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編集後記
丸山 雅一
pp.724
発行日 1984年6月25日
Published Date 1984/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107064
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小生も主題の1つを担当した都合上,編集後記を書くのはいささか面映ゆい気持であるが,家族性大腸腺腫症(FAC)という疾病において医師は,患者およびその家族とお互いに全人格をぶつけあって取り組み,最善の道を捜し求めなければならないものだと思う.座談会の司会をされた武藤氏には批判を受けるだろうと覚悟している小生のデータも,頑なに手術を拒否する患者というよりも,FACを病んでいる人間そのものとの長い闘争の歴史である.
弁解はともかく,長い年月の集積であるデータのまとめを限られた活字空間の中で生かし,主義主張を貫こうと努力された執筆者諸氏の情念とも言うべきものを感じ取ってもらえれば本号の企画は成功したものと言ってもよいのではあるまいか.胃・十二指腸病変を担当した飯田氏の気迫,組織発生を追求した中村氏の緻密さなどはまさしく情念のなせる業であろう.手術の予後についての岩間氏の成績も患者を説得する際の指標として重要である.牛尾氏の論文,特に大腸病変についての記載は重大な内容を含んでいる.欲を言わせてもらえば,FACが完成されるまでのポリープの大きさと密度の変化について更に細かな具体的事実の提出ができなかっただろうか.残念な気がしないでもない.
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