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編集後記
小池 盛雄
pp.1236
発行日 1992年10月25日
Published Date 1992/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110018
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内視鏡的切除術が広く行われるようになってくると,その対象となるような小さな病巣のm癌,sm癌の鑑別診断が重要になってくる.胃の新鮮切除材料の肉眼観察による術中深達度診断に日常携わっているわれわれ病理医は,しばしば診断困難な症例に遭遇する.当然生検組織診断による癌の組織型を考慮に入れて観察するが,特に陥凹型の早期癌ではそのような症例が多く,潰瘍あるいは潰瘍瘢痕を伴う病変を含めると,sm癌と肉眼的に診断した症例の正診率はおよそ2/3程度であり,情ない思いをしている.切除標本の肉眼診断さえこのような状態であるから,X線診断,内視鏡診断にも相当の困難があるものと想像していた.各種の超音波内視鏡によってもその実態は大きく変わるところまでには至っていないようである.sm1の定義が多少異なっているが,その診断は今のところ不可能なようである.しかし2cm以下のsm1症例ではリンパ節転移はほとんどなく,内視鏡的切除術に堪えうる可能性がある.更に診断の確度を高める努力がこれからもなされることであろう.
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