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肝臓関係の特別講演として,国立台湾大学内科の宋瑞樓教授の講演があった.宋教授は台湾におけるB型肝炎ウイルス感染の現状とその問題点について詳細な発表をされ,台湾では,本邦以上にB型肝炎が重大な疾患であることを強調された.そして印象的だったのは,国民病とも言うべきこの疾患に対し,国をあげて母児感染予防などの対策に取り組んでいるという報告であった.シンポジウムでは,“肝硬変の治療と予後”が取り上げられた.今回の発表によって,重症の肝硬変患者の予後は,利尿剤などによる治療の進歩により著明に改善されていることが明らかにされた.しかし,近年肝硬変症の治療に頻用されている血漿製剤については,その功罪が討論され,栄養学的側面も踏まえての使用法の確立が望まれた.食道静脈瘤の治療では,最近の新しい治療法の報告のほか,脾摘の免疫能や予後に与える影響が注目を集めていたが,癌化の問題ともからめて,今後とも検討が必要のように思われた.また一般演題では,基礎的・実験的研究から,肝疾患の新しい診断法・治療法の検討までと多岐にわたっていた.どの会場も盛況であり,ポスター会場では会場内に入りきれないほどであった.したがって討論も活発になり,討論時間に余裕のないのが残念であった.(井本正巳)
胆道系では種々のドレナージ法の効果の比較,手技・道具の改良,胆石溶解療法関連ではその機序,UDCAとCDCAの併用の成績が報告された.肝内結石では癌発生母地の観点からの病理学的検索の報告がなされたが,今後症例数が増えていけば興味深い成績が得られよう.胆嚢癌では,診断面では依然ポリープ型病変に的がしぼられており,他の型の術前診断が困難であることは変わらないようである.また,発生学的見地からは,培養,実験癌などの手法により,発生過程の解明が試みられている.胆石形成に関しては,胆石の組成,胆汁レベル,ホルモン作用からみた形成因子の検討,消化管手術後の胆石形成過程の観察に基づく知見などが報告された.(木本英三)
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