胃と腸 27巻10号 (1992年10月)

今月の主題 胃癌の深達度診断mとsmの鑑別―内視鏡的治療のために

序説

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 1962年に確立された早期胃癌肉眼分類に基づいて,胃癌の診断と治療が飛躍的な進歩を遂げてきたことには異論はないであろう.この分類にも幾つかの問題点は残っているが,臨床診断に携わる者にとっては,m癌,sm癌の鑑別診断は,一見容易に見えて,しばしば苦い思いをさせられる問題である.治療に当たる外科サイドとしても,mとsmでは対応が異なるが,鑑別困難例はsm寄りに判断し,慎重に対処されてきたので,診断側にはそれほど厳しく問い詰められることもなかった.

 一方,ポリペクトミーに始まった早期胃癌の内視鏡的治療は,局注法,レーザー療法を経て,粘膜切除法の完成と共に一気に開花した感がある.いまや胃癌の治療法の一大トピックスである.

 ところが,早期胃癌の内視鏡的治療の適応は,極めて限られた範囲の病巣に対してのみである.特に根治を目指したものには一層厳しい条件が伴う.

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要旨 外科的に切除された最大径2cmまでの早期胃癌436病巣(m癌333病巣,sm癌103病巣)について新鮮切除標本の肉眼像からみた深達度診断を検討した.sm浸潤の程度を,顕微鏡的浸潤(sm1)と肉眼的浸潤に大別し,肉眼的浸潤を中等度浸潤(sm2)と大量浸潤(sm3)に分けた.病巣は隆起型,陥凹型,平坦型,およびそれらの複合型に分け,それぞれについて検討を加えた.隆起型では,sm浸潤が進むにしたがって表面の構造に乱れがみられ,sm3では隆起全体が特徴的な平皿状を呈した.陥凹型では,細顆粒の出現や陥凹面の凹凸不整,なだらかな盛り上がりなどがsm2~sm3によくみられた.潰瘍の合併した病巣で線維化の強い場合には,従来いわれている粘膜ひだの所見のみからでは深達度の推測は難しかった.しかし陥凹面の詳細な観察が困難な低分化型癌では,粘膜ひだの所見も合わせて総合的に判断することが必要であると思われた.また1cm以上の陥凹性病巣では集中する粘膜ひだの中心から離れてみられる表面の細顆粒状の変化が,sm浸潤を表現している可能性が考えられた.2cm以下のsm癌のリンパ節転移は8例18%にみられ,sm2が6例,sm3が2例でⅡc型7例,Ⅱa+Ⅱc型1例であった.

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要旨 内視鏡的治療の対象となる早期胃癌,すなわち2cm以下で粘膜ひだ集中のない分化型のⅡcのX線的深達度診断について,症例を挙げ,そのX線所見を中心に検討した.症例は男性46例,女性15例,の計61例で,平均年齢は58.8歳,粘膜内癌(m癌)48例,粘膜下層まで浸潤した癌(sm癌)13例であった.陥凹と陥凹の辺縁隆起に注目し,X線所見を6群に分けて検討した.浅い不整形陥凹で陥凹底が細顆粒状の陥凹ではm癌が多く,不整形で陥凹底が平滑なものでは5例中2例はsm癌であった.深いはっきりした陥凹を示した例は14例あったが,そのうち11例はm癌であった.陥凹の辺縁隆起が花弁状のものは分化型癌の特徴的な1群で深達度はm癌であった.その他の辺縁隆起には顆粒状,結節状のものがあり,これらの所見を示した21例中7例がsm癌であった.これらの辺縁隆起は種々の構成成分からなり,必ずしもsm浸潤を示す所見とは言えなかった.深達度診断は病変の占拠部位,大きさ,潰瘍の合併の有無,組織型などを加味して行われる.この症例を絞る過程でもX線診断は大きな役割を果たしている.

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要旨 隆起型早期胃癌では,大きさは深達度診断の重要な要素で,2cm以下のⅡa型ではsm癌を認めず,Ⅰ型,Ⅱa型ともに2cmを越えるとsm癌の頻度が増すが,表層拡大型だけは大きさと深達度との間に関連を認めなかった.そのほか,sm浸潤を示唆する所見として,楔形の鋭い陥凹,著明な発赤,粗大な結節状隆起が見られた.陥凹型早期胃癌では,大きさと深達度との間にある程度の関連はあるものの,1cm以下のものにもsm癌を認め,これが陥凹型での深達度診断を難しくしている一因と考えられた.また,sm癌をm癌と誤診したものの多くは,sm浸潤がごく一部に限局していたもので,このような症例では,見直しによってもsm癌と診断するのは困難と考えられた.一方,m癌をsm癌と誤診したものでは,Ⅲ型の関与を多く認めた.Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌では,隆起部分の粘膜性状を正確に診断することが,深達度診断にとって重要と考えられた.

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要旨 早期胃癌の内視鏡治療を目的に,その適応条件の1要素である深達度診断について超音波内視鏡の診断能を検討した.術前にEUSを施行し切除標本との対比が可能であった胃癌500例について高エコー層の変化を基準に,m癌,sm癌,pm癌,ss以深の癌に分類すると正診率は78.6%であった.内視鏡治療の対象となるm癌174例の正診率は77.0%で,内視鏡形態別には潰瘍性変化を伴うⅡc癌,Borrmann 1型胃癌で低い正診率を示した.部位,組織型,間質,増殖形態別の正診率に大きな差を認めなかった.Ⅱc型sm癌をその浸潤の程度からsm 1,2,3に分類し,内視鏡治療の適応となりうるm+sm

癌の正診率を検討すると86.5%となった.m癌のリンパ節転移率は今回の検討症例では2例(1.1%)で,潰瘍性変化を伴う低分化腺癌例であったが,EUSによる指摘はできなかった.EUSによる内視鏡治療の術前深達度診断は治療の適応を確認すると共に,内視鏡形態,組織型と合わせリンパ節転移の頻度を推定する手段として評価できるものであった.

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要旨 1986年から1990年までに当院で切除された長径2cm以下の単発性早期胃癌276例のうち,術前カンファレンスにおける最終診断の内容,および術後の病理記録が残されていた250例を対象として術前深達度診断の精度を検討した.全対象例の正診率は73%(182/250)であったが,術前診断別にみると,mと診断した189例の正診率は81%であったのに対し,smと診断した54例の正診率は54%と有意に不良であった(p<0.01).また,粘膜下層を均等に3分割し,sm浸潤の先進部の深さをsm1からsm3までの3段階に亜分類すると,mと誤診した36例のsm浸潤の程度は,sm1 12例,sm216例,sm38例であり,浅いものよりむしろ中間程度から深部に及ぶもののほうが多数を占めた,肉眼型別に正診率を比較すると,Ⅲあるいはその複合型(陥凹型)で極めて不良であったが,隆起型(ⅠおよびⅡa),表面陥凹型(Ⅱc,Ⅱbおよびその複合型),表面複合型(Ⅱa+Ⅱc,Ⅱc+Ⅱa)では,術前にmと診断した場合の正診率は80~90%と比較的良好であった.また,当院にて内視鏡的切除を行った45例の術前診断をみると,mとした41例中3例(7%)に予想外のsm浸潤を認めた.術前mとした誤診例25例について見直し診断を試みたが,sm浸潤を疑えたものは7例(28%)にすぎず,また見直し診断成績とsm浸潤量には特定の関連性を指摘しえなかった.以上により,2cm以下の早期胃癌に対する深達度診断を完壁に行うことはまず不可能と結論せざるを得なかった.しかし,術前にmと診断した隆起型,表面陥凹型,表面複合型の3者については80~90%の正診率が得られており,更に,わずかではあるが見直し診断で正診率を上乗せしえたことを考え合わせれば,現状の診断成績は内視鏡治療の適応を考えるうえでは十分に信頼に足りうると評価できる.

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要旨 20MHz経内視鏡的超音波プローブ(Sonoprobe System)を用いて早期胃癌深達度の検討を行った.同プローブは,通常内視鏡検査時に鉗子孔を介して使用可能であり,内視鏡直視下に小胃癌病巣の確実な走査が可能であった.更に,胃粘膜筋板の描出が可能であり,腫瘍部と筋板の双方が描出された場合,早期胃癌深達度正診率の向上が得られた.

今月の症例

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 〔X線所見〕空気少量の背臥位二重造影(Fig.1)では胃体部後壁小彎寄りに大きめの顆粒状陰影が花弁状に集合した像がみられ,その中央にも1つの顆粒がある.その中央の顆粒の周囲と花弁状に集合した顆粒状陰影の間に不整な溝状陰影が認められる.空気を少し追加した二重造影像(Fig.2)では,病変部中央の顆粒と不整陥凹の周囲に柔らかい感じのする周辺隆起が認められる.より空気を追加した二重造影像(Fig.3)では,この病変は放射状に集まる不整な溝状陰影と,その周囲の花弁状の透亮像として現れた.体位変換を繰り返した後,病変部にバリウムを薄く乗せるようにして撮影した二重造影像(Fig.4)では,中央の顆粒と溝状陰影の周囲にバリウムをはじく花弁状隆起が描出された.立位圧迫像(Fig.5)では,中央の顆粒と溝状陰影が描写されたが,周辺の隆起ははっきり現れなかった.

 X線診断は不整な溝状陰影のみを所見としてとりⅡc型早期癌とするか,周辺の顆粒状陰影からなる低い隆起部分も入れてⅡc+Ⅱa型早期癌とするかで迷った.また,粘膜,あるいは粘膜ひだ集中を認め小規模な潰瘍瘢痕を持つ病変であり,中央の顆粒は再生上皮からなる顆粒と推測できる.

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 〔患者〕52歳,男性.近医で検診目的の大腸内視鏡検査を受け,下行結腸に異常を指摘され,精査目的で当科を紹介された.

海外だより

ドイツ留学体験記(2) 木村 理
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 ドイツ医師のTitel

 Professor:C2(ツェーツヴァイ),C3(ツェードライ),C4(ツェーフィア)と分かれており,DirectorはC4の教授である,つまり日本の“教授”に相当するのはC4の教授ということになる.C2とC3の教授の差はほとんどなく,C2の教授に比べC3の教授が圧倒的に多い.C3の教授は日本ではほぼ助教授,講師に相当すると考えられる.つまり,careerをめざす医師にとっては,C4の教授が最終目標となる.C4の教授はかならず他の大学の医師の中から選ばれる.つまりある大学に所属・勤務している医師が,その大学のC4の教授になることはできない.C3の教授はC4の教授が選ぶ.C4の教授の申請資格はHabilitierter Arzt[教授資格試験に通っている医師]であることである(cf. Habilitierter Arztで,C2,C3の教授ではない医師はPrivat Dozentと呼ばれる).

 内科,外科などでは,C4の教授選に30~50人が応募し,書類選考で6~9人程度に絞られる.選ばれた医師は,指定された日に講演,質疑応答を行う.この講演はその大学全体に対して公開されており,その大学の教授陣はもとより,医局員,学生あるいは検査技師たちなど,さまざまな人々が聴講できる.その後3人に絞られ,更に順位がつけられる.ドイツは地方分権が非常に発達しており,大学は国ではなく州に属するので,最終決定は州が行う.もちろん首席に選ばれた人が圧倒的に有利ではあるが,まれにその州の方針と合わない場合は次席の人が選ばれることがある(医学の分野にかかわらず何事においても州の力が非常に強い).例えば,肝移植が専門の外科医が首席に選ばれ,その州が肝移植は経費がかかるのでやって欲しくないと考えている場合などである.

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要旨 患者は,46歳の女性.便秘,下血を主訴に当科を受診.注腸X線検査で,直腸膨大部直上に立ち上がりのなだらかなほぼ全周性の狭窄像を認めた.大腸内視鏡検査では,中心に潰瘍を伴い粘膜ひだの集中した隆起性病変を認めた.また,その周辺もなだらかに隆起していた.生検では低分化腺癌と診断され,低位前方切除術を施行した.切除標本肉眼所見では,潰瘍を伴う隆起性病変であり,粘膜ひだが集中していた.病理組織学的検索で,血管肉腫(悪性血管内皮腫malignant hemangioendothelioma)と診断された.直腸原発の血管肉腫は極めてまれで,過去40年間の国内外文献検索によれば,本例が6例目であった.

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要旨 患者は64歳,男性.1979年4月,血便が出現し当科を受診.全大腸型の潰瘍性大腸炎と診断され,サラゾピリン・ステロイドを使用するも慢性持続型に経過した.1989年7月の定期検査にて潰瘍性大腸炎は寛解状態であったが,横行結腸近位部に22×20mmの広基性隆起,脾彎曲部に17×8mmの扁平隆起,直腸に20×12mmの顆粒状平坦隆起を認め,結腸全摘・直腸粘膜抜去術を施行した.病理組織学的には,すべて中等度異型の腺管腺腫であった.更に全割切片上,S状結腸には顕微鏡的に3mmの異型上皮巣を認めた.潰瘍性大腸炎に伴う腺腫(dysplasia)の診断上,興味深い症例と考えられた.

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要旨 患者は80歳,女性.下血にて来院.X線,内視鏡でS状結腸に単発した類円形の深い潰瘍を認めた.潰瘍は腸間膜付着側で,大きさは腸管の1/4周,境界は明瞭,周辺粘膜は異常なかった.その後,約6か月で治癒し,再発はなく,新たに他の部位に病変を生じることもなかった.発症が突然である以外,臨床像に特徴はなく,病理組織像にも特異的所見がないため,鑑別診断は困難であった.画像診断を,白壁の言う点・線・面だけでなく,腸管壁各層の深さをも入れた三次元的,更に時間(経過)因子を入れて四次元的に行い,本症例の診断は,辺縁動脈から分枝した直動脈の障害による極めて限局性の壊死穿孔型の虚血性腸炎の可能性が高いと推察した.

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要旨 患者は57歳,女性.健診にて食道の異常陰影を指摘された.食道X線検査で胸部上部食道前壁に長径3cmの表面平滑な隆起性病変を認め,食道内視鏡検査では切歯より22cm部を中心に拇指頭大の腫瘤を認め,ヨード染色で一部不染域を認めた.同部の生検組織診断は食道扁平上皮癌であった.食道平滑筋腫上に併存した早期食道癌と診断し,胸部食道全摘術,胸骨後食道胃管吻合術を施行.切除標本では,連続する2個の平滑筋腫を認め,その表面に0-Ⅱb型,深達度epの早期食道癌が認められた.

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要旨 患者は42歳,女性.胃集団検診で胃角対側大彎の異常陰影を指摘され来院.血液検査にて血中ガストリンが730pg/mlと高値を示し,胃内視鏡にて同部位にⅡc様の数条のひだの集中を伴った潰瘍性病変を認めた.粘膜生検にて胃カルチノイドの診断を得て胃亜全摘術施行.摘出標本でもⅡc型早期胃癌との鑑別は肉眼的には困難であった.摘出標本の組織学的検索では典型的カルチノイドの所見を得,またGrimelius染色も陽性であった.術後経過は順調で血中ガストリンも正常に復し退院した.

用語の使い方・使われ方

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 巨大ひだとは,粘膜または粘膜下の要因により,幅広く屈曲蛇行した大脳回転様の外観を呈するひだのことを言う.このひだは,病的な用語として使用されることが多く,幽門部では悪性病変が多いと言われている.

 巨大ひだは,X線的には1cm以上の幅を持つ,内視鏡的には胃内圧を15mmHg,送気量1,700ml以上によっても皺襞が全く伸展しないものと言われているが,一般的には十分な空気量にても伸展しない皺襞と考えてよい.

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 十二指腸内視鏡検査を行う際に,十二指腸の下行脚以下に(ときに上部空腸にまで及ぶ)粘膜表面のびまん性の小さな均一な小白点(白斑)が見られることがある.

 この白点は近接で観察すると十二指腸粘膜の絨毛に一致しており,特に絨毛の頂上部の白色が強い.この所見に対して内視鏡学会用語集では十二指腸白点または白斑との名称が付けられている.

学会印象記

白壁先生のPendergrass Lecture 丸山 雅一
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 正式にはEugene P.Pendergrass Lectureというこの講演は,Pennsylvania大学医学部の放射線科が,毎年度末の区切りとして,放射線に関係する著名人を国の内外から招待して行うもので,今回は17回目にあたる.したがって,このLectureは1976年にその第1回が行われた.

 われわれに馴染みがある,と言っても,放射線科以外の人達以外には全く名前も聞いたことがないかもしれないが,例えば,これまでのlecturerのなかには,1978年度はManuel Viamonte,Jr,1979年度はHerbert L Abrams,すこし最近になっては,1986年度のAlexander R Margulis,1987年度のAnders Lunderquist,1989年度のEric Boijsenなどの名がある.

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 米国外科医内視鏡学会(The Society of American Gastrointestinal Endoscopic Surgeons,SAGES)は,毎年1回4月に行われる,米国外科学会認定の外科医による独立した学会である.またこのSAGESが母体となり世界学会が組織されており,米国はもとより日本,ヨーロッパ,アジアの各外科医内視鏡学会が対等の立場でその傘下団体に加入している.この国際委員会では,現在,オーストリア,カナダ,アフリカなどの加入を慎重に検討中である.世界学会は,SAGESと合同で隔年に米国で行われるが,その間の隔年にはSAGESとは離れて米国以外の国で行われることになっている.本年(1992)の第3回世界大会は,フランス・ボルドーで行われたが,第4回は東京大学第2外科,出月康夫教授を会長として,京都において1994年6月17~19日に行われることに決定している.この事実をみても日本の外科医内視鏡学会が,この世界学会のFounding Memberとして,いかに大きな発言権をもっているかをご理解いただけるものと思う.

 さて,1992年度の米国外科医内視鏡学会は,4月10日から12日までの3日間,米国ワシントンDCのRamada Renaissance Techworldにおいて行われた.桜も満開なU. S. キャピタルやワシントン記念塔(写真)にほど近い会場はホテルを併有する古い会議場で,決して完備したものと言えるものではなかったが,出席人数は,約1,500人,最近の腹腔鏡下外科手術のブームもあって会場は熱気に満ちていた.

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要旨 老年者の剖検胃を用いて腸上皮化生の分類を試み,更にその頻度より進展形式を推察した.用いた材料は1,078例,男545例,女533例,平均年齢79.76±8.36歳である.小彎全面に腸上皮化生が見られるO型47.8%,幽門側に見られるA型14.8%,幽門・噴門両側に見られるB型14.3%,噴門側のみのC型2.5%,その他8.0%,腸上皮化生の全くないN型12.7%であった.各型を腸上皮化生の範囲により更に細分し,その頻度を推定した進展図式に記人した.その結果,腸上皮化生はA型,O型,F型(中間帯型)で始まるが,A型に始まりB型を経てO型になる形式が多いと考えられた.

早期胃癌研究会

1992年7月の例会から 神津 照雄 , 長廻 紘
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 7月度の例会は7月16日,梅雨明け前の蒸し暑いなか,多くの参加者を迎え,神津(千葉大学第2外科)と長廻(東京女子医科大学消化器病センター内視鏡科)が司会した.

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欧文目次

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 Non-steroidal anti-inflammatory drugs as a possible cause of collagenous colitis: a casecontrol study: Riddell RH, Tanaka M, Mazzoleni G (Gut 33: 683-686, 1992)

 collagenous colitisは中年から高年の特に女性に高頻度にみられるまれな大腸疾患で,臨床的には水様性下痢,病理的には粘膜固有層における慢性炎症を伴うコラーゲン線維の肥厚が特徴的である.それはcoeliac disease,sprueといった胃腸疾患だけでなく,RA,scleroderma,痛風,甲状腺疾患のような全身性疾患に随伴して発症するとされており,その病因に関しては,これまでに非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)との関連性について多くの報告がなされている.そこで本研究で著者らは,NSAIDS投与との病因論的な因果関係を明らかにすることを目的とし,collagenous colitisに罹患した31例を対象として以下の検討を行った.なお,collagenous colitisの診断は,原因不明の慢性下痢を呈し,内視鏡下生検組織で上皮下コラーゲン帯の平均厚が10μmを越えるものとした.

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 これぞ内視鏡的逆行性膵管造影(ERP),という書である.内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP)が開発されて20年以上経過したが,これほど読影可能な鮮明なERP像として膵管の微細な変化を描出してある,芸術品とも言える写真を数多く収載した書を,未だかつて見たことがない.

 超音波検査,CT,MRI,血管造影などの画像診断が進歩した現状においても,膵の微小病変の診断には膵管造影は不可欠であり,これらの診断には分枝膵管を微細に描出しなければならない.分枝膵管をきれいに造影せんがために,不用意に圧をかけて造影を行うと,急性膵炎を併発する危険性があり,実際に重篤な合併症が散見されている.著者はERPの診断能向上,合併症防止の目的で「内視鏡下留置バルーンカテーテルによる膵管造影一背臥位圧迫撮影法」を開発しており,その詳細も第5項目「ERCPの実際」として詳しく述べられている.著者の方法では,合併症はほとんど見られず,ファイバースコープに邪魔されることなく,適度の圧迫や体位変換で,摘出標本造影に匹敵する鮮明な膵管像が臨床的に描出可能となった.

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 日本肝癌研究会は1965年以来,全国施設の協力のもとに,原発性肝癌症例の集積と追跡調査を行っている.

 殊に第4回調査報告(1968-1977年症例)以降,同一項目でコンピュータ解析を行い統計処理した症例は48,000例を超え,各回の報告はわが国の原発性肝癌の特徴と,診断・治療の生きた歴史を示すものとして興味深い.1960年代までは不治の病であった肝癌は,今や治りうる病気となってきたわけである.

編集後記 小池 盛雄
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 内視鏡的切除術が広く行われるようになってくると,その対象となるような小さな病巣のm癌,sm癌の鑑別診断が重要になってくる.胃の新鮮切除材料の肉眼観察による術中深達度診断に日常携わっているわれわれ病理医は,しばしば診断困難な症例に遭遇する.当然生検組織診断による癌の組織型を考慮に入れて観察するが,特に陥凹型の早期癌ではそのような症例が多く,潰瘍あるいは潰瘍瘢痕を伴う病変を含めると,sm癌と肉眼的に診断した症例の正診率はおよそ2/3程度であり,情ない思いをしている.切除標本の肉眼診断さえこのような状態であるから,X線診断,内視鏡診断にも相当の困難があるものと想像していた.各種の超音波内視鏡によってもその実態は大きく変わるところまでには至っていないようである.sm1の定義が多少異なっているが,その診断は今のところ不可能なようである.しかし2cm以下のsm1症例ではリンパ節転移はほとんどなく,内視鏡的切除術に堪えうる可能性がある.更に診断の確度を高める努力がこれからもなされることであろう.

基本情報

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胃と腸
27巻10号 (1992年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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