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がん化学療法剤による口腔内粘膜障害の出現頻度は40%といわれており1),痛みや出血,嚥下障害,味覚異常などのさまざまな症状を伴うことがある.重症化,遅延化した口内炎は,食事摂取量の低下,コミュニケーション機能の低下(会話がしにくい),イライラや不眠などの精神的な苦痛をもたらし,患者のQOLを著しく低下させてしまうこともある.また,骨髄抑制(とくに白血球の減少)と同時期に発症することが多く,口内炎からの二次感染のリスクも増大させるため,症状が発生してから対応するのではなく,あらかじめ使用されるがん化学療法剤の副作用を理解し, 予防的ケアを行なうことが口内炎のセルフケア支援にとって重要である.
A口内炎の頻度と現れ方
口内炎(stomatitis)とは,舌・歯肉・口唇・頬の内側などの口腔や咽頭などの粘膜に起きた炎症反応症状のことである.口腔粘膜細胞や骨髄細胞などは通常7-14日と短いサイクルで再生を繰り返しており,がん化学療法剤による影響を受けやすい細胞といわれている.がん化学療法剤による口内炎の発生機序は,①がん化学療法剤の直接作用による口内炎,②がん化学療法剤による白血球低下による局所的な感染に起因する二次的口内炎,の2つに分類される.口内炎の出現は,一般的にがん化学療法剤投与後2-14日の間に出現することが多い.口内炎の程度や持続時間は,使用する化学療法剤の量や頻度,多剤併用,全身状態によっても異なるが,一般に症状の改善には白血球の回復に関連して2-3週間を要する.口内炎を引き起こしやすい薬剤を表1に示す.これらの頻回投与や大量投与,多剤併用療法で高頻度に口内炎が見られる.
軽度の口内炎や口内炎の初期症状としては,無症状の口腔粘膜発赤が一般的である.口腔粘膜の障害が進むと,白斑,粘膜浮腫,疼痛,食事摂取障害,潰瘍形成と移行する.重篤化した場合は,激しい疼痛や出血,二次感染を伴い敗血症注1)に移行し,全身状態が悪化することによって治療継続ができなくなる場合がある.また,疼痛,食事摂取障害などの症状の出現は,身体的苦痛だけではなく,落ち込みや不安,イライラなど精神的な苦痛を感じ,治療継続意思の低下をきたすことにもなる.口内炎の症状の程度はNCI-CTCなどの副作用評価基準(表2)に基づいて評価する.
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