胃と腸 12巻6号 (1977年6月)

  • 文献概要を表示

 胆道系疾患への関心の高まりとともに,本邦においても低緊張性十二指腸造影(HDG),経皮経肝胆道造影(PTC),内視鏡的逆行性膵胆道造影(ERCP),腹部血管造影,細胞診などの検査が積極的に行なわれるようになり,胆道系疾患の形態学的診断は以前に比し著しく進歩した.

 一方,欧米においては患者に与える負荷が少ない検査としてアイソトープによる検査法,Computed Tomography(CT)などの開発,改良が行なわれているが,本邦では経済的な理由からどこにでも設置できるとはいえず,まだPTC,ERCPなどのようにルーチン化されているとはいえない1).しかし,患者への負荷が少ない点で核医学的検査法,CTとともにEchographyなども注目すべきで,本邦においても今後活用されていく検査法と考える.

  • 文献概要を表示

 肝外胆道の悪性腫瘍の中には,早期発見が困難で,黄疸発現時にすでに病変がかなり進行し,診断確定時には根治手術不能の場合があり,また切除が可能であっても,その手術手技が比較的困難な上に,閉塞性黄疸によるriskが悪いなどのために,一般に手術成績は悪い.

 特に上部胆管癌は,従来その解剖学的位置関係から根治的切除術は困難であると考えられてきた.事実,切除不能の症例が多いのであるが,積極的に切除する方針で臨めば,切除可能の症例があり,教室においては最近切除例が増加している.

  • 文献概要を表示

 村上 司会は私と高木先生との共同になっておりますので,まず,高木先生と胆道の結びつきだけを,私からお話しいたします.

 皆さんご存じだと思いますが,高木さんは1969年に,いまのような簡単な局所の麻酔ではなくて,全身麻酔をかけて,胆道の出口を見つけて細い管を入れた.それがおそらく,内視鏡的に乳頭のバージンが破られた最初だろうと思います.

 それでは高木先生,よろしく.

  • 文献概要を表示

 頻回の下血を主訴として入院した患者に,X線学的に空腸の腫瘍を発見し,その組織像がStout1)の提唱するleiomyoblastomaであった症例を経験した.

 核の周囲が明るく,胞体が好酸性を呈する円形細胞より成るこのleiomyoblastomaは比較的稀な疾患であり,胃に発生することが最も多いが,食道,腸などの他の消化管,子宮,後腹膜などにも発生する.

  • 文献概要を表示

 Acanthosis nigricans(以下A. n.と略す)は臨床上特有の像を示し診断は容易であるが,その症例の半数に悪性腫瘍を合併するため注目されている1)~7)13).最近自覚症なく本症の診断によりすでに進行した胃癌を発見したが,不幸な転帰をとった1例を経験したので報告し,併せて最近10年間の報告例について文献的考察を加えた.

  • 文献概要を表示

 実体顕微鏡による観察の特徴は,X線,内視鏡の現在の観察の限界となっているareaを超えて,それを構成している表面の微細所見である,吉井のいう,胃小窩模様(Foveolar Pattern,以下FP)2)5),胃小溝模様(Sulciolar Pattern,以下SP)2)5)の変化を明瞭に認識できる点にある.それらの変化と組織学的変化との相関性が見出されるならば,“拡大して観察すること”の意義が生じてくるのであるが,現在の時点では,表面の微細所見(areaより小さい単位の変化)からの診断基準は確立されていない.今回,われわれは,X線,内視鏡,肉眼所見でともに病巣範囲の決定が困難であった随伴類似Ⅱb病変(Ⅱc+Ⅱb)を実体顕微鏡的に観察し,それによる病巣範囲の決定が組織学的検索とほぼ一致する結果を得たのでこれを報告する.

  • 文献概要を表示

 悪性貧血(以下PA)には,胃癌合併率が高いといわれているものの,わが国においてはPAは比較的稀な疾患であり,胃癌合併例の報告は少ない.最近PAに対して,自己免疫学的立場からの追究,さらに高ガストリン血症と体部腺萎縮型胃炎との関連が注目されている.われわれは,PAに2コの早期胃癌を合併した1例を経験したので,特にその胃炎像について考察したい.

  • 文献概要を表示

 胃および小腸への悪性腫瘍の転移は,しばしば報告されており,決して少ないとはいえない1)~3).しかし,その多くは剖検による報告で生前に臨床的に診断される例は数少ない.その中で悪性黒色腫は,これら転移性腫瘍中に占める頻度が相対的に高く,Pomerantz4)らが胃転移のレントゲン所見として紹介した“Bull's eye” signを呈した例も文献上に散見される5)~7)

 今回,われわれは消化管透視にて上記所見を呈し,転移性胃小腸悪性黒色腫と診断,4カ月後再検する機会を得,病理学的にも実証された1症例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

 髄外性形質細胞腫の中で,胃の原発性形質細胞腫はきわめて稀であり,Vasiliuの第1例目の報告16)以来,内外で約49例,本邦においては,伝田ら2)以来6例の報告があるにすぎない.われわれは今回,それぞれ第50例目,第7例目と思われる症例を経験した.この症例は悪性のものと判断されたにもかかわらず,再発の徴なく術後10年6カ月を経過しており,このような長期生存例の報告は他にみられないので,ここに報告し,あわせて多少の文献的考察を加える.

  • 文献概要を表示

 胃癌と胃肉腫の合併例は非常に稀とされている.最近,われわれは胃角部にBorrmann 3型進行癌,胃体部小彎に平滑筋肉腫を併存した例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

 原発性十二指腸癌は比較的稀な疾患であるが,従来の上部消化管X線検査や低緊張性十二指腸造影に加え,最近の十二指腸内視鏡検査の進歩により,その報告例は漸次増加しつつある.しかし,十二指腸早期癌の報告はきわめて少なく,本邦では,三戸1)の報告以後7例をみるにすぎない.

 われわれは,X線および内視鏡検査によって原発性十二指腸球部癌と診断し,病理組織学的検査の結果,早期癌であった症例を経験したので報告する.

  • 文献概要を表示

本号から5回にわたりリニヤ電子スキャンで得られた胆道,および膵腫瘍のエコーグラムを供覧し,あわせて超音波診断装置の進歩,電子スキャンの利点と欠点およびエコーグラムの読影等について簡単に解説する.

印象記

  • 文献概要を表示

 厳しい冬から,漸く春の兆のみえてきた近頃,ベルギーとイギリスで相次いで2つの消化器内視鏡関係の集会が開かれ,最近のヨーロッパの内視鏡の動向を窺い知る機会を得たのでその概況をご報告したい.

 その1つは2月24目から3日間,ブラッセル・ヒルトンホテルで,ベルギー消化器内視鏡学会主催のもとで開かれた第3回ブラッセル国際シンポジウムであった.今回のテーマ“What's new in endoscopy of the upper digestive tract in relation to radiology and surgery”が示すように,主題は胃炎,肝腫瘍,胆石,膵炎等の多岐にわたるものであったが,topicsはやはり,endoscopic coagulationとpapillotomyであった.初日午後のlaser in endoscopyのsessionでは,まずSilversteinら(Washington)によるイヌの実験潰瘍に対するendoscopic electrocoagulationとheater probeの最近の研究についての報告があり,次いでBrunefaud(フランス),Nach,Fruhmorgen(ドイツ)らにより,ヒトあるいは動物に対するlaser photocoagulationの成績の報告があった.議論はhigh powerを使用することの安全性,Neodymium-Yag laserとArgon-lon laserの優劣,あるいは再出血の問題などにっいて沸騰したが,最後にSilversteinによる,CO2ガスを併用することによって,その安全性と効率を高めることができるという報告は,今後の方向を示すものとして注目をひいた.

  • 文献概要を表示

 胃のスキルスは若年者または女性に比較的多く,その激しい浸潤性の増殖のために予後の悪い癌とされている.その組織発生や進展様式については,すでに長与ら1),中村ら2),佐野ら3)等の研究があり,粘膜内の印環細胞癌巣がスキルスの発生母地として重要視されているが,この印環細胞の発生起源や生物学的特徴についてはいまだ不明な点が多く,またスキルスの発生機序との関係についても多くの疑問が残されている.

 われわれは,印環細胞癌について一連の組織化学的検索を行ない印環細胞の生物学的特徴の一端を明らかにしえたので報告したい.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 E. D. PalmerのPractical Points in Gastroenterologyの邦訳が丹羽寛文,金子栄蔵氏の手によって出された.この本は原著者と邦訳者の序にかいてあるように,もともと医学生と卒後研修医のためにかかれた消化器病学のテキストである.

 E. D. Palmerは1951年にBenign Intramural Tumor of the Stomach (Medicine, Vol. 30. 81-181. 1951)を書いた人だけに,この本の内容は極めて豊富で,これだけの内容を195頁によくまとめあげたと思われる.しかも,世界中どこで読まれても間違いないように細かい配慮があちこちに配られている.例えば,“無鉤条虫の中間宿主はウシ,ラマその他の有蹄動物である”とし,コンゴ地方やレバノンではまだ人口の7~15%にみられる舌虫類感染症まで記載してある.また豊富な内容を簡潔,明瞭,正確に記載している.Zenker憩室は口腔および下咽頭の項目に記載し,その発生部位は,Lannier-Hackermanの間隙だと正確である(わが国の教科書には間違いが多い).また原発性アミロイドーシスの半数に胃にも病変がみられることや皮膚疾患と消化器のところでは稀だが大切な悪性萎縮性丘疹症(Papulose atronhiante maligne)がDégos症候群としてちゃんと記載されている.

  • 文献概要を表示

 佐野君が逝って1年経つ.早いものである.ところが,なくなられてからこの臨床病理ノートが計画され,でき上ったのだという.しかもそれは佐野さんが書こうとして残した原稿があったわけではなく,大部分学会や講演会で話したものをまとめたものだという.聞いてこんなに驚いたことはない.

 ○○先生講演集というものが時に人の死後出版されることはある.しかしこのノートは単にレコードしたテープを速記したものではない.見れば分かるように,文章より標本の写真やシェーマの方が多いのである.どうしてこんなことができたのか?

編集後記 信田 重光
  • 文献概要を表示

 十二指腸ファイバースコープによる乳頭内挿管の手技が確立され,また経皮的経肝胆管造影法が普及するにつれて,従来,盲点とされていた胆道,膵悪性腫瘍に対する関心が,ここ数年一挙に昂まってきた.本号では胆道系悪性腫瘍の特集号として,この領域の癌の診断と治療の現況について,診断面を武内教授ら,外科治療面を土屋教授らの執筆により掲載することができた.おふたかたともこの領域に永年取り組んでこられたので,診断面では,これまでそれぞれの分野の学会で討論されていたPTC,ERCP,HDG,細胞診,血管造影など各種検査法の問題点がこの一篇に集約されているし,また外科治療面でも手術成績の現況,問題点,その成績向上のための早期診断に対する対策などが,いずれも豊富な経験に基づいて論じられている.この二篇の論文により,胆道系悪性腫瘍の診断,治療の現況を充分に把握できると思う.また座談会も,それぞれの検査のベテランにより手技,診断上の細かい点が,村上教授,高木博士の司会でまとめられており,特にPTC,ERCPの選択の問題,これらの手技による合併症の防止策,早期発見のための臨床症伏や生化学的検査値の読み方,primary sclerosing cholangitisの問題,更に放射線療法の試みまで.実地臨床上の種々の問題点が討論されており,きわめて有益な座談会であると思う.

 その他,研究欄,症例報告など,いずれも新しい分野を開拓する研究,珍らしい症例の発表であり,全篇を通じて,読者の皆さんに喜んでいただけるこの6月号であると思う.

基本情報

05362180.12.6.jpg
胃と腸
12巻6号 (1977年6月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
11月12日~11月18日
)