臨床婦人科産科 23巻7号 (1969年7月)

特集 私の手術・Ⅱ

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 妊娠早期(妊娠4ヵ月までとする)の人工妊娠中絶は触覚を頼りの手術であり,視覚を頼りに行なう開腹術の簡単なものよりは,はるかに熟練を要するものである。「注意を怠れば,経験豊かなものでも失敗することがある」と昔から戒められているが,教育の衝にあたる一部のものは,人工妊娠中絶に関心がうすいことも手伝つて,人工妊娠中絶そのものを容易な簡単な手術として軽視する傾向があるようである。

 しかし,筆者は「人工妊娠中絶にあたつては開腹術の際と同様に術者は姿勢を正し,邪念を払い,全精神を手に把持する器械の先端に集中し,毎回初めて手術を行なうときの注意をもつてすることが必要であり,熟練者といえども,助手や看護婦と談笑の間に行なつてはならないと思つている。」換言すれば,妊娠早期の人工妊娠中絶には,第1に心構えが大切である。次に手術前に一般状態,ことに全身疾患に対して注意するとともに,必要に応じた処置を講じておくことはもちろんであるが,なお,妊娠子宮の大きさ,位置,形態などの妊娠状態の確認および腟分泌物の術前浄化は,術中・術後の経過を良好に導く第2の必須条件である。

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まえがき

 筆者は,人工妊娠中絶手術の手技を,1)第11週まで,2)12週〜16週,3)17週以降—の3種類に大別している。筆者に課せられたテーマ,"中期の場合"として,一応第2および第3にわたつて述べることにする。

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はじめに

 十数年前までは,会陰裂傷発生は,会陰保護術の拙劣によることが多いと考えられ,また会陰裂傷が切迫あるいは開始してから会陰切開が加えられるか,鉗子手術,骨盤位分娩に際して実施されていたが,他方,産婦も会陰切開をあたかも手術の一つと考え,児頭への圧迫を軽減せんとして会陰切開が積極的に実施されはじめた当時は,何処そこへ行くと下の方を切られる,などとの陰口を耳にすることもあつたが,昨今では会陰切開を云々するどころか,産婦から催促されることすら経験する。

 従来,助産婦の手に委ねられていた分娩が家庭から施設へと移るようになり,医師でなければ会陰切開縫合が行なえなかつたが,このように医師の管理の下で過半数の分娩が行なわれるようになつたこともあつて,会陰切開が,特に初産婦で大部分に行なわれているが,一般婦人もこれに抵抗を感じなくなつた昨今でもある。

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はじめに

 頸管裂傷は,分娩第Ⅲ期より第Ⅳ期にわたり,時として母体に致死的な大出血を起こすものであり,またやや大きな裂傷では,この処置が不適当だつたりした場合は,将来,子宮口の不規則な哆開による頸管炎や腟円蓋との癒着,またいわゆる子宮頸管無力症となって習慣性流早産の原因となりうる。したがって,頸管裂傷に対しては,時期を失せぬ短時間内の止血と完全縫合との処理技術を要するものと思う。これには診断の確定が先決であるので,この点から簡単に述べて見よう。

腹膜内帝王切開術 尾島 信夫
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I.病棟看護婦に対するpreoperative order

体重測定・血液検査一式・検尿・ECG・輸血(クロスマッチ用採血,必要例のみ保存血用意)・禁食・剃毛・浣腸・留置カテーテル装置

帝王切開術—腹膜外の場合 辻 啓
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はじめに

 従来より腹式帝王切開術は,ほとんどすべてが経腹膜式帝王切開で行なわれており,腹膜外帝切は子宮内感染のあるような特殊な場合に,腹腔内感染を防止する意図のもとにごく一部の産科医により試みられてきたにすぎなかつた。また,抗生物質の発達した現在では,経腹膜式帝切による腹腔内感染の危険は全く無いとして,腹膜外帝切無用論を唱える医家もある。

 しかしながら,実際には経腹膜式帝切後の二次的な腹腔内臓器の癒着を意外に多く見聞するところであり,また,それに伴う後障害を訴えるものも多い。また,抗生物質の過信による治療医学的,反射的な抗生物質の使用方針よりも,むしろ感染を未然に防ぐ予防医学的な術式を先ず選ぶのが現代医学の動向に沿つたものでもあろう。かかる観点からすれば,腹腔内に全く侵襲を与えない腹膜外帝切の存在価値は大きいものといえよう。筆者は,以上の見地より,近年,原則として腹式帝切はすべて腹膜外帝切で行なつており,現在までに約130例の腹膜外帝切を経験してきた。

子宮外妊娠の手術 楠本 雅彦 , 淵 勲
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はじめに

 われわれ産婦人科医にとつて,もつとも緊急で重篤な疾患の一つに子宮外妊娠がある。もちろん軽症のものもあるが,急性貧血からくるいわゆるショック症状をともなう重症例は,患者の生命を奪うこともあるので,この手術は非常に劇的な手術である。

 子宮外妊娠の手術は,術前・術中・術後の全身管理に依存することが多く,全身管理が的確に円滑に運べば先ずこの手術の大半は終わつたといつても過言ではあるまい。

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まえがき

 胞状奇胎は,その嚢胞性変化を肉眼的に証明しうるため,存在については,きわめて古くより知られており,荒唐無稽な奇話をも含めていろいろな見解がなされていたが,1895年Marchandによつて,本症がジンチチウム細胞およびラングハンス細胞の異常増殖とそれに伴う絨毛基質の水様様膨張であると報告されて以来,定説として一般に認められるようになつている。

 しかしながら,その原因については,いろいろの説があり,いまだ確立したものがない。したがつて,胞状奇胎の予防ということになれば,それはまさに未来への指向点といつた程度であり,現在における胞状奇胎の治療は,本症の確診がつけばできるだけ早く奇胎の完全排除につとめることが肝要であり,術後は一定期間患者を厳重なる管理のもとにおき,破壊性胞状奇胎,絨毛上皮腫の続発に対して,早期に適切なる処置を行なわねばならない。

バルトリン腺の手術 馬島 季麿
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はじめに

 バルトリン腺の手術としては,急性膿瘍の切開術とバルトリン腺嚢胞に対する全剔除術および造袋術の三つである。いずれもいわゆる小手術に属するものであるが,全剔除術はあまり安易に行なうと意外な困難に遭遇して長時間を要したり,合併症を併発したり,さらに将来再発をみることがある。

腟式不妊術 森 一郎 , 徳永 博美
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まえがき

 不妊術には腹式と腟式があるが,一般に腟式が好用されている。 これは,腟式では手術侵襲が少なく,被術者の肉体的,経済的負担がわずかですむ利点があるためではないかと思う。だが,侵襲をできるだけ少なくして所期の目的を達するためには,どんな簡単な手術でもかなりの習熟が当然必要であるから,腟式不妊術でも,術式に対する習熟,いいかえればある種のコツみたいなものがどうしても必要かと思われる。それで本術式全般にわたつて,コツと思われるような点について以下述べてみたい。

グラフ

造影像よりみた子宮性不妊 杉本 修
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 妊娠成立のために子宮は精子上昇および妊卵着床の場として重要な役割りを持つている。不妊の原因を子宮自体に求める場合,機能性因子に対しては内膜生検による日づけ診,器質的因子に対しては子宮造影法および組織診が臨床的には最も広く利用されている。

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はじめに

 近年ブドウ球菌(以下ブ菌と略)における耐性菌の出現は,結核菌,赤痢菌とならび多剤耐性化という特微で疫学的に重要視されている。またブ菌感染症は,臨床的にその分布が広汎にわたること,病原ブ菌という特有の耐性pattern,ファージ型を示す菌がみられること,病像が特異的かつ多彩なこと,重症型では致命率も高いことなどの諸点から,薬剤耐性の問題とともに診断,治療の面で臨床家を悩ませている現状である。

 わが領域でも骨盤内感染症よりブ菌の分離される率が高い他,術後創感染,産褥乳腺炎,新生児の化膿性疾患,菌交代症など本菌による疾患がしばしばみられる。このような産婦人科領域におけるブ菌の病原的意義にかんがみ,以下本菌の薬剤耐性を過去12年間の耐性推移を中心に検討する他,最近の新薬に対する感受性態度など,二,三の項目につき若干の考察を加えてみる。

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はじめに

 人工腎臓とは,血液を体外循環せしめる装置を用いて血液透析を行なうことを一定時間継続するものである。その血液透析の原理は,拡散現象の応用により,血液や組織中に増量した有害代謝産物あるいは毒性物質を透析膜を通して除去し,かつその他の血液成分異常を是正するものである。したがつて,薬物中毒以外では,原疾患が治癒しない限り対症療法であり,延命効果しか期待できないものである。

 最近,わが教室において子宮頸癌術後1ヵ月目に急性腎不全をきたしたが,人工腎臓を施行し,幸いにも救いえた症例を経験したので,ここにその症状経過,諸検査成績,腎生検所見について報告し,諸賢の御批判をあおぐものである。

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はじめに

 腹膜妊娠は子宮外妊娠の中でも稀なものであり,またその診断も卵管妊娠などに比しいつそう困難な場合が多い。今回われわれは妊娠7ヵ月まで持続せる腹膜妊娠の1例を経験したので,以下その大要について報告する。

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I.実験材料

 実験材料は,当院で出生した健康成熟児で,未熟児や血液型不適合児を除き,その股静脈から厳重な注意のもとに採血し,血液検査実験に供した。われわれの測定した新生児黄疸の推移は,そのpeakが生後3〜4日目にあり,平均値で11.3mg/dlであり11),これはほぼ7日目まで持続し,以後消退していくことから,治療の対象として,われわれは総ビリルビン値が15rmg/dl以上を示した場合を選んだ。今回は15例を実験に供した。

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はじめに

 日常,外来診療において子宮腟部ビランはしばしばみられる疾患で,ビランの頻度はきわめて高く,水野によれば経産婦では46.3%に認められ,Normanによれば35〜85%に認められるといわれている。特に妊娠により子宮腟部ビランが増悪し,帯下を訴える患者の多いことは論を待たない。本疾患の治療は種々の腟錠が主として用いられているが,新フランセFおよびフランセF腔腟による治療成績はすでに発表したとおりで,ほぼ満足すべき成績が得られているが,欠点としては蛋白分解酵素による粘膜刺激症状がときに認められることである。もつとも新フランセF錠は結晶トリプシンをαキモトリプシンにきりかえることにより,大幅に副作用が減少したが,刺激症状が皆無とはいいがたい。そこで今回は南方薬品のエロジオン腟錠による実験を試みた。本剤は銅クロロフィリンナトリウム塩50mgとエストリオール0.5mgとスルフイソキサゾール100.0mgを含有する錠剤で蛋白分解酵素は含有していないが,銅クロロフィリンナトリウム塩は組織賦活作用,肉芽形成作用,局所清浄化作用,抗アレルギー作用を有するので,新フランセF錠のαキモトリプシンと塩酸ジフェンヒドラミンを含有しているのと同じ作用が得られるものと思われる。さらにエストリオールとスルフイソキサゾールを含有するので,きわめて新フランセF錠に効果は似ているのではないかと思われる。ただしその内容から考えて,トリコモナスおよびカンジダによる腟炎には治療効果が得られるとは思われないので,上記疾患を主とした訳である。

基本情報

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臨床婦人科産科
23巻7号 (1969年7月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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