耳鼻咽喉科 49巻2号 (1977年2月)

特集 蝸電図・脳波をめぐる諸問題I

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 I.聴覚機構の中での蝸牛

 内耳は外耳,中耳の伝音器官と聴神経との間に介在して聴覚経路の中で音刺激を神経へ伝える変換器としての働きをしている。すなわち音としての空気の粗密波,交流を受ける終点であり,神経インパルスを発生させる源でもある。その過程を大まかに考えてみると第1表のようである。

 しかし蝸牛の聴覚機構の中での役割は理解されても蝸牛の中心的働きをする毛細胞にしても付着した神経線維にしても単一でなくてそれらの集合体であるから蝸牛全体としてはどのような波形の刺激がくればどのような神経放電の応答が生じてくるのかはまつたく分つていない。したがつて実験的にヒトの内耳への電極移植1)が成功しても電気的刺激をどのようにすればよいかという問題が残されている。

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 I.緒言

 突発性難聴は厚生省特定疾患に指定され,疫学,病因および治療面にわたり種々検討され,またメニエール病との類似点,相違点に関してもメニエール病調査研究班との合同会議において多くの研究報告がなされている。

 すでにわれわれは突発性難聴に蝸電図検査を行ない,蝸電図法により突発性難聴の予後を早期に判定し得ることを報告した1)。今回は突発性難聴症例から得られた蝸電図の聴神経活動電位(AP),蝸牛マイクロフォン電位(CM),Summating Potential(SP)の各種反応から本疾患の病態について検討したので報告する。

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 I.緒言

 聴性電気反応の臨床応用の究極の目的の1つは,これらの反応によつて被検耳の純音聴力を測定し,純音オージオグラムを作成しようということであろう。従来この目的に使用されてきたのは主としてピーク潜時50msec以上のいわゆる頭頂部緩反応slow vertex responseであつたが,最近ヒトの頭皮上から導出される潜時50msec以下の速い反応が注目されており,特に聴性脳幹反応auditory brain stem response(BSR)と頭頂部中間反応(中間潜時反応)middle latencyresponse(MLR)については,その臨床応用に関する報告も少なくない。しかしこれらの速い反応の場合には,緩反応と異なつて,反応の周波数特異性(応答性)に問題があり,どのような純音刺激を使用し,どのような反応を指標にすればもつとも良く目的を達するかについては,まだはつきりした結論は得られていない。

 特にBSRに関しては,2種の反応が重畳して出現する点に問題がある。BSRのこの二重構造について大西ら11)は「BSRにはI-VII波の7相性のピークがあり(略),音圧が低くなるとV波が最後まで残る。上記の約1kHzの周期を持つ反応のほかに,IV-VI波にかけて大きい波がある」と記載し,Davisら2)も「BSRにおいてはpseudorhythmicな連続波の上に1つの緩かな頭頂部陽性変動が重畳する」と述べて,この複合性を肯定している。鈴木ら14)も「BSRはほぼ1msec程度の間隔で連続出現する数個の変動と,これよりかなり緩かな周波数成分を持ち,ピーク潜時5〜7msec程度(click音の場合)の1個の陽性変動から成立する」とし,なおこの陽性変動はMendelら10)がPoと記載した陽性ピークと一致するものであろうとしている。従来BSRの研究においては,この緩かな陽性変動(本報においては以下一応Poと呼称することにする)のピークが多くの場合連続波のV波(Jewett V=Jv)と重なりあうことや,BSR連続波のうちでV波がもつともはつきり認められることなどから,両者が同一視されて論じられている場合が少なくないが,Poそのものは100Hz程度のかなり低いhigh passfilterで既に消失してしまうことが多いので14),この方法で両者の区別が可能である。

カラーグラフ 目でみる耳鼻咽喉科

慢性扁桃炎 蔣 中山
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 扁桃(主に目蓋扁桃の意)が生理的炎症臓器とも呼ばれるのは,機能的,組織学的に常時慢性扁桃炎の状態下にあるからである(第1図)が,一般に臨床上,慢性扁桃炎を;①実質性増生型(第2図),2陰窩型あるいは陰窩の閉塞による膿胞形成型(第3図),③慢性類線維性退行型(第4図)に分け,組織学的に;①未成熟型.②成熟あるいは活動型(第5図),③退行あるいは被膜形成型(第6図),④萎縮,硬化,変性あるいは終末型(第7図)に分けられる。とくに炎症をくりかえした成人の扁桃は,肥大よりかむしろ埋没的であり,前口蓋弓の発赤,圧痛なとが印象的である〔第8〜12図参照〕。

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 I.はじめに

 diphenylhydantoin(Aleviatin)は抗痙攣剤としてテンカン治療などに広く用いられている薬剤であるが,臨床上いろいろな副作用を示す場合があることが知られている。たとえば耳鼻咽喉科の教科書にも歯肉増殖症(歯肉ディランチン症)などが記載されているが,実際に臨床でみることは少ない。

 diphenylhydantoinによる副作用の1つとしてリンパ節症(lymphadenopathy)が注目されだしたのは比較的に最近のことである。その報告は少なく,わが国における耳鼻咽喉科領域での報告は著者が調べた範囲では未だみられない。

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 I.はじめに

 好酸球浸潤を伴つた組織球増殖症の総括的な呼称として,1953年Lichtensteinはhistiocytosis Xと呼ぶことを提唱し,いくつかの変異型を有する疾患を1つの関連した疾患群として記載して以来,各領域で多くの臨床例が報告されている。

 ところでhistiocytosis Xに属する疾患のうちでeosinophilic granulomaは決して稀な疾患ではなく,頭蓋骨,肋骨,骨盤骨などに多く発生するとされているが,側頭骨に発生したeosinophilic granulomaの報告は少ない。

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 I.はじめに

 重複癌は1869年のBillrothの報告以後,数多く発表されてきた。また喉頭癌に伴う重複癌もしばしば報告されてきた。しかし,喉頭と甲状腺の組合せはきわめて稀であつた。

 しかし,われわれは喉頭癌の診断の下に手術を行なつた患者において,廓清した頸部リンパ節で,扁平上皮癌の転移だけでなく,濾胞状甲状腺癌の転移を同時に同じリンパ節で認めた。しかも,甲状腺機能が亢進していると思われる非常に稀な症例を経験したので報告する。

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 I.はじめに

 交代性眼振(nystagmus altcrnans)は報告でみる限りいわゆる先天性眼振などの非迷路性疾患に多く,迷路性のものは稀とされているが,われわれは瘻孔症状を伴つた中耳真珠腫症例に正中眼位で自発性にその方向が交代する眼振を認めたのでここに報告し,その成因や非迷路性交代性眼振との差異につき考察を加えたので諸賢のご批判をいただきたい。

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 I.はじめに

 5-FuはBleomycinとともに今日頭頸部悪性腫瘍の化学療法剤として広く使用されている。1966年ソ連のHillerら1)によつて合成された5-Fuの誘導体,N1-('2-tetrahydrofuryl)-5-fluorouracil(以下FT-207と略記)は毒性が低く,血中持続時間が長いことなど従来の5-Fuとは異なつた利点も証明されている。

 抗癌剤の投与法として頭頸部領域では動脈内投与がもつとも有効であることは既によく知られている事実であるが,FT-207の如く経口投与が可能な薬剤は使用法が簡便である点に特徴があり,その効力についてはわれわれ臨床家が関心をもつところである。今回われわれは頭頸部悪性腫瘍患者に対し本剤の経口投与を試みたのでその成績について報告する。

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 I.緒言

 1962年,梅沢ら1)が土壌中より分離した放線菌の一種Streptomyces verticitlusが産生する,水溶性塩基性ペプチッドの抗腫瘍性抗生物質を発見し,ブレオマィシン(以下BLMと略す)と名付け,さらに市川ら2)がその臨床実験を試み,頭頸部,皮膚などの扁平上皮癌に著効を有することを証明して以来,足掛け10年になる。その間,頭頸部悪性腫瘍の治療は,手術,放射線,化学療法を組み合わせた,いわゆる三者併用療法の発達により,従来しばしば施行されてきた拡大手術は回避される趨勢になつてぎた。この間,BLMもしばしばこの治療法に組み入れられるか,または単独に使用され,それぞれ効果を上げ,十分に臨床的意義を上げるに至つている。

 一方,このBLMの毒性,副作用についての報告も多数に及び3)〜9),手指の硬結,口内炎,脱毛,発熱などの一過性のものから,肺線維症の如き,患者の生命を犠牲にするものまで多数見られるようになつた。特に,肺線維症は癌は征服できても,その宿主たる人間の生命を奪うことになるので,この薬剤を使用しての癌治療は大問題になつて来ており,使用量の制限,および肺の線維化などの副作用防止のため,ステロイドホルモン製剤,タチオン製剤などの投与などが試みられてきている。

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 ラテン語は死語であつて,日常生活にこれを用いる国は今はないが,科学ことに自然科学方面では学名その他の術語として,世界的に共通に用いられている。しかしその発音は各国で異なり,各々自国語流に読み,また同じ国でもまつたくは統一していない。国際学会その他で外国人学者と接触する機会が最近頓に多くなつたが,演説,聴講,討論,質問などの際に,ラテン術語の発音の相違が,相互の理解を妨げる事が少なくない。ラテン語学者はシーザやキケロの時代の発音に統一しようとしているが,それを知るには,ラテン語辞書がぜひ必要である。しかしその辞書には科学術語の全部は採録されておらず,解剖学と臨床医学では約2/3が,その他の方面でごく少数が載つているに過ぎない。そこで科学術語の統一的発音法の制定がいよいよ必要になつてきたと思われる。筆者は一試案を作つたので,耳鼻咽喉科ラテン術語を材料として,以下に記載する。

 I.母音:a,e,i,o,uは日本のローマ字と同じ。だが,今一つのラテン語母音のyは〔i〕または〔j〕と発音する。短音で読むのを原則とするが,paenultima(終りから2番目の音節)が母音に終るときその母音だけを長音に読む。

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 1975年10月17日〜21日,森本正紀会長のもとに第5回Bárány SocietyのExtraordinary Meetingが,京都の美しい秋を背景に催されたのは,記憶に新しいところである。

 このたびNew Yorkで開かれたThe American Neurotology Society主催の第1回Vestibular Symposiumに参加する機会があつた。これは,Neurotologyのうち,主に平衡神経科学に関するシンポジアムで,そのタイトルは"Update Neurotology"という,まことにアメリカらしいシンポジアムであつた。

基本情報

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耳鼻咽喉科
49巻2号 (1977年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9679 医学書院

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