臨床泌尿器科 65巻6号 (2011年5月)

特集 ED診療のコツ―私はこうしている

本企画にあたって 丸茂 健
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 EDの臨床は,日々進歩しています。この特集ではEDの診断,検査,治療について日本性機能学会専門医であり,第一線で実際の臨床に携わっておられる先生方に現実に即した解説をいただくことができました。後藤隆太先生は開業の立場から,日常の臨床でどこまでやるか,丁寧に解説いただきました。小谷俊一先生は2010年の日本性機能学会学術総会会長を務められましたが,質問紙を活用しつつ,いかに診断と治療を的確に進めるべきか,治療を行うにあたっての基本ともなる患者の把握方法をお示しいただきました。川西康夫先生の画像診断についての論文は海外の専門家にも定評があります。今回も多くの切り口から解説いただきました。

 経口ED治療薬(PDE5阻害薬)の薬剤の選択と効果について,菊地栄次先生はご自身の1000人を超える患者データベースをもとに,薬剤の使用法について,解説いただきました。現在3種類のPDE5阻害薬のなかからどの薬剤を選択し,投与量はどうするか,EDの原因となっている疾患については,どのように取り組むべきか,薬物治療に際しての必見の解説を頂きました。佐藤嘉一先生は性腺機能低下症を合併するED患者を多数ご経験です。解説いただきましたホルモンの役割については,PDE5阻害薬で十分な効果が得られなかった患者の,次へのステップを照らして頂きました。

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要旨 勃起障害(ED)の分類は,機能性ED,器質性ED,混合性EDに大別される。当院では,十分に時間を費やし,問診,診察,検査を行い,ほとんどの場合,当日に治療を開始している。問診では,特に既往歴,合併症,併用薬剤について注意深く行う必要がある。診察においては,外性器を観察,陰茎性ED,内分泌性EDの可能性を確認する。検査としては,採血により内分泌性EDの有無を判定するが,糖尿病など生活習慣病がみつかる場合もある。オプション検査としては,動脈性EDの診断のため,海綿体注射を行っている。若年者で外傷性動脈性EDが疑われる患者,ペロニー病,陰茎彎曲症などの陰茎性ED患者は,さらなる検査,治療のため専門病院へ紹介する。

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要旨 ED診療において問診は非常に重要であるが,性機能のみならず患者背景など患者に質問する項目が非常に多岐にわたる。筆者は新しく日本語訳されたIIEF,SHIMのほかに,「受診動機の問診表」(中部労災式簡易性機能問診表),「患者背景調査表」(中部労災式自己回答式問診表),日本語版EHSの5つを使用して効率的なED診療を行っているので,そのコツと注意点について解説した。

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要旨 中高年者のED診療においてはPDE5阻害剤がほぼ唯一の治療選択肢であり,しかも有効率は高いので画像検査の必要性は低い。ED診療における画像検査の対象は若い外傷性動脈性ED患者である。若い男性患者の治療においては責任病巣の診断が必須である。最近の画像検査装置や画像解析ソフトウェアの発達により,比較的低侵襲で臨床上有用な画像所見を得ることが可能になっている。一般診療で使用可能な装置やソフトウェアを使用した画像検査であるCT angiography,3D海綿体造影検査,仮想海綿体内視鏡検査,MRI検査について述べたい。

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要旨 臨床の現場で使用可能なPDE5阻害剤には,シルデナフィル,バルデナフィル,タダラフィルの3剤がある。3剤の薬理学的特徴の違いをきちんと認識したうえで,使用することが望まれる。特に高齢者,肝機能障害,腎機能障害患者に対しては用法・用量などを慎重に考慮すべきである。薬歴,既往歴の確認も必要で,特に禁忌項目の除外は重要である。患者のPDE5阻害剤3剤の好みに明らかな偏りはなく,患者の自由な意思で薬剤が選択されるべきと考える。現在,on-demandな形でPDE5阻害剤は使用されているが,今後,継続的な服用,daily dosingによる,より自然な形での勃起不全の治療に期待が持たれている。

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要旨 性腺機能低下を伴うED(electile dysfunction)症例の診断および治療につき述べる。テストステロン低下(testosterone deficiency:TD)は,勃起能,性欲の低下,射精の遅延などの性機能低下に直接的に関与する。さらにはメタボリックシンドローム(MetS)や心血管系疾患(CVD)への関連が注目されている。MetSやCVDはEDの主たるリスクファクターである。testosteroneは性機能への直接的作用のみならず,MetSやCVDを介し間接的に勃起能の低下に影響する可能性がある。TDを伴うED症例への治療として,testosterone補充とphosphodiesterase type 5阻害薬(PDE5-I)の併用療法も試みられている。

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要旨 EDに対する血管作動薬の陰茎海綿体注射(ICI)は,PDE 5阻害剤無効あるいは禁忌症例に広く推奨されている。プロスタグランディンE1を10~20μg/生食1ml陰茎海綿体内に注入することにより良好な勃起を得る。有効率は60~90%である。有害事象は局所の疼痛が8~24%に認められるが,重篤なものはない。勃起が4時間以上持続する持続勃起症には専門医による対処が必要である。日本ではいまだ認可に至っていないが,自己注射を含めて患者にとって極めてQOLの向上に役立つ治療法であり,今後の承認獲得に向けた活動が必要である。

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要旨 持続勃起症は,「性的刺激・性的興奮と無関係である勃起が4時間を超えて持続している状態」と定義される。持続勃起症は,①虚血性持続勃起症と②非虚血性持続勃起症,③Stutteringに分類される。非虚血性持続勃起症は経過観察可能であるが,虚血性持続勃起症では4時間を超える場合はなんらかの処置が必要とされているため,両者を鑑別することが大切である。鑑別点は病歴の聴取,視診および海綿体内血液ガス分析を行うことで,ほぼ診断が可能である。非虚血性持続勃起症と虚血性持続勃起症では治療法が異なるため,本稿では虚血性持続勃起症および非虚血性持続勃起症に対し,われわれが行っている診断・治療の手順と方法を説明する。

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要旨 先天性陰茎彎曲症とペロニー病の手術を行うのは,性交障害になる可能性の彎曲がある場合である。彎曲が軽度で陰茎長が十分であればプリケーション法,彎曲が高度な場合や短縮がある場合は,静脈移植などで海綿体を延長する。ペロニー病の場合は,発症から1年くらいは経過観察や保存的治療を行い,疼痛が激しい場合はステロイドの局注を行う。多くの場合,疼痛は改善するが彎曲や短縮は残存する。やはり性交障害などがあれば手術する。われわれの先天性陰茎彎曲症の手術法は,陰茎海綿体白膜表面を削り,2-0タイクロンでinverted sutureで行い,成積は良好である。ペロニー病の移植手術では,大伏在静脈を使用して比較的良好であるが,糖尿病患者やED合併例では移植手術は薦められない。

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 医療人(病院人)すべてを対象とする『「病院」の教科書―知っておきたい組織と機能』という画期的な本が出版された。本書の「はじめに」にあるように,病院の構造と機能を上手に組み合わせて書かれた本としては知る限り初めてであろう。病院の構造はわかりにくく,そこで働いている病院人にも理解しがたいところである。“機能”となればなおさらである。病院の1日がどのように動いているかは,病院長や幹部職員でも見えないことがある。本書はそうした病院の複雑さを踏まえ,読者がその全体像を把握できるように構成されている。

 これまでにも,医学書院からはこの領域の書籍が発刊されてきた。時代は古いが,今日においてさえも教科書の域を超えたバイブル的存在といえる『病院管理学体系』(橋本寛敏・吉田幸雄監修,全6巻)や,最近では,ごく平易に書かれた『病院早わかり読本』(飯田修平編著)が出されている。しかし善きにつけ悪しきにつけ,病院が今日ほど一般国民から期待され注目されている時代はないであろう。だからこそ,医療職をはじめ病院にかかわるすべての人は,病院のなんたるかを知る必要がある。本書はその求めに応え得る内容を備えた書といえる。

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 医療情報に関する待望の書が刊行されたと言っても過言でない。わが国にはこれまで医療情報,とりわけ診療情報の体系的な学問の書はなかったと言ってもよい。いまわれわれ医療界,いや医療界だけではないすべてが情報の渦のなかにいる。とりわけ病院はそうである。今回の本書の出版にあたって,多大な貢献をした編集責任者の大井利夫は,その序論の中で,「ともすると,データは多いが,真に伝えるべき情報の少ないDRIP Syndrome(Data-Rich-Information-Poor Syndrome)に陥っていることはないだろうか」と言っている。そのうえで,「患者の医療への有用性とデータベース化された情報の活用は,診療情報の必要性を表しているとまとめることができるであろう(中略)。『診療情報』の諸問題について現時点における統一した見解をまとめることは意義深いことであり,長年の念願でもあった。その意味では,本書は日本診療情報管理学会にとって夢の実現といえなくもない」と感慨深げに述べている。本書は,まさに夢の実現にふさわしいものとなっていて絶賛に値する。

 この日本診療情報管理学会の生みの親でもある日本病院会からは,数多くの診療録についての専門学校や短大などの病歴管理コースで用いるテキスト的なものが出版されており,その多くは病歴室で用いられる実用性の高いハウツーものであった。また,医学書院から古くは『診療録管理の実際』(津田豊和,1966)があり,『診療情報の管理』(拙著;監修,1988)がある。診療録の書き方,POSに関することは本書でも取り上げられているが,同じく医学書院からの日野原重明による名著といわれ今日においても読み継がれている『POS―医療と医学教育の革新のための新しいシステム』(1973),それに続く,『POSの基礎と実践』(1980)は今回の本書の出版に,そして今日の各病院で活躍している診療情報管理士に多大の影響を与えているに違いない。

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 患 者 47歳,男性。

 主 訴 右季肋部から背部にかけての疼痛。

 家族歴・既往歴 特記すべきことなし。

 現病歴 2010年3月,右季肋部から背部にかけて貫くような疼痛を突然自覚し,近医を受診した。エコーにて右腎腫瘤を認め,さらに造影CTで後腹膜に血腫を認めたため,右腎腫瘍の自然破裂疑いで,当科を紹介され受診した。

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欧文目次

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会 期:平成23年8月26日(金)・27日(土)

会 場:千里ライフサイエンスセンター(大阪,豊中市)

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次号予告

投稿規定

著作権譲渡同意書

編集後記 大家 基嗣
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 「2D:4D」と聞いてピンと来た読者の皆様はその道のプロと言って良いかもしれません。「3Dじゃないのか。テレビだろ。」と思った方は私と同じレベルです。「2D:4D」とは第2指と第4指の長さの比をとった数値であり,胎生期のテストステロン分泌のマーカーとして広く知られているものです。2010年の第10回日本Men's Health医学会は帝京大学の堀江重郎教授が主催されました。第2回泌尿器抗加齢研究会と第1回テストステロン研究会も合同開催され,内容の豊富さと学問的な充実度で参加者はとても満足されたのではなかったかと思います。

 「2D:4D」もこれらの会で私がにわか勉強して身に付けた知識です。札幌医科大学の久末伸一先生が「男性外来患者におけるテストステロン値と2D:4Dの関連」という演題で発表されていました。「2D:4D」はテストステロン値と中等度の相関関係を認めたとのことでした。成人のテストステロン値の個人差に胎生期のテストステロン値が関与している可能性が示唆されていました。講演を聞きながらしげしげと自分の手を眺めますと,確かに第4指の方が長いことがわかりました。教室の先生をつかまえて手を見せてもらいましたが,皆さんしっかりと第4指の方が長かったです。逆に,短いかあんまり変わらないヒトは本当にいるのかなと疑問が湧いてきました。泌尿器科医であるということにバイアスがかかっていて,テストステロン値が高い人達の集団なのかなと考えていました。

基本情報

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臨床泌尿器科
65巻6号 (2011年5月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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