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書評「肝硬変と肝腫瘍―集学的診療をめざして」
奥田 邦雄
1
1千葉大学
pp.666
発行日 1984年6月25日
Published Date 1984/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107051
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本書の特徴は,序文にも,また本書のサブタイトルにも示されているように,肝硬変と肝腫瘍を取り上げ,27の主題を設け,それぞれの項目について最もup-to-dateな内容を示しながら,annual review的論文を集載し,原著を読む煩雑を略して,専門家の纒めた論文から最新の情報,考え方を理解できるように編集されている.また,これらの領域は内科と外科とが常に緊密な連繋のもとに治療を考えなければならなくなっており,例えば食道静脈瘤に対する処置がそうであるが,そのような集学的な診療をめざして,まず内科側のreview的な論文を配し,外科に何を求めるかを示し,次いで外科側の論文,殊に外科的治療のことを示し,その中間に画像診断の論文を置いてある.
内容はまず慢性肝炎から肝硬変への移行の問題,肝硬変の予後を規定する因子,腹腔鏡および生検診断,肝硬変患者の管理,静脈瘤からの出血の危険度の問題,PTPによる静脈瘤塞栓法,内視鏡的硬化療法,静脈瘤出血に対する緊急措置,待期的外科治療,費用の問題,肝不全の治療法,腹水に対する処置,肝硬変と腎障害の問題,surgical risk,肝腫瘍発見のためのアプローチ,肝癌の画像診断,腹腔動脈造影,発癌因子としての経口避妊薬,肝の良性腫瘍に対する手術,原発肝癌の自然経過と予後,内科的治療法,外科的治療法,および最後に転移肝癌に対する治療の考え方から成っている.執筆者は計41名の第一線の専門家で,内容は現時点での最先端を行くものであり,内科と外科の関連がよく浮き彫りになっていて,なかなか良い企画の書である.
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