- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
抗がん剤による皮膚障害は,抗がん剤の影響による基底層の細胞分裂抑制によるもの,抗がん剤の皮下漏出による症状等が主であるが,慢性的に徐々に悪化することが特徴である.抗がん剤の皮下漏出は予防・早期発見・早期対処により効果的に症状を緩和できるため,化学療法を受ける患者のセルフケアとしては重要である.また,皮膚炎に関しては症状を予測して初期から皮膚のケアを行なうことが重要である.
A 皮膚障害・漏出性皮膚炎の頻度と現れ方
皮膚障害の症状として,脱毛,色素沈着,発疹,爪の変形,漏出性皮膚炎等がある.脱毛は別に解説されているので,ここではその他の皮膚障害について解説する.発生機序の違いから,皮膚障害と漏出性皮膚炎に分類し,皮膚障害のほうに漏出性皮膚炎以外をまとめて記述する.
皮膚障害
皮膚障害は,表1に示したように,ブスルファン,5-フルオウラシル,ブレオマイシン等により生じる.症状は薬剤により異なるが,表にあるほとんどの薬剤で脱毛のほかに,色素沈着を生じる.また,薬剤の副作用に記述はないが,乾燥性皮膚炎等も併発する. 発生頻度は,ブレオマイシンが皮膚の硬化・色素沈着40.6%2),5-フルオウラシルが色素沈着4.8%3)と報告されているものの,ほとんどの薬剤は頻度不明となっている.症状の発現は急激ではなく,徐々に悪化し慢性的な症状として患者を悩ませる.
漏出性皮膚炎
漏出性皮膚炎は,表2に示したように,「少量の漏れでも水疱性皮膚壊死を生じ難治性潰瘍を惹起しやすいvesicant drugと,多少漏れても炎症や壊死を生じにくいnon-vesicant drug,その中間で局所での炎症を起こすが潰瘍形成にまでは至らないirritant drug」4)に分類され.vesicant drugとしては,マイトマイシンC,ドキソルビシンなどがあり,とくに注意が必要である.
漏出性皮膚炎は,抗がん剤が血管外に漏出することにより生じるが,漏出の直後は,疼痛を伴わず見過ごすことも多い.徐々に局所の腫脹,疼痛,発赤が生じ,放置すると潰瘍化してしまうこともあり,早期の対応が重要となる.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.