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Ⅰ.リハビリテーションにおけるQOL
リハビリテーションの分野においてQOL(Quality of life)が強調されるようになり,様々なモデルが示されている1~8).しかしQOLはリハビリテーションの分野だけから生まれた概念ではなく,心筋梗塞の治療9),腎不全患者の治療10),老年学11,12),さらに末期癌患者のターミナルケアの分野13)などでも注目されている.また,集団のQOLではなく個人のQOLも議論されており,これは経済水準・教育水準・居住環境などに注目した「社会指標」から発展した概念である14,15).同じQOLと表現しても,「Life」の意味が異なり,ターミナルケアでは「生命の質」を,リハビリテーションや老年学では「人生の質」や「生活の質」を,社会指標では「生活の質」を問題にしているといえる16).
一般に,ADLが低いとQOLが低くなりがちであると考えられる17~19).しかし,このようなADLとQOLの関係は必ずしも絶対的なものではなく,たとえADLが低くともQOLを向上させることがリハビリテーションの重要な課題のひとつと言える.上田はリハビリテーションの目標をQOLの向上にあるとし,①「社会的不利の解決」(客観的QOL)と,②「体験としての障害」の解決(主観的QOL)の二つの部分から成立すると述べている8).つまり,①介護者や居住環境の整備などにより,社会的不利を軽減すること(客観的QOLを向上させること)がひとつの課題であり,また②社会的不利の軽減や,障害者および社会の障害に対する意識の変革(価値観の転換や新しい生きがいの獲得)などにより,「主観的QOL」を向上させることがもうひとつの課題であるといえる.
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