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編集後記
T. I.
pp.572
発行日 2018年5月15日
Published Date 2018/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205606
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本号では大西秀樹先生がサイコオンコロジーの特集を組んでいます。本特集を読んで,がん患者さんと家族がかかえている精神的,身体的苦悩は想像を絶するものがあり,私たち精神科医はその苦悩を理解し,積極的に診療,援助をしなくてはならないとつくづく感じました。明智龍男先生ががん患者の自殺について論じていますが,その頻度は驚くほど高いです。しかもその原因がうつ病であることが多いのですから,すべての精神科医が積極的に介入することにより,もっと自殺を防ぐことができるのではないでしょうか。
筆者が精神科医になった頃,がん患者のうつ状態については心因性(反応性)のうつ病(うつ状態)という診断がなされることがあり,そうなると当時の治療論では積極的な抗うつ薬治療は行われない傾向にありました。しかし,DSMが登場して,いったん内因対心因の問題が棚上げとなり,大うつ病性障害に新規抗うつ薬が使われるような一種の脱構築が行われてからは,積極的に抗うつ薬治療が行われるようになってきています。しかも新規抗うつ薬は副作用も少なく,がん患者を副作用によりさらに苦しめることもなくなってきました。末期のがん患者が抗うつ薬も含めたうつ病治療により憂うつが解消されて笑みを浮かべられるようになった症例を経験したことがありますが,症状改善にかかわることができてよかったと感じました。本号の特集ではさまざまな観点からサイコオンコロジーのトピックスを紹介しています。がんは多くの方がかかり得る病気ですから,本特集を機会に認識を深めることは精神医療の質の向上に貢献すると思われます。
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