特集 私の手術・Ⅱ
帝王切開術—腹膜外の場合
辻 啓
1
Akira Tsuji
1
1東京日立病院産婦人科
pp.567-570
発行日 1969年7月10日
Published Date 1969/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204063
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はじめに
従来より腹式帝王切開術は,ほとんどすべてが経腹膜式帝王切開で行なわれており,腹膜外帝切は子宮内感染のあるような特殊な場合に,腹腔内感染を防止する意図のもとにごく一部の産科医により試みられてきたにすぎなかつた。また,抗生物質の発達した現在では,経腹膜式帝切による腹腔内感染の危険は全く無いとして,腹膜外帝切無用論を唱える医家もある。
しかしながら,実際には経腹膜式帝切後の二次的な腹腔内臓器の癒着を意外に多く見聞するところであり,また,それに伴う後障害を訴えるものも多い。また,抗生物質の過信による治療医学的,反射的な抗生物質の使用方針よりも,むしろ感染を未然に防ぐ予防医学的な術式を先ず選ぶのが現代医学の動向に沿つたものでもあろう。かかる観点からすれば,腹腔内に全く侵襲を与えない腹膜外帝切の存在価値は大きいものといえよう。筆者は,以上の見地より,近年,原則として腹式帝切はすべて腹膜外帝切で行なつており,現在までに約130例の腹膜外帝切を経験してきた。
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