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編集後記
西澤 護
pp.1446
発行日 1987年12月25日
Published Date 1987/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112882
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今から30年前,筆者が卒業したころ,中山恒明先生が食道癌で世界の注目を浴び始め,食道癌の隆盛期を作られた.その後,中山先生一門の方々が常に先導的役割を果たしてこられたが,ここ数年来,早期診断という意味で第2のピークを作ろうとしている.
本号をみて,食道癌についての第2の黎明期を迎えつつあると感ずるのは筆者だけではないと思う.それほど,模索し続けてきたep癌,mm癌の診断が一挙に花咲いたように思われるからである.ちょうど,昭和30年代に胃の早期癌をみつけようとしていたときによく似ている.胃の微細診断を追求していた努力が,このような形で食道癌の早期診断に結びつくとは思わなかったが,胃のⅡbの診断と同レベルと思えば大きな違いはない.むしろ,それにルゴールという妙薬があったために,胃のⅡbの診断学よりはるかに急速に進歩する可能性を秘めている.胸がワクワクする思いがするのは,それほど,ep癌,mm癌の診断が,食道癌の予後をよくするからである.それらの肉眼形態も胃のm癌をもっと平べったくしたものによく似ている.それだけ分類も単純化されるだろう.筆者らのグループでもep癌をみつけたものが5人まで増えてきた.もう聖域ではない.みつけていないものが恥ずかしくなるのも時間の問題だ.形態診断をやっているとこんな楽しみがあるからやめられない.
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