今月の症例
1.花弁状境界を示したⅡc+Ⅱa型早期胃癌の1例
中野 浩
1
Hiroshi Nakano
1
1藤田保健衛生大学消化器内科
pp.1122-1124
発行日 1992年10月25日
Published Date 1992/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109994
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〔X線所見〕空気少量の背臥位二重造影(Fig. 1)では胃体部後壁小彎寄りに大きめの顆粒状陰影が花弁状に集合した像がみられ,その中央にも1つの顆粒がある.その中央の顆粒の周囲と花弁状に集合した顆粒状陰影の間に不整な溝状陰影が認められる.空気を少し追加した二重造影像(Fig. 2)では,病変部中央の顆粒と不整陥凹の周囲に柔らかい感じのする周辺隆起が認められる.より空気を追加した二重造影像(Fig. 3)では,この病変は放射状に集まる不整な溝状陰影と,その周囲の花弁状の透亮像として現れた.体位変換を繰り返した後,病変部にバリウムを薄く乗せるようにして撮影した二重造影像(Fig. 4)では,中央の顆粒と溝状陰影の周囲にバリウムをはじく花弁状隆起が描出された.立位圧迫像(Fig. 5)では,中央の顆粒と溝状陰影が描写されたが,周辺の隆起ははっきり現れなかった.
X線診断は不整な溝状陰影のみを所見としてとりⅡc型早期癌とするか,周辺の顆粒状陰影からなる低い隆起部分も入れてⅡc+Ⅱa型早期癌とするかで迷った.また,粘膜,あるいは粘膜ひだ集中を認め小規模な潰瘍瘢痕を持つ病変であり,中央の顆粒は再生上皮からなる顆粒と推測できる.
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