臨床婦人科産科 70巻12号 (2016年12月)

今月の臨床 卵胞発育を理解する─知っておくべき基礎知識

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●卵巣における卵胞発育は,下垂体前葉から分泌されるゴナドトロピン(GTH)により刺激される.

●GTH分泌は,視床下部のGnRHニューロンからのパルス状GnRH分泌により刺激される.生理的頻度のGnRHパルスが,GTHの正常な分泌の維持に必要不可欠である.

●キスペプチンニューロンは,GnRH分泌を支配する生殖中枢として注目される.同ニューロンは,エストロゲンの正と負のフィードバックを仲介すると考えられる.

●弓状核キスペプチン/ニューロキニンB/ダイノルフィンA(KNDy)ニューロンは,GnRHパルスジェネレーターであるとの説が有力である.

ゴナドトロピンの作用機序 岸 裕司
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●ゴナドトロピンは月経周期の間に,その血中濃度を大きく変化させるが,その受容体,特にLH受容体もまた,細胞表面での発現量には大きな変化がみられる.

●排卵に向けてのLH受容体の発現誘導には,E2,IGF-1,IL-6などの複数の局所因子が関与し,協調的に受容体の発現量を増加させていると考えられる.

●LH受容体は排卵前に発現のピークを迎え,排卵後には一過性の強いdown regulationを示す.その生理的な意義は明らかでないが,機序にはmiRNAが関与している.

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●二次卵胞では,卵子・顆粒膜細胞からのシグナルが,卵胞周囲への莢膜細胞の出現を誘導する.

●前胞状卵胞が顆粒膜細胞でFSH受容体を発現しFSH依存性を獲得するためには,卵子からの直接シグナルと,卵子→莢膜細胞系を介したもう1つのシグナルが,ともに重要である.

●主席卵胞の選択には,FSH〜顆粒膜細胞〜インヒビン系だけでなく,LH〜莢膜細胞〜アンドロゲン・IGF1系も寄与している可能性がある.

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●卵胞発育 : 原始卵胞から排卵前卵胞への発育は,初期は卵分泌因子に制御され,二次卵胞以降はFSHにより誘導される.この過程において,卵胞は排卵刺激を感受する能力を獲得する.

●卵の成長 : 卵胞発育に伴って卵の直径は拡大し,母性mRNAの蓄積,細胞質の機能的変化が生じる.この成長により,受精および発生能を有する成熟卵へとなりうる能力を獲得する.

●排卵 : 第二減数分裂中期に成熟した卵は,細胞間にヒアルロン酸を主成分とする細胞外マトリクスを蓄積した卵丘細胞層に包まれた状態で,卵管へと排出される.

卵胞発育異常の病態と治療

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●PCOSの病態において,卵巣におけるアンドロゲン過剰産生とインスリン抵抗性の2つが重要である.

●近年の測定系の進歩により,PCOSの診断における血中テストステロン濃度測定の重要性が増している.

●FSH製剤を用いた排卵誘発の際にはOHSSを起こしやすいため,低用量漸増投与法が望まれる.

内分泌疾患と排卵障害 百枝 幹雄
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●排卵は視床下部─下垂体─卵巣系で調節されているが,それ以外の内分泌異常の影響を受けることがある.

●排卵障害に関与する頻度が高い内分泌疾患は,高プロラクチン血症と甲状腺機能低下症である.

●頻度は低いが,排卵障害の背景に副腎機能異常がある可能性も念頭に置くことは重要である.

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●卵巣チョコレート囊胞の発育・進展は周囲卵巣皮質の正常組織構築を破壊し,そこに存在する原始卵胞の恒常性に影響を与える.

●子宮内膜症の卵巣では線維化とともに卵巣皮質に存在する原始卵胞数が低下し,原始卵胞のリクルートメントの亢進と初期発育卵胞での閉鎖卵胞の増加が認められる.

●子宮内膜症における卵巣予備能の低下は,局所炎症が惹起する原始卵胞のリクルートメントとそれに引き続く卵胞閉鎖の亢進による「burn-out」現象の結果ととらえられる.

早発閉経 河村 和弘
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●早発閉経は早発卵巣不全とも呼ばれ,40歳以下の女性が続発性無月経を呈する疾患で,排卵に至る卵胞が喪失し,排卵障害による不妊を呈する.

●早発閉経の原因には,遺伝的要因,自己免疫異常,医原性などが知られている.

●早発閉経患者の卵胞発育誘導には,われわれの開発した卵胞活性化療法(IVA)が有用である.

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●ストレスによる月経異常・排卵障害の第一選択薬は“四逆散(35)”で,責任の重い立場の仕事をもつ女性には“大柴胡湯(8)”が適している.

●冷えの改善の処方には大きく二通りあり,ストレスによる手掌足蹠の発汗で四肢が冷える場合は“四逆散(35)”がよい.本物の冷えには“当帰四逆加呉茱萸湯(28)”,および“真武湯(30)”と“苓姜朮甘湯(118)”を併用する.冷えの改善が月経異常・排卵障害に有用な場合も多い.

●月経異常・排卵障害のうえに浮腫が強いと“当帰芍薬散(23)”,乾燥傾向には“温経湯(106)”で,便秘が強く,月経異常にも効果があるのは,“桃核承気湯(61)”である.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

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はじめに

 tension-free vaginal mesh(TVM)手術は骨盤臓器脱(POP)に対する腟式メッシュ手術で,2005年に本邦に初めて紹介されて以降,多くの施設でこの手術が取り入れられてきたが,2011年に米国FDAより腟式メッシュ手術に伴う合併症に対する強力な警告が発せられたのを契機に,わが国でもその安全性が見直されるようになった.

 当院でもいくつかの合併症を経験しているが,そのなかで比較的稀なTVM手術による尿管損傷の1例について振り返ってみたい.

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産科医の立場から

 周産期医療を取り巻く環境は厳しさを増している.その最も大きな原因は新規産科医の減少にあり,これがために分娩施設の集約化による産科医の拠点病院への集中が企図されたが,特に地方においては分娩施設の集約化は限界に達している.各地に点在する周産期センターはハイリスク妊娠・分娩を管理することを最大の目的とし,少ないといえどもある程度の産科医が確保され,医療安全の確保に最大限の配慮がなされてきた.しかし,周産期センターでは,分娩施設の減少からハイリスクばかりでなく,ミドルリスクやローリスク妊娠の取り扱いも行わなければならず,女性医師の比率が高いこともあり,慢性的なマンパワー不足に直面している.当院の周産期センターでも産科医の過重労働は解決すべき重要な課題である.周産期センターの母体胎児集中治療室(M-FICU)では3対1看護基準により,多くの助産師が配置されているが,産科医の労働環境改善のために助産師パワーをもっと活用することは誰しも考えることである.助産師の産科医療へのより積極的な関与は行政も推奨しているところであり,われわれの施設では助産師外来,母体搬送コーディネーター,院内バースセンターと,3つの助産師活躍の場を設けてきた.これらの試みは産科医にとってプラスになるだけでなく,助産師の仕事に対する意欲の向上にも大いに貢献してきた.

 本稿では,院内バースセンターの運用の現況と展望につき,担当する助産師に執筆していただいた.産科医不足は全国共通の課題であり,われわれの取り組みが他施設での産科医療の参考になれば幸いである.(岩下 光利)

連載 Obstetric News

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 今回は,日本のガイドラインにおける片頭痛のある患者への経口避妊薬投与についての記載を紹介する.

連載 Estrogen Series・157

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 米国更年期学会の指導的地位にある2人の産婦人科医は,われわれは臨床医として更年期症状にもっと積極的になるべきだ,と最近のNEJM誌で述べている1)

 更年期初期における煩わしい症状は,なんといってものぼせなどの血管運動神経症状である.

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▶概要

 感染性心内膜炎は弁膜や心内膜に細菌集簇を含む疣贅を形成し,菌血症,血管塞栓,心不全などの多彩な臨床症状を呈する疾患である.多くの場合は心疾患を基礎疾患にもつが,稀に基礎疾患がない場合もある.周産期に合併する感染性心内膜炎は0.006〜0.0125%と稀であるが,母体死亡率は高いとされている1).多くの場合,血液培養などから原因菌の同定が可能であるが,今回,われわれはすべての培養検査で原因菌が検出されなかった産褥期に発症した感染性心内膜炎の1症例を経験したので報告する.

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▶要約

 仮性動脈瘤は手術,感染などにより動脈壁が損傷され,動脈の3層構造をもたず,残存した動脈壁もしくは周囲組織が豊富な血流を有したまま膨隆した状態をいう.血腫とは血流を有する点で異なり,仮性動脈瘤は破綻すると危機的な出血をきたす.低悪性度内膜間質肉腫は,正常内膜間質細胞に類似した細胞が周囲組織への浸潤や脈管侵襲を示す悪性疾患である.画像所見は他の肉腫同様,変性筋腫との鑑別は容易でない.

 今回われわれは開腹筋腫核出術後に仮性動脈瘤を発症し,術前に変性筋腫と考えていた腫瘤が病理結果で低悪性度内膜間質肉腫であった稀な症例を経験したので報告する.症例は49歳,2回経妊2回経産の女性で,多発筋腫による頻尿と過多月経を主訴に当院を受診した.子宮温存希望が強いため開腹筋腫核出術を行った.術後6日目の診察時に径4cmの仮性動脈瘤を認め,同日に全腹腔鏡下子宮全摘出術を行った.子宮摘出術後2週間目に確認された核出筋腫の病理結果より,変性筋腫と考えていた腫瘤は低悪性度内膜間質肉腫であった.摘出子宮の病理所見で悪性所見は認めなかった.本人との相談により追加治療はせず,術後2年8か月経過した現在,再発を認めていない.

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次号予告・奥付

基本情報

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臨床婦人科産科
70巻12号 (2016年12月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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