Japanese
English
特集 現代における解離—診断概念の変遷を踏まえ臨床的な理解を深める
解離性障害の現代的な意義
Current Perspective of Dissociation and Psychiatry
金 吉晴
1
Yoshiharu Kim
1
1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
1National Institute of Mental Health, National Center for Neurology and Psychiatry, Tokyo, Japan
キーワード:
解離
,
dissociation
,
ジャネ
,
Janet
,
心因
,
psychogenic
,
自動症
,
automatism
,
トラウマ
,
trauma
Keyword:
解離
,
dissociation
,
ジャネ
,
Janet
,
心因
,
psychogenic
,
自動症
,
automatism
,
トラウマ
,
trauma
pp.993-1000
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207347
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抄録
解離は願望充足のための自己暗示とも言われ,ヒステリーの視点から論じられたこともあったが(心因仮説),症状の増殖をもたらしたのは患者のみならず治療者の願望であり,そのことが病状記述を複雑にした。記述的混乱の解決のためにジャネは解離の生成論的仮説を提唱したが,DSM-Ⅲ以降,心因仮説が顧みられることは少なく,生成論不在の解離の診断分類はDSM-5に至るまで不安定な混乱を生じた。DSM-5ではPTSD論と解離論が近接し,PTSDにおいては意識から切り離された表象が解離現象としてフラッシュバックを生じることが記載され,解離においてはトラウマ体験との関連や,幻覚様体験の存在などが記載されることでジャネの解離論への回帰がみられた。しかし,解離の定義は精神的諸機能の結合の弛緩というにとどまり,ジャネがフラッシュバック,多重人格,幻覚を統合的に説明するために用いた心理的自動症への言及はない。DSMにおける解離論の変遷は,失われた心因論の復権の歩みとも言えるが,さらに推進されれば精神病体験における解離の役割が再検討され,疾患分類学の再考につながることも想定される。
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