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Gastric enzymes as a screening test for gastric cancer: Finch PJ, Ryan FP, Rogers K, et al (Gut 28: 319-322, 1987)
胃癌は英国で4番目に多い悪性腫瘍で,5年生存率は4.7%と極めて低い.しかし早期胃癌の5年生存率は70.4%と高い.したがって早期胃癌の発見,前癌病変と言われているsevere dysplasiaやtype 2B intestinal metaplasiaの診断は意味のあることである.著者らは内視鏡的に採取した胃液中のlactic dehydrogenaseとβ-glucuronidaseを測定し胃癌のスクリーニング検査としての有用性をprospectiveに検討した.ルーチンの上部内視鏡検査を施行した40歳以上の445人を対象とした.内視鏡を胃内に挿入し,まず貯溜していた胃液を吸引し捨てた.十二指腸に入る前に,十二指腸液の胃内への逆流を最小限にするために,あらかじめ体温まで温めておいたxylose 4g/1を含むsorensen buffer(67 mmol phosphate pH 7.5)100mlを幽門部に散布し,粘膜に付着していた粘液を洗浄した.噴門部に溜まった洗浄液を内視鏡を反転し吸引採取した.通常の内視鏡検査にわずかの時間が加わるだけである.lactic dehydrogenaseはIU/1の,β-glucuronidaseはIU/mlの3乗根をindexとした.両者ともindexが5.8以上を陽性とした.胃癌についてはsensitivity 91.3%,specificity 81.3%であった.早期胃癌4例とlinitis plastica 1例の全例で陽性を呈した.正常胃,食道,十二指腸疾患ではfalse positiveはまれであった.false positiveの95.9%は組織学的にatrophic gastritis with or without intestinal metaplasiaであった.また,5例のsevere dysplasiaのうち4例が陽性であった.以上より胃液中の1actic dehydrogenaseとβ-glucuronidaseの測定は胃癌(特に早期胃癌)のスクリーニング検査としてのみならず,胃癌のhigh riskグループのスクリーニングにも有用であり,また,false positiveグループは今後の内視鏡的follow-upが必要であると述べている.
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