総合リハビリテーション 15巻12号 (1987年12月)

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 Ⅰ.リハビリテーションにおけるQOL

 リハビリテーションの分野においてQOL(Quality of life)が強調されるようになり,様々なモデルが示されている1~8).しかしQOLはリハビリテーションの分野だけから生まれた概念ではなく,心筋梗塞の治療9),腎不全患者の治療10),老年学11,12),さらに末期癌患者のターミナルケアの分野13)などでも注目されている.また,集団のQOLではなく個人のQOLも議論されており,これは経済水準・教育水準・居住環境などに注目した「社会指標」から発展した概念である14,15).同じQOLと表現しても,「Life」の意味が異なり,ターミナルケアでは「生命の質」を,リハビリテーションや老年学では「人生の質」や「生活の質」を,社会指標では「生活の質」を問題にしているといえる16)

 一般に,ADLが低いとQOLが低くなりがちであると考えられる17~19).しかし,このようなADLとQOLの関係は必ずしも絶対的なものではなく,たとえADLが低くともQOLを向上させることがリハビリテーションの重要な課題のひとつと言える.上田はリハビリテーションの目標をQOLの向上にあるとし,①「社会的不利の解決」(客観的QOL)と,②「体験としての障害」の解決(主観的QOL)の二つの部分から成立すると述べている8).つまり,①介護者や居住環境の整備などにより,社会的不利を軽減すること(客観的QOLを向上させること)がひとつの課題であり,また②社会的不利の軽減や,障害者および社会の障害に対する意識の変革(価値観の転換や新しい生きがいの獲得)などにより,「主観的QOL」を向上させることがもうひとつの課題であるといえる.

各種機能評価とQOL 伊藤 良介 , 大川 嗣雄
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はじめに

 QUALITY OF LIFE(QOL)について考えるには,まずQOLとは何かをはっきりさせておく必要があろう.しかし,QOLという言葉の意味はそれぞれの立場や関心を持つ領域の違いによってかなり異なっており,必ずしも共通の概念とはなっていない.

 QOLの概念について論ずることはこの小文の範囲を越えてしまうので,ここではそれぞれの研究者によってQOLとして表現されたものをそのままQOLとして解釈し,その他の機能的評価との関係について考察する.問題となることは,従来の評価とQOLはどのような関係にあるか,また従来の評価とQOLの評価が同じ考えかたで良いかどうかであろう.まずQOLと他の機能的評価について比較することとする.

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はじめに

 臓器移植,癌の告知,ターミナル・ケア,QOLなど,最近の医療は“医の倫理”を中心に目まぐるしく変遷するなかで,当然,脳卒中に対するリハビリテーション・アプローチも少しずつ変りつつある.

 過去20年の脳卒中リハビリテーション(以下リハビリと略す)は救命救急とあわせて機能障害(impairment)と能力低下(disability)を主体とするものから,患者の“生きがい”――“人生の質”(QOL:quality of life―この言葉は適当な日本語訳がないためにQOLと,そのまま用いられている)を求めるようになってきている.

 わが国での脳卒中リハビリにたいするこのような傾向は米国において1970年代の後半よりさかんとなり,Kottkeは“今後のリハビリは延命(length of life)より価値ある人生(meaningful life)を考えるべきである”1)としている.ここで注目すべきことはQOLという言葉の変わりに彼はmeaningful lifeといったことで,米国でもQOLという言葉が一般医療者には当初は余り馴染まなかったと思われる.そして1979年のハワイでのAmerican Academy of Physical Medicine and Rehabilitation(AAPMR)とAmerican Congress of Rehabilitation Medicine(ACRM)では“QOL”が学会の標題となった2)

 このような時期に,米国リハビリ医学会は脳卒中のリハビリがどのように施行されているかを顧みる必要をみとめて1979年に全国的なレベルでの調査研究に着手した.

 その目的とするところは,合法的なリハビリ・プログラムをつくることにあり,あわせて,得られた結果から各リハビリ病院,施設に対してより効率的なリハビリの方法をフィードバックすることである.

 詳細は,さきに“脳卒中のリハビリテーション:日米両国の比較”と題して本誌で報告したが3),日米両国の脳卒中リハビリで特徴ある相違点としては以下のようなことがあげられる.すなわち,(1)脳血管障害の発症は日本のほうが若年層に多い(18歳から81歳,平均58歳.米国では20歳から99歳,平均69歳).(2)リハビリ病院での入院期間は日本では平均138日であるのに比して,米国では37日と著しく短かい.(3)退院時での機能回復は日本のほうが良好であるが,退院後6カ月目には米国の患者は退院時よりさらに機能が向上しているのに対して,日本の患者は逆に少し低下していることなどである.

 既報においては紙面の関係でQOLに関してふれることができなかった.そこで,本稿では脳卒中患者のQOLに関して日米両国の患者の相違点について得られた興味ある結果に若干の考察を加えて報告する.

心理テストとQOL 大橋 正洋
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はじめに

 QOL(Quality of Life)という用語は,1950年代に政治的スローガンの一つとして米国で作り出された.それが現在では,社会学だけでなく医学の分野でも関心が寄せられる事柄となった.しかしながらQOLは,様々な分野で様々な目的に用いられているために,その概念も多様である.そこで本編では,医学分野におけるQOL評価テストの開発方法,既存のテストの計量心理学(psychometrics)的問題点などを中心に述べることとする.

在宅障害者の地域におけるQOL 山口 明
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はじめに

 リハビリテーションの目標,個々の障害者が一市民として日常的生活の中で自分のライフ・スタイルを決定し,自分の生きる意味,価値を創造していくという課題は,地域社会を含むその国,社会の民主主義的諸条件の成熟度と密接に結びついている.障害者・老人などのマイナー・グループとされる人達も含めて,様々な価値観と個性をもった一人一人が地域社会の中に構成され,その多様な個性の自由と生存・発達とをいかに保障するかは障害者の地域社会生活におけるQuality of Life(QOL)を論ずる上での前提である.

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 一昨年から,「リハビリテーション・チームにおける医師の役割」というテーマで学生に講義を行っているが,この講義の時期になると非常に憂鬱になる.その原因は,私の考える「リハビリテーション医の役割」と現実に私が果たしている「リハビリテーション医の役割」との間に大きな隔たりがあることである.リハビリテーション医学が対象とする疾患に対するリハビリテーション・アプローチの過程における,私が考える「リハビリテーション医の役割」を図示すると以下のようになる.

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 第4回近畿リハビリテーション医懇話会は,川崎医科大学リハビリテーション科教授明石謙先生による“脳卒中患者のリハビリテーションプログラム”についての講演と質疑応答が行われた.急性期から慢性期に至るまでの脳卒中患者に対する処方例は,非常に有意義であったとの声が会員の中に多かった.

 これに引き続いて開かれた総会において,今後の運営方針が討議され,第5回の懇話会は予定通り開催されることが確認された.昭和63年1月に予定されている第6回は,特別講演と一般演題の発表とを併せて行うこととなった.なお,会場,演者などについては次回の懇話会までに決定される予定である.

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 序文

 脳性麻痺は非進行性の疾患とされているが,成人の脳性麻痺者から運動能力の低下を訴えられることも稀ではない.本稿では,かなり多くの脳性麻痺者が成人にいたって運動能力の低下する事実を明らかにし,その原因と治療方法を検討した結果を報告する.

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はじめに

 本邦において,脳卒中による片麻痺患者の運転の報告は非常に少なく,失語症患者の運転となると殆ど検討されていない.著者らは軽度の運動性失語症は車の運転の阻害因子にはならないようだと報告した1)が,今回,どのようなタイプ,どの程度の失語であれば安全な運転が可能であるのか,また運転の動機や継続の理由などについて調べたので報告する.

解説

義肢装具等の支給体系(その2) 今田 拓
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 Ⅴ.各制度内の現状について

 以上述べたような複雑な仕組となっている補装具支給制度であるが,各制度ごとの対応はどのようになっているのであろうか.各制度のルーツになっているのはやはり傷痍軍人対策に出発点を有する身体障害者福祉法にある.それはこの法第21条(前出)によって補装具の価格体系が定められ,これを医療保険や年金制度がそのまま準用することが慣例となっているためである.

 まず医療保険では,治療用装具の療養費支給基準について,昭和36年7月24日保発第54号「治療用装具の療養費支給基準について」という厚生省保険局長通知で,成人の装具については身体障害者福祉法の規定,児童については児童福祉法の規定に基づき算出することがさだめられている.しかし医療保険行政面では補装具について,支払者側としての審査機関もなく,また療養費支給証明の書類も補装具の処方を明示する様式も定められておらず,医師の診断書(処方が詳細に書かれているとは限らない)と業者の見積書(または受領書)によって支払われてきた長い経緯があり,十分なチェック機構が整っているとはいえなかった.

講座 歩行(11)

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はじめに

 杖やその他の歩行補助器具には多くの種類があるが,わが国における分類には表1のようなものが用いられている.すなわち,杖とその他の歩行補助器具という分類の他に,杖そのものにもいくつかの種類を考える必要がある.この点について今田は,表2のような分類を提唱している.

 このような分類を見てもわかるように,これらの歩行補助器具はそれを使いこなすために訓練が必要なものも多い.しかし,訓練をする前にいくつかの事を決定する必要がある.

 それらは,患者や障害者にどのような歩行補助器具を与えるかあるいは処方するかということである.すなわち,歩行補助器具の種類の選択である.次に行わなければならないことは,その対象に適した長さや大きさのもの,すなわちサイズの選択が必要である.これらの用件が適切に処理されると,障害者や患者に対してそれらの使用方法や特性についての説明がなされることになる.多くの道具と同様に,これらの歩行補助具も説明だけでは十分に使用できるとは限らない.そこで,訓練が必要になる.

 本講座は主として訓練に重点がおかれているので,ここでは種類の選択については成書を参照して頂くことにし,歩行補助具の適合から入ることにする.

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 社会福祉施設の分けかた

 今田 本誌の講座で社会福祉施設の解説が連載されましたが,リハビリテーションに携わっている者の立場から,社会福祉施設におけるリハビリテーションの役割を考え直してみようという企画をいたしました.

 社会福祉施設と一言に言っても,いろんな分類の仕方がある.まず,目的から分類すると,1つは,更生とか,リハビリテーションとか,そういう目的を持った一群,それから,作業をする施設,授産施設に代表される一群,あとは基本的な生活の場を与える生活施設.それから,地域の方々のための利用施設の4つになります.又別の見かたで,対象者を預かるか,それとも通わせてサービスするかという在宅と入所という分類方法もあるかと思います.また,法律的に社会福祉事業として,第1種と第2種認可施設と未認可の施設そういうような分類もあるかと思います.もう1つの分類としては,社会福祉6法という行政制度の中で固有の目的を持った分け方,老人福祉施設とか,身体障害者の施設とか,精神薄弱者の施設という分け方もあるかと思います.

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 土肥先生は三原市の出身で昭和41年慶応大学を卒業,一時母校へ席を置かれたが43年岡山大整形外科へUターンされ,私とはそれ以来の付合いである.先生を表現するには①慶応へデモ族,②スポーツマン,③スマートマン,④言うなれば私とは同期の桜,などが適切だろう.①,先生はピアニストになりたかったが両親の説得で仕方なく「慶応へでも行くか」という事になった.秀才である.②,スポーツは何でもやるし上手い.アメリカ留学では何と飛行機の免状を取ってきた.③,とに角やる事がスマートで垢抜けしており慶応ボーイ実在の証拠である.もっとも今は慶応オジサンである.後ろから見ればわかる.④,本当なのだ! 私がスピード違反で警察の講習へ出席した所,先生は前の方に坐っておった.川崎医大リハ科には昭和51年以来,10年間在籍され数々の業績を挙げられた.現在46歳,働きざかりである.今回の教授就任は大変喜ばしく,先生の未来を大きく開くものと期待したい.

印象記

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 第24回日本リハビリテーション医学会総会は,東大上田敏教授が会長で,1987年6月27,28の両日,東京の国立教育会館で行われた.

 上田教授は内科,とくに神経内科からリハビリテーション医学に転じられた方で,東大リハビリテーション部主任である.日本リハビリテーション医学会のもっともアクティブなメンバーの1人であり,IRMA(International Rehabilitation Medicine Association)の日本支部代表でもある.本学会を主宰するにもっとも適した方と,衆目の一致するところであり,その成果を大いに期待していたのは私一人だけではあるまい.

一頁講座 障害者のレクリエーション・11

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 障害者のレクリエーションと云うと,すぐに思いつくのは「パラリンピック」とか「障害者スキー教室」…など,いわゆるスポーツ的なものである.それはそれとして大いに評価したいが,障害者と云っても,その部位その程度によって千差万別である.必ずしもスポーツ的なものが出来る人ばかりとは云えない.そうした意味から,まず考え方の土台として『レクリエーションは生活の快』と広く認識すべきだと云いたい(これは本誌15巻5号においても述べたことだが).

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文献抄録

編集後記 明石 謙
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 今回の特集テーマは「QOL」である.リハビリテーション医学ではQOLが重要視されることは概念的にわかっていても実際にQOLとはどんなものか仲々つかみにくい.「QOLの評価はADL評価に取って替るものである」という事もよく言われてきているが,日常の診療では依然としてALDの方が幅を利かせている.「これらの事がスッキリすればよいが」というのが編集者の願いであったが,結論については内容をレビューして後で述べることにする.

 まず中村氏らは「ADLとQOL」と題しALDとの関係について述べた.氏の論述は主観的QOLと客観的QOLを基本に置き,老年者,脳血管障害患者のそれらについて考察を行った後,脳血管障害患者の移動能力の調査結果について述べた.

基本情報

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総合リハビリテーション
15巻12号 (1987年12月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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