産科と婦人科 90巻2号 (2023年2月発行)

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特集　超音波がもたらす産婦人科診療の新機軸

ねらい石本　人士 90巻2号 , 2023年2月 , pp.119-119

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　われわれは産婦人科臨床において，日々超音波を用いた機器の恩恵を受け，超音波診断装置に至っては今や内科医の聴診器のごとく身近な存在となっている．発展の極みともみえる超音波診断装置だが，ハードウェア・ソフトウェアの技術革新の進化が止まることはない．それゆえに，ハイエンドで多機能の超音波診断装置が身近にありながら，十分に機能を使いこなせていない先生方も多いかもしれない．どのように機能を活かし，引き出していけばよいのか．様々な領域や疾患の診療で，色々な創意工夫がされ，診断に利用され，また利用されようとしている．

Ⅰ．進化した超音波装置と近未来

1．超音波診断装置の新機能をいかに使いこなすか山本　祐華 90巻2号 , 2023年2月 , pp.123-128

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要旨

　よりきれいにわかりやすく描出するための工夫やプラスアルファの解析機能など新しい超音波診断装置には夢が詰まっている．ちょっとした機能を使いこなすことで，より美しい画像を手に入れることが可能となる．また胎児の病態に即した機能評価を追加することも可能である．どこにそのボタンがあるかを知り，試してみるのが第一歩となる．

2．人工知能が変える産婦人科超音波検査永昜　洋子 , 藤田　太輔 , 大道　正英 90巻2号 , 2023年2月 , pp.129-132

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要旨

　人工知能（AI）は画像解析に優れており，その技術は日進月歩で進んでいる．産婦人科超音波検査におけるAIの活用ははじまったばかりであるが，頻繁に行われる産婦人科臨床において，AIは大きな可能性を秘めている．

　AIの臨床応用化の普及には，超音波検者とAIの開発者のコミュニケーションを促進することが重要である．本稿では，産婦人科超音波分野におけるAIについての報告をあげ解説した．AIの利点を知ることで，今後の産婦人科超音波検査におけるAIの幅広い活用につながることを期待する．

3．高解像度のハイエンド装置を産科診療に活かす長谷川　潤一 , 古谷　菜摘 90巻2号 , 2023年2月 , pp.133-137

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要旨

　近年，各社超音波診断装置の高解像度化が進んでいる．また，ハイエンドの機器においては特に，フォーカスという概念がなくなるほど良好な高分解能画像が浅部から深部まで，そしてペネトレーションよく得られるようになっており，検者にとって視認性が高く診断しやすい画像を広い範囲で得ることができる．超音波診断装置の高解像度化は，胎児だけでなく，子宮・胎盤などの形態学的診断の精度向上につながると考えられる．

Ⅱ．臨床への新たな活用法と工夫

4．胎児治療への応用市塚　清健 , イズデプスキ　達也 , 瀬尾　晃平 90巻2号 , 2023年2月 , pp.139-143

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要旨

　超音波とは普遍的エネルギーであり，産科の臨床現場においてはそのエネルギーをおもに診断に利用している．一方，婦人科臨床においてはそのエネルギーが子宮筋腫の治療に応用されている．産科領域，特に低侵襲性が求められる胎児治療にも超音波，その中でも強出力集束超音波が応用可能な病態があり報告例もある．本稿では強出力集束超音波についてその特徴，および胎児治療例，さらに今後応用が期待される病態などについて概説する．

5．一絨毛膜双胎の管理鷹野　真由実 , 中田　雅彦 90巻2号 , 2023年2月 , pp.145-149

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要旨

　一絨毛膜双胎の妊娠管理において，超音波検査は妊娠初期の膜性診断にはじまり，妊娠中期以降では双胎間輸血症候群など特有の合併症の診断に用いられる．所見を基に治療介入や早期娩出の必要性が検討されるため，一絨毛膜双胎では全妊娠期間を通して頻回かつ精細な超音波検査を要する．また近年では，妊娠初期のパラメータを用いた一絨毛膜双胎の合併症リスク評価や児の循環変化に着目した病態評価にも超音波検査が用いられる．

6．妊娠糖尿病妊婦の胎児評価への応用池ノ上　学 90巻2号 , 2023年2月 , pp.151-156

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要旨

　妊娠糖尿病（GDM）では，妊娠後期に体幹・上肢の脂肪量が増加し，肩甲難産のリスクが上昇する．そのような軟部組織量の増加した児では，特に胎児推定体重と出生体重の誤差が大きくなる傾向にある．GDMにおいて，従来の胎児推定体重の算出のみでなく，脂肪・骨格筋などの胎児軟部組織量の評価を行っていくことで，巨大児や肩甲難産の予測，さらには出生児の小児肥満やメタボリックシンドロームの一次予防へとつながる可能性がある．

7．妊産婦の心血管評価吉松　淳 90巻2号 , 2023年2月 , pp.157-161

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要旨

　妊婦の心血管を評価する場面は，①もともと心疾患を有する女性が妊娠し，その心機能評価を行う場合と，②妊娠・分娩に伴い循環に大きな影響を与えるイベントが発生し，循環の評価を行う場合の2つがある．簡便性と非侵襲性から評価に用いる最も適したモダリティは超音波検査となる．妊娠中の心エコーでは妊婦特有の変化があることを勘案した評価が必要である．妊娠高血圧症候群のような産科特有の病態での循環管理にも心エコーは有用で，産婦人科医自身による心エコーもオプションとして取り入れたい．検査所見の解釈には病態の理解が求められる．

8．contrast-enhanced ultrasonographyの産科出血管理への応用今井　健史 90巻2号 , 2023年2月 , pp.163-167

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要旨

　われわれは，産後過多出血の管理向上を目的に造影超音波検査（CEUS）を導入している．帝王切開術後の過多出血の早期発見・予測に対するCEUSの有用性について検討した．造影剤の子宮内腔への漏出をもってCEUS陽性と判定した．ロジスティック回帰分析によりCEUS陽性と産後過多出血との関連が示された．われわれが知る限り，産科領域においてCEUSの有用性を系統的に検討した報告はほとんどなく，本稿ではその一端を紹介させていただく．

9．子宮内膜症・子宮腺筋症の超音波検査太田　郁子 , 平池　修 90巻2号 , 2023年2月 , pp.169-174

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要旨

　子宮内膜症および子宮腺筋症の経腟超音波断層法検査（TVS）による画像診断は，従来チョコレート囊胞の存在や子宮筋層の非対称肥厚といったTVSでわかりやすい所見のみを頼りにしたものでなされてきたが，近年，これらの疾患にはほかにも多彩な所見が存在することが指摘されており，TVSにおいて「意識的に描出しないとみえない所見をみる」技術が必要とされるようになった．MRIは子宮内膜症および子宮腺筋症の診断に有用な検査ではあることは言を俟たないが，そのアクセスの容易さを考えれば，TVSの診断精度を向上させることは，子宮内膜症および子宮腺筋症の早期診断および治療のためにも重要である．

　本稿では，近年新たに提唱されるようになった子宮内膜症および子宮腺筋症の特徴的画像所見の供覧を通して，子宮内膜症と子宮腺筋症のTVS上の特徴とその病態との関連について述べる．

Ⅲ．POCUSの実際

10．救急現場におけるPOCUS 亀田　徹 90巻2号 , 2023年2月 , pp.175-179

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要旨

　医療従事者がベッドサイドで観察範囲を絞り，臨床決断と侵襲的手技の質向上のために実施する超音波検査はpoint-of-care ultrasonography（POCUS）とよばれ，その概念は広く共有されるようになった．急性期診療に従事する臨床医が行うPOCUSと産婦人科疾患との関連では，経腹超音波検査で評価が行われること，またPOCUSを全身に用いることで被曝を回避できる可能性があることがあげられる．今後は急性期診療に従事する臨床医と産婦人科専門医の間でPOCUSを通じた連携が重要になる．

11．急性腹症のPOCUS（産婦人科領域を中心に）畠　二郎 90巻2号 , 2023年2月 , pp.181-188

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要旨

　妊婦の水腎症や急性虫垂炎，婦人科特有の疾患である卵巣茎捻転や卵巣出血など，急性腹症の原因となるいくつかの疾患におけるpoint-of-care超音波（POCUS）の有用性について概説した．必ずしもPOCUSにより確定診断する必要はないが，ある程度各疾患に特徴的な所見を検出することにより診断の迷走を防ぐことが可能であり，より迅速で的確な診療戦略を構築することができる．この領域におけるPOCUSを知ることは産婦人科医よりはむしろ急性腹症の診療に携わる他科の医師にとって重要であるともいえる．

12．分娩管理におけるPOCUS 松岡　隆 90巻2号 , 2023年2月 , pp.189-194

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要旨

　経会陰超音波検査は分娩進行を観察するPOCUSである．内診という主観的で共有しがたい情報を超音波画像で客観的に分娩に携わる多職種のみならず患者と共有できるメリットがある．検査には基本的な機能をもつ機器であれば十分であり，簡便かつ有用な分娩をリアルタイムに評価できる検査である．ただし，経会陰超音波検査により内診が不要になることはなく，検査により内診の精度が高まり，よりよい分娩管理につながると思われる．

13．産科における急性期POCUS 松島　実穂 , 田嶋　敦 , 谷垣　伸治 90巻2号 , 2023年2月 , pp.195-199

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要旨

　超音波検査は低侵襲でくり返し施行ができるため，産科救急の場面で患者の刻々と変化する病態に対応するには非常に有効である．この場面でのPOCUS（point-of-care ultrasonography）はあくまでも精査・診断ではなく，必要最低限の所見から患者の病状を把握し，次の対応を計画することにある．産科救急の代表的な病状別にPOCUSのポイントを解説する．

14．術後管理におけるPOCUS 泉　顕治 , 石本　人士 90巻2号 , 2023年2月 , pp.201-208

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要旨

　産婦人科の術後管理においても，ベッドサイドですぐにパッと行う超音波検査であるpoint-of-care ultrasonography（POCUS）は有用である．本稿では4つの場合（術後出血，下肢深部静脈血栓症，術後肺水腫，術後尿管閉塞）についてPOCUSを行う際の観察部位や注意点などについて述べる．腹腔内出血はモリソン窩，ダグラス窩，左横隔膜下，両側傍結腸溝の順に溜まっていくと考えられ，どこの部位まで溜まったかを観察することによって，腹腔内出血量のおおまかな推定を行うことができる．下肢深部静脈血栓症のスクリーニングのためには，鼠径部と膝窩の静脈および分岐部を観察し，静脈に圧迫を加え形態が変化するか否かで行う．術後肺水腫の診断ではアーチファクトの所見（A-line陰性，B-line陽性）に着目する．軽度の水腎症では，腎洞の中心部エコー内に無エコー像（中心部エコー解離）が出現する．

カラー口絵

カラー口絵 90巻2号 , 2023年2月 , pp.113-118

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・本文中にモノクロ掲載した図のうち，カラーで掲示すべきものを順に並べた．

口絵①［p.124　図1］

口絵②［p.124　図2］

口絵③［p.125　図3］

口絵④［p.126　図4］

口絵⑤［p.126　図5］

口絵⑥［p.141　図2］

口絵⑦［p.142　図4］

口絵⑧［p.183　図4］

口絵⑨［p.187　図10］

口絵⑩［p.198　図5］

口絵⑪［p.198　図6］

口絵⑫［p.198　図7］

症例

多囊胞性卵巣症候群との鑑別に苦慮したセルトリ・ライディッヒ細胞腫瘍合併不妊の1例横山　絵美 , 渡邉　善 , 志賀　尚美 , 村川　真理弥 , 佐藤　聡子 , 八重樫　伸生 , 立花　眞仁 90巻2号 , 2023年2月 , pp.209-213

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要旨

　セルトリ・ライディッヒ細胞腫瘍は，男性化徴候を特徴とする非常にまれな性索間質性腫瘍であり，月経異常や排卵異常をきたすことから不妊の原因となる．今回，多囊胞性卵巣症候群との鑑別に苦慮するものの，セルトリ・ライディッヒ細胞腫瘍を腹腔鏡下にて切除，妊娠に至った症例を経験した．卵巣腫瘍を合併している不妊患者では，ホルモン産生卵巣腫瘍の存在を念頭において検査と慎重な判断をする必要がある．

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目次 90巻2号 , 2023年2月 , pp.120-121

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お知らせ 90巻2号 , 2023年2月 , pp.162-162

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お知らせ 90巻2号 , 2023年2月 , pp.168-168

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投稿規定 90巻2号 , 2023年2月 , pp.216-217

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投稿論文チェックリスト 90巻2号 , 2023年2月 , pp.218-218

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投稿同意書 90巻2号 , 2023年2月 , pp.219-219

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バックナンバー 90巻2号 , 2023年2月 , pp.222-222

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本号掲載広告一覧 90巻2号 , 2023年2月 , pp.223-223

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次号予告 90巻2号 , 2023年2月 , pp.224-224

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基本情報

産科と婦人科
90巻2号
(2023年2月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9792 診断と治療社

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