臨床泌尿器科 63巻3号 (2009年3月)

  • 文献概要を表示

要旨 BCG(Bacillus Calmette-Guérin)膀胱内注入療法の表在性膀胱癌に対する有効性は確立されているが,その作用機序については不明なところも多い。現時点ではBCGによる,炎症反応,非特異的免疫反応,特異的免疫反応などが継時的に複雑に起こることが推測されており,KT細胞,γδT細胞の関連なども示されている。また,炎症反応が強い症例に効果が高いことが示されている。さらに,TRL(toll-like receptor)やTreg(regulatory T cell)の関与も明らかにされてきている。

手術手技 小児泌尿器科手術Ⅰ 尿路系の手術・2

  • 文献概要を表示

要旨 Dismemberd法はすべての症例に対応できる点で最も優れている。皮膚切開は臍よりやや頭側の傍正中切開で,5cm程度とし,筋実質の切離を行わない。尿管の腎盂付着部位が高位にある場合は,腎盂壁の切開線を腎下極側に持ってくるようにする。尿管近位部の外側を縦切開して口径を広げる。尿管断端の外側端は腎盂壁の最も下極端に接合するようにして,腎盂尿管新吻合を行う。縫合糸は,6-0程度の吸収糸を用い,縫合は基本的には全層結節縫合とする。原則として,D-J型尿管ステントを留置して6~8週後に抜去する。

腎盂形成術 松岡 弘文
  • 文献概要を表示

要旨 腎盂尿管移行部狭窄症に対する手術は,小児では開放性の腎盂形成術が主流である。そのほとんどがdismembered法のpyeloureterostomyで対応でき,腎盂の切除は必要ない場合が多い。小児では小切開創での手術操作が可能であるが,尿管は細く柔らかいので,拡大鏡を使用して愛護的に手術操作を行うことが肝要であり,マイクロサージェリー用の手術器具や細径の吸収糸の使用が求められる。

  • 文献概要を表示

要旨 超音波検査などの画像診断技術の向上により,比較的早期に先天性水腎症が発見・診断されるようになってきた。先天性水腎症の中で,比較的症例数の多い腎盂尿管移行部狭窄症の治療に関して,これまで報告されているさまざまな術式を比較検討しながら,当院で現在行っている開腹下での腎盂形成術を紹介する。

セミナー ここまできたトランスレーショナルリサーチ・8

腎癌ワクチン療法 植村 天受
  • 文献概要を表示

要約 転移性腎癌に対する標準治療は,近年,サイトカイン療法から分子標的治療へと大きく転換しているが,長期予後を考えると分子標的薬が必ずしも特効薬ではない。腎癌はその生物学的特性を鑑みると,免疫療法が適した数少ない癌腫であり,癌ワクチン療法はいわゆる分子標的免疫療法で,最近,多くの難治性癌において盛んに臨床研究が行われている。本稿では,筆者が開発・経験した腎癌に対するワクチン療法について解説する。

  • 文献概要を表示

 三豊総合病院泌尿器科における訪問診療の現状について報告した。尿路管理,終末期医療など,泌尿器科的訪問診療を必要とする患者は今後増加してくると思われる。特に,前立腺癌は高齢患者が多く,治療抵抗性となった後も比較的終末期の長い癌であり,在宅での治療の重要性が高い癌の1つである。今後は,訪問診療が可能な施設であれば泌尿器科医も訪問診療に積極的にかかわっていくことが望ましい。

  • 文献概要を表示

 症例は85歳,男性。膀胱癌でTUR-Btを施行した。病理診断がpT2であったため,テガフール・ウラシル(UFT®)によるneo-adjuvant療法および放射線治療を予定した。内服開始して2週間後のX線写真から間質性肺炎が疑われ,ステロイド治療を施行した。治療により症状・画像所見ともに改善し,退院となった。UFTは比較的よく用いられている薬剤だが,稀に重篤な副作用を生じることもあり,副作用を生じた場合には迅速な処置が必要である。

  • 文献概要を表示

 症例は49歳,女性。2007年7月下旬,左下腹部痛にて当院救急外来を受診した。左尿管結石が疑われ,当科を受診した。CTにて左尿管結石と多房性囊胞性左腎腫瘍を認めた。囊胞性腎癌の可能性も否定できないため,2007年9月中旬,左腎摘除術を施行した。病理診断はmixed epithelial and stromal tumor(MEST)であった。2008年3月下旬まで再発を認めていない。

  • 文献概要を表示

 症例は68歳,男性。1年前に陰囊内の腫瘤を自覚し,徐々に増大したため受診した。初診時,左陰囊に22mm大の弾性硬,表面平滑,可動性良好な腫瘤を認めた。精巣との連続性は認めず,超音波所見は内部不均一な低エコー腫瘤であった。腫瘤摘除術を施行し,組織学的に陰囊壁原発の平滑筋肉腫と診断した。切除断端陰性で,全身検索上転移を認めず,術後経過は良好である。陰囊内平滑筋肉腫は比較的稀で,本邦では24例目の報告である。

  • 文献概要を表示

 症例は63歳,男性。無症候性肉眼的血尿を主訴に受診した。23年前に腎結石にて右腎摘除術を施行されている。腹部CTと逆行性尿管造影の所見から右残存尿管腫瘍の診断のもと,右尿管摘除術を施行した。病理診断は尿路上皮癌,G2,pT1であった。術後3年経過しているが,再発はみられていない。良性腎疾患に対する腎摘除後の残存尿管腫瘍は比較的稀な疾患であり,調べ得た限り本邦22例目であった。腎摘除の既往を持つ患者の血尿精査においては,残存尿管腫瘍を念頭に置くことが重要と考える。

  • 文献概要を表示

 経皮的膀胱瘻を造設するとき,膀胱に十分尿が貯留していて簡単そうにみえても腹壁が大きく陥凹し,穿刺が困難であったり,ときに膀胱後壁を損傷したりすることがある。先に固定糸で腹壁を牽引すると腹壁がまったく陥凹せず,穿刺針が膀胱後壁との距離を保ったまま膀胱腔に入るので穿刺がより安全,容易である。

 開腹術では膀胱を支持糸で吊り上げる方法1)や,内視鏡下手術では固定糸を牽引しながらポートを挿入する方法があるなど,容易に思いつくので実行されている先生方も多いと思われるが,意外に成書では書かれていないので紹介する。

  • 文献概要を表示

 軟性膀胱鏡(軟性鏡)は硬性鏡に比べて挿入時の苦痛が少なく,特に男性患者にとって軟性鏡の普及は福音である。当然,軟性鏡を用いた尿管カテーテル挿入法も各施設で工夫されていると推察するが1,2),今回は当院で行っている方法について紹介する。

 当院ではオリンパス社製軟性鏡CYF TYPE VA®(16.2Fr)を使用している。まず砕石位をとってリドカインゼリー10mlで尿道粘膜麻酔を行う。軟性鏡を挿入して膀胱内を観察したのち,ガイドワイヤー(Sensor Guidewire, Flexible Straight, 0.035 inch, 150cm, Boston Scientific社製)を先端まで通した尿管カテーテル(Open End Ureteral Catheter, 5Fr, 70cm, 同社製)を尿管口から挿入する(図1)。軟性鏡のチャンネル口径に合わせて5Frのカテーテルを使用している。以前はそのまま逆行性造影を行っていたが,現在はこの段階でガイドワイヤーとカテーテルを残しつつ軟性鏡を抜去してから造影している。軟性鏡先端とチャンネル入口との長さは約55cmで,カテーテルの長さは70cmであるため,男性では軟性鏡を抜去する際にいったんカテーテルが手元に見えない状態になるが,カテーテルをチャンネル入口に押し込んでから軟性鏡を抜き,軟性鏡先端が抜けた瞬間に外尿道口でカテーテルをつかめば,カテーテル先端が尿管口から抜けてしまうようなことはない。

  • 文献概要を表示

 『プロメテウス解剖学アトラス』は,アトラス(図譜)というよりは,図をふんだんに用いた,そして図を主体にした局所解剖学的教科書というべきものである。第1巻(解剖学総論/運動器系)を初めて書店で手に取ってみた時,その図が美しくかつ明解であることに惹かれた。第1巻は理学療法のような運動学を学ぶ分野にとりわけ好評であった。図の豊かさが立体構造をとらえやすくさせ,それが運動機能の理解につながる。このたび出版された第2巻は内臓が主たる部分を占める体幹部の局所解剖学であり,第1巻の特長がどれほど生かせているか,興味を持って読んでみた。

 期待に違わず,図は大変わかりやすく構成されている。おそらく初学者でも容易に人体構造を三次元的に理解できることであろう。理解しやすい理由の1つは,何枚もの図が1つの視点から描かれていることである。例えば,胸部を前から見た図は,胸郭前壁を取り除いたところ(心臓はまだ心膜をかぶっている),心膜の前壁を取り去ったところ,心臓と心膜を取り去って肺,食道,大動脈,肺動脈を見せる,ついで肺も取り去って食道,大動脈,迷走神経を見せる,さらに壁側胸膜を取り去って胸郭後壁と大動脈,喉頭と気管を見せる,など合計14枚あるが,これらはすべて同一の角度から眺めたようになっている。コンピューターグラフィックス技術によりまったく同じ図を使い,さまざまな組み合わせで新しい図を作っているのであろうが,みごとに統一されている。図の製作のみに8年を費やしたというのも最もである。その結果,それぞれの図はお互いに,あたかも人体の解剖を再現するようになっている。読者は混乱することなく,図を見比べながら,心臓を取り除いたり戻したりできるのである。

  • 文献概要を表示

 世の中,特に医療人の間では「医療経済」を扱う議論はすべて「医療経済学」に属すると思われているのではなかろうか。本書はその違いを知るとともに,経済学の考え方を学び,専門家や官僚と医療政策論議を交わすための基礎能力を与えてくれる解説書である。

 前者,つまり「医療経済論」は,医療費をめぐる論争,医療制度改革のうちファイナンスのあり方,および医療提供体制にかかわる政策論など広範な分野が当てはまる。医療経済論は,医療経済学の技法を使っても使わなくてもこの世に役立つ(役立たない)議論が可能である。ただし実際のところ,経済学の素養を持つ人たちにとっては,客観的な理論体系からはほど遠く,思いつきを並べているだけとしかみえない粗雑な医療経済論が目立つことも否定できない。

  • 文献概要を表示

 医学書院から,このたび自治医科大学客員教授・齋藤中哉先生による臨床医のための症例プレゼンテーション法を説いた教則本が出版された。

 齋藤教授は日本の医療界では数少ない,医学教育学を修めた臨床家である。臨床医学の指導医の立場から本書を出版し,日本の医学界に「臨床医学教育の基礎」を敷衍し,その普及に努めんとしているのである。

--------------------

編集後記 郡 健二郎
  • 文献概要を表示

 やはりバラク・オバマ第44代米大統領のことに触れなければならないようである。1月20日に行われた就任式の模様を,わが国のマスコミが,わが国のニュースを差しおいて,大きく取りあげているからである。世界はまだアメリカを中心にして動いていくのだろうか。

 昨年秋の金融危機をもたらした国とは思えないような,アメリカ国民の熱気ぶりは理解しがたいが,沈みきった日本人が今まさに学ぶべき点かも知れない。テレビをみていて印象に残ったのは,正直なところ歴代大統領を意識した演説の中味より,就任式会場を埋めつくした群衆である。寒気の中,新しいリーダーが語る言葉に耳をそばだて,歓喜し,涙ぐむ光景は,わが国では思い浮かべることすらできない。

基本情報

03852393.63.3.jpg
臨床泌尿器科
63巻3号 (2009年3月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月14日~9月20日
)