特集 私の手術・Ⅱ
妊娠早期の人工妊娠中絶
赤枝 日出雄
1
Hideo Akaeda
1
1赤枝病院
pp.545-548
発行日 1969年7月10日
Published Date 1969/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204058
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妊娠早期(妊娠4ヵ月までとする)の人工妊娠中絶は触覚を頼りの手術であり,視覚を頼りに行なう開腹術の簡単なものよりは,はるかに熟練を要するものである。「注意を怠れば,経験豊かなものでも失敗することがある」と昔から戒められているが,教育の衝にあたる一部のものは,人工妊娠中絶に関心がうすいことも手伝つて,人工妊娠中絶そのものを容易な簡単な手術として軽視する傾向があるようである。
しかし,筆者は「人工妊娠中絶にあたつては開腹術の際と同様に術者は姿勢を正し,邪念を払い,全精神を手に把持する器械の先端に集中し,毎回初めて手術を行なうときの注意をもつてすることが必要であり,熟練者といえども,助手や看護婦と談笑の間に行なつてはならないと思つている。」換言すれば,妊娠早期の人工妊娠中絶には,第1に心構えが大切である。次に手術前に一般状態,ことに全身疾患に対して注意するとともに,必要に応じた処置を講じておくことはもちろんであるが,なお,妊娠子宮の大きさ,位置,形態などの妊娠状態の確認および腟分泌物の術前浄化は,術中・術後の経過を良好に導く第2の必須条件である。
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