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最近の電子内視鏡拡大観察は組織診断に迫り,拡大形態像のみで生検不要論の時代になりつつある.この分野も本邦から世界に向けての発信である.歴史を紐解けば1982年,第24回日本消化器内視鏡学会(会長:岡部冶弥教授)でシンポジウム「拡大内視鏡と色素法」が取り上げられたのが嚆矢である.そして井田和徳・岡崎幸紀氏により1986年「内視鏡による消化管の拡大観察」が刊行された.その後長いブランクがあったが,現在,大腸疾患においては組織診断・癌深達度診断に迫る技法として多くの施設でルーチン検査として広く取り上げられている.しかし,食道,胃,十二指腸疾患についての拡大観察による新しい診断概念は,一定のコンセンサスを得られていないのが現状である.食道に関して1986年当時,筆者は“現時点における食道拡大内視鏡所見のポイントは拡大像から得られる毛細血管の透見像およびルゴール撒布後にみられる変色形態の差からくる拡大粘膜像である.血管透見像については扁平上皮癌の表層部では組織分化度とは関連なく,ほぼ一様に正常毛細血管透見像は消失し,境界不明瞭な発赤としてみられ,そのほか小凹凸,線状白色部の混在として観察される.粘膜下の癌浸潤も粘膜固有層に達していると拡大像では不規則な毛細血管像として表現される.また潰瘍周辺の拡大像で得られる血管透見像も各治癒過程で異なっており,今後はこの方面の検討も,現在の色素撒布併用,通常観察による検討のみでなく必要と思われる”と記している.ファイバースコープによる30倍拡大観察の時代であった1).本号では上部消化管粘膜に限り“拡大内視鏡と色素法”の時代から20年を越えて,どの程度に画像表現の進歩向上がみられたのか,いかに病理組織診断に近づける時代に来ているのかが明らかにされるであろう.
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