの高分化型腺癌でもリンパ節転移が陰性であることから,このような癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)による治療が盛んに行われるようになってきた.

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内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection ; ESD)が急速にひろまりつつある.早期胃癌に対する内視鏡的治療の歴史をみると当初は有茎性の早期癌に対しポリペクトミーを行った.しかし,この方法の適応は極めて狭かった.次いでNd-YAGレーザーが日本に導入されレーザー治療が盛んに行われた.レーザー治療の最大の問題は組織を回収して確認することができず経過観察でしか評価できない点であった.しかし照射法,出力を工夫することで手技は容易で,偶発症の可能性も極めて低い1).その欠点を克服し現在の内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection ; EMR)のもととなったのがstrip biopsyの開発である2)

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ESD(endoscopic submucosal dissection)の開発により胃癌内視鏡的切除は新たな段階に踏み込んだことは間違いない.ESDを用いれば,胃癌治療ガイドライン1)程度の癌巣の大半は一括で完全切除することは容易であり,ガイドライン適応外であっても大きさ5cm以下の癌巣,UL-II程度の潰瘍瘢痕を有する陥凹型癌巣の一部は一括完全切除することが可能である.その結果,分化型早期胃癌の半数が内視鏡的切除の適応に組み込まれる2)勢いとなっている.

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胃癌に対する最も侵襲の少ない外科的治療法は,局所切除であり,EMR(endoscopic mucosal resection)や腹腔鏡下胃局所切除法(lesion-lifting法)がこれに相当する.適応の条件は,①原発巣が取りきれること,②リンパ節転移の可能性が極めて低いこと,③切除組織標本において①②が確認できることの3点である1)2)

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1. はじめに

 消化器内視鏡医にとって,ESD(endoscopic submucosal dissection)の登場は,従来のスネアを用いたEMR(endoscopic mucosal resection)と較べた場合に大きな一括標本が得られる点で画期的な出来事であった.すなわち一括切除によって,病変の全割が可能となり,マッピングにより正確な深達度診断,詳細な病理組織診断も可能となった.そもそもESDは,細川・小野ら1)によって新しく開発されたITナイフを,広範囲の粘膜の一括切除に応用したものである.ESD実施にあたっての種々の技術的問題を克服したこと,そしてGotodaら2)が,適応拡大が可能なことを臨床病理学的に報告したことに始まり小山3),矢作4),山本5)らの大きな業績と考えられる.その一方で技術的ハードルが決して低くないことから,現在,施設間格差などが発生しており,術者の技量が結果を大きく左右していることも事実である.トレーニングシステムや技術認定などの整備が望まれる.

消化管造影・内視鏡観察のコツ

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内視鏡検査からの情報を得る

 病変を X 線検査で描出するためには,内視鏡検査からの詳細な情報を得る必要がある.情報の中でも病変の壁在性を知ることが最も重要である.病変の主座が右壁か左壁か,または前壁か後壁かである.このことによって撮影体位が決まるからである.次には病変の肉眼形態である.隆起しているのか陥凹しているのか,そして特に注意が必要なのは厚みのある部位が病変のどこにあるかである.

 以上の情報を整理し X 線像をイメージすることが大切である.

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はじめに

 ダブルバルーン内視鏡は小腸全域の内視鏡観察を可能にした新たな方式に基づく内視鏡である.この内視鏡を使って小腸の内視鏡観察を効果的に行うためにはまずその挿入原理をよく理解している必要がある.しかし,本稿では観察に重点を置き,挿入法に関しては詳述を避け,基本的な挿入原理のみ解説する.挿入法に関する詳細は他の文献1)~5)を参考にしていただきたい.

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患者は19歳の男性.1歳7か月時に右側胸腹壁血管腫(海綿状血管腫)摘出術を受け,7歳時,胃,大腸に多発する血管腫が認められたため,blue rubber bleb nevus syndromeと診断した.以後,貧血のため,入退院を繰り返していたが,19歳時,著明な貧血と黒色便の出現あり,当科へ入院.胃,大腸のほか,小腸内視鏡にて小腸に多発する多彩な血管腫を認めた.胃,大腸の血管腫に対し,内視鏡的ポリペクトミーを行い,以後,貧血の改善をみた.本症の血管腫に対する内視鏡的治療は有効と思われた.

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欧文目次

編集後記 田尻 久雄
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 種々の処置具・機器・技術の開発改良により,ESD の一括切除率が向上し,偶発症の頻度と関連する問題もある一定の傾向を示している.しかし,ESD の難易度は高く,井上も同一病変を“従来の開腹手術"“内視鏡外科手術"との治療を比較想定して,“ESD"が最も難易度が高いと述べている.また“ESD"の全国的普及とともに早期胃癌治療における問題点も明らかにされてきている.すなわち,ガイドライン外の病変に対してどこまで適応拡大が可能か,術前診断能ならびに偶発症の現状,切除困難例の特徴,長期成績などである.本主題では,これらの問題点の現状と今後の課題が解析されており,読者の期待に十分応えられる内容になっていると思われる.学会,研究会の雰囲気では,ややもすると華々しい ESD の手技に注目が集まりやすいが,臨床医として重要なことは本主題で問われていることにある.

 最も多くの ESD 症例を集積している国立がんセンター中央病院の池原,後藤田らは,“判定不能例のうち ESD 後に経過観察となった 1 例が遠隔転移再発のため胃癌死となっている.十分な病理学的評価が困難な症例においてはより根治性の高い追加外科切除が必要である"と述べ,安易な経過観察は適切な外科手術時期を逃し,直接生命予後を左右する危険性があると警鐘を鳴らしている.非治癒切除例ではさらに厳しく対応されるべきである.

基本情報

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胃と腸
41巻1号 (2006年1月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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