精神医学 60巻5号 (2018年5月)

特集 サイコオンコロジー

特集に寄せて 大西 秀樹
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 がん医療は日々進歩しつつある。治療法の進歩は生存期間の延長および治癒率の向上をもたらした。特に最近の薬物療法の進歩には,目を見張るものがある。支持療法の発展は患者さんの苦痛軽減に大きく貢献している。しかし,がんという病気は私たちの人生に突然現れる。がんの診断は今なお大きなストレスである。また,治療が進歩したものの,がんによる死者数は増えており,わが国における死因の第一位が続いている。また,治療中にはさまざまな問題が生じる。がんが治癒しても機能的,社会的な問題を抱え,精神的に苦悩している人も多い。家族も患者さん同様に苦悩していることが多い。精神的な問題を抱えるとがん治療と日常生活に負の影響が生じることから,がん医療におけるこころの問題への対応は欠かすことができない。その問題を解決するために生まれたのがサイコオンコロジーである。

 サイコオンコロジーが日本に導入されたのは1980年代の後半である。がん告知,不安,抑うつ,せん妄などが真剣に議論されてきた。その後も,治療の進歩,時代の要請に応じて進歩を重ねている。また,精神医療の従事者もがん患者と接する機会は以前に比べて格段に増えている。したがって,サイコオンコロジーを専門としていなくても精神医療に従事する医療者は,最新かつ重要な情報に通じている必要がある。そこで,本特集は組まれた。

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はじめに—わが国の疾病構造におけるがんの位置付け

 がんは1981年にわが国の死亡原因の第1位となり,以降もその座は変わらず,現在では,がんによる死亡者数は年間37万人を超え,総死亡の約30%を占めるに至っている。また超高齢社会を迎えた今,年間100万人以上が新たにがんと診断されている。現在は,わが国の国民のうち2人に1人が生涯においてがんを経験する時代である。がん治療は飛躍的に進歩し,がん患者の5年生存率が約50%にまで向上したが,最も頻度の高い致死的な疾患であることに変わりはない。したがって,がんは国民病という位置付けがなされており,国も疾病対策として最も力を入れていることから,2007年にはがん対策基本法が制定された。

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はじめに

 がんは日本人の死因の第1位を占め,毎年30万人以上の人ががんで亡くなっている。しかも,この数は高齢化とともに年々増加し続けており,2015年のがん死亡数は1985年の約2倍となっている19)。このようなことから,がんは,実臨床においては致死的ではなくなりつつあるものの,一般にみれば未だに死を意識せざるを得ない病気の代表と考えられている。また,がん患者は病気の経過中に,診断から始まって,進行・再発や積極的抗がん治療の中止など,何回にもわたって告知を受けることがあり,さらにさまざまな要因が加わってほとんどの患者は,程度の差はあれ不安や抑うつを来す12)。Mitchellら28)は健常者を基準にして,がんサバイバーの不安の長期経過について調べた10編の研究および抑うつの長期経過について調べた16編の研究を用いて,それぞれの相対危険率を求めると,不安は診断後経過中ずっと持続し,10年過ぎになると相対危険率RR 1.50(95%信頼区間CI 1.41-1.60)と有意に高くなるのに対して,抑うつは診断後からRR 2.19(95%CI 1.71-2.79)と有意に高いが,それは2年までしか続かず,10年以上の経過でみると次第に低くなることを報告している。こうした背景もあって,主な身体疾患患者のうち,がん患者はオッズ比2.3倍(95%CI 1.1-4.8)と自殺の危険性が高いことが分かっている25)。がん患者の不安や抑うつが治療を必要とするレベルになった場合,その多くは精神医学的な診断基準にあてはめると,適応障害とうつ病に相当し,がん患者に最も多くみられる精神疾患である。その評価,診断および治療は,がんそのものの治療を継続し,患者のQOL(quality of life)を良好に保つためにも重要である。そこで本稿では,がん患者でよく問題となる抑うつ状態すなわち,うつ病と適応障害について,その特徴を概説する。

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はじめに

 近年になって,一般病院の入院患者層は大きく変わった。超高齢社会を迎えて入院患者は高齢化の一途を辿っており,認知者の患者も増えている。また,がんで入院する患者も増加傾向にあるが,これらの患者はいずれもせん妄の発症リスクが高いと考えられる。このように,一般病院では入院患者の大半がせん妄ハイリスクであり,せん妄の発症が後を絶たないことから,医療スタッフは日夜せん妄の対応に追われていると言っても過言ではない。

 せん妄でみられる不穏や幻覚・妄想などの精神症状は,言わば精神科医の守備範囲である。また,治療薬として用いられる抗精神病薬によく精通しているのは精神科医であるため,医療現場からはせん妄に関する精神科医への期待がきわめて大きい。

 このようなニードの高まりに対して,精神科医がいかに応えるかは大きな課題である。一般病院の1割程度にしか精神科常勤医が配置されていない24)ことを考慮すると,中・長期的なプランとしてはリエゾン精神科医や精神腫瘍医(サイコオンコロジスト)を増やし,一般病院やがんセンターなどにおける精神科診療を充実させることが挙げられる。ただし,すべての病院に精神科常勤医を配置するのは現実的に無理がある。そこで,まず精神科医ができることは,身体科医に対する教育的なかかわりではないだろうか。

 そもそも,せん妄の直接的な原因は身体疾患や薬剤,手術であるため,一般病棟や緩和ケア病棟,ICU(集中治療室)などで発生することがほとんどである。また,抗精神病薬による薬物療法はあくまで対症療法に過ぎず,主たる治療は身体疾患の治療や原因薬剤の除去である。したがって,身体科医が主治医としてせん妄治療をリードする立場にあるため,「身体科医がせん妄に対して適切にアプローチできるようにサポートすること」こそが,精神科医に求められる役割ではないだろうか。そのためには,精神科医が非常勤医として一般病院にかかわったり,学会や研究会などで身体科医と接点を持ったり,さらには初期・後期研修医を指導したりする際などに,実践的な知識を伝えていくことが重要と考えられる。

 本稿では,せん妄に関して「精神科医として何を知っておく必要があるのか」「精神科医として何を身体科医に伝えればよいのか」という視点で,がん患者にかかわる精神科医の立場から最新の知見も含めて概説する。

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“Collusion”との出会い

 Nさんは,“いつも微笑みを絶やさぬ礼儀正しい紳士”という感じの初老の男性だった。民間航空会社の元パイロットだったと聞いている。彼は終末期肺がんで,胸部痛のコントロールのため,東札幌病院緩和ケア病棟(以下,当院)に入院していた。気になることと言えば,経口モルヒネによる胸部痛のコントロールが中々つかず,投与量が500mg/日にも及んでいたことである。しかも,NRS(Numerous Rating Scale)低値の疼痛でも不安感が強く,予防的にもレスキューのモルヒネを使用していることが分かった。そこで,レスキュー薬剤の一部をbenzodiazepineに置き換えてみたところ,それでも彼の胸部痛は軽減されることが判明した。しかし,私が回診で病状を尋ねると,彼はいつも微笑みながら「多少の痛みはありますが大丈夫です」と答えるのが常であった。私も気になりながらも何故か,それ以上聞き出すことができず,いつもその場を後にしてしまう日々が続いていた。そんなNさんにもある日大きな変化が訪れた。私が,彼に胸部CT画像を見せながら,癌性胸膜炎による胸水の急激な増加を伝えた数日後のことである。彼は,ある夜,夜勤の病棟看護師に性的な言葉を発してしまったのである。これは,普段の彼の人となりからは全く想像できない行為であった。私は,翌日の回診で「何か変わったことがありましたか?」と彼に尋ねた。それに対して彼は,「自分が発狂した夢を見ました」と答えた。私は,非常に驚いたが,何故か強い不安を感じて「そうだったんですね」とだけ言葉を残し,その場を去った。

 私は,彼とのコミュニケーション障害について,当時当院に6か月間のサバティカルで滞在中の,スイス,ローザンヌ大学病院リエゾン精神医学診療部教授F. Stiefel先生に相談することにした。「彼は非常に強い不安を抱えているが,いつも微笑みを保った紳士を装い,誰にもそれを打ち明けようとはしないので,彼とのコミュニケーションは難しい」とStiefel先生に伝えると,Stiefel先生は,こう仰った。「情動のセルフ・コントロールは長年パイロットをしてきた彼にとっては,中心的な問題と言えるだろう。それは,君にとっても同じかも知れないね。なぜなら,君も長年外科医だったから」(パイロットも外科医も職業上,情動のセルフ・コントロールが必要だという意味)。その時,私は突然気付いたのである。自分も彼と同じ身体的問題を抱えて死への強い恐れを抱いてきたことを。しかし私は,それを医師としての職業意識から強く抑圧し,患者さん達の前では,あたかもそのようなことが全くないように振舞ってきた。

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はじめに

 都市部を中心に高齢者数が急激に増加をしており,診療においても高齢者の占める割合がさらに高くなってきた。高齢者を診療する場合に,何らかの老年症候群を持つことが一般的であり,そのうちの一つに認知症やせん妄がある。特に認知症は,65歳以上の人口の15%が認知症と推測されるなど,広く認められつつある一方,認知症の併存が,がん診療にどのような影響を及ぼすのか,十分に把握・認識されていない課題がある。本稿では,高齢者のがん診療を踏まえ,認知機能障害を持つ場合のがん診療の現状についてまとめたい。

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患者-医師間のコミュニケーションの重要性

 コミュニケーションとは,社会生活を営む人間間での,言語・文字その他視覚・聴覚に訴えるものを媒介として行われる知覚・感情・思考の伝達(言語的コミュニケーション)であり,また動物個体間での身振りや音声・匂いなどによる情報の伝達(非言語的コミュニケーション)である13)。医療におけるコミュニケーションにおいては,患者や家族から言語的に症状を聴取したり,医療情報を伝えるなどの言語的コミュニケーションに加え,表情や身振りなどから病状を認識したり,気持ちを汲み取るなど,非言語的コミュニケーションも重要である。

 インフォームドコンセントを前提とする医療においては,患者に対して心身の状態と検査や治療といったこれから行われる医療行為について十分説明を行い,きちんと理解したことを確認し,患者自らの自由意思に基づいて医療者と合意が求められる。

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はじめに

 東京大学医学部附属病院心療内科では,1996年6月から当院血液腫瘍内科で造血幹細胞移植を受ける患者全例のサポートを行っており,1996年6月から2018年2月までに当科が担当した血液悪性腫瘍患者数は延べ512名であった。当科の医師は,移植前から退院もしくは治療中断(死亡例を含む)となるまでの数か月を,一人の患者と,往診する形でかかわっていく。さらに,患者が希望する場合には,退院後も継続的に外来加療を行っている。

 造血幹細胞移植は,治癒が望める治療である一方,退院後も感染防止のためにさまざまな生活上の留意点が存在する。実際,移植後患者用の分厚い生活指導要綱を手にした途端に,移植の成功への喜びが,待ち受ける退院後の生活への落胆に変化した患者も経験した。

 本邦で最初の造血幹細胞移植が施行された1974年以降,移植件数は右肩上がりに増加し,現在では年間5,000件以上の造血細胞移植が行われている15)。造血幹細胞移植後に報告される症状および症候群には,性機能障害,認知障害,疲労,不眠症,筋骨格症状,感情苦痛,怒りおよび抑うつなどが含まれており20),移植後長期生存者が増える中,医療者は,身体的に健康であるか否かだけではなく,移植後の患者のquality of life(QOL)全体に目を向ける必要がある(表)。

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はじめに

 ケミカルコーピングという聞き慣れない言葉が,最近緩和ケアの領域で聞かれるようになっている。Brueraらは「苦悩する終末期のがん患者にみられる薬の使用による不適切なストレスの対処法」1)と定義している。精神科医にとってコーピングという言葉は馴染み深い用語である。ケミカルコーピングとは,本来の目的外にオピオイド鎮痛薬が使用されてしまった不適切なコーピングを指している。

・オピオイドのレスキュー使用回数が極度に増えている(たとえば1日20回以上)

・オピオイドによると思われる眠気などの副作用が出現しているのに増量を希望する

・不安なときに,眠れないときに,それらの症状の緩和を目的にオピオイドを使用してしまう

 緩和ケアチームに関わる精神科医は,このような患者をオピオイドの依存症を疑う患者として診察した経験があるのではないだろうか。これらの症例はケミカルコーピングを疑うきっかけとなる。

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症例

 Aさんは大学卒業後,希望していた会社への就職が叶わず,弁護士を目指して勉強を続けていた。満を持して臨むはずだった3年目の試験本番前日,胃がんであることが判明。すぐに幽門側唖全摘出と化学療法を受けたが,さらにその半年後,腹膜へ転移していることが分かる。

 転移が発見された一週間後,Aさんは睡眠薬を大量に飲んで自殺を図った。幸いなことに,母親に発見され,救急車で搬送。命に別状はなかったが,腹水が溜まっていたことや,精神面でのフォローが必要と診断されたため,入院することになった。

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はじめに

 がんは本邦の死因の第1位であり,日本人にとって最も死を意識させる疾患といっても過言ではない。その診断は,患者のみならず,家族の日常や将来を大きく揺るがすことにもなる。

 本稿では,家族・遺族に生じるさまざまな問題を取り上げ,そのかかわりのあり方について紹介する。

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はじめに

 双極Ⅱ型障害の病態は1976年にDunnerらにより初めて描写されて18),それから20年ほど経過した1994年にDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)-Ⅳで診断名として採用された。疾患として比較的長い歴史があるにもかかわらず,その病態への理解はいまだ乏しく,治療法は確立していない。発症してから適正な診断を受けるまでの期間は,単極性うつ病では3.3年,双極Ⅰ型障害では7年であったが,双極Ⅱ型障害では12年の歳月が費やされていた21)。米国では製薬会社の影響もあり,特に小児への過剰診断が問題になっている面も一部にあるが,全般的には双極Ⅱ型障害の過小診断や誤診の問題が大きい21,27)

 診断だけではなく,治療法に関しても,問題を抱えている。これまでに双極Ⅱ型障害の患者のみを対象として,薬物療法や精神療法で介入した,大規模な二重盲検ランダム化比較試験は実施されていない。ランダム化比較試験で特定の薬剤とプラセボでのコントロール群を比較した研究も限られている。多くの研究は対象者が双極Ⅰ型障害患者との合同であり,方法もオープンラベル試験や過去に別の目的で実施された研究の事後解析である。それゆえに,いまだ双極Ⅱ型障害の適切な治療への指針となるエビデンスが不十分である。

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抄録 本研究は愛媛大学病院精神科外来において,成人期発達障害における発達障害の特徴を,診療パスの内容により検討することを目的とした。対象は2013〜16年に当院を初診し,発達障害の精査を希望した18歳以上の患者104名(男性57,女性47)である。診療パスは生育歴の聴取や主訴の問診票と,AQ-J,ASRS,CAARS,BDI-Ⅱ,SFS,SRSなどの質問紙とWAIS-Ⅲで構成されている。対象者のうちASD29例,ADHD18例,精神疾患に該当しない18例の3群を比較した。結果,ASD群はADHD群と比較して有意に男性,精神症状の主訴が多く,SFSが低値,WAIS-ⅢのVIQが高値であった。ADHD群は不注意の主訴,既婚者の割合,ASRSが有意に高かった。診療パスは精神症状や社会機能の把握に一定の有用性があった。本研究は予備的研究であり,診療パスにはさらなる検討が必要である。

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抄録 五苓散は浮腫,下痢,嘔吐などに使われ,安全性が高く高齢者にも用いられる漢方薬の一つである。今回,慢性的な口渇と抑うつ状態が五苓散により改善した1例を経験した。症例は62歳の女性。Amoxapineで小康状態となったものの,約9年間,口渇を訴え続けていた。抗コリン作用の少ない抗うつ薬に変更したが変化はなく,内科的問題も指摘されなかった。このため五苓散を投与したところ,投与1か月後に口渇は改善した。五苓散は水分バランスの調整作用から口渇に効果があるとされているが,抗うつ作用,抗不安作用を持つと考えられる茯苓を含んでおり,器質的な口渇のみならず精神的な口渇感にも効果を有する可能性が考えられた。

「精神医学」への手紙

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 筆者らは2017年12月に,在日ガンビア大使であるBintou Kujabi Jallow氏の知己を得て,ガンビアの精神科医療現場を視察する機会を得たのでここに報告する。

 ガンビアは西アフリカに位置し,国名の由来でもあるガンビア川の両側を国土に持ち,その最大幅は48キロメートルに過ぎない。河口部を除く国土をセネガルに囲まれている。人口はわずか200万人程度で,首都バンジュールの人口は約3万5千人である。ガンビアはかつてイギリス領であり,現在の国土は,1889年にイギリスとフランスがガンビア川の両岸約200マイルをイギリス領とするとした合意に基づいている。したがって,ガンビアを取り囲んでいるセネガルの公用語がフランス語であるのに対して,ガンビアの公用語は英語である。

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 近年はインターネットやメディア報道などを通じて発達障害についての啓蒙が進み,一般の精神科外来を発達障害の疑いで受診するケースが明らかに増えてきている。つまり,発達障害の診療について実用的な情報を求めている精神科医が増えている状況にある。しかし一方で,こうした要請に対する情報供給の状況はどうだろうか? 一般向けの啓発本は多く出版されるようになってきているが,臨床家向けに必要な専門的知識を体系的にまとめた情報というのは,きわめて得にくい状況になっている。また一方で,発達障害については,脳科学の研究対象としても,世界中の第一線の研究者からの関心が集まってきており,最近10年ほどの間に基礎から臨床まで膨大な量の研究知見が蓄積され,専門家から見ても到底把握しきれない状況になっている。

 そうした中,本書は,最新の学問的な知見や社会状況に基づいて,症候学や教育支援や社会制度から心理学的評価や脳科学まで網羅している。また,ライフサイクルの観点からみても,乳幼児期から老年期まで網羅しており,非常にユニークかつバランスの良い構成になっている。つまり,学問的でありながら,また一方で大変に実践的で具体的な内容にもなっている。臨床研究で用いられることも多い,診断や臨床評価のための国際的で標準的なツールについてもかなり網羅的に紹介されていて,さらには入手方法に至るまで記載されており,驚くほどに有用である。

学会告知板

論文公募のお知らせ

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「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。

ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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目次

今月の書籍

次号予告

編集後記
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 本号では大西秀樹先生がサイコオンコロジーの特集を組んでいます。本特集を読んで,がん患者さんと家族がかかえている精神的,身体的苦悩は想像を絶するものがあり,私たち精神科医はその苦悩を理解し,積極的に診療,援助をしなくてはならないとつくづく感じました。明智龍男先生ががん患者の自殺について論じていますが,その頻度は驚くほど高いです。しかもその原因がうつ病であることが多いのですから,すべての精神科医が積極的に介入することにより,もっと自殺を防ぐことができるのではないでしょうか。

 筆者が精神科医になった頃,がん患者のうつ状態については心因性(反応性)のうつ病(うつ状態)という診断がなされることがあり,そうなると当時の治療論では積極的な抗うつ薬治療は行われない傾向にありました。しかし,DSMが登場して,いったん内因対心因の問題が棚上げとなり,大うつ病性障害に新規抗うつ薬が使われるような一種の脱構築が行われてからは,積極的に抗うつ薬治療が行われるようになってきています。しかも新規抗うつ薬は副作用も少なく,がん患者を副作用によりさらに苦しめることもなくなってきました。末期のがん患者が抗うつ薬も含めたうつ病治療により憂うつが解消されて笑みを浮かべられるようになった症例を経験したことがありますが,症状改善にかかわることができてよかったと感じました。本号の特集ではさまざまな観点からサイコオンコロジーのトピックスを紹介しています。がんは多くの方がかかり得る病気ですから,本特集を機会に認識を深めることは精神医療の質の向上に貢献すると思われます。

基本情報

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精神医学
60巻5号 (2018年5月)
電子版ISSN:1882-126X 印刷版ISSN:0488-1281 医学書院

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