特別論稿
老病心中[1]ある嘱託殺人事件の考察
清水 昭美
1
1大阪大学医療技術短期大学部看護学
pp.492-499
発行日 1980年5月1日
Published Date 1980/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918951
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はじめに
老人と,病人である家族との心中事件が目立つ.老人が病気を患っており,病人も老年期に入っているような場合も多い.ともかく一方が老人であり,他方が病人であるといういわば“老病心中”とでも言うべき心中事件は,今後も増加し続けるのではないかと推測される.このような‘行き詰まり’のケースに象徴的な現象を分析し,社会や看護の側の欠陥を明らかにすることは,その改善を通じて,真の医療福祉の実現に重要な役割を果たしうると思う.
筆者は先にこのような老人と病人が引き起こす心中事件を“老病心中”と名付け,その具体的ケースを中心に,その発生要件を検討してきたが1),本稿では,最近の1つの老病心中事件を中心に,その問題点を探ってみたい.
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