Coffee Break
食べ物にご用心
武藤 徹一郎
1
1東京大学第1外科
pp.638
発行日 1984年6月25日
Published Date 1984/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107047
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初老の男性が1年来の軽い粘血便を主訴に他院から紹介されてきた.症状は結核療養に入院中から始まり,肺結核が治癒して退院してからも症状が継続しているらしい.注腸造影検査では右側結腸直腸に変形が認められる.内視鏡検査も行われていて上行結腸に潰瘍性病変が認められ,大腸結核が疑われて抗結核療法が行われたのは当然のことで,誰でもこのように処置したであろう.少し変なのは抗結核治療を行っているにもかかわらず,症状が一向に良くならないことである.
内視鏡を盲腸にまで挿入して診ると盲腸,上行結腸の粘膜は全体に浮腫状で,所々にベットリした白苔に覆われた潰瘍が散在していた.潰瘍性大腸炎とは全然違うしCrohn病とも違う.結核にしてもちょっと変だ…….まさかアメーバ赤痢では? 等々と考えながらとにかく生検を採った.今までに経験して,頭の中に整理されているIBDの像のどれにもピッタリとは合致しないので,診断には自信がなかった.
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