臨床泌尿器科 65巻5号 (2011年4月)

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要旨 外科的精巣摘除術のみであったホルモン療法も,徐放性LH-RHアゴニストや非ステロイド性アンチアンドロゲン剤の開発などが進み,さまざまな治療様式が揃ってきた。以前はホルモン療法が,外科的去勢のみであったので,一度再燃するとそれは臨床的に再燃癌を意味していた。ところが,上述したように,ホルモン療法が多様化したこともあり,再燃癌の定義自体困難になってきた。このような背景の中,去勢抵抗性前立腺癌(castration-resistant prostate cancer:CRPC)という用語が広く用いられるようになってきた。本稿では,ホルモン感受性を意識した,CRPC治療戦略について概説する。

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 私事で恐縮であるが,外科医であった父の本棚には父の学生時代の教科書がいくつかあった。当然その内容は古く,私が医学生になってみてみると,内容が使えそうなのは解剖学(マクロ)だけであった。それも日本が貧しい時代の印刷の悪いものであった。私の学生時代,よいアトラスといえばPernkopfかSobottaかであった。父にPernkopf 2巻を買ってもらった。十分使いこなせたとはいえないが,図の精緻さ,美しさは素晴らしく,今も職場の本棚にある。時代の趨勢もあり,これらを超えるようなアトラスは今後作られないだろうと思っていた。実際,学習に便利であったり,安価であったりするよいアトラスは出版されても,唸るような素晴らしいアトラスはみることはなかった。

 プロメテウスの第1巻をみたとき,解剖学のアトラスにこのような進化の方向があったのかと感動した。CGを使っているからであろうか,精緻だが生臭さを感じないドライな図柄,鮮やかだが上品な色合い。洗練されたレイアウト。一見するだけで,著者やブックメーカーの意気込みを感じた。

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 本年4月の医療費改定で,がん診療においても地域連携を行えば医療費が加算されるようになった。胃がん・大腸がん・肺がん,乳がん,肝臓がんのいわゆる5大がんに前立腺がんを加えた6種のがんが対象である。全国のがん診療連携拠点病院や都道府県認定のがん診療拠点病院では,地域連携の診療計画書(地域連携クリティカルパス,以下連携パス)を患者に渡せば,患者1人につき退院時の1回のみであるが750点を加算できる。また紹介を受けた診療所では,毎月1回300点を加算できることになった。

 しかし,手続きの面倒さに比べて決して大きな額ではない。この程度の加算額では,拠点病院もクリニックも,経営上のメリットからがん診療連携を積極的に推進することにはならないだろう。また地域連携は東京や大阪のような大学病院が多数存在する地域では,医師同士に大学や医局のつながりがないので進めにくいのが実態である。いわゆる医師同士が顔の見えない関係では連携が困難である。また,再発の可能性の高い進行がんの場合は紹介しにくい,受けにくい,といえる。

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 本書を初めて手にして,白い帯に書かれた「“創造性”と“コミュニケーション能力”に優れたスタッフになるために」というフレーズが目に留まった。“創造性”と“コミュニケーション能力”は,被験者,治験担当医師,院内関連部署のスタッフ,そして,立場の異なる製薬会社やCRO(開発業務受託機関)の開発担当者の間に立って仕事をしているCRC(治験コーディネーター)にとって,特に重要な要件と思っているからである。

 一体どんな人たちが書いているのだろうかと思い,早速,執筆者一覧を眺めてみた。なんと,全執筆者22人のうち19人がCRCである。彼女たちの仕事中の様子が目に浮かんできた。そういえば,AさんとBさんとは,2010年10月に別府で開催された「CRCと臨床試験のあり方を考える会議」の懇親会で話したことを思い出す。

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 『標準外科学』を手にするのは3度目になる。最初はもちろん学生時代,第4版であったと記憶している。外科学の最初の講義で教授から推薦され,何の迷いもなく購入した。すでに外科医をめざすと決めていた私は,内科の「朝倉」に比べてあまりにハンディな一冊本であることに多少驚きながらも,こげ茶色の重厚な表紙をわくわくしながらめくったものである。ベッドサイド実習の時期になると,真白い白衣に本書片手の学生たちが外科病棟に設えられた部屋で勉強していた。まさにstandard textbookであった。2度目は第9版,消化器外科学会の専門医試験対策に入手した。表紙こそ紺色を基調としたイラスト入りの斬新なものになっていたが,本文は第4版の頃と変わらぬ安心感のある2色刷りで,懐かしさもあって購入を即決した。専門医試験を受けようとする外科医が学生用の教科書で勉強するのもどうかと思い,同僚には「講義の準備のために買った」ことにしておいたが,卒後十数年の間にいささか偏りすぎた知識の穴を埋めてくれる期待通りの内容で,一気に読んだ。今も医局の書架に居座り続けている。

 さて,このたび改訂された第12版。一段とハンディになった印象で,さてはこちらもゆとり教育で内容が削られたかと心配したが,頁数はほとんど変わっていない。白基調のすっきりした表紙と,使われている上質紙のためだろう。頁をめくると,大きめの文字でいかにも読みやすそうな記述が目に飛び込んできた。繰り返し読むことの多い教科書にとっては,内容はもちろん,「思わず次の頁をめくりたくなるような読みやすさかどうか」ということも重要である。章のタイトルデザインや余白・図版の配置,フォントの統一感などが旧版より洗練され,成功しているようだ。また,従来の教科書は文章の記述が中心で,ともすれば“退屈”な印象が否めなかったが,本版ではその常識を覆すかのように重要な部分が色文字やアンダーラインで強調され,しかも覚えるべきポイントが箇条書きされた「Note」欄が随所に散りばめられている。例えば食道癌の「Note」では病因や疫学,病期分類,転移経路,診断,治療がわずか15行に凝集されている。これで知識を整理した後,本文に戻り再読すれば,より理解が深まるだろう。さらに余白に書き込んでいけばオリジナルの立派なサブノートが完成する。外科学の勉強はそれで十分だろう。

手術手技 指導的助手からみた泌尿器科手術のポイント・4

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要旨 腎細胞癌に対するマイクロ波組織凝固装置を用いた無阻血腎部分切除術は,腫瘍の完全切除と最大限の腎機能温存を最も期待できる術式である。安全かつ確実に腫瘍を切除するには,適切な長さの針電極を選択すること,正確な穿刺を行うこと,安全な切除ラインを確保することがポイントとなる。さらに,出血や尿路損傷に適切に対処する方法に習熟し,上手に合併症を回避すれば,本術式は誰もが安全に行える患側腎温存手術である。

腎部分切除(開腹) 藤元 博行
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要旨 腎部分切除に対する指導的助手の立場からみた手術のポイントは,腸管を脱転する際の剝離層をリードすること,切離された後の腎の縫縮における運針を確実に行えるように指導することが肝要と考えている。

腎部分切除術 庵谷 尚正
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要旨 腎部分切除術は安全域を付けた腫瘍の切除と実質の縫合を,癌の制御を考慮しつつ腎実質保護の観点から限られた時間内に行わなければならない。このため腎動脈血流遮断,氷冷などが必要であり,腎組織の特性に即した実質の切開,縫合など多くの要素を含んでいて注意すべき事項も多い。本稿では経腰式の後腹膜アプローチによる腎部分切除術の各段階の要点,コツについて概説した。

セミナー 泌尿器科医に必要なPET検査の知識―有用性と問題点・6

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要約 精巣腫瘍においては,治療前の正確な病期診断および化学療法後のviable細胞の有無評価がその後の治療を考えるうえで必要となる。正確な病期診断の点では,小病変の検出の観点からPETの有用性はCTを上回る結果は得られていない。治療後の残存病変でのviable細胞の評価については,非セミノーマ症例ではmature teratomaでは集積しないため有用性が示されていない。一方,セミノーマ症例では残存病変のviable細胞の評価において有用性が示されている。

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 1987年1月からの21年間において,藤沢市民病院で初診時にStage D前立腺癌と診断された症例166例を対象とし,予後の因子となり得るものを検討した。平均年齢71.48歳(50~91歳),観察期間は中央値30.8か月(1~119か月)であった。Gleason score別,再燃までの期間を1年で分けた場合の疾患特異的生存率,全生存率で有意差を認めた。内分泌療法によるPSA nadir値を4.0で分けた場合のPSA非再発率,疾患特異的生存率,全生存率でも有意差を認めた。化学療法(IFAP,CAP)施行の有無で分けた全生存率において有意差を認め,内分泌療法に化学療法を追加することにより予後が改善する可能性のあることが示唆された。

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 72例の前立腺肥大症に伴う男性下部尿路症状を有する患者にナフトピジルを投与し,bother(困窮度)の観点からその有効性を評価するとともに,困窮度の改善がQOLやIPSS各症状の改善にどのような影響を与えているのかについて検討した。その結果,IPSS総スコア,IPSS-QOL,BPH影響指数(BPH impact index:BII)総スコア,BII各ドメインは,ナフトピジル投与後すべて有意に改善した。また,BII Q3(困惑)有効群は不変群,悪化群に比べてIPSS-QOL,夜間頻尿が,BII Q4(日常生活支障)有効群は悪化群に比べて尿線途絶,夜間頻尿が有意に改善した。ナフトピジルは,BPH/LUTS症例においてBIIで評価した困窮の改善が期待でき,特に,困惑や日常生活の支障の改善には,夜間頻尿,尿線途絶の改善が影響していることが明らかとなった。

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5歳女児。生後9か月で尿路感染症を契機に左腎の低形成を指摘されていた。尿失禁を主訴に当科を受診した。左低形成腎所属尿管は腟内に開口していた。後腹膜鏡下腎摘出術を施行し,術後すみやかに尿失禁は消失した。

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50歳代後半の非セミノーマ2例を経験した。症例1はstage ⅡA,症例2はstage ⅡBと診断した。化学療法(BEP療法)を2コースのみ施行し,腫瘍マーカー陰性化後,後腹膜リンパ節郭清術を施行した。治療後約3年経過し,再発を認めていない。高齢で発症した非セミノーマは若年に比べ予後不良とされているが,集学的治療により現時点で再発を認めず,結果は良好である。

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77歳,男性。両側水腎症にて近医より紹介受診した。高IgG4血症を示す後腹膜線維症であり,IgG4関連硬化性疾患と考えられた。プレドニゾロン30mg/dayの投与を開始したところ,IgG4はすみやかに低下し症状も改善した。ステロイドを漸減し2.5mg/dayを維持量としたが,臨床的再燃なく経過している。IgG4関連硬化性疾患は全身の諸臓器に線維性硬化をきたす。後腹膜線維症をみた際には,全身疾患の1部分症状である可能性も考慮する必要がある。

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編集後記 藤岡 知昭
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 最近,新設された深夜羽田国際空港発の直通便を利用して米国ロサンゼルスへ行ってきました。東大医科研の中村祐輔教授に同行しまして,「がんペプチドワクチン療法」に関する講演が目的です。UCLAのdeKarnion教授とは,ほぼ毎年,AUAなどでお会いしているのですが,大学を訪問するのは6年ぶりになります。

 着いた翌日は午前9時にUCLA医学部に向かい,泌尿器科のある6階Belt Libraryにおいて,午前中泌尿器科スタッフ・研究者よりUCLAでの研究概容の説明を受け,がん治療に関して意見交換をしました。正午に講義室に移動し,JCCC lecture「From cancer genome to development of therapeutic cancer vaccine:lesson from clinical translational research of more than 1,300 cases of various cancer types」の講演をしました。その後,別棟の研究室に移動し,昼食をとりながらの意見交換の後,新病院の見学,さらに再びBelt Libraryに戻りスタッフ・研究者との面談と続き,午後5時から講義室でUrology grand rounds lecture「Clinical trials of novel peptide vaccine therapy for bladder renal and prostate cancer in Japan」を講演しました。2回の講演は多くの人たちに聴講してもらい,活発な質問・討論の場とすることができました。

基本情報

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臨床泌尿器科
65巻5号 (2011年4月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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