臨床検査 9巻9号 (1965年9月)

特集 塗抹検査

カラーグラフ

リンパ腺の細胞 堀内 篤 , 天木 一太
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 リンパ腺の細胞の観察には,穿刺による組織液を塗抹するか,あるいは剔出したリンパ腺の割面を捺印してWright染色を行なうのがよい。塗抹標本では組織学的構造の観察はできないが,細胞学的所見は組織標本以上によく観察される。正常リンパ腺の細胞はほとんどが成熟リンパ球であって,他の細胞成分はきわめて少ないが,軽度の刺激によっても容易に反応して種々の細胞が出現するために,その診断がむずかしい場合がある。ここにはしばしば遭遇する疾患の特長ある細胞像を掲載する。

(写真によって色調が異なるのは使用フィルムが相違するためである。)

グラフ

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 PPLO (Pleuropneumonia-like organism)はMycoplasmaともよばれ,その大きさや性格がウイルスと細菌の中間に位する微生物で,その病原性に関する論争もあったが原発性異型肺炎(Primary atypical pneumonia)の病原体がPPLOであることが明らかにされて以来,さらに別の観点からの興味と関心がもたれてきた。

 しかしながらその特異な性格,—細菌滬過器を通過しうる程度の大きさから,もっと大きなものにまでひろがっている多形性は,一面では大きな特徴でもあるが,他面には固定を困難にしている面がある。さらに,この微生物の生化学的免疫学的性状は未解決のもの,あるいは複雑な方法によらなければならないものが多く,日常の臨床検査では不本意ながらもっぱら集落性状の観察に重点がおかれている。

総論

塗抹検査について 高橋 昭三
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塗抹検査の意義

 顕微鏡的形態学的検査,または単に形態学的検査の一つに塗抹検査がある。一般に,形態学的検査は,眼で結果をよむものであって,人間の訓練された感覚によって判定されるものである。その結果は,計測機器,たとえば光電比色計などを介せずに,判断される。必然的に,結果は陽性,陰性の二つのいづれかになることが多く,数字で表現されることは少い。

 ここで得られた結果は,次の段階の検査を右または左にむけるために利用され,時には,直接に患者の病名を左右することさえある。また,ここで陽性という結果の生じた場合は,眼でみたものである以上,動かしがたいものとなることが多い。たとえば,癌であるとか,結核菌であるとか,白血病であるとかが,決定されることが多い。これは形態学の特色でもある。これほど大切なものであるが,経験的要素に依存していることが多いのも事実である。

技術解説

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はじめに

 塗抹標本による細胞の観察は,本来,血球観察のために用いられたものである。血球の一般的観察法としては,塗抹ギムザ染色あるいはライト染色標本がもっともすぐれていることは一般に認められているところである。

 その後,超生体染色法,位相差法その他の観察法が考えられ,それぞれ長所や特長があるが,そしてこれらも広義の塗抹検査の中にいれられる方法なのであるが,臨床的に用いられる一般的観察法としては,塗抹ギムサ染色法あるいはライト染色法は,所見のすぐれている点や便利さからいってこの方法にまさるものはない。

血液塗抹標本のつくり方 原島 三郎
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はじめに

 血液標本を作り,見ることは血液検査の最も基本的な技術であって,きれいな標本を作り,正確な結果を出すことが必要である。

 しかしながら実際には常に良好な標本を作ることはなかなかむづかしいことであり,不良の標本を苦心しながら検鏡する場合もしばしばあるので血液検査を担当する人は正しい標本の作り方の知識をもち,日々の検査にこれを応用することが望ましい。また血液を塗抹する手技は簡単ではあるが,毎日やっていないとすぐに下手になってしまうものなので,血液検査と共に各種の検査を取扱っている一般検査室に勤務している人は,特に血液塗抹手技の習熟に努力することが必要である。

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はじめに

 最近,病院臨床検査部門において細胞診断(以下細胞診)が早期癌発見の上に欠くことのできない重要な手段となってきている。

 人体の内外を形成している細胞は日々営まれている新陳代謝作用によって自然に剥離している。もし肉眼ではみえない癌あるいは前癌状態があるとそれらの細胞も他の細胞と入り混って剥離してくる。このように細胞診の特長は何といっても第一に患者に苦痛を全く与えないか,与えたとしてもごく少しで検査に必要な材料が得られることである。第二に人工的な操作を用いて細胞を剥離させる場合は別として自然剥離の細胞を検査に用いる場合はその取材はきわめて簡単である。

悪性腫瘍細胞診 福島 範子
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はじめに

 悪性腫瘍の細胞学的診断が広く日常化して行なわれるようになつた今日,Papanicolaou法をはじめとする一般的な手技や,腫瘍細胞の特徴などに関する知識はここ10数年来,わが国でもかなり常識化してきた。ただ臨床検査全般の中央化,能率化,高度化の傾向とともに検査にたずさわる者が,提出される材料と患者との結びつきを,ともすれば忘れやすい環境になりつつあることは事実である。しかしわれわれが常に考えておかねばならぬことは,いかなる条件で取られた細胞か,ということである。材料のとり方の検討は近年格段の進歩をとげ,腫瘍細胞診の適応範囲を拡げて対象とならない臓器が少くなつた。一方,細胞の見方も多種染色法の応用や,電子顕微鏡的,生物学的観察とともに次第に微細構造に及びつつあるのが現在の動向である。今回の特集では各材料別の担当者の記述に当然,腫瘍細胞も含まれ,重複する部が多いと思うので,一般病院検査室のルーチン・ワークとしての細胞診には「どんな材料が適当で」それを「どう扱えば良いか」この2点にしぼって述べる。

尿沈渣の実際 加藤 暎一 , 堺 秀人
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はじめに

 尿沈渣は比較的簡易な検査法でありながら,腎臓その他全身疾患の診断と予後判定に大きな意義を有することは改めていうまでもない。しかし実際に行なわれている方法は,かなり各個人,各施設によってまちまちなものがあり,お互の値を比較するのに困難を感じることがまま見うけられる。故に本稿においては最も標準的と思われる手技を紹介し,あわせて各々の沈渣のもつ意義について述べたいと思う。

 なおこの問題に関する詳しい成書ないしは綜説としては,代表的なものとしてはLippman1)Strauss2)Letteri3)などを参照せられたい。

糞便の検鏡検査 日野 貞雄
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はじめに

 糞便検査は胃腸病の臨床検査のうちで最も簡単で,しかも診断的価値の高いものであることは衆知のことである。しかるにレ線や内視鏡のような検査法が飛躍的な進歩をとげた現在,糞便検査の価値が低く評価され,ともすれば,ないがしろにされる傾向が生じてきた。たとえば回虫症は年々減少し,私たちの病院でも回虫卵を糞便検査により発見することが稀となったことも糞便検査を省略する口実となっている。一方,潜血反応も,食餌制限など面倒な前処置が必要であると同時に,出血しない胃潰瘍や胃癌のあることが,レ線や胃カメラにより確認されるようになってから,診断的価値が低くなってきた。そしてスクリーニングテストとしての潜血反応も問題にされるような時代になってきた。

 このように糞便検査は次第に批判される立場にたたされたが,材料の入手が最も簡単であり,検査も比較的容易であるので,にわかにすてがたい。特に私は潜血反応や虫卵検査以外の検鏡検査が重要であると考えていたので,原稿の依頼を引き受けることにした。というのは胃腸病本来の役目は消化吸収であり,その障碍というものは胃癌や胃潰瘍などの器質的疾患と同等,あるいはそれ以上に重視されなければならないはずである。ところが消化吸収障碍を知るには非常に複雑な消化吸収試験を行なわなければならず,臨床的に応用する階段には達していない。そこで糞便から消化吸収の程度を推察することが重要となってくる。

寄生虫のための塗抹検査 山中 学
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はじめに

 人体寄生虫症の多くは,患者の血液,糞便あるいは喀痰のなかに虫体または?子,あるいは虫卵を検出して確定するので,これらの検査は日常検査として大へん重要である。通常塗抹検査に用いられる材料は,血液,糞便および喀痰などで,表に示すように,それぞれの虫に適応した検査材料と,あわせて検査法を選択することが必要である。

 ここでは,一般に検査室で行なわれている人体寄生虫の検査法としての塗抹検査と,それに関連したいくつかの検査法について述べる。

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I.標本作製準備

 細菌検査の第一歩は,病材料中に存在する微生物をつかまえることであり,その為にはまず,どんな微生物が材料中に存在するかを知らなければならない。便宜上,病材料が送られてくるとすぐ,分離培地にうえることが多いが,労を惜しまずに,その材料を一枚のスライドグラスに塗抹して,みておけば,爾後の検査が定法通りに進まないか,あるいは予期したような結果が得られない場合に,もう一度最初からやり直さなくてもすむし,また,最初に材料中の微生物をグラム染色でみておくことによって,どんな分離培地を使い,どんな順序で検索を進めたら良いか,おおよその計画が立つ場合が多い。

 したがって病材料からまず塗抹標本を作って観察することは,細菌検索の重要な一段階であり,ことに,臨床症状から病原体を推定することが困難な場合には,ぜひともやらなければならないわけである。

医学常識

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はじめに

 正常の組織は傷をうけ欠損すると再生するし,炎症のため障害されても直ちに修復機転が働いて,一定の限度と調和の下に治癒し,異常ないし過剰の発育をすることはほとんどない。

 しかるに腫瘍組織では,その個体の生存目的とは無関係に,無制限に増殖し,個体の生命を脅かすのである。これを自律性増殖という。すなわち,このような生物学的特性を有する細胞の新種が,私共の体細胞より,癌細胞化といわれる過程を経て,できるのである。

基本情報

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臨床検査
9巻9号 (1965年9月)
電子版ISSN:1882-1367 印刷版ISSN:0485-1420 医学書院

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