看護学雑誌 67巻11号 (2003年11月)

特集 がん化学療法 セルフケア支援のABC 後編

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 前稿(本誌前号)では,がん化学療法におけるセルフケア支援の考え方と看護師の役割,そして,医療者が陥りやすいパターナリズムが患者支援という看護を阻むことに言及した.本稿では,がん化学療法を受ける患者の抗がん剤による副作用症状に対するセルフケア支援に焦点をあて,前稿で提示したセルフケア支援のプロセス1)(図)の枠組みを使って,筆者の考えるセルフケア支援のポイント(表1)を説明していきたい.なお,セルフケア支援のポイントを具体的に解説するにあたって,前号「便秘のセルフケア支援2)」でとりあげた事例(表2)をつかっていくこととする.

ケアの優先順位を決める

ポイント1:看護アセスメントと患者の気がかりをすりあわせ,セルフケアの優先順位を決める

 がん化学療法では,投与される抗がん剤のレジメンによって,出現頻度の高い副作用,その症状の程度,出現時期と回復パターンをある程度予測できる.多くの現場では,がん化学療法によって出現する一般的な副作用,たとえば,悪心・嘔吐,易感染,口内炎,食欲不振などをカバーする内容の患者教育用パンフレットを使って,患者への指導が行なわれている.患者教育のなかに,セルフケアに関する内容がもりこまれており,副作用の知識とともに患者に必要とされるセルフケアが説明される.

 このように一般化された看護を行なうことは,ある水準の看護を維持するために不可欠である.しかし,一般化された看護に終始すれば,患者のなかには「だからどうなの…」「じゃあ,私はどうなの」と思ってしまう者もいるだろう.患者が気にかけていることは,自分のことである.患者が自分に対して看護が行なわれていると感じるためには,一般的な看護のうえに,患者個別の看護を付加しなければならない.このオプションは,個別的な看護アセスメントから見出すことができる.個別的なアセスメントを行なうことで,一般的とされる患者の問題が,ほんとうにこの患者の問題であるのか,この患者にとっての優先順位の高い問題は何かといったことが明らかにされる.

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 脱毛は,がん化学療法の副作用として高頻度に発生するが,致命的ではないために医療者からは軽視されがちであり,研究も少ない.しかし,化学療法を受ける患者にとって苦痛度の上位であるとともに,治療を拒否する要因ともなる.患者のこのような気持ちに対応したケアが必要である.

 がん化学療法による脱毛は,細胞分裂の激しい頭皮の毛母細胞の細胞分裂を抑制することにより生じる.脱毛をもたらす薬剤は,ドキソルビシン,パクリタキセル等であり,これらは外来治療において頻用される.

 患者へのセルフケア支援では,脱毛の可能性,出現の時期に関する説明を行なうことが重要であるが,症状の予防が困難であるために,カツラの準備等容姿を整える指導を事前に行なうことも重要となる.症状出現時は,補整,頭皮の保護,周囲の環境整備等が行なえるようにし,増強する不安に対処する緩和方法もできるような支援が重要となる.

口内炎のセルフケア支援 菅野 かおり
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 がん化学療法剤による口腔内粘膜障害の出現頻度は40%といわれており1),痛みや出血,嚥下障害,味覚異常などのさまざまな症状を伴うことがある.重症化,遅延化した口内炎は,食事摂取量の低下,コミュニケーション機能の低下(会話がしにくい),イライラや不眠などの精神的な苦痛をもたらし,患者のQOLを著しく低下させてしまうこともある.また,骨髄抑制(とくに白血球の減少)と同時期に発症することが多く,口内炎からの二次感染のリスクも増大させるため,症状が発生してから対応するのではなく,あらかじめ使用されるがん化学療法剤の副作用を理解し, 予防的ケアを行なうことが口内炎のセルフケア支援にとって重要である.

A口内炎の頻度と現れ方

 口内炎(stomatitis)とは,舌・歯肉・口唇・頬の内側などの口腔や咽頭などの粘膜に起きた炎症反応症状のことである.口腔粘膜細胞や骨髄細胞などは通常7-14日と短いサイクルで再生を繰り返しており,がん化学療法剤による影響を受けやすい細胞といわれている.がん化学療法剤による口内炎の発生機序は,①がん化学療法剤の直接作用による口内炎,②がん化学療法剤による白血球低下による局所的な感染に起因する二次的口内炎,の2つに分類される.口内炎の出現は,一般的にがん化学療法剤投与後2-14日の間に出現することが多い.口内炎の程度や持続時間は,使用する化学療法剤の量や頻度,多剤併用,全身状態によっても異なるが,一般に症状の改善には白血球の回復に関連して2-3週間を要する.口内炎を引き起こしやすい薬剤を表1に示す.これらの頻回投与や大量投与,多剤併用療法で高頻度に口内炎が見られる.

 軽度の口内炎や口内炎の初期症状としては,無症状の口腔粘膜発赤が一般的である.口腔粘膜の障害が進むと,白斑,粘膜浮腫,疼痛,食事摂取障害,潰瘍形成と移行する.重篤化した場合は,激しい疼痛や出血,二次感染を伴い敗血症注1)に移行し,全身状態が悪化することによって治療継続ができなくなる場合がある.また,疼痛,食事摂取障害などの症状の出現は,身体的苦痛だけではなく,落ち込みや不安,イライラなど精神的な苦痛を感じ,治療継続意思の低下をきたすことにもなる.口内炎の症状の程度はNCI-CTCなどの副作用評価基準(表2)に基づいて評価する.

感染予防のセルフケア支援 石岡 明子
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 がん化学療法による骨髄抑制は,ほとんどの抗悪性腫瘍薬で出現する副作用である.とくに好中球減少は,生体防御機構を低下させ重症の感染症を引き起こす重篤な副作用である.腫瘍縮小効果がみられても感染症で生命の危機に陥ることがないように,化学療法を受ける患者は,易感染状態においても感染症を起こさず,また発症をしても重篤化させないことが重要である.これには,医療者の観察・治療とともに,患者自身のセルフケアが感染予防の鍵となるため,われわれ看護師はがん化学療法を受ける患者とその家族に対し,適切なセルフケア支援をする必要がある.本稿では,患者が感染予防のセルフケアを行なうために必要な知識と具体的な支援方法を紹介する.

A 好中球減少の頻度と現れ方

 好中球減少は,主要な抗悪性腫瘍薬のほとんどに出現する.そのなかでとくに白血球・好中球減少の頻度が高い抗がん剤を表1にまとめた.がん化学療法は,治療を繰り返すごとに好中球減少の開始時期は早く,最低値は低く,好中球減少期間は長期化する傾向にある1).そして好中球減少期間と回復期間は,投与方法・投与量,患者の全身状態,前治療歴などの影響を受けるためプロトコールや薬剤によって異なる.近年G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤が使用されるようになってからは,好中球減少期間が短縮したが,好中球1000/mm3以下に減少するに従って感染の罹患期間や感染のエピソードが増し,好中球500/mm3未満の期間が長くなると敗血症などの重篤感染症の頻度が増加する2).このような重度の感染症が起こると,患者は生命の危機への不安を感じ,病気に立ち向かう気力は低下しやすい.さらに高度の好中球減少が起こった場合には,食事や行動範囲などに制限が必要となり,社会生活にも影響を及ぼす.

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 抗がん剤による皮膚障害は,抗がん剤の影響による基底層の細胞分裂抑制によるもの,抗がん剤の皮下漏出による症状等が主であるが,慢性的に徐々に悪化することが特徴である.抗がん剤の皮下漏出は予防・早期発見・早期対処により効果的に症状を緩和できるため,化学療法を受ける患者のセルフケアとしては重要である.また,皮膚炎に関しては症状を予測して初期から皮膚のケアを行なうことが重要である.

A 皮膚障害・漏出性皮膚炎の頻度と現れ方

 皮膚障害の症状として,脱毛,色素沈着,発疹,爪の変形,漏出性皮膚炎等がある.脱毛は別に解説されているので,ここではその他の皮膚障害について解説する.発生機序の違いから,皮膚障害と漏出性皮膚炎に分類し,皮膚障害のほうに漏出性皮膚炎以外をまとめて記述する.

皮膚障害

皮膚障害は,表1に示したように,ブスルファン,5-フルオウラシル,ブレオマイシン等により生じる.症状は薬剤により異なるが,表にあるほとんどの薬剤で脱毛のほかに,色素沈着を生じる.また,薬剤の副作用に記述はないが,乾燥性皮膚炎等も併発する. 発生頻度は,ブレオマイシンが皮膚の硬化・色素沈着40.6%2),5-フルオウラシルが色素沈着4.8%3)と報告されているものの,ほとんどの薬剤は頻度不明となっている.症状の発現は急激ではなく,徐々に悪化し慢性的な症状として患者を悩ませる.

漏出性皮膚炎

 漏出性皮膚炎は,表2に示したように,「少量の漏れでも水疱性皮膚壊死を生じ難治性潰瘍を惹起しやすいvesicant drugと,多少漏れても炎症や壊死を生じにくいnon-vesicant drug,その中間で局所での炎症を起こすが潰瘍形成にまでは至らないirritant drug」4)に分類され.vesicant drugとしては,マイトマイシンC,ドキソルビシンなどがあり,とくに注意が必要である.

 漏出性皮膚炎は,抗がん剤が血管外に漏出することにより生じるが,漏出の直後は,疼痛を伴わず見過ごすことも多い.徐々に局所の腫脹,疼痛,発赤が生じ,放置すると潰瘍化してしまうこともあり,早期の対応が重要となる.

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近年,化学療法の進歩により,抗がん剤の副作用による神経毒性の頻度が増加している1).神経毒性には,末梢神経障害や中枢神経障害,聴覚障害や急性脳症などを引き起こす場合があるが,ここでは末梢神経障害の症状であるしびれについて述べる.

しびれ(ジセステジー:dysesthesia,あるいはパレステジー:paresthesia)は,いくつかの抗がん剤に特異的に出現する副作用であり,NCI-CTC(National Cancer Institute-Common Toxicity Criteria)では神経障害に含まれ,末梢神経障害の1つの症状として評価されている.現在,しびれに対する有効な治療法が確立されていないため,症状緩和が困難な場合が多く,患者を悩ませることになっている.しびれに対する看護介入は,早期発見と症状の変化のアセスメントと,転倒や火傷などの続発する合併症の予防が中心となっており,他の副作用同様に患者がセルフケアを獲得できるような介入が期待されている2-4).そのためには看護師にその知識が必要だが,しびれのみに関していえば,他の副作用症状に比べ情報が少なく,知識の獲得が困難な状況といわざるをえない.しびれは医療者の目からはみえない患者の主観的な体験であるから,症状を十分に聞いたうえで,患者とともに個人にあったセルフケアの方法を探し出していくことが求められている.

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はじめに

 全体的な傾向として,現代の米国の看護師たちは4年生大学を卒業したあとも大学院の専門課程に進んで専門性を高め,医学知識で医師に引けをとらないことにプライドを持っている.しかし,一方では医療費節減のプレッシャーで看護師の人員削減が進み,最先端技術のためにかえって処置が複雑化して,看護師が患者に精神的・身体的に接触する時間が激減している.患者が精神的な支えを必要とするときにかたわらに来てあたたかい言葉をかけるのは担当医であり,特有の問題のカウンセリングは専門のカウンセラーが行なう.それがこの約10年間患者として外来と入院を体験した私の感想である.

 ナース・プラクティショナーやナース・ミッドワイフ(助産師)のように,看護師の仕事内容が医師のそれとオーバーラップすることで,かえって看護師は自分の立場を見失ってはいないか? そもそも看護とは何なのか? このような疑問が患者だけでなく看護師たちの内部からも生じているようである.

 先月号で米国のがん治療先端医療の場での代替補完医療の動向を取材したとき,医師やプログラムのコーディネータなど,その中心となっている人物たちから看護師の役割について聞くことがほとんどなかった.それでは看護師は代替補完医療にどのようにかかわっているのだろうか.この疑問を明らかにするため,先月号と同様,がんの臨床と研究で世界的に著名なダナ・ファーバーがん研究所で,看護師たちがどのように代替補完医療にかかわっているか調べた.

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 がんはわが国の死因の第1位であり,その死亡者数は年々増加傾向にある1).一方で,がん患者の生存率は高くなってきており,その要因としてがん検診等による早期発見,患者の臨床病期に合わせた適正な治療の提供,そして治療技術の進歩などが指摘されている2).なかでも抗がん剤の開発技術の進歩は目ざましい.しかし,化学療法は侵襲の強い副作用(本調査では,副作用は薬理作用のなかで主作用に対する副作用を意味するside effectではなく,薬物有害反応adverse reactionに対応する意味で用いることとする)が多く,患者に身体的・精神的苦痛をもたらす.さらに,患者は長期にわたる治療で生活の変化を余儀なくされている.これらの副作用や生活の変化に対し,自己管理は重要な位置付けにあり,これが十分でない場合は,治療に大きな影響を及ぼす.その結果,患者の治癒の可能性や延命率は低下し,患者のQOLも低下する.それゆえ,化学療法を受けるがん患者は,効果的なセルフケア行動をとる必要がある.

 そこで本調査の目的は,化学療法を受けるがん患者の入院生活に伴う諸症状(含副作用)やセルフケア行動の実態を明らかにし,患者のセルフケア行動を促進する看護援助のあり方を検討することにある.本調査ではセルフケア行動を「原疾患および化学療法や入院生活に伴い生じる身体的・精神的諸症状に対して,患者が自分で行なう対処・予防行動」とした.

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 頸椎手術後は,神経症状の悪化を防ぐため頸部の安静が重要であり,頸椎の可動性と荷重が制限される.当病棟では,頸椎の術後は頭部から頸部まで固定枕で固定し,その間患者は仰臥位を強いられる.術当日は仰臥位のみ,第1病日は15度のギャッチアップが可能となる.患者は自分で寝返りをうつことができないため,側臥位は看護師3名の介助で行なわれる.第4病日から60-90度のギャッチアップが可能となり,端座位・歩行器歩行へと進めていく.経過の良好な患者は第4-5病日,平均して1週間程度で歩行開始となる.

 離床までの間,患者より不眠や「苦しい」などの訴えが多く,さらには幻覚や不穏状態の出現する例があった.患者の苦痛緩和に向けた取り組みとして,以前より患者・スタッフより声の上がっていた頸椎枕(当病棟では馬蹄形の枕を使用)の改良に取り組むこととした.しかし,医師と協議していくなかで,術後早期からギャッチアップすることが可能であり,それが患者にとってより苦痛緩和に近づくと考えた.

 寺島ら1)は「頸椎の手術を受けた患者は,床上安静が強いられるために,身体的・精神的影響が大きく関与している.身体的には疼痛,感覚異常,それに伴う不眠,精神的には性格やこれまで経験したことのないICUでの生活,視野の制限などから不安が増強され,せん妄状態へと移行し,不穏症状に陥る1つの誘因と考えられる」と述べている.

 そこで我々は,術後患者の仰臥位安静が頸椎術後の患者にとての身体的・精神的におよぼす影響が大きいと考え,苦痛緩和に向けた看護介入として,第1病日からギャッチアップを導入し若干の知見を得たので報告する.

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――佐伯さんがSP(模擬患者)活動を通して看護教育にかかわられるなかで感じられる看護師のコミュニケーション上の特徴はありますか.

佐伯 たくさんの看護師さんの特徴を十把一絡げにいうことはできませんが,とても熱心でやさしい方が多いです.以前,がん患者さんの講演を聞いた看護師さんの感想を読ませていただいたときには,患者さんの話をもっと聴きたい,もっと支えたいという強い気持ちがあるのにそれができない無力さに,自分がつらくなるほど苦しんでいらっしゃる方もいました.それで,自分の時間を削って熱心に勉強し,一秒一刻を争っていつも立ち働いてくれている.ほんとうに,ありがたいことだと思います.

連載 日常看護のブラッシュアップⅡ 改良と改革・11

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 当院は千葉県北総部に位置し,地域の中核病院として48年の歴史があります.地方病院のためか看護職員の定着率がよいため,毎年の新規採用者は2―5名程度で既卒者が多く,新卒者はめったにいません.

 2002(平成14)年4月,めずらしく当院にフレッシュナースマン(男性看護師)のS(21歳)が就職してきました.重なるもので,Sが配属された病棟に院内異動でやってきた師長もナースマンでした.それも,血液透析・手術室・外来・内視鏡の経験を経て,はじめて病棟に配属された新米看護師長です.

 今回は,新米看護師長とベテラン看護師たちが,新人Sの教育にどう取り組み,葛藤を抱えながらも何を学んだか,また新人S自身の学びについて報告します.

連載 まんが医学の歴史・8

連載 聴診器はこうして使う! 根拠がわかるヘルスアセスメント実践講座・8

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 前回は,腹部の聴診を行なうために必要な腹部の構造と腹部の解剖学的表示について解説しました.腹部臓器の位置関係を理解することができたと思います.今回は,それらの基礎知識をふまえて,腹部の聴診の準備,腹部で聴取できる音と実際の聴診の仕方について解説していきます.

●学習目標

1)腹部で聴取できる音について理解する

2)腹部の聴診の準備について理解する

3)腹部で聴取できる音の聴診方法について理解する

連載 鵜の目タカノ目ケアマネの目・5

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 脳卒中の患者さんが入院して治療とリハビリ註1)の結果,自宅への退院にこぎつけました.そんな患者さんと病棟のナースのみなさんが退院日にお別れのあいさつをするとき,「リハビリは続けてくださいね」と忘れずに言いますよね.でも,退院後のリハビリって何を目標にいつまで続けたらいいのでしょう.

 今回はそんなツトムさん(仮名,66歳・男性)のお話です.

連載 聴こえんゾ!・16

補聴器,そして人工内耳 山内 しのぶ
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 ろう学校幼稚部の同窓会で,温泉旅行に行った.幼なじみと,大浴場にひと風呂浴びに行こうかということになった.

「ねぇ,補聴器どうしようか? つけていく,それとも部屋に置いていく?」

「どっちでもいいけど,どうして?」

「うーん.まあいいか,つけていこう.こんなもの脱衣カゴに入れといたって,盗む人なんていないわよね」

「盗んだってしようがないよ,こんなの」

「そうよね.うん,行こ行こ」

私たちにとって補聴器は,一応高価な,貴重品である.他人にとっては,中古の,しかもホカホカと温もりが残る福祉器具であるにしても.

 耳の聴こえる友人たちと会話していたときのこと.今身につけているもののなかでいちばん高価なものは何か,という話になった.

「靴.1万5千円くらい」

「服.2万円」

「時計かな.3万5千円くらい」

「コンタクトレンズ! 5万円したよ」

ハーイ,と手をあげて,私は言った.

「補聴器! 2個で30万円くらい!」

「マジ? そんな高いの?」

補聴器の値段をきいた友人たちは,一様に驚いた.

「通販で3万円で売ってるの見たよ」

ピンからキリまであるのだ.値段も,性能も.

「高価なほどよく聴こえるの?」

連載 カズのもっとカンボジア日記・16

遺体の搬送 崎間 和美
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◆カンボジア交通事情

 カンボジアに住んでいて「便利だなー」と感じるのは,交通機関.いえ,遠方へ行く交通機関ではなく,ちょっと市場へお買い物とか,病院との行き帰りに使う“ご近所交通”.どこへ行ってもオートバイタクシー(モトドップ)がいくらでもいるからです.市場の周りにも列をなしているし,道を歩いていても「モトドップ?(モトドップはいるかい?)」と呼びかけてきます.遠くからでも人差し指を立てて手を上げているのが見えれば,それはモトドップのサイン.乗りたいときには同じように人差し指を立てて手を上げて返せばOK.

 私にとってさらに便利になったのは,たくさんのドライバーが私のことを知っていて,もちろん住んでいる場所まで知っていること.市場の周りにスタンバっているモトドップは,私が市場から出てくるなり,「ニャックルー! タウプティア?(女先生! おうちへ帰るの?)」と声を掛けてきます.重たい荷物を持っていてもすぐに乗れるので,楽チン! それに,これまた安いからやめられない.2-3キロなら500-1000リエル(15-30円).すっかり歩かなくなってしまいました.日本にもモトドップがあったらいいですよね.

 それに引き換え,遠くへ行きたいときにはちょっとたいへん.日本のように定期的に来る電車はないし(電車は限られた地域では走っているのですが,自転車のほうがはやいような気が…),定期バスもない.あるのは,タクシーと呼ばれる乗合自動車.これには多人数乗合のピックアップトラックと乗用車の2種類があります.乗用車のほうは普通のセダンで,ドライバーをいれて大人7人を乗せて走ります.トラックのほうは車内にこれまた7人,さらに,荷台に大きな荷物とともに乗れるだけ乗せる.時には運転席の屋根のうえに乗ったりしているのも見かけるほどです.1回の行程でできるだけたくさん稼ぐには,こうしないといけないのです.ちょっと危険ですけどね.セダンのほうも身動きができないほどキツキツですが,それでも高級とされて同じ距離でも割高.

 AHCへは,たくさんの患者がこうした交通機関を使って遠くからやってきます.平均年間収入が300ドルに満たない地方の人たちにとって,病院へ行くための交通費は安くはなく,そのために1日延ばしにしていることがよくあるようです.多くのカンボジア人が最初に試す伝統医療をこころみてもよくならず,意を決して,親戚・近所から借金をして,なんとか交通費を搾り出してAHCへ来る.でも,来たときには手遅れで亡くなってしまうということもあります.子どもは死んでしまうし,借金は増える.これじゃ,家族は抱えきれないですよね.

 もし,病院で子どもが亡くなった場合,家族には2つの選択があります.病院の近くのお寺へ直接搬送し,そこで火葬したあとにお骨にして家へ戻る.もう1つは,遺体を家まで搬送する.AHCでは,多くの場合が火葬後に家へ帰る(遺体を外から運び込むことは不吉と信じている人が多いようです)のですが,時に遺体を家まで連れて帰りたいという家族がいます.これで,最近,困ってしまいました.本当に困ってしまったんです.

連載 こんにちは患者会です

ミトコンドリア病患者・家族の会
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活動の特徴

 ミトコンドリア病は患者数が少なく,認知度も低いため情報不足が悩みです.また,1人ひとりの症状が多岐にわたり,毎日命の危険にさらされている患児もいれば,働いている患者さんもいます.発症時期が生後まもなくの方もいれば,高齢になってからの方もいます.さらに,ちょっと疲れやすい,瞼が下がるという症状だけを持つ方もいれば,糖尿病の症状を現す方,人工呼吸器を使用している方,自分の意志でからだを動かすこともできない方など,さまざまです.そのため,会に求めるニーズが,患者ごとに大きく異なることも活動上の悩みです.多くの患者さんは,治療法が確立されていないことや,日々の暮らしへの影響や予後などに関する情報を十分に得られず,つらい思いをしていることが多いようです.

 そんななか,1つでも多くの家族が笑顔で暮らせるよう,闘病の悩み苦しみを仲間とともに分かち合い,よりよい明日を目指して歩んでいきたいと,1998年,東京・渋谷にある国立小児病院(現在は国立成育医療センター)の患者家族を中心に,当会が発足しました.

 現在は,東京,大阪で年に1回ずつの勉強会と懇談会を開催しながら,情報交換誌「みとこん」を発行し,最新ニュースの提供や,患者家族からのお手紙紹介をしています.また,会員相互の情報交換推進のため,メーリングリストを作って,積極的な情報交換を行なっています.

 活動費も,活動を支える手もたりないので,なかなか思いどおりになりませんが地道に活動していきたいと思います.

連載 少女の口音・32

紅葉 草野 光恵

基本情報

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看護学雑誌
67巻11号 (2003年11月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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