連載 聴こえんゾ!・16
補聴器,そして人工内耳
山内 しのぶ
pp.1141-1143
発行日 2003年11月1日
Published Date 2003/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100825
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ろう学校幼稚部の同窓会で,温泉旅行に行った.幼なじみと,大浴場にひと風呂浴びに行こうかということになった.
「ねぇ,補聴器どうしようか? つけていく,それとも部屋に置いていく?」
「どっちでもいいけど,どうして?」
「うーん.まあいいか,つけていこう.こんなもの脱衣カゴに入れといたって,盗む人なんていないわよね」
「盗んだってしようがないよ,こんなの」
「そうよね.うん,行こ行こ」
私たちにとって補聴器は,一応高価な,貴重品である.他人にとっては,中古の,しかもホカホカと温もりが残る福祉器具であるにしても.
耳の聴こえる友人たちと会話していたときのこと.今身につけているもののなかでいちばん高価なものは何か,という話になった.
「靴.1万5千円くらい」
「服.2万円」
「時計かな.3万5千円くらい」
「コンタクトレンズ! 5万円したよ」
ハーイ,と手をあげて,私は言った.
「補聴器! 2個で30万円くらい!」
「マジ? そんな高いの?」
補聴器の値段をきいた友人たちは,一様に驚いた.
「通販で3万円で売ってるの見たよ」
ピンからキリまであるのだ.値段も,性能も.
「高価なほどよく聴こえるの?」
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