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あとがき
遠藤 格
pp.776
発行日 2018年6月20日
Published Date 2018/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212075
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先日の第118回日本外科学会は大変興味深いプログラムが目白押しで楽しませて頂いた.そのなかで,『外科医のインセンティブ導入を目指して』という企画が興味深かった.ハーバード大学ブリガムウィメンズ病院で心臓血管外科医として活躍されている金子剛士先生によれば,米国では病院に支払うフィーと外科医に支払うフィーがほぼ等しいという.佐賀大学の能代先生によると外科医が5%ほどのフィーをもらっているという.同様の取り組みは当院でも過去に行われたが,残念なことに1年でなくなった.佐賀大学ではインセンティブが付いてから病院経営は改善し,現在でも存続しているとのことである.大変羨ましい限りである.やはり人間は自らやりたいという気持ちになると凄い業績を上げるということだろうか.
外科医のインセンティブを重視し過ぎる国になると,外科医は後輩を教えると自分の取り分が減る事を心配するようになるかもしれない.ヒポクラテスの誓いによれば,医師はその弟子には技術知識を報酬なしに授けるべし,とある.現在,日本はインセンティブがない病院がほとんどであり,後輩を教えるのは当然無償である.日本の外科医はヒポクラテスの誓い通りに後輩を教え続けているわけである.教えるのを止めれば,10年後の外科医療が崩壊するのは目に見えているからである.
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