胃と腸 22巻12号 (1987年12月)

今月の主題 早期食道癌の問題点

序説

早期食道癌の分類に思う 白壁 彦夫
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 ここに筆をとれるようになったのは,食道疾患研究会の会長,また,先輩諸兄の積極的なご指導の御蔭である.天下に冠たる外科の先達たちが,内科系のものに進んで道をあけ,診断効果を期待された温情があったからこそである.おんぶにだっこで指導してもらった,と全く思う.診断の研究を続けた外科のパイオニアの諸氏は,内科系のものに刺激と活力を大いに与えてくれたものである.その結果が,本誌の編集になったのである.成果をご覧に入れたい.日本の外科の先達がそうであったように,早期食道癌の分類についても指導的役割を日本で担いたいと思うものである.

 早期食道癌の診断は,1960年の後半から1970年の初頭にかけて今日的なものになった.始めは,smの大きなものしか見つからなかったが,次いで,大きいがmmやepが見つかるようになり,そして,今日的な診断のレールが引かれた.この間の診断の進歩は,千葉大第2外科,東北大第2外科,慶大外科,東京女子医大,国立がんセンターの諸氏の大変な努力に負うものである.

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要旨 食道癌取扱い規約も初版以来20年に近く,改訂によりいろいろと改善されてきた.しかし,X線,内視鏡,病理肉眼型の分類は,各々その呼称が異なっていて不便を感じており,今回,できるだけ同じ分類を使うよう検討された.内視鏡型分類は内視鏡委員会の手で検討を進めたが,ほとんど病理肉眼型分類に準じた分類とした.大きく変わったところはないが,表在型の亜型分類に最近の内視鏡診断進歩の知見を取り入れ,0-Ⅰ(隆起),0-Ⅱ(平坦),0-Ⅲ(陥凹)と分けたうちで,0-Ⅱは肉眼型が平坦に近いものと同時に,深達度をmmまでと予測するもの(もちろんすべて組織診断と―致しない)を念頭に置いて記載するように考慮した.

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要旨 食道のep癌18病変,mm癌12病変,sm癌49病変を対象として,早期癌,および表在癌の定義,肉眼分類の妥当性を再検討した.その結果,“リンパ節転移の有無に関係なく,癌が上皮内,あるいは粘膜筋板までにとどまるもの”,すなわち,ep癌・mm癌のみを早期癌と定義することを提唱した.このように定義された病変の肉眼所見は胃の早期癌肉眼分類の4つの基本型で分類可能であることを述べた。次に,ep癌・mm癌の肉眼所見の特徴を,隆起性病変は“顆粒”の要素,陥凹性病変は“面”,“溝”の2つの要素から成ることを明らかにした.最後に,ep癌・mm癌の固定標本のルゴール塗布像,術後・術前の二重造影像を対比し,肉眼所見とX線所見の写像の対応の問題を論じ,初回検査でもep癌・mm癌を発見できる可能性があることを強調した.

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要旨 第41回食道疾患研究会で示された新しい表在癌肉眼型分類(案)は表在隆起型(0-Ⅰ),表在平坦型(0-Ⅱ),表在陥凹型(0-Ⅲ)の3基本型から成る,今回各型の分類基準を探るため,癌腫の粘膜面からの凹凸の程度を自験例未治療切除表在癌120例について検討した.sm癌は2mm以上の隆起例は56/99(56%),1~0.5mm例33/99(34%),1mm以上の陥凹例10/99(10%),mm癌は1~0.5mmの凹凸例16/16(100%),ep癌は1~0.5mmの凹凸例5/5(100%)であった.0-Ⅱ型にep~mm癌は含まれると仮定し,その基準を癌巣の高低でみたところep~mm癌は1~0.5mm内の凹凸に含まれた.癌巣の高さが2mm以上を0-Ⅰ型,凹みが1mm以上を0-III型とすると,0-Ⅱ型の5生率は95.1%で,0-Ⅰ型55.3%,0-Ⅲ型43.0%に比し良好であった.この基準に従えば胃の早期癌に匹敵する肉眼型は0-Ⅱ型(粘膜癌とこれに類似するsm癌)がこれに相当するものと考えられた.

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要旨 食道表在癌48症例62病変を用いて,食道表在癌の肉眼分類を提案すると共に,その特徴を検討した.食道表在癌の肉眼型は早期胃癌分類に準じて病変の高低差でⅠ型(隆起型),Ⅱa型(表層隆起型),Ⅱb型(平坦型),Ⅱc型(表層陥凹型),Ⅲ型(潰瘍型)の5型に分類できた.本分類は癌深達度とよく相関し,Ⅰ型は100%sm癌であった.Ⅱa型では72.7%がsm癌で隆起病変は癌のsm浸潤を示唆する所見であった.Ⅱb型は7.7%がsm癌であったのに対し,Ⅱc型では40%がsm癌であった.陥凹病変も癌のsm浸潤を疑わせる所見であった.今回の検討ではⅢ型は認められなかった.本分類に病変部の肉眼表面構造を加味することで一層正確に癌の深達度を推定することが可能であった.

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要旨 食道表在癌28例の診断過程におけるルゴール染色法の有用性を分析し,その診断学的価値について検討した.ルゴール法は通常観察では拾い上げが困難なm癌の拾い上げ診断,所見の軽微な表在癌の質的診断と同時にそれらの除外診断に威力を発揮したが,また切除標本における病変の同定,浸潤範囲の決定にも有用であった.今後予後の良好なm癌の発見数を増やすためには,ルゴール染色法を更に普及させ,特に食道癌の高危険度群である50歳以上の男性に対してはこれをルチーン化し,積極的に活用していくべきである.

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要旨 ルゴール染色は通常内視鏡検査でも指摘困難な表在平坦型食道癌の描出に優れている.教室の31例の表在癌のうち1例32%はルゴール染色で発見された.また特に表在隆起型では予後に関連する分類である,露出型,粘膜下伸展型の2型の容易な識別に有用である.ルゴール染色の染色程度を5段階に分類している.Ⅰ,Ⅱは染色され,肥厚上皮,正常上皮であり,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴは非染領域である.Vは癌である頻度が高く,IVは癌と異型上皮の頻度が高く,IIIは萎縮上皮,正常上皮であることが多い.これらの染色性,組織像の差は上皮内グリコーゲン量と上皮全層に対するグリコーゲン含有細胞の層の比に関連している.

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要旨 ルゴール染色は食道内視鏡検査で欠くことのできないものとなっており,癌のみならず良性病変の診断にも有用である.良悪性の鑑別や良性びらん潰瘍の病期の診断も可能であり,積極的に適応していくべきと考えている.異型上皮,食道潰瘍,逆流性食道炎,白斑,hyperkeratosis,乳頭腫,ポリープ,平滑筋腫,異所性胃粘膜,Barrett上皮などについてルゴール染色の実際を呈示し,解説した.

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 白壁(司会) 今日は「早期食道癌の問題点」ということで討論を始めますが,遠藤教授はこの座談会の後すぐパリの食道の学会にお発ちになります.パリの国際学会については別にご執筆いただくことにしまして,まず最初に遠藤先生,食道の場合は早期癌と言わずに表在癌とか,ep,mm,sm癌を共通の用語として使っていますが,それと5年生存率の問題,また食道疾患研究会でこれらが用いられるようになった経緯を,簡単に読者のためにご説明くださいませんか.

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 〔患者〕76歳,男性.主訴:下腹部痛.

 〔注腸X線所見〕仰臥位二重造影像(Fig.1)では,盲腸盲端部の前壁に25mm大の隆起性病変が認められる.その腫瘤の先端には半球状の突出部がみられ,表面は結節状である.やや角度を変えた二重造影像(Fig.2)では,突出部の中央に陥凹が認められ,結節も明瞭である.Fig.3,4は先端突出部にバリウムを溜めた腹臥位二重造影像である.中央部の縦長の陥凹が明瞭であり,この突出部は上皮性の悪性腫瘍であると考えられる.一方,腫瘍基底部の粘膜には幾重にも重なる輪状影がみられ,その表面が平滑であることより粘膜下腫瘍の形態も伴っていると考えられる.以上より,盲腸粘膜下に虫垂原発の癌が存在し,腫瘍の一部が盲腸内腔に露出していると診断した.

Coffee Break

新幹線の効用 長与 健夫
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 東京に住んでいる人はあまり意識していないかもしれないが,われわれ地方に住んでいる者は,やれ学会だ研究会だ,やれ班会議だ打ち合わせ会だと,月に数度にも及んで上京することがあり,その都度新幹線を利用する.その車中にいる時間は年間に通算してみると,少ない人でも十数時間,多い人だと優に百時間を越えるであろう.いささか誇張して言えば,この時間はわれわれの日常生活の五分の一から十分の一にも相当する.京都,大阪や仙台,新潟の人でも東京往復の日帰り旅行はしばしばであろうし,九州,北海道の人でも飛行機を使えば日帰りも十分可能な昨今である.

 よく東京の人は“遠くからお出でいただいて恐縮です”“お疲れでしょう”と相手の気持を察するように言われるが,名古屋に住む私にとって,それが必ずしもそうではない.

早期胃癌研究会

1987年10月の例会から 丸山 雅一
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 1987年10月度の例会(21日)は多賀須(関東逓信病院消内)が司会を担当し,食道1例,胃1例,食道・胃・大腸の三重癌1例,大腸2例,計5例が討論された.

 〔第1例〕59歳,男性.衡突癌Borr.3型(ss),Ⅰ型早期癌(sm)×2?(症例提供:広島大学原研外科,国延)

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 OESOのSecond International Polydisciplinary Congressが1987年6月24~27日パリで開かれ,出席した.今回の学術総会はbenign lesions of the esophagus and cancerがテーマで,Plummer- Vinson syndrome,myoma,diverticula,megaesophagus,caustic stenosis,peptic esophagitis,peptic stenosis,dysplasia,Barrett's esophagusなどについて,病因,症候,診断,治療,癌との関連などについて,210の設問を用意,それに対して1人5分の解答をするという形式で行われた.参加者は世界27か国より食道を専門とする外科,内科,放射線科,病理,生理,疫学の医師たちで,口演と討論が熱心に行われ,大変内容のある学会であった.今回は第2回であったが,前回,つまりFirst Polydisciplinary International Congressは1984年5月17~19日パリで開催されていて,そのときは“Cancer of the Esophagus in 1984”をテーマに,135の質問と解答とがなされ,その記録は既に著書として出版されている.

 OESOとはOrganisation Internationale d'Études Statistiçues pour les Maladies de l'Oesophage(International organization for statistical studies on diseases of the esophagus)のことで,Dr.Lortat-Jacobが会長に,その弟子のDr.Robert Giuliが実際の管理を行い1979年に設立された.欧州における食道癌患者の登録・集計とか食道癌の集学的治療のrandomized therapeutic trialとか,食道疾患についての疫学,病態生理,症候,治療などのstatisticsを目指したものである.

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要旨 癌の進展様式は癌細胞自体の性格のみならず,発生した場の組織構築によっても著しい差を生ずる.食道壁は胃壁とは異なり,粘膜固有層内でも脈管が発達している.そこで早期食道癌の定義を検討する目的で,食道表在癌21病巣,早期胃癌448例,pm胃癌109例を対象とし詳細な病理組織学的検索を行った.〔成績〕n(+),ly(+),v(+),の頻度をみると,特に食道sm癌では各々30.8%,84.6%,84.6%で,胃pm癌の38.5%,91.7%,70.6%に近い値を示し,他方,食道ep癌,mm癌は,胃m癌,sm癌での頻度に近似していた.〔結果〕食道壁と胃壁の構造の差から,早期胃癌の深達度をsmまでと定義するならば,食道ではmmまでを早期食道癌として扱うべきことが示唆された.

初心者講座 大腸検査法・12

内視鏡検査法のまとめ 長廻 紘
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はじめに: コロノスコピーの現在

 US,CT,その他の新しい診断機器が日進月歩であるが,大腸の診断は見通しうる将来についてはX線,内視鏡が依然として中心であることに変わりはあるまい.特に直接的検査である内視鏡の地位にゆるぎがないであろうことは,皮膚疾患にCTなどを試みようという者が少ないのと同じく自明である.

 20年近い歴史を持つコロノスコピーである.先に述べたようにまだ不断の改良の途上にあるとはいえ,昔に比べると隔世の感がある.始めたころは,極端に言えばperforationが起こらなかったことを感謝するというstressfulな日々であった.挿入の原理は極めて単純なもの,すなわち押す・引くに尽きる.進歩したといってもほとんとが器具(スコープ)の改良という,現代医学の全般にわたってみられるマシーンに支配された医療の範疇を出るものではない.10分で入る,5分で入ると自慢しても,道具か良くなったにすぎない.

病理学講座 消化器疾患の切除標本―取り扱い方から組織診断まで(12)

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はじめに

 消化管病変の診断には形態診断学が最も重要な地位を占めている.その形態診断学のうち,今日までのところ臨床医学分野にあってはX線・内視鏡診断法が主役であり,基礎医学分野にあっては病理形態診断法が主役である.同一の消化管病変を前述のそれぞれの診断法で診断する場合,両診断法に共通してみられる重要な点は,“病変の肉眼所見”である逆に非共通点はX線・内視鏡診断法では動的変化を捉えうるが,細胞レベルの変化を捉えることができず,病理形態診断法ではその逆である点と言える.

 両診断法のこのような欠点を補うためには,術前・術後のX線・内視鏡所見と切除材料の肉眼所見とを1対1に対応づけ,後者の所見がどのような細胞・組織学的所見によって形成されているかを解明することが必要となる.このためには,切除材料中の肉眼所見を病理組織学的に再構築し,X線・内視鏡所見を細胞・組織学的レベルで再考することが要求される.

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欧文目次

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 Increased risk of cancer in the Peutz-Jeghers syndrome: Giardiello FM,Welsh SB,et al (N Engl J Med 316: 1511-1514,1987)

 Peutz-Jeghers症候群は消化管の過誤腫性ポリ一プと粘膜や皮膚のメラニン沈着を特徴とした常染色体優性の遺伝性疾患である.この疾患における癌の頻度についての研究は少ないので本症31例について癌発生について詳細に調査した.症例は口内のメラニン沈着,家族歴,小腸ポリポーシスのうち2項目以上を有するもので,病理組織学的に確認されたもの23例,されていないもの8例である.観察期間は平均21±15年であった.

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 これは,まことに素晴らしい本である.私が若い医師および医学生諸君に,日頃どうしても言っておきたいことが余すところなく述べられている.いや,私が思いつかなかったこと,しかし非常に大切なことまでが盛り込まれている.ありがたいことである.著者のタマルティ教授の学識のみならず人柄に触れた思いがする.教授はウィリアム・オスラー先生の再現ではないかとも思われたのである.

 わが国の若い医師の方々は,検査データの読みには優れた能力を発揮するが,こと診察技術となると米国の医師より,かなり劣っているとよく言われる.しかも面接技術が下手だという批判もある.診察の相手は,病いに悩む人格をもつ人間であって,病気ではない.そうなると,わが国の医師は人間への接し方が未熟だということになろうか.それはいったい何故だろうか.私は,医科大学における医学教育のあり方に反省すべき点があるのではないかと思う.もしそうだとすれば,医学教育に従事する指導者の姿勢,診療の態度に改めるべき点がありはしないかということになる.ここに,本書を,まず医学教育の指導者の方々に,まずはともあれ読んでいただきたい,とお願いする理由がある.もちろん,若い医師および医学生諸君にとっても必読の書である.

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 Is the diarrhoea in ulcerative colitis related to impaired colonic salvage of carbohydrate?: Rao SSC, Read NW,Holdsworth CD (Gut 28: 1090-1094,1987)

 潰瘍性大腸炎の下痢のメカニズムは複雑で十分には解明されていないが,腸液の過分泌,蠕動の亢進,水・電解質の吸収障害が下痢発見の原因とされている.一方,潰瘍性大腸炎患者ではいくつかの理由で非吸収性炭水化物の大腸内での処理能力の不全があることが示唆されている.非吸収性炭水化物は通常1日30~150gに達すると推定され,浸透圧性下痢の一因となりうる.著者らは,非吸収性炭水化物の処理能力を健常者と潰瘍性大腸炎患者で比較検討した.非吸収性炭水化物の処理は腸内細菌によって短鎖脂肪酸と水素等のガスに分解されるので,呼気中の水素を指標としている.

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 日常診療において血管造影を必要する疾患は少なくないが,従来“最終診断法”として行われることが多かった.それは検査に際して,前処置,後処置をはじめ,手技がやや繁雑なこと,造影剤を比較的大量に用いるのでその副作用などの問題もあり,血管造影は侵襲性の高い検査という考え方がその根本にあったからであろう.低侵襲性検査を意図して考案されたDSA(Digital Subtraction Angiography)の登場はこのような意味合いから画期的な進歩をもたらしたと言える.

 現在DSA装置は中小医療機関まで普及しているとは言えないが,画像を見る機会は増えており,本書は,初めて本法を学ぶ人達にとっても十分理解できるように配慮され,装置の基本,臨床応用における利点と限界,フィルム・サブトラクションとの対比,造影剤に関する基礎的問題点から,頭頸部,心臓,肺血管,腹部動静脈,骨盤領域,末梢血管におけるDSAの臨床的評価,更には,computed radiographyを用いたDSAの新しい分野にわたって解説されている.編集を担当された大阪大学小塚教授はcardiovascular radiologyにおいて,また慶応義塾大学平松助教授はangiographyの領域ではそれぞれ世界的に名の知られた大家であり,分担執筆された筆者もわが国の医学放射線学会で活躍中の気鋭で,しかも従来からの血管造影を経験され,DSAの利点,欠点を十分に理解された方々ばかりである.美しい写真も豊富で,臨床にたずさわる人々にとって,“こんなcaseではどうする”といったときに役立つ本と言える.

編集後記 西澤 護
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 今から30年前,筆者が卒業したころ,中山恒明先生が食道癌で世界の注目を浴び始め,食道癌の隆盛期を作られた.その後,中山先生一門の方々が常に先導的役割を果たしてこられたが,ここ数年来,早期診断という意味で第2のピークを作ろうとしている.

 本号をみて,食道癌についての第2の黎明期を迎えつつあると感ずるのは筆者だけではないと思う.それほど,模索し続けてきたep癌,mm癌の診断が一挙に花咲いたように思われるからである.ちょうど,昭和30年代に胃の早期癌をみつけようとしていたときによく似ている.胃の微細診断を追求していた努力が,このような形で食道癌の早期診断に結びつくとは思わなかったが,胃のⅡbの診断と同レベルと思えば大きな違いはない.むしろ,それにルゴールという妙薬があったために,胃のⅡbの診断学よりはるかに急速に進歩する可能性を秘めている.胸がワクワクする思いがするのは,それほど,ep癌,mm癌の診断が,食道癌の予後をよくするからである.それらの肉眼形態も胃のm癌をもっと平べったくしたものによく似ている.それだけ分類も単純化されるだろう.筆者らのグループでもep癌をみつけたものが5人まで増えてきた.もう聖域ではない.みつけていないものが恥ずかしくなるのも時間の問題だ.形態診断をやっているとこんな楽しみがあるからやめられない.

基本情報

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胃と腸
22巻12号 (1987年12月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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