Japanese
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今月の主題 炎症性腸疾患関連腫瘍の最前線
序説
炎症性腸疾患関連腫瘍の最前線
Introduction
江﨑 幹宏
1
Motohiro Esaki
1
1佐賀大学医学部内科学講座消化器内科
キーワード:
炎症性腸疾患
,
腫瘍
,
サーベイランス
,
診断
Keyword:
炎症性腸疾患
,
腫瘍
,
サーベイランス
,
診断
pp.889-891
発行日 2025年7月25日
Published Date 2025/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.053621800600070889
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はじめに
炎症性腸疾患における内科治療の進歩により,内科治療抵抗を理由に外科的手術を余儀なくされる症例は明らかに減少している.一方,「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(IBD班)で実施された昨年度の全国疫学調査では潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)31.7万人,Crohn病(Crohn's disease ; CD)9.6万人と推計され,本邦の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)患者数は右肩上がりの状況にあることが改めて明らかとなった.炎症性発癌はIBDの長期的な疾患活動性制御が可能となれば発症リスクが低減する可能性が推測されるものの,長期的な疾患活動性制御を約束し得る薬剤はいまだ存在しない.また,実臨床ではいわゆる高リスク群に分類されない,腹部症状に乏しいものの潜在的な慢性炎症を背景に発癌したと考えられる症例も少なからず遭遇するのも事実である.そのため,内科治療の進歩がIBD関連腫瘍の発生率減少に直結するか否かは現時点では不明であるが,炎症性発癌を来した患者を効率的かつ確実に診断し,IBDの長期予後改善に寄与し得るサーベイランスシステムを構築する必要があることは明白である.本稿では主にIBD関連腫瘍の診断に関する課題を整理する.

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