胃と腸 38巻12号 (2003年11月)

今月の主題 上部消化管拡大観察の意義

序説

上部消化管の拡大観察 神津 照雄
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 最近の電子内視鏡拡大観察は組織診断に迫り,拡大形態像のみで生検不要論の時代になりつつある.この分野も本邦から世界に向けての発信である.歴史を紐解けば1982年,第24回日本消化器内視鏡学会(会長 : 岡部冶弥教授)でシンポジウム「拡大内視鏡と色素法」が取り上げられたのが嚆矢である.そして井田和徳・岡崎幸紀氏により1986年「内視鏡による消化管の拡大観察」が刊行された.その後長いブランクがあったが,現在,大腸疾患においては組織診断・癌深達度診断に迫る技法として多くの施設でルーチン検査として広く取り上げられている.しかし,食道,胃,十二指腸疾患についての拡大観察による新しい診断概念は,一定のコンセンサスを得られていないのが現状である.食道に関して1986年当時,筆者は “現時点における食道拡大内視鏡所見のポイントは拡大像から得られる毛細血管の透見像およびルゴール撒布後にみられる変色形態の差からくる拡大粘膜像である.血管透見像については扁平上皮癌の表層部では組織分化度とは関連なく,ほぼ一様に正常毛細血管透見像は消失し,境界不明瞭な発赤としてみられ,そのほか小凹凸,線状白色部の混在として観察される.粘膜下の癌浸潤も粘膜固有層に達していると拡大像では不規則な毛細血管像として表現される.また潰瘍周辺の拡大像で得られる血管透見像も各治癒過程で異なっており,今後はこの方面の検討も,現在の色素撒布併用,通常観察による検討のみでなく必要と思われる” と記している.ファイバースコープによる30倍拡大観察の時代であった1).本号では上部消化管粘膜に限り “拡大内視鏡と色素法” の時代から20年を越えて,どの程度に画像表現の進歩向上がみられたのか,いかに病理組織診断に近づける時代に来ているのかが明らかにされるであろう.

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 上部消化管腫瘍12例(食道扁平上皮癌1例,Barrett 食道腺癌1例,早期胃癌10例)を対象に,85万画素のズーム式拡大内視鏡を用いて,EMR前の内視鏡所見と切除組織の拡大内視鏡および実体顕微鏡,さらにそれらに対応する部位の病理組織所見を対比した.粘膜表面構造が最も詳細に観察できたのは実体顕微鏡であるが,毛細血管の走行は不明瞭であった.拡大内視鏡では粘膜表面構造だけでなく,毛細血管の走行も観察でき,それらの所見は病理組織所見とよく一致していた.上部消化管の拡大内視鏡検査では,粘膜表面構造だけでなく毛細血管の走行にも注意深い観察が必要であると考えられた.

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 拡大内視鏡は1960年代から行われ,逆流性食道炎や食道表在癌の診断に貢献することが明らかにされた.しかし,拡大専用機では通常観察ができず,これが一般化するには可変焦点式(ズーム式)電子スコープの登場を待たねばならなかった.近年各社から開発された拡大内視鏡は通常観察から拡大観察までを施行でき,急速に普及しつつある.本稿では拡大内視鏡による食道粘膜観察の意義に関して解説する.

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 重層扁平上皮に覆われる食道では,いわゆる腺上皮の pit pattern にあたるものが存在せず,重層扁平上皮を透見して観察される表在の微細血管網の変化を読むことが重要であることが判明してきた.市販されている80倍の拡大内視鏡を用いれば,生体内の正常食道粘膜で上皮乳頭内血管ループ(IPCL ; intra-epithelial papillary capillary loop)が観察される.さらに,その IPCL が癌では特徴的変化を示していく.すなわち IPCL の拡張・蛇行・口径不同・形状不均一の4因子が揃う.また癌の壁深達度は IPCL の破壊の程度に相関する.特に粘膜下層癌では IPCL がほぼ完全に破壊され,異常血管が出現することが多い.異常血管には2種類あり,不規則な IPCL は Vi(irregular vessel)として同定され,m3,sm1に特徴的な所見である.また sm2など深部浸潤においては,比較的大きな異常血管 Vn(new abnormal tumor vessel)が出現する.この異常血管(Vn)は sm 癌に非常に特異的な所見である.また,超拡大観察として,生体内で生きた細胞を直接観察することを試みた.マイクロマシーン技術を応用したレーザー共焦点顕微鏡のプローブ(EndoMicroscopy system(R),prototype,Olympus)を使用することで,無固定無染色のままで,500 倍まで拡大観察し,生体内で生きた細胞の観察をすることに成功した.その際に癌細胞を正常細胞の画像と比較すると “輝度の逆転現象”(Swiss cheese sign,Doughnut sign)が起こり,癌に特徴的な所見であることが判明してきた.このように食道扁平上皮における拡大内視鏡,超拡大内視鏡ではそれぞれ特徴的内視鏡所見が新知見として得られている.

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 食道粘膜では粘膜固有層が突起状に粘膜層内に食い込んでおり,この内に乳頭血管が這い上がり,捻れるように下降してくる.拡大電子スコープでは H1 stage および H2 stage の初期には再生粘膜に大きい点状,桿状ないし斑状の乳頭血管が認められるが,H2 stage の後期およびS1 stage の初期には乳頭血管像はより小さくなり,辺縁では縦列するように配列することが多い.S2 stage では乳頭血管は更に小さくなり,辺縁では柵状に配列する傾向が強い.食道癌などの食道疾患と同様に逆流性食道炎でも乳頭血管を観察することが大切である.現在このような微細構造は通常の電子スコープにても十分観察可能である.

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 拡大内視鏡により Barrett 粘膜の pit pattern は5型に分類可能であり,pit-4(管状型)ならびに pit-5(絨毛型)は pit-1(点状),pit-2(直線状)に比べ,メチレンブルー染色陽性率が高く,免疫組織学的にも腸型ムチンを高頻度に認め,一方 pit-1,pit-2は胃型ムチンを優位に発現し,pit-3(長楕円状)は両者の中間的パターンであり,ムチン形質発現と pit pattern には関連性が認められた.さらにpit-4の Ki-labeling index は pit-1,pit-2と比較して有意に高値であった.Barrett 粘膜の pit pattern 分類はメチレンブルー吸収能,ムチン発現,細胞増殖能といった Barrett 粘膜の生物学的な機能を反映していた.狭帯域フィルターを用いる NBI 内視鏡は Barrett 粘膜の pit pattern をより明瞭に描出可能であった.

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 Barrett 食道を発生母地とする食道腺癌の増加が大きな問題とされ,内視鏡検査や生検によるサーベイランス法が提唱されている.今回,拡大内視鏡を用いた検査による早期 Barrett 食道癌発見の可能性について述べた.拡大観察が可能なスコープを使用し,まず通常観察を詳細に行い,目的に応じた色素撒布を施行して色素内視鏡検査を行う.異常所見を認めた際には,その部位に目標を絞っての拡大観察を行い小窩模様の評価を行い,最終診断に関しては同部よりの生検に委ねるのが妥当であると考えている.いまだ,早期 Barrett 食道癌の拡大観察例は少ない.今後,症例の蓄積により病理組織所見を反映する拡大内視鏡所見の分類が必要である.

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 H. pylori 非感染胃の体部には集合細静脈が点状に規則的に配列する像を内視鏡観察で認める.その所見は regular arrangement of collecting venules(RAC)と報告されている.その拡大像はヒトデ状の集合細静脈,ネットワークを形成する真性毛細血管,ピンホール状の腺開口部から形成される.一方,H. pylori 胃炎の拡大像では集合細静脈は観察されず白濁し開大した腺開口部やその周囲の発赤隆起した粘膜が観察される.除菌後はピンホール状の腺開口部に改善し,腺開口部周囲の発赤も消失し平坦化していた.組織像との対比により変性した上皮と異常な腺開口部が除菌により正常に復していることが確認され,この変化が拡大像に反映していることが判明した.

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 胃潰瘍辺縁の再生粘膜模様について述べた.潰瘍が活動期(A2 stage)になると,周辺粘膜から潰瘍底に向かい1層の再生上皮である “無構造な平坦部” が観察された.この再生粘膜には,微小な再生血管が観察できた.さらに,再生が進行すると柵状,紡錘状,結節状の粘膜へと移行していた.易治性の潰瘍では,治癒期に柵状や紡錘状の粘膜が潰瘍周辺に広い範囲でみられた.一方,難治性の潰瘍ではこれらの割合が少なく,結節状の粘膜が多かった.また,瘢痕期に再生粘膜をみるものは易再発性であった.H. pylori 除菌成功例では,再生粘膜模様は消失していた.胃潰瘍の拡大観察は,潰瘍の難治性さらには再発の有無の判定には有用である.しかし,拡大観察を普及させるには新たな展開が必要である.

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 拡大内視鏡検査により胃粘膜表面の微細模様と微細血管が観察可能である.特に,粘膜微細血管の観察能においては,他の診断手段と比べて内視鏡検査に優位性がある.胃炎に伴う微細な変化を認識することで,より正確な発赤病変の良悪性診断ができるようになる.胃炎に伴う発赤の拡大内視鏡診断においては,不整を伴わない capillary network の拡張所見が大切である.発赤型の分化型胃癌の拡大内視鏡診断では,周囲粘膜との明瞭な境界を認めること,発赤部位に異常な微細血管を捉えることが重要である.拡大内視鏡による診断学は今後のさらなる発展が期待できる.

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 近年,胃癌の縮小治療法が進歩し,より厳密な分化型早期胃癌の境界診断法が求められている.一方,従来の診断学では癌の境界診断が困難な境界不明瞭な早期胃癌が増加していることが指摘されている,われわれは2000年よりルーチン検査で使用できる拡大内視鏡を用い,早期胃癌の微小血管構築像の特徴像を報告してきた.特に分化型癌の微小血管構築像は特徴的であった.それらは,(1)regular subepithelial capillary network pattern の消失,(2)demarcation line の存在,(3)irregular microvascular pattern の存在の3所見であった.これらの所見を用い,拡大観察で癌の境界部を同定し,従来の指標では範囲診断が困難な例を含め分化型癌の浸潤範囲診断に応用している.癌の微小血管構築の拡大観察が境界診断に有用であった分化型粘膜内胃癌の2症例を呈示し,文献的考察を加えた.近年増加した境界不明瞭な癌の特徴は分化型癌で,陥凹や小区像などの所見に乏しく,従来の診断体系では境界診断が困難な例が多く,本論文で示したような微小血管構築を指標とした拡大内視鏡は,癌の境界診断に有用な新しい診断法であると考えられた.

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 陥凹型早期胃癌に対して狭帯域フィルター内視鏡(narrow band imaging ; NBI)システムを併用した拡大電子内視鏡観察による胃癌組織型診断の可能性について検討した.対象は2001年7月~2003年5 月に拡大電子内視鏡 GIF-Q240Z(オリンパス)を使用し,通常観察,NBI 併用拡大観察を行った陥凹型早期胃癌141例である.粘膜微細構造の変化に加え,毛細血管像に着目して組織型と毛細血管像を検討すると,分化型癌の94例中61例(64.9%)に比較的規則的配列を示す細かな網目状の毛細血管模様が認められた(fine network pattern).一方,未分化型癌の47例中41例(87.2%)では不規則な縮緬状の毛細血管模様が認められた(irregular corkscrew pattern).分化型癌と未分化型癌の混在例では,両者の特徴を示す血管網が増生している像が認められた.NBI 併用拡大観察により,各組織型における特徴的な毛細血管パターンが客観的に認識できることが明らかとなった.それらの特徴像を理解しておくことにより,微小病変の良悪性判定や浸潤範囲の困難な症例の正確な同定に有用となることが示唆された.

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 十二指腸における各種の隆起性病変(直径1cm以上)41例を対象に,拡大内視鏡検査を施行した.それらの病変を診断する際の観察ポイントと拡大内視鏡の診断学的意義は,以下のようにまとめることができた.① 拡大内視鏡では絨毛の外形とサイズ(正常絨毛との比較)を把握することが最も重要である.② 拡大内視鏡が最も有用な疾患は,Brunner 腺腫と胃上皮化生による隆起性病変である.③ 腺腫と早期癌の鑑別のための拡大内視鏡の有用性の有無については,現時点においては明らかでない.④ 腺腫の絨毛の白色化は,吸収上皮細胞内の脂肪粒の蓄積によるものと考えられるが,拡大内視鏡診断との関連性については今後の課題である.

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 〔患者〕 74 歳,男性.検診目的に施行された上部消化管内視鏡で,門歯列より35cm後壁に粘膜下腫瘍様の隆起性病変(0-Isep)を指摘され,2002年7月1日に当院へ紹介受診となる.食道原発小細胞型未分化癌と診断し,同月30日食道亜全摘術を施行された.

 〔腫瘍マーカー〕 NSE 9.5ng/ml(0~9.9),PRO-GRP 52.0pg/ml(0~45.9),SCC1.3ng/ml(0~1.49),CYFRA2.6ng/ml(0~3.49),CEA1.8ng/ml(0~5).

 〔食道X線所見〕 胸部中部食道後壁に bridging fold を伴う,長径3cm の立ち上がり急峻な隆起性病変を認めた.隆起の頂部は不整な淡いバリウム斑を伴っていた.第1斜位像では弧状隆起がみられた(Fig.1a, b).

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 〔患者〕 67 歳,女性.2002年2月より下痢,右下腹部痛を認めた.2002年3月近医にて超音波,CT 検査で上行結腸に腫瘍を認め,注腸検査で腸重積となっていたため2002年3月12日当院紹介入院となった.入院時には腸重積は整復されていた.

 〔超音波所見〕 上行結腸に約4cmの高エコー腫瘍を認めた.

 〔CT 所見〕 上行結腸に約5cmの内部低輝度の腫瘍を認めた(Fig.1).

 〔注腸所見〕 上行結腸に約5cmの類円形の腫瘍を認め,腫瘍の表面は比較的平滑で頂部にわずかにびらんを認めた.腫瘍の立ち上がりは滑らかで一部 bridging fold を認めた(Fig.2a, b).また憩室を認めた.

早期胃癌研究会

2003年7月の例会から 平田 一郎 , 浜田 勉
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 2003年7月の早期胃癌研究会は7月25日(金)に新高輪プリンスホテル国際館「パミール」3階「北辰」で開催された.司会は平田一郎(大阪医科大学第2内科)と浜田勉(社会保険中央総合病院消化器内科)が担当した.mini lecture は「Narrow Band Imaging による早期消化管癌の診断」と題して田尻久雄(東京慈恵会医科大学内視鏡科)が行った.

 〔第1例〕 82歳,男性.粘膜下腫瘍様形態を呈した上行結腸の進行大腸癌(症例提供 : わたり病院消化器科 奥村浩二).

 注腸X線,内視鏡所見の読影を清水(大坂鉄道病院消化器内科)が担当した.注腸X線所見では,回盲弁から肛側の上行結腸に5~6cmの陰影欠損を指摘した.病変は平滑で非常になだらかな隆起を形成するため,病変の主座は漿膜に近い深部であるとした.隆起は限局性で平滑な輪郭を呈するため炎症よりも腫瘍を疑う所見であるとした.非上皮性腫瘍を否定できないが,病変が漿膜付近の深いところにあるため,重複腸管に合併する癌が考えられるとした.斉藤(旭川医科大学第3内科)は,隆起の口側の粘膜表面は不整であるとし,炎症が考えられるとした.回腸終末部が描出されておらず,同部に上行結腸に影響を及ぼす穿通性の潰瘍が形成されていると推測した.炎症の原因として膠原病や腸結核が考えられるとした.内視鏡所見では,清水は回盲弁は著変なく,その口側に潰瘍形成を伴うなだらかな隆起を認めるとした(Fig.1).病変は硬い感じがあり腫瘍であると診断した.潰瘍辺縁は発赤するも明らかな腫瘍の露呈は指摘できない.潰瘍は隆起の口側に偏在し非上皮性腫瘍にしては非典型的であるが,上皮性としても非典型的であるためどちらか結論づけることはできないと述べた.多田(多田消化器クリニック)は注腸で虫垂が写っていないことより虫垂炎の波及も考えられるとした.牛尾(九州がんセンター)は注腸,内視鏡所見を合わせて腫瘍と考える,また,壁外性に発育する腫瘍で病変の一部に粘膜集中像を認めることより,desmoplastic reaction は強く病変は癌であるとした.また,粘膜下腫瘍の形態を示すことより,未分化癌か内分泌細胞癌が考えられるとした.

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 2003年9月の早期胃癌研究会は9月17日(水)に一ツ橋ホールで開催された.司会は今村哲理(札幌厚生病院胃腸科)と山野泰穂(秋田赤十字病院消化器病センター)が担当した.また,第9 回白壁賞・第28回村上記念「胃と腸」賞の授賞式が行われた.

 〔第1例〕 40歳,女性.異所性胃粘膜を背景にした巨大な早期胃癌(症例提供 : 愛知医科大学消化器内科 等々力勇三).

 X線・内視鏡の読影は中島(早期胃癌検診協会)が担当した.X線では,胃体上部から噴門部小彎~前壁の大きさ5cm以上の大きな腫瘤で表面結節状変化から成る上皮性腫瘍で,大きな潰瘍形成がみられることから進行型胃癌と読んだ.田中(広島大学光学医療診療部)は大きさの割に伸展良好で癌であれば粘液癌で,粘膜下腫瘍も鑑別診断に挙げたいと発言した.中島は内視鏡(Fig.1)では,腫瘤の立ち上がりは正常粘膜がみられるが,腫瘤本体には顆粒~結節がみられ通常型の腺癌と読んだ.田中は表面構造から tubulo-villous な癌で,壁伸展の良好なことから深部で粘液形成のみられる進行癌を考えると発言した.平田(大阪医科大学第 2 内科)は,粘膜下腫瘍様の隆起辺縁にくびれがあることから,深達度の浅い heterotopic gland の癌化も考慮すべきと述べた.細川(福井県立病院外科)は,GIST(gastrointestinal stromal tumor)等が急激に増大した場合にも腫瘍と非腫瘍の境界に似た所見を呈すると発言した.

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 56歳,女性.スクリーニングを目的とした大腸内視鏡検査にて横行結腸に粘膜下腫瘍様の小隆起性病変を指摘された.生検組織の病理診断では印環細胞癌であった.外科的摘出標本の病理組織学的検討においては多彩な組織像を認めた.長径が1.5cm の小病変であったが印環細胞癌,粘液癌,低分化から高分化の腺癌および内分泌細胞癌類似の組織所見を混在する病変であった.組織の移行像ならびに同じ粘液形質を有することから粘膜内の低異型度分化型腺癌から種々の形態変化を来した症例と考えられた.

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欧文目次

編集後記 八尾 隆史
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 切除材料の実体顕微鏡像が内視鏡像と組織像の仲介役となり大腸の内視鏡診断が進歩してきたが,胃病変の実体顕微鏡観察は大腸ほど盛んには行われていなかった.その理由の 1 つとして,上部消化管では表面構造以上に微細な血管構築パターンが重要であるが,これは切除材料では観察できないので,実体顕微鏡像のみでは内視鏡像との仲介役としては不十分であったためだと思われる.しかし,この数年で上部消化管の拡大観察の有用性の報告が相次ぎ,その基礎から応用と現状を把握しておく必要性が生じたため本号が企画された.

 上部消化管では拡大内視鏡の応用は多岐にわたっていることが本号で示された.すなわち,良悪性の鑑別診断を含む病変の性状診断・範囲診断に加え,潰瘍治癒過程における再生上皮の評価,Barrett 食道粘膜の性状診断(胃型・腸型の鑑別),胃での Helicobacter pylori 感染と粘膜変化の関係,十二指腸非腫瘍性病変の鑑別診断など,炎症から腫瘍まで広範囲に及んでいる.さらには,レーザー共焦点顕微鏡を用いた超拡大観察による生体内での細胞の観察も試みられている.このように,生検組織診断なしでも病変の診断がかなりできるようになり,このままでは病理医は失業しかねないと思わせるほどである.今後,さらに症例を蓄積し,表面の観察である拡大内視鏡像と断面の観察である病理組織像との対比による病変の構築の解析を臨床と病理で協力して行うことにより,臨床画像診断と病理診断の両者がさらに進歩していくと思われる.

基本情報

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胃と腸
38巻12号 (2003年11月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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