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大腸腫瘍性病変の治療の現状
大腸腫瘍性病変(腺腫,早期癌)の治療には,局所治療とリンパ節郭清を伴う腸切除がある.治療前に“深い浸潤”の粘膜下層浸潤癌(sm癌)と診断されれば,リンパ節郭清を伴う腸切除を行うことは言うまでもない.局所治療〔内視鏡的切除(ER ; endoscopic resection),TEM(transanal endoscopic microsurgery),経肛門的切除,腹腔鏡補助下腸切除など〕の適応病変は,腺腫,粘膜内癌と臨床的に深達度診断の難しい“浅い浸潤”のsm癌である.局所治療されたsm癌は,切除標本の詳しい病理組織検査によってその後の治療方針が決められる.局所治療のうち,ERの適応は,内視鏡で切除断端を陰性にできる病変に限られる.治療の成否には,病変の形態,大きさ,存在部位が影響する.
ERには,一括切除と分割切除がある.一括切除は,標本の回収を容易にし,病理組織学的にも詳しい検討ができる.一方,分割切除は,分割回数が増えるに従い標本の回収が難しくなる.さらに,標本の再構築も難しくなり,水平,垂直断端や脈管侵襲などの病理組織学的評価が困難になりやすい.そのため,特に癌の切除は,一括切除が原則と考えるのは当然と言える.しかし,snareを用いるpolypectomyとEMR(endoscopic mucosal resection)で,一括切除できる大きさには限界がある.大きさの限界は3cm程度だが,この大きさになると腸管穿孔の危険と隣り合わせの状態で行うことになり,安定した治療を期待できない.現実的な限界は,2cm程度と考えるのが一般的である.大腸は,食道や胃と異なり,屈曲やひだが多く,ERをするうえで障害が多い.大腸癌治療ガイドライン(2005年)1)には,適応の原則として腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあることが記載されている.加えて,治療前の診断に限界があることも考慮する必要がある.そのため,明らかに異型度の低い腫瘍は別として,一括切除できない病変に対しては,分割切除よりもより確実な治療を求めて他の局所治療が行われる現状もある.
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