胃と腸 22巻5号 (1987年5月)

今月の主題 胆囊癌の診断―発育進展を中心に

主題

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要旨 胆囊の脈管・神経の局所解剖について解説した.動脈については,下面に分布する浅枝と肝に付着した上面に分布する深枝とに分けて解析する必要性を,静脈では,上面の静脈が1本にまとまらずに数本が短いまま肝に侵入していることなどを強調した.神経では迷走神経が肝十二指腸間膜に到達する経路として,前迷走神経幹から小網緻密部を通過する路と後迷走神経幹から腹腔神経叢を経て肝動脈に沿う路の2系が存在することを指摘した.リンパ系については,われわれの剖出所見を示説し,胆囊のリンパ管が総胆管に沿って膵後面に下行するのみならず,井上のLgl. coeliacae retropancreaticaeを経て,左腎静脈の上下の高さで,大動静脈間リンパ節に入る経路が存在することを明らかにした.

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要旨 進行胆囊癌106病変を対象として胆囊壁内における癌の発育進展を検討した.粘膜面の高低からみた肉眼型は乳頭型12病変(11%),結節型34病変(32%),平坦(びまん浸潤)型24病変(23%),早期癌類似型36病変(33%)であった.106病変113浸潤病巣のうち,49病巣(43%)はびまん浸潤発育,33病巣(29%)は腫瘤浸潤発育,13病巣(12%)は腫瘤膨張発育を示し,残りの18病巣(16%)は漿膜下浸潤面積が0.5cm2以下の微小浸潤を示した.微小浸潤18病巣のうち5病巣(28%)はRokitansky-Aschoff洞(RAS)内癌からの漿膜下浸潤であった.各肉眼型の癌の大きさと深部発育様式や深部浸潤量との関係をみると,結節型癌は腫瘤形成発育を,平坦型癌はびまん浸潤発育を示し,共に粘膜内の癌の面積(m cm2)が15cm2以下であるとm≦ss(漿膜下の癌の面積)で,m>15cm2であるとm>ssであった。乳頭型癌でもm≒ss cm2とm>ss cm2の2群が存在していた.早期癌類似型癌では癌の大きさと深部発育様式や深部浸潤量との間に相関はみられなかった.進行胆囊癌の発育進展の特徴として,漿膜下層のRAS内粘膜癌が直接漿膜下へ間質浸潤して進行癌になりうること,ある局面で粘膜から深部へ“すだれ”状にびまん浸潤すること,分化型癌であるにもかかわらず漿膜下層でリンパ管や組織間隙を通って側方へびまん浸潤すること,更に,胃癌と同じように“深部浸潤型癌”と“表層拡大型癌”に大別されることなどが挙げられよう.

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要旨 過去8年間に当科および関連施設で経験した胆囊癌30例をもとに,胆囊癌診断の現況と問題点を指摘した.癌の深達度別,切除可能別に臨床症状の特徴を述べた.US,CT,胆道造影所見に基づいて,各々の型分類を行い進展度診断を行った.手術または剖検所見に基づいて最終診断がなされたがresectabilityと進展度診断との関連性について詳細に検討した.同時に将来の展望についても言及した.胆囊癌の早期診断のためには,2つのアプローチ,その1つはEUS,PTCCSなどの精密検査法の手技の確立と,ほかの1つは超音波集検体制の確立が必須であり,とりわけ後者の重要性を強調した.

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要旨 早期胆囊癌の診断がここ数年大きな論議を呼んでいるが,病理の立場からⅡb型の表面型早期癌が少なくないことが指摘されるようになり,早期胆囊癌の診断の難しさが痛感される.一方,胆囊癌の進展度診断は治療法の選択や予後を大きく規定することから大きな意義を有している.筆者らは胆囊癌の進展度診断をERCPとUSによる癌深達度,肝床浸潤,胆管浸潤の3点で診断能を検討した.ERCPやUSによる癌深達度診断は平坦型を含めた限局性隆起性病変ではpmまでにとどまることが多かったが,一部ssの癌も含まれた.また,ERCPで胆管像を十分に描出することにより,胆管浸潤は把握できたが,肝床への癌の進展はERCPでもUSでも読み取ることは難しかった.したがって胆囊癌の深達度および進展度診断に有用な新しい検査法が必要である.教室では超音波内視鏡を用いて進展度診断を検討しているが,本検査法では胆囊病変ならびに胆囊壁の層構造が詳細に描出できることから,癌深達度,胆管浸潤,肝床浸潤の診断に大変有用であった.

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要旨 63例の胆囊癌手術例の検討から,胆囊癌の進展様式のうち,診断,治療上問題となる点は,RASからの深部浸潤,ss癌での遠隔リンパ節転移,および表層拡大性の粘膜内進展,特に胆管への粘膜進展であることがわかった.これらを加味して,適切な進展度診断がなされ,治療へ反映される必要がある.われわれはUSにて進行癌と判断されれば,他の画像診断により,B,N,H因子などについて総合診断を行い,早期癌あるいは早期癌類似のUS像であれば,EUSにより壁深達度診断を,PTCCSにより組織診断を,PTCCSおよびPTDCCにより粘膜面での拡がり診断を行い,正確な進展度診断を目指している.これらの新しい診断法を用いた胆囊癌の進展度診断における診断体系について検討した.

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要旨 胆囊癌切除66例を対象として,胆囊癌の進展様式,切除術式,予後について検討した.癌進展度は壁深達度と密接に関連し,m,pmではリンパ節転移,肝内直接浸潤,胆管側浸潤のいずれも認めないが,ss以上の深達度ではその程度に応じて転移・浸潤が認められる.予後との関連でも,mでは3年生存率100%,5年生存率はpmで100%,ssで52.5%,seで42.9%,siでは3年生存率50%で5年生存はなく,深達度がpmを越えると予後は不良となる.癌の存在部位と進展様式をみると頸部では胆管側浸潤が,肝床部では肝内直接浸潤が多くみられ,癌の存在部位に応じた切除術式の選択が必要となる.リンパ節転移はいずれの部位でも高頻度に認められ,また,肝十二指腸間膜内の再発が比較的早期の症例でも認められることから胆管合併切除を伴う同部の徹底的郭清の重要性を強調した.

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要旨 〔症例1〕 50歳,女性.USで正常胆囊が確認された10か月後に胆囊体部腹腔側にUS上,径13mm,高さ5mmの癌隆起が認められ,その後8か月を経て径15mm,高さ9mmに増大し,更に1か月後の摘出切開標本では径16×13mm,高さ6mmの広基性の癌隆起と底部側への表層進展のあるStage Ⅰの胆囊癌が確認された.組織学的に乳頭状腺癌であった.〔症例2〕 61歳,男性.膵・胆管合流異常を伴う先天性胆道拡張症と同時に,胆囊底部中心の癌と体・頸部に波及する乳頭状の癌が認められ,その3か月後にも体部の内腔が埋まりつつも肝浸潤のないStage Ⅰにとどまっているとみなされ,更に14か月後には腹腔側癌深達度がssで肝浸潤だけが著明なStage Ⅳに進展していた.組織学的に低分化型腺管腺癌であった.

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要旨 職域の腹部超音波検診で,長径10.4mmの胆囊隆起性病変を認めた.約3か月後に経過観察を行ったところ,腫瘍の長径は16.3mmに増大し,更に手術時には17.2mmとなっていたが,早期癌にとどまった胆囊癌の1例を報告した.腹部超音波所見と病理組織学的所見より,腫瘍の発育速度を検討したところ,doubling time(DT)は59.9~143.9日であった.

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要旨 患者は33歳,男性.1980年12月,心窩部痛を主訴に当科受診,腹部超音波検査(US)にて胆囊ポリープと診断した.精査を勧めたが拒否したため,以後,外来にて経過観察を行った.1981年6月,1982年3月,USにて胆囊ポリープの増大を認めたが,再び精査を拒否.1982年10月,心窩部痛増強したため入院した.経皮経肝胆囊ドレナージ(PTCCD),経皮経肝胆囊内視鏡検査(PTCCS)を実施し,結節浸潤型の進行胆囊癌と診断,胆囊摘出,肝内側区域下部・前下区域合併切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検索では,深達度ssの結節浸潤型胆囊癌で,s0h0hinf0b0p0n0 Stage Ⅰであった.

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要旨 極めてまれな原発性胆囊管癌の症例を経験した.患者は34歳男性,右季肋部痛・発熱を主訴とし,経皮経肝的胆囊造影にて胆囊管の不整狭窄像を認めたため胆囊管癌の術前診断にて開腹し,胆囊摘出術,胆管合併切除術を施行した.摘出標本の病理組織学的検査にて胆囊管に限局した管状腺癌を認め原発性胆囊管癌と診断され,また,肝十二指腸間膜内の神経周囲侵襲が高度に認められた.治癒切除と判断したが,手術5年後に再発死亡した.本症例の概要を紹介すると共に,胆囊癌の進展様式としての胆管側浸潤に対する外科的治療の問題点について述べた.

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要旨 約1年間にわたり臨床経過を観察し,癌の進展度を確診できた胆囊癌の1例を報告した.また胆囊癌自験40例について,US,CT,直接胆道造影,血管造影の各種検査法の癌進展度診断能を検討した.各種画像診断の組み合わせによって胆囊癌の進展度を診断できるようになった.胆囊癌患者の延命を図るためには,進展度に応じた適切な治療法を選択すべきであり,治療前の癌進展範囲に関する正確な診断が求められる.

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要旨 超音波検査法(US)により胆囊内に隆起性病変が指摘され,術前検査を進めていく間に著明な形態変化を来し,手術により脱落した腫瘍組織と凝血塊がそのecho sourceと確認された胆囊pm癌の症例を経験したので報告した.症例は64歳の女性で,主訴は右季肋部痛である.近医を受診しUSにて胆囊隆起性病変を指摘され,精査のため当科に紹介入院となった.USによる経過観察を行ってみると,隆起の形態が著明に変化し胆囊壁から脱落せんとする画像が捉えられた.手術の結果,脱落した腫瘍組織と凝血塊が証明された.組織学的には筋層にわずかに浸潤した乳頭管状腺癌であった.自然脱落という胆囊癌の自然史を実証する貴重な症例と考え報告した.

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要旨 本症例は広範Ⅱbを伴った隆起型早期胆囊癌例である.患者は特に自覚症状はなかったが,肝機能異常の精査のために外来で腹部超音波検査を施行され,胆囊隆起性病変を指摘された.術前検査のうち,USとERCPでは胆囊癌が疑われたが,胆囊癌の確定診断までは困難であった.これに対し,CTでは造影によって病変部のCT値が上昇し,胆囊癌が強く疑われた.一方,EUSでは隆起性病変の内部エコーパターンから胆囊癌と診断され,病変基部と胆囊壁の層構造との関係からm癌と診断でき,組織所見とも一致した.しかし,本症例には広範なⅡb病変が認められ,このような平坦型早期胆囊癌はEUSを用いても診断困難であった.本症例に基づいて,胆囊癌の早期診断におけるEUSの有用性と限界について若干の考察を加え報告した.

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要旨 患者は71歳女性で食後の上腹部鈍痛にて来院.USにて胆囊体部に12mm大の丈の低い隆起性病変を認め,表面型の早期胆囊癌が疑われた.しかし,その後しばらく通院がなされず,6か月後のUSでは結節性隆起に増大,その1か月後の術前には18×11mm大となった.摘出胆囊の病理所見では,2か所に幅2cm弱の広基Ⅰ+Ⅱa型とⅡa型の深達度pmの早期癌が認められ,いずれも高分化型の管状腺癌で,脈管侵襲やリンパ節転移はみられなかった.USでは前者の病変を捉えており,本例は7か月の経過でⅡa型癌が広基Ⅰ型を主体とする癌に進展発育したことが,US画像上示唆された.

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要旨 患者は56歳女性で,右季肋部痛を主訴とし超音波検査にて胆囊内に径10mmの小隆起性病変を指摘され,経静脈的胆道造影でも胆囊頸部に小隆起性病変が指摘された.入院時検査では異常は認められず,直接胆道造影にて有茎性小隆起性病変で腺腫あるいは腺腫内癌を疑い胆囊摘出術を行った.切除標本肉眼所見ではポリープは太さ2mmの細い茎部と10×6mmの腫大した頭部とから形成されていた.病理組織学的には癌病変は有茎性隆起の頭部内の2×1mmのみに局在し,茎部や周囲粘膜に進展のない深達度mの腺腫内癌であった.細い茎の隆起型胆囊癌は大きさと関係なく深達度mの腺腫内癌のみであり,このことは本例においても確認された.

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要旨 肝内直接浸潤(Hinf)を伴った進行胆囊癌2例の切除例を報告した.Hinfの有無は2例とも血管造影で判定できた.その浸潤範囲は1例ではCTと超音波断層(US)で,他の1例はCTと経皮胆管造影(PTC)で判定したが,後者では肝内に囊腫様病変が多数併存していたため,Hinfの範囲に関するCTの読影に誤りを来した.前者は肝部分切除で,後者は右3区域切除を行うことにより根治的に切除しえた.

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要旨 症例は62歳の女性で画像診断で発見された胆囊体部内面の1.5cm前後の隆起性病変について,ERCP,CTの単独検査では胆囊内の隆起性早期癌を疑ったが,血管造影でsuperficial branchにencasementを認め漿膜に達する進行癌と,ほぼ診断されたが,血管造影とCTの同時併用によるAngio-CTではhigh density areaが隆起のみでなく,胆囊壁に及んで,隆起性進行癌であることを確診しえた.組織学的に一部漿膜に達する進行癌であった.胆囊癌に対してAngio-CTの同時併用により進展度を確診しえた症例を報告し,画像診断におけるERCP,CT,Angioの併用検査の有用性を強調したい.

今月の症例

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〔症例〕 69歳男性.高血圧にて近医に通院中黄疸を指摘され,精査のため当科に入院.入院時検査成績では高度の黄疸と胆道系諸酵素の上昇があり,更にアミラーゼの異常とCA19-9の高値も認められた.

早期胃癌研究会

1987年4月の例会から 丸山 雅一
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 4月の例会は15日に開かれ,胃3例,大腸3例が討論された.当番司会は高木(癌研外科).

病理学講座 消化器疾患の切除標本―取り扱い方から組織診断まで(5)

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 Ⅱ.撮影の実際

 本誌「胃と腸」に掲載される肉眼写真の中で,写真として良くない例に頻々みられることは,第1に照明用ライトの位置が高過ぎることである.病変の凹凸の程度によって光源の高さを変える必要がある.第2に左右の光源の強さにムラがあり過ぎ,陰の部分が黒くつぶれて見にくくなっていることである.立体感を出したいあまり陰を強調し過ぎた場合と,光源ランプを4灯使わず2灯にしている場合に発生しやすい現象である.照明器具の所で述べたように,光源ランプは4灯使用しないと照明をカバーしきれない場合が多く出てくる.第3に,露出は合っていてもライトと被写体の距離によって写真の像のさえ(鮮鋭度)が違ってくる.ライトは被写体にできるだけ近づけて照明したほうが写真に鮮鋭度が増す(Fig.8,9).

 以下病変の高低に応じて照明用ライトの位置をどのようにしたらよいかを述べてみたい.

初心者講座 大腸検査法・5

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 直腸・S状結腸の検査

 大腸のX線検査には,経口法と注腸法がある.経口法では機能的な疾患を診断するのによいが,器質的な疾患を診断するには,注腸法の中でも二重造影法が特に優れている.二重造影法については西沢・狩谷の著書があり,ほかにも多くの論文がある.今回は注腸二重造影法について述べる.

 まず,X線検査について述べる前に,直腸・S状結腸の解剖学的な位置関係を知ることが肝要である.直腸に第2Houston弁があり,この弁付近を中心として前後に屈曲がある.このため直腸上部・S状結腸下部にバリウムが溜まり,この部の二重造影像を撮ることが難しいことがある(Fig.1).

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欧文目次

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 Evaluation of possibilities for mass screening for colorectal cancer with hemoccult fecal blood test: Carlsson U, et al (Dis Coln Rectum 29: 553-557, 1986)

 スウェーデンは他国に比し大腸癌の多発国で,とりわけ南スウェーデンのMalmö市(人口約23万5千人)は大腸癌最多地域の1つである.そこで,便潜血テストでスクリーニングされた大腸癌の死亡率低下を証明するためのパイロット研究が,Malmö市の53歳,56歳,60歳の男性4,495人を対象としてなされた.食事制限下にヘモカルトⅡテスト3日法が郵送方式で行われた.テスト陽性者は,診察,硬性S状結腸鏡,大腸二重造影法で精査され,必要に応じて大腸ファイバー,上部消化管検査がなされた.ヘモカルトのスクリーニング受検者は2,422人(テスト回収率54%)で,テスト陽性者は270人(11%)であった.そのうち254人が精査を受け,1個の癌(Dukes A)と7個の粘膜内癌(carcinoma in situ)を含む89個の腺腫が56人に発見され,ヘモカルト陽性の場合の大腸腫瘍適中率は21%であった.

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 Risks of cancer of the colon and rectum in relation to serum cholesterol and beta-lipoprotein: Törnberg SA, et al (N Engl J Med 315: 1629-1633, 1986)

 癌発生と血清コレステロール(Chol)との間には負の相関があるとの報告が多い.著者らはこれらの報告では症例数が不十分で,また,観察期間が短いためsubclinica1に存在していた癌により血清Cholが低下していた可能性がある点を問題とし,多数例を対象とした長期follow-upによる国家的規模の調査成績を報告している.

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 Gastric enzymes as a screening test for gastric cancer: Finch PJ, Ryan FP, Rogers K, et al (Gut 28: 319-322, 1987)

 胃癌は英国で4番目に多い悪性腫瘍で,5年生存率は4.7%と極めて低い.しかし早期胃癌の5年生存率は70.4%と高い.したがって早期胃癌の発見,前癌病変と言われているsevere dysplasiaやtype 2B intestinal metaplasiaの診断は意味のあることである.著者らは内視鏡的に採取した胃液中のlactic dehydrogenaseとβ-glucuronidaseを測定し胃癌のスクリーニング検査としての有用性をprospectiveに検討した.ルーチンの上部内視鏡検査を施行した40歳以上の445人を対象とした.内視鏡を胃内に挿入し,まず貯溜していた胃液を吸引し捨てた.十二指腸に入る前に,十二指腸液の胃内への逆流を最小限にするために,あらかじめ体温まで温めておいたxylose 4g/1を含むsorensen buffer (67 mmol phosphate pH 7.5)100mlを幽門部に散布し,粘膜に付着していた粘液を洗浄した.噴門部に溜まった洗浄液を内視鏡を反転し吸引採取した.通常の内視鏡検査にわずかの時間が加わるだけである.lactic dehydrogenaseはIU/1の,β-glucuronidaseはIU/mlの3乗根をindexとした.両者ともindexが5.8以上を陽性とした.胃癌についてはsensitivity 91.3%,specificity 81.3%であった.早期胃癌4例とlinitis plastica 1例の全例で陽性を呈した.正常胃,食道,十二指腸疾患ではfalse positiveはまれであった.false positiveの95.9%は組織学的にatrophic gastritis with or without intestinal metaplasiaであった.また,5例のsevere dysplasiaのうち4例が陽性であった.以上より胃液中の1actic dehydrogenaseとβ-glucuronidaseの測定は胃癌(特に早期胃癌)のスクリーニング検査としてのみならず,胃癌のhigh riskグループのスクリーニングにも有用であり,また,false positiveグループは今後の内視鏡的follow-upが必要であると述べている.

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 確か往年の白黒映画の名作“ビルマの竪琴”が,同一監督によりキャストを一新して再製作され,前作以上の深い感動と賞賛を全土に巻き起こしたのはまだ記憶に新しい.かかることは映画演劇の世界では珍しいことではないが,この場合,関係者をして再製作へとかりたてたものは,旧作に対する根強い憧憬であったに違いない.

 同じことが自然科学専門書に発現してもなんら不思議ではない.ましてそれが卓越した名著であればなおさらのことである.

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 Smoking and colonic mucus in ulcerative colitis: Cope GF, Heatley RV, Keller J (Br Med J 293: 481, 1986)

 潰瘍性大腸炎の患者は非喫煙傾向が強い.そこで喫煙が潰瘍性大腸炎に対して防御的に働く可能性が示唆されてきた.また,潰瘍性大腸炎の場合の腸粘液は質的にも量的にも異常であると言われている.喫煙が及ぼす局所効果もさることながら,全身的効果により粘液の過分泌と変化を起こすことが知られている.そこで著者らは潰瘍性大腸炎の患者で腸粘液の産生と喫煙の関連について研究した.

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 5人の若手小児科医が,小児医療の現場で診療に直接役に立つprob1em-orientedな本を自らの体験に基づいて作った.

 小児医療の現場でよくみる問題(problems)59,全身的なもの14,腹部に関するもの7,呼吸に関するもの2,心臓に関するもの4,腎に関するもの3,血液に関するもの2,内分泌に関するもの9,神経に関するもの6,新生児に関するもの12,を取り上げ,診断に必要な基礎知識(essential),診断の考え方,やり方(approach),診察,検査そして診断に当たっての注意点(points),治療に必要な基本的知識(essential)と日本語化した英語で整理している.また,診断の手順のフローチャートまで示されている.更に小児保健に関する2項目を加えている.

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 本書はイギリスで出版された「Complication of Surgery in Genera1」の翻訳で,ショックや術後合併症の権威である防衛大学校外科の玉熊正悦教授が監訳されている.約200頁の手頃な本である.

 言うまでもなく外科医にとって術後合併症ほど心の痛むものはない.長時間かけた手術が水泡に帰すばかりでなく,ときには手術が患者の死を早める結果を招くことさえ起こりうる.したがって外科医を志す者は手術を習得すると共に術後合併症についても十分学んでおかなければならない.すなわち,術後に発生しうる合併症についての症状,診断,予防,治療など外科研修医が知っておきたいことや経験しておきたいことは多いのである.

編集後記 渡辺 英伸
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 胆囊癌は本誌の主題として今までに4回取り上げられている.初回は1982年(17巻6号)で,次いで1983年(18巻10号),1986年(21巻5号)そして本号である.初期には早期胆囊癌の定義,肉眼的・組織学的特徴,診断法についての問題提起が主であった.すなわち,この時期では各施設で詳細・精密に分析された自験例が不十分であったために,これらの課題を解明するには時期尚早であった.1986年(21巻5号)になって初めて,早期胆囊癌に関するこれら課題の多くが解決され,診断法も病変の存在(拾い上げ)診断から質的診断へと志向するようになってきた.しかし,逆に新たな問題―早期胆囊癌の70%を占める表面型癌の診断法―も提起されてきた.

 胆囊癌の治療成績を向上させるには,前述の早期癌を発見すること,癌の進展度診断を正確に行い,それに応じた適切な根治法を行うこととである.今日でも臨床的に発見される胆囊癌の70~90%は進行癌である.このような背景から,本号では世界に先駆けて“胆囊癌の診断―発育進展を中心に―”を企画した.

基本情報

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胃と腸
22巻5号 (1987年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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