胃と腸 16巻7号 (1981年7月)

今月の主題 実験胃癌とヒト胃癌

序説

実験胃癌とヒト胃癌 長與 健夫
  • 文献概要を表示

 われわれの胃袋はしばしば癌に侵されるのに動物が胃癌に罹ったという話はあまり聞いたことがない.どうしてこのような違いがあるのだろうという素朴な疑問は昔からあったし,今もその理由が十分にわかったとは言えない.人間は雑食の最たるもので四つ足から海草に至るまで何でも口にするうえに,火を使うことを覚えたので,それらを焼いたり煮たり焙ったりして食べるようになったし,塩付けにして保存する方法も覚えた.最近では防腐剤や漂白剤などの入ったもろもろの加工食品がわれわれの身の回りに溢れるようになった.こうした食生活や食習慣が人間のみが胃癌に侵される主な理由であろうことをほぼつきとめたのはハワイの日系二世を中心にした胃癌についての疫学的研究の大きな功績であるが,このような成果はいわば漁夫が魚をとるために海に大きな網をうったのにも似て,その網の中にたくさんの魚がいることは確かであるが,まだ魚そのものを把えたことにはならない.

 胃癌を実験研究の対象とする目的は2つある.その1つは上に書いたような線に沿って,その原因や発生の機構をつきとめようとするもので,最終的には動物実験に訴えることになるであろうが,それ以前により基礎的な研究が必要で,現在変異原性と癌原性,イニシエーターとプロモーターの関係についてなど,より分析と綜合を指向する研究が進行中である.他の1つは既に知られている方法を使って動物の正常な胃粘膜から癌が発生してくる過程を種々な観点から観察分析し,癌化に先行する病変があるか否か?あるとすればそれはどのような変化であるのか?癌が発生してからその個体を斃すほどに発育増殖してゆくまでにどれぐらいの時間がかかり,その間にどのような変化があるのか?肉眼型・組織型の違いは何によっているのか?また癌の増殖を促進し,また抑制する因子は何であるのか?などなど患者については行いたくとも行い得ないことを動物を使って研究・検討することである.この特集号では後者の研究領域についての現況がこの道のエキスパートである何人かの先生によって述べられるが,臨床との関係を重んずる立場からイヌの胃癌に焦点をしぼった.

  • 文献概要を表示

 イヌの胃癌の作製は,N-methyl-N'-nitro-N-nitroso-guanidine(MNNG)を飲料水として投与することで成功した1).しかし,MNNGでは胃癌と共に小腸の肉腫が生じ,イヌの死亡の多くは小腸肉腫が原因であった.この問題は,低濃度のMNNGを用いても,短期間の投与によっても解決されなかった.栗原ら2)は,MNNGの同族体であるN-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(ENNG)を用いると,小腸肉腫を生じることなくイヌ胃癌を作製できることを見出した.その後,多くの研究成果が,主としてENNGを用いて蓄積され,現在では再現性よくイヌに胃癌を作製する方法が,ほぼ確立されたと言ってよいであろう.

 永くヒト胃癌で見出しえなかった印環細胞癌の発生点3)が近年イヌ胃癌で初めて解明された事実,またイヌ胃癌の化学療法剤の効果判定への応用4),レーザー,放射性線源の留置などの新しい癌治療法をヒトに先き立ちイヌ胃癌へ試用するなど,イヌ胃癌がヒト胃癌の発生,進展の解明,診断,治療法の改善に大きな貢献を示し始めた.

  • 文献概要を表示

 杉村ら(1967)がMNNG(N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)を用いてラットに胃癌を高率に発生させることができることを発表して以来―それまでは実験胃癌の作製は困難であったのであるが―イヌにも高率に実験胃癌を作製することが容易になり,わが国ではイヌを用いた胃癌発生実験が盛んに行われるようになった.そのイヌを対象とする理由は,恐らくは,対象が大型の哺乳動物であることおよびイヌ胃は組織学的にヒト胃に類似しているという2点であろうと思われる.ここにおいて,改めてヒト胃癌のモデルとしての実験イヌ胃癌という問題が派生してくるのは自然の成り行きであろう.

 筆者はヒト胃癌の臨床病理学的なことに興味を持っている一人であるが,村上忠重教授による“ヒト胃癌と実験胃癌との対比に関する研究”,それに続く小山靖夫博士による“実験イヌ胃癌に関する研究”においてヒト胃癌の立場から実験イヌ胃癌を眺めるという機会が数多くあったので,ここではヒト胃癌と実験イヌ胃癌との対比を通じて,いわゆるモデル論なるものを少々展開してみたい.

  • 文献概要を表示

 実験胃癌の高頻度誘発が可能になった1967年1)以来,実験胃癌の研究成果が数多く報告されてきたが,この辺でそれらの成果がヒト胃癌の研究にどのように貢献したかを考えてみるのは,過去の研究の在り方を反省し,今後の研究の方向性を見定めていくうえでも重要であると,われる.この実験系が開発された当初,実験胃癌研究の目的として,(1)胃癌の発生に関与する環境発癌物質を検索する,(2)胃癌の発生機構を究明する,(3)臨床応用,すなわちこのモデルを用いて,胃癌の臨床上の問題点を解明する,の3点が考えられた.筆者らは,1968年以来一貫して,第3の臨床応用という立場から実験胃癌の研究を進めてきた.

 ここでは実験胃癌の研究成果が,臨床面でのヒト胃癌の研究にどのように貢献したかについて,筆者らの研究結果を中心に整理してみたい.

  • 文献概要を表示

 臨床家が,多忙な実地臨床の合間をぬって実験胃癌の研究に取り組むのは,何とかして胃癌の発生原因,増殖および転移形式を明らかにし,更には治療法の開発も期して,ヒト胃癌研究への貢献をしたいと考えているからにほかならない.イヌの実験胃癌研究は,1968年ごろからMNNGを飲料水として投与する方法が杉村ら1)2),藤田ら3)により始められたが,当時は,早期癌ができるころには,小腸の巨大肉腫のためにイヌが斃死するという状態であった.われわれが,ENNG溶液を固形飼料にかけて一気に食べさせる(朝夕2回)方法で,胃だけに限局して進行癌を発生させるのに成功して,第14回消化器病学会秋季大会(新潟)に発表したのが,1972年である4).以来,少しでもヒト胃癌に近い実験胃癌を発生させることを志して,悪性疾患であることの証明とされる,①転移形成,②移植継代,を成功させたいと実験に没頭した.前者は,所属および遠隔リンパ節への転移,癌性腹膜炎,心,肝,骨などの臓器転移,皮下転移などの転移作製5)~8)(Table1参照),後者は,内視鏡下に採取した胃生検材料のヌードマウスの皮下への継代移植に成功9)10)(東大医科研鈴木らとの共同研究)で達成され,逐次,他に先がけて発表してきた.厚生省の班研究を通じても,われわれの方法は各施設で追試され,広く普及しており,もはや,イヌの実験胃癌がヒト胃癌の疾患モデルとして優れていることを疑う者はいない.しかしながら,かつて厚生省班会議の席上,村上(忠)が言一,ように,上記のような研究史は,ヒトの胃癌では研究し尽されたことが,イヌでも1つ1つ確認されてきた過程であるにすぎないとも言える.したがって,"実験胃癌のヒト胃癌研究への貢献は?"と真正面から問われると面映い気持を抱かざるを得ないのは筆者だけだろうか.

 イヌ胃にもヒト胃によく似た微小癌11)が見出されることはわかったので,手術をしないで,X線,内視鏡,生検を駆使して,通常,ヒトでは許されない胃癌の発育,増殖,進展の経過を観察することは,実験胃癌ならではの研究領域となりうるが,ヒトにおける悪性サイクルの発見のように,これとて,実験胃癌専売特許の研究領域ではない.もちろん,この興味あるテーマは,われわれも重要な研究課題の1つとしている.イヌ胃癌における悪性サイクルも含めて,胃癌の発生増殖の過程はたびたび報告9)12)13)してきたし,本号では,他の著者により記述されると思うので割愛する.

  • 文献概要を表示

 近年盛んに行われるようになった悪性腫瘍患者に対する免疫療法は,化学療法の場合と同様に動物実験の結果と臨床治験での成績にかなりの相違があることは多くの臨床家の一致した見解である.この原因の1つに効果判定のために用いた動物実験系それ自身の問題がある.すなわち,マウスやラットなどの小動物を用いた移植腫瘍での短期間の経過とヒトの臨床経過での差が効果判定でのズレにつながっている可能性があるからである.この意味で今後の化学療法および免疫療法の実験モデルには,ヒトの臨床経過にみられる腫瘍の発育と同様の経過を示す実験系を用いることが要求される.

 既に報告しているようにENNG(N-ethyl‐N'-nitro-N-nitrosoguanidine)によるイヌの胃癌発生および発育過程はヒトの胃癌とかなり似かよっている1).この経過観察が可能な発癌実験系が癌に対する薬物の効果判定のための動物実験系として大きな役割を占めてくることはほぼ確実であり,早期胃癌を含めた胃癌の治療実験モデルとしての有用性のみならず,予防実験のモデルとしてもその有用性が検討されてきた.われわれはこの実験系を用いて,immuno potentiator の効果判定を行う試みを行っており,その有用性について述べる.

  • 文献概要を表示

胃癌の“発生点”

 ヒトの胃癌の発生点については既に村上1)が厳密な連続切片法による病巣の再構築を行った結果,独立した癌巣において癌細胞群が非癌性の上皮と連続している点を発生点と定義した.また,この研究では腺管腺癌は固有胃腺の腺頸部より新たに形成された側枝として発生し,印環細胞型癌は腺頸部よりそれて,それを囲む基底膜を破って粘膜固有層へ浸潤するという事実が示されている.

 胃癌が組織学的にどのような形で発生するかを考察する場合には以下の段階を設定し,次いで各々の設階での形態学的証拠を明らかにしていかなければならない.①どのような細胞から生じるか.②本来の胃粘膜上皮あるいは化生性の上皮とは異なる形態を示す細胞が生じるか.③そのような細胞の増殖が持続しているか.④そのような細胞が本来の構造を破壊し,更に浸潤性に増殖してゆくのか.ヒトの胃癌の研究においてはこれらの段階を経て胃癌が発生し進展する全経過を明らかにすることは困難である.粘膜内にとどまっている早期胃癌は,これらの過程の④の段階にあるので,それより以前の段階は推定されるにすぎない.また村上が行ったようなヒト胃癌手術症例の癌あるいはその周辺部の組織学的標本の中に偶然認められた独立した癌巣を連続切片で追跡する方法によっても,③,④の段階が明らかにされたのみである.

  • 文献概要を表示

 杉村ら1)のニトロソグアニジン経口投与によるラット胃癌の作製以来,実験動物を用いた胃癌の研究が広く行われるようになった.しかし,現在までにヒト臨床例に類似した広範な転移を来す実験胃癌は比較的まれであった.今回,われわれはN-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(ENNG)投与による実験イヌ胃癌で,肝,脾,肺,リンパ節に広範な転移を来し,短期間で腫瘍死した1例を経験したので報告する.

 われわれは実験イヌ胃癌の系において,免疫療法剤の効果判定に関するモデル作製のための基礎的検討を行っており,本症例はそのうちの1頭である.

  • 文献概要を表示

 N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)をイヌに投与して胃癌が発生することを,われわれ1)が杉村ら2)と同時に発表して以来,既に10年以上が経過した.この間,数多くの報告3)~8)がなされ,イヌ実験胃癌の作製法は今や確立されたかの観がある.しかし,それぞれの方法には,癌の好発部位や同時多発性,他臓器癌や肉腫の同時発生などの点で一長一短があり,臨床で扱うヒト胃癌との問には,なお,かなりの隔たりが感じられる.

 本論文では,最近われわれが成功した選択的Borrmann3型胃癌発生のあらましについて述べる.

  • 文献概要を表示

 長与(司会) 今日は“ヒトの胃癌モデルとしてのイヌ実験胃癌”というテーマで話し合っていただくわけですが,イヌの実験胃癌がヒト胃癌のモデルたり得るかどうか,といったことが,この座談会の1つの焦点になろうかと思います.

 モデルという言葉はいろいろな意味に使われますが,いずれにしても好ましい基準・鋳型とでもいったような意味が込められているかと思います,そんなことで,イヌの実験胃癌が好ましい基準になり得るかどうか.話の焦点を,これから先のことにも当てていただいて,お話をいただけるとありがたいと思います.

Coffee Break

膵炎のときの出血性胃炎
  • 文献概要を表示

 急性膵炎のとき,かなり高頻度に出血性胃炎の合併がみられる.日常の診療で気づいている人は多いが,なぜかを解明した人はいないようである.いろいろな推測はできるがどうも納得しにくい説明しかできない.

 鈴木らは,ウサギの膵管に自家胆汗を注入して,いろいろな程度の急性膵炎を作製し,その後の血中ガストリン値を追跡した.その結果,血中アミラーゼ値と共に血中ガストリン値も上昇し,このガストリン値は膵炎発症後約3時間でピークに達し,その後漸次減少していったが,急性膵炎の程度がひどいほどこの血中ガストリン値上昇率は著しかった.そして,おそらくこの血中ガストリン値上昇が酸分泌充進を促し,粘膜損傷発来へと結びついていく可能性がある,と述べている.

  • 文献概要を表示

 高リボ蛋白血症と膵炎の関係は古くから知られている.両者合併例では,リボ蛋白の電気泳動でFredrickson分類のtype Ⅰ,Ⅳ,Ⅴのパターンが通常みられる.

 StackhouseらやWangらは膵炎に脂質異常が続発し,膵炎の回復に伴って正常化すると考えている.しかし,Cameronらは逆に高脂血症が膵炎発生に何らかのかかわりがあると考えている.高リボ蛋白血症typeIまたはVの患者は確かにしばしば急性膵炎を起こすことは臨床的に経験することであり,高脂血症の改善により膵炎を起こさなくなることも何となく認識されている.

ホスホリパーゼAと膵炎
  • 文献概要を表示

 細胞膜のリン脂質を分解するホスホリパーゼのうちホスホリパーゼAと呼ばれるいくつかの酵素が細胞の外側からと内側での2つの位置で働き,生きた細胞を壊していく.この酵素が膵炎を引き起こすのだと言われている.

 だから古い教科書で勉強した私たちは,酵素といってもアミラーゼやトリプシンが直接膵の細胞を消化するのだと考えてしまう傾向にあるが,血中にオーバーフローしたこれらの酵素が重要臓器を消化すると考えるのも,あまりに単純過ぎたのだと気づいてみれば,苦笑いもするものである.

Colitis cystica profunda
  • 文献概要を表示

 Colitis cystica profundaという疾患はまれにしかみられないものであるが,原因も不明のままである.18世紀にStarkという人が最初に記載したのだそうであるが,19世紀にはほとんど注意をひくこともなくテキストから漏れていたということである.20世紀も後半になって,ようやく症例報告や文献的検討がなされるようになった.

 主な局所所見はポリープ様の隆起が主として直腸,S状結腸などに生じ,特に直腸前壁に多く,下痢,下血,下腹痛を主要症状とするが,強い栄養障害を来すほどでもないらしい.組織学的には,粘液産生嚢胞が粘膜筋板を貫いて粘膜下層にまで及んで占居していることが主要な変化である.

  • 文献概要を表示

 骨髄以外に発生する形質細胞腫は,髄外性形質細胞腫(extramedullary plasmacytoma)と呼ばれ,その好発部位は上気道,口腔および眼瞼結膜であり,全体の80%を占める.しかし,胃に発生する形質細胞腫は極めて少なく,現在まで欧米で60例余,本邦では11例にすぎない.筆者らは最近monoclonal gammopathyを伴った胃原発性の形質細胞腫を経験したので,免疫学的な検索を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

 髄外性の形質細胞腫は上気道,口腔に多く胃原発のものは極めてまれとされている1).本邦においては最近報告が増加し15例の報告がある2)~15)

今回,2年間の経過中,手術前2カ月足らずの間に突然胃壁の硬化と収縮を来した良性びまん性胃形質細胞腫を経験したので,その形態の変化および形質細胞の増殖の特徴について組織学的に検討を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

 Zollinger-Ellison症候群(以下ZESと略す)は1955年のZollingerとEllisonの報告以来,欧米では1,000例を越す症例が集積されている1).しかし,本邦報告例は100余例にすぎず,その臨床像も未検討の部分が多い.最近,われわれはその特異なX線・内視鏡像が診断のきっかけとなり,十二指腸球部のカルチノイド腫瘍が原発巣と考えられたZESの1例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 腸上皮化生の著しい胃粘膜を背景として,Ⅱa+Ⅱc型早期癌と良悪境界領域の隆起型異型上皮巣が併存し,更に胃体部に,多発性粘膜下嚢腫が存在した症例を経験したので報告する.

 この症例のように,1つの胃に,良性・良悪境界領域および悪性,の3種類の隆起性病変がそれぞれ独立して発生したことは極めてまれであり,その組織発生にも興味が持たれる.

学会印象記

  • 文献概要を表示

 広島で内視鏡学会が開催されるのは1973年11月の第11回合同秋季大会以来のことであり,7年半ぶりのことである.当時は,新幹線は岡山どまりであり,列車を乗り継いで広島入りした記憶も新しい,今日では筆者らの住む京都から新幹線でわずか2時間で学会場に到着できるわけであり,当時のことを振り返ると世の中もずいぶん進歩したものである.学会のテーマも当時と比較すると差異があり,当時は合同秋季大会のため,内視鏡学会としての演題はシンポジウムとして“胃病変の経過観察”と“内視鏡下における治療の試み”の2題,一般演題は52題にすぎなかった.今回は何と3日問でシンポジウム3題,パネル5題が企画されたほか,東大・渥美和彦教授の特別講演,E.Seifert教授の特別参加,そして一般演題は231題の多くの発表があり,更に6つの研究会が併せて開催され,まさに盛会の一言に尽きる学会であった.

 三好秋馬会長はじめプログラム委員会の先生方の学会の方向づけに対する意欲を現すごとく,その内容も斬新であり,特に課題パネルとして取り上げられた“機能検査としての内視鏡の応用”,“内視鏡応用の新展開”などのテーマは,会長講演“機能的内視鏡の展開”と共に,今後のわれわれの進むべき道標として,的を得た内容であった.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

Colonic Dysfunction in Diabetes Mellitus: Battle, W.M. et al(Uas-troenterology79: 12171221, 1980)

 糖尿病患者が便秘しやすいのはよく知られている.糖尿病例の食道・胃・小腸の運動異常はよく調べられているが,結腸については研究されていない.糖尿病患者の食後の結腸の電気的活動性などについて調べた.

  • 文献概要を表示

Spontaneous intramural rupture and intramural haematoma of the oesophagus: Kerr, W.F.(Thorax 35: 890~897, 1980)

 腹痛,胸痛の原因となる極めてまれな特発性食道壁内破裂と壁内血腫の自験5例を合わせた20例について検討した.本症の発生機序はマロリーワイス症候群や特発性食道破裂と同様に考えられているが,その程度は前者より強く,後者よりも軽く両者の中間型である.症状は後者に類似して,激烈な疹痛が特徴である.痙痛と共に嘔吐があったのは7例のみであり,また初老の女性に多い(14/20)のも異なる.典型例では胸骨下部の不快感に始まって,20~30分の経過で激烈な前胸部~心窩部痛となり,嚥下により増強し,しばしば背中・首・喉に放散する.11人に吐血がみられたが,その量は少なく,4人しか輸血を受けていない.

編集後記 中村 恭一
  • 文献概要を表示

 ヒト胃癌を対象とした数多くの研究を通じて,ヒト胃癌の診断・治療は著しく進歩した.このような中にあって,実験イヌ胃癌の作製とそれに関する研究が着々となされていた.日常,ヒト胃癌の診断・治療・研究に携わっている人々の多くは,実験イヌ胃癌に関する断片的な知識を何らかの手段をもって知っていたとしても,この情報過剰の時代においてはなかなかその全貌を知ることは容易でない.本号は,まさしく実験イヌ胃癌の全貌を知ることのできる集大成ともいうべきものであろう.これからは,ヒト胃癌およびイヌ胃癌に興味を持つ人々の間で互いに協力しながら,研究のための研究ではなくヒト胃癌の実際に役立つ研究を遂行していくことが必要であろう.なぜならば,わかりきったことであるが,医学の研究は人間存在あっての研究であるからである.症例報告4編のうち,3編は比較的まれな病変の報告であり,1編は胃癌の組織発生の研究に適した症例の報告である.いずれも十分な考察が行われているものであって,このような症例の集積は未来に資すること大であろうと思われる.

基本情報

05362180.16.7.jpg
胃と腸
16巻7号 (1981年7月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月12日~11月18日
)