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I.序言
いわゆる超皮質性運動失語(以下TCMA)は①有用な自発語が減少ないし消失する,②言語理解は良好,③復唱が可能である,と定義される。このような失語型の記載はLichtheim(1885)8)に始まるが,上記の定義に基づくTCMAの内容は必ずしも均質ではない。既にGoldstein(1917)7)はTCMAをBroca失語の回復期などにみられる第I型と前頭葉病変により発話の発動性低下を呈する第II型に分けている。Goldstein以後,欧米圏では本失語への関心は薄れていったが,ソ連のLuria(1968)9),197610),197812))は思考から言語への過程の間に内言inner speechの機能を認め,この内言レベルでの文章構成障害としてdynamic aphasiaの概念を提唱した。そして"発動性低下"の考え方を批判し,dynamic aphasiaと古典的TCMAは異なることを主張している(1976)10)。だが,Luria派内ではこのdynamic aphasiaも比較的純粋な第1変種と文法障害を呈する第2変種に分けられるとする意見もあるという(Luria,1976;松野による)11)。Luriaのdynamic aphasia自体もその内容の不均質性が問われているようである。また,近年上前頭回内側面の損傷によるTCMAが注目され,従来のTCMAとの違いが強調されたりしている(ArdilaとLopez,1984)1)。
このようにTCMAの病像は必ずしも一様ではない。われわれはTCMAの不均質性が主に病変部位に関係するとの想定に基づき,病変部位と病像との対応関係を検討してきた。今回,前頭葉の病変部位の上から,TCMAをF1型,F2型,F3型に分類し,その亜型分類の可能性について論じたい。
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