病院 75巻12号 (2016年12月)

特集 検証 平成28年度診療報酬改定

巻頭言 神野 正博
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 プライマリバランスの正常化を目指す経済財政再建と,高齢化・医療の高度化に伴う医療費増大という二律背反の中で,2025年のあるべき姿へ向けての平成28年度診療報酬改定であった.

 「地域包括ケアシステムの推進と医療機能分化・強化・連携」という名の下で行われた改定である.そこで本特集では,その本丸たる7対1急性期病床はどうなるのか,また,医療介護,そして地域が連携する地域包括ケアシステム構築への道筋がつけられたのか,縮む地方で安心の地域医療は守られたのか,などについて検証した.

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─鈴木局長は,老健課長と医療課長を経験されて,どちらもプラス改定だったのですよね.

鈴木 非常に希有な存在と言われました(笑).

─そのまま行ってほしいと皆願っています(笑).

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●診療報酬は,Price(点数)だけではなく,請求要件によってQuantity(回数)も統制することによって,医療費の総額を規定し,医療サービスの内容についても政策目的に沿って提供するように誘導している.

●マイナス改定が予測される中,病院としては病床・手術室・機器等の稼働率を高めて採算性を維持し,その際,軸足を臓器別専門医療,あるいは介護と一体となった高齢者ケアのいずれかに対応する必要がある.

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●診療報酬改定は本邦医療サービスの定期総点検であり,少子高齢化等の社会構造変革に直面するわが国が,社会保障の充実と持続可能性をさらに高める重要なプロセスである.

●平成28年度改定は社会保障制度改革国民会議報告書を源流とする地域医療構想や地域包括ケアシステム構築推進といった中長期の医療政策トレンドと整合をとりながら実施された.

●具体的には,患者像に応じた入院医療の評価,外来医療をサポートする「ゲートオープナー」機能の確立,診療実績や患者の状態等に応じた評価による在宅医療の質的・量的向上といった重点課題を中心に対応した報酬改定となった.

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●社会保障制度の持続性確保のため,経済財政再生計画では,経済成長の実現と併せて2020年度までの社会保障関係費の伸びを年平均+5000億円とすることを目安としている.

●そのため,診療報酬体系,医療介護提供体制改革をはじめ,改革工程表に掲げられた44の検討課題を着実に実行する必要がある.

●平成28年度診療報酬改定においてはマクロの改定率だけでなく,制度改革事項を予算編成過程で決定した.今後もこうした取り組みが必要である.

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●全国で多機関・多職種が連携して在宅患者・利用者支援を行う取り組みが自発的に進められ,高齢者の地域生活の継続支援策として有効である.地域包括ケアシステムはこれらを総称して少子高齢社会を地域で支える仕組みと位置付けたものであり,その本質は,地域生活の継続とそのための地域マネジメントである.

●医療側から見たポイントは,「医療機能の分化・強化と連携」,「医療介護連携と情報共有」,「多職種連携」,「かかりつけの推進」,「在宅療養の後方支援機能強化」などである.

●地域包括ケアシステムは,医療機能の分化・強化・連携と併せ近年の改定の大きなテーマの一つであり,診療報酬・介護報酬同時改定となる平成30年度改定に向け,一貫して取り組みを強化してきた項目である.これまでの流れの変更を迫られる環境にはなく,次回改定の大きな方向性は既にかなり明確ではないか.

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●平成28年度診療報酬改定では地域医療構想・地域医療計画との整合性が意識されている.

●今後,この傾向はさらに強まると考えられる.

●各施設は,診療報酬制度の改定内容に加えて,地域医療構想の推計基礎となっている各地域の人口構造の変化に十分留意する必要がある.

[事例]地域医療は守られたか

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●不採算地域に設置された国保直営診療施設は人材・財源不足が宿命であり,国東市民病院も長年苦しんできた.

●医療崩壊の中でも独自の地域包括ケアシステムを推進することで,結果的に地域医療構想を先取りできた.

●中山間地国保病院では自治体病院の制約を乗り越えて,思い切った人材登用や分析力・経営企画力を高める必要がある.

●地域包括ケアシステムの推進,維持のために「地域包括ケア支援病院」という概念を提案したい.

1次・2次救急医療への影響 加納 繁照
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●救急医療は,地域医療の基盤となる地域包括ケアシステムを支えるバックボーンである.人口集積度の高い都市部の救急医療は民間病院が中心となって担っているが,人口の将来推計から考えると,2040年までその役割が一層重要になることから,民間病院の経営安定がなければ地域医療は崩壊する.

●救急医療における過去および今回の診療報酬改定の評価を行い,今後の課題を検証する.

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●中間報告をみると,診療収益の前年比は,「入院+外来収益」が+1.82%,診療単価は入院+1.65%,外来+3.80%の増収となる一方で,赤字病院割合,赤字額が増加し,「増収減益」という結果になっている.

●診療収益,単価の視点では,病床規模に比例し,増収病院割合,対前年比が高くなる傾向がみられ,急性期,大規模病院に優位な改定といえるが,これらの病院は医業費用増が負担となり,赤字幅が拡大し,病院経営の厳しい現状がうかがえる.

●7対1入院基本料など,施設基準の経過措置が終了する平成28年10月以降の届出状況により,さらに病院経営が悪化する可能性があり,注視しなければならない.

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●改定に対する影響は,改定内容の経過措置期間があるため,今後の状況を注意深くみていく必要がある.

●医業収支率は全体で0.2%ポイントの改善がみられたものの,病院数では収支率100を超えない割合が37.1%から39.4%に増加しており,経営状態が良い病院,悪い病院がはっきり分かれてきた.

●全日本病院協会をはじめとした各病院団体は,診療内容等に基づく診療報酬体系,2年ごとの改定に一喜一憂されることのないよう要望を続けている.

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●平成28年度診療報酬改定を精神科医療の立場から評価した.

●印象としては,総合病院精神科に配慮した改定であった.抗精神病薬,抗うつ薬の多剤投与の場合,通院在宅精神療法が50%削減になるという罰則的項目が導入されたり,デイケアの回数制限など,踏み込んだ減算が目立った.

●地域移行機能強化病棟は,今後の精神科医療行政の指針を明確にしたと言えよう.

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●地域医療構想における「回復期」としての回復期リハ病棟のミッションは,重度障害者に対しても,多職種チームで高密度のリハ・ケアを提供し,ADL改善と在宅復帰に導くことである.

●回復期リハ病棟のアウトカム指標は,日常生活機能評価と修正FIM効率を用いた実績指数のダブルスタンダードとなったが,適正に評価を行うことが求められる.

●第三者によるケア・プロセス評価は,回復期リハ病棟の質を反映しうる.

地域包括ケア病棟協会 仲井 培雄
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●平成28年度診療報酬改定で,手術・麻酔が出来高となり,地域包括ケア病棟の機能が充実して,届出が増えている.

●地域包括ケア病棟を有する病院は,その歴史や特徴とご当地ニーズに合わせて,高度急性期・急性期機能を有する「急性期ケアミックス型」,“ときどき入院 ほぼ在宅”の「地域密着型」,高度急性期病院のサテライトとしての「ポストアキュート連携型」,地域包括ケア病棟だけで構成される「地域包括ケア病院」の4つのタイプがあると仮説を立てた.

●今改定の方向性と4つのタイプを活かし,地域医療構想や地域包括ケアシステムの策定に参画し,基金を活用して地域に貢献することが,地域包括ケア病棟を届け出た病院に求められている.

日本慢性期医療協会 武久 洋三
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●診療報酬改定のたびに,自院に有利な対応策を練り,うまく立ち回るのではなく,日頃の診療で患者にとって良いことを,各病院で考えながら診療してもらいたい.患者の症状の改善に役立つことは,大幅な損にならない限りやってみることが大切であり,結果的に「良いこと」なら,患者や家族は評価してくれる.

●日本慢性期医療協会の会員病院における平成28年度改定の影響に関する調査では,新設された加算など,まだ十分に算定しているとは言い難いが,これまでにきちんとした医療を提供している病院に対して評価する改定であったことは間違いない.私達は,これからも患者に選ばれる病院を目指して,患者のためになる医療サービスの提供をすべきである.

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平成28年度診療報酬改定は,どのような影響を病院にもたらしたのか.

医療計画,介護保険事業計画,医療費適正化計画と連動して,今後の医療の行方を決める

次回の医療・介護同時改定をどう迎えるべきか.中医協委員の万代氏とともに検証し予測する.

連載 Data mania・24【最終回】

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調査概要

 今回は,「介護事業経営実態調査」を取り上げます.本調査は,各介護サービスの費用などについての実態を明らかにし,介護報酬設定のための基礎資料を得ることを目的としています.調査対象は,介護保健施設,居宅サービス事業者(介護予防含む),地域密着型サービス事業所(介護予防含む)の全事業であり,調査周期は3年です.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・24

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■設立の経緯

 横浜市立みなと赤十字病院は,開院後40余年が経過した横浜市立港湾病院(一般病床300床)の再整備事業として計画された.公立病院の多くが定常的に抱える赤字が問題とされるように,横浜市立港湾病院も年5億円前後の経常損失を抱え,市の一般会計から補塡される赤字体質にあった.新病院は市立病院の経営改革と地域医療の充実を謳い計画が進められたが,正規職員の増員などにより公設公営(直営)方式では市の一般会計負担が3倍になる試算が出された.「横浜市市立病院あり方検討委員会」の答申に基づき,「委譲による民営化」を第一に経営形態が検討されたが,実現が困難であったため,竣工直前の2003年9月,公設民営(民間委託)方式による病院運営が採用された.

 2003年12月に完成した新病院は,翌2004年2月,日本赤十字社が運営の指定管理者に選定された.1年の準備期間を経て,手狭となった横浜赤十字病院(一般病床380床)を閉院し,2005年4月,横浜市立みなと赤十字病院(一般病床584床)が開院した.2007年度に,開設時の計画に含まれていた精神科病棟50床を加え,現在は634床で運営されている.

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・12

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■病院の概要1)

 現在策定が進んでいる地域医療構想では病床を高度急性期,急性期,回復期,慢性期に区分し,各地域の傷病構造に合わせてその適切な配分を実現することを求めている.推計に当たっては傷病ごとの機能別病床数を積み上げる形で計算を行っているが,調整会議における実際の議論ではこの点に関して必ずしも十分な検討が行われているわけではない.高度急性期,急性期については,むしろ,総合的な診療を行う大規模病院が議論の中心になっている場合も少なくない.しかしながら,わが国には特定領域の高度医療を提供する専門病院が多数存在している.先進的な専門病院がこれからの医療環境の中でどのような戦略で経営を行っていこうと考えているのかを知ることは,他の多くの専門病院にとっても参考になると思われる.そこで今回は,図1に示したように広島市で整形外科領域の専門病院として卓越した業績を上げている医療法人社団おると会浜脇整形外科グループを取り上げる.

 浜脇整形外科グループは脊椎・脊髄外科,関節外科,外傷外科を三本柱としながら,さらにスポーツ整形,リウマチ,整形外科領域のリハビリテーションというように総合的な整形外科診療を行っている.病診分離を基本とし,入院と救急外来患者は「浜脇整形外科病院」,一般外来患者および術後患者は「浜脇整形外科リハビリセンター」という形の診療体系となっている.中核である浜脇整形外科病院は12名の整形外科医,4名の麻酔科医,1名の内科医(合併症対応)で,年間延べ52,832名の入院と1,778件の手術をこなしている.表1からもわかるように脊椎,関節,外傷が主診療領域であり,患者も広島県内だけでなく西日本全般から集まっている.

連載 赤ふん坊やの地域ケア最前線!—全国各地の取り組みに出会う旅・[12]

宮崎県宮崎市 市原 美穂
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 地方都市の人口集中地区で,複雑な病気や背景をもって行き場のない患者さんが増える宮崎県宮崎市では,認定NPO法人が中心となり,地域の医療・介護のフォーマルサービスと地域住民が一体となって,インフォーマルサービスとしてのホームホスピスを支えているんだ! 連載第12回目の今回は,ホームホスピス「かあさんの家」を全国に先駆けて実現させ,市内や全国にホームホスピスを拡大している,認定NPO法人ホームホスピス宮崎の取り組みを紹介するね! 30年も前から在宅での看取りを考え続ける市原美穂理事長にお話を聞きました!

連載 病院組織コーチング・7

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■医療・健康分野に携わる人が幸せに働くために

 2015年9月25日に国連総会で「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が採択された.これは,世界が将来にわたって持続的に発展するために,世界全体が今後15年間で目指すべきゴールであり課題である.病院経営や医療安全には一見関係がないように見える,この国際社会の目標が,実は私たちと共通の目標を掲げている.例えば9番目の「産業促進・イノベーション・インフラ構築」,10番目の「不平等の是正」,11番目の「持続可能な都市および社会」がなければ,病院経営も危機的な状況に陥る.ビジネス界では,平和で豊かな社会を作ることが企業や組織のビジネス環境・発展条件・機会を与えてくれるとの理解が広がっており,民間企業にとって,SDGsの17ゴールに取り組むことは社会貢献ではなく採算などを踏まえた戦略として捉えられるようになりつつある.

 SDGs時代には,民間企業はじめ,どの組織も地域に貢献することが求められる.どのような疾患であれ,患者であれ,その治療を支える生活基盤と無関係ではいられない.病院も,院内はもちろん地域を含めたより大きな視点に立ち業種や領域を超えた大きなチームを考える時代に来ている.地域の保健システムや制度,社会的インフラと連携することで病院自体の連帯感が強まるという効果もある.これからの時代の真のチーム医療とは,地域社会に貢献し,従業員の健康や安全を守るという広い視点から,より病院の価値を高めていくものである.

連載 病院勤務者のためのDPCデータ解析入門・9

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 今回は,DPCを用いた医療の質指標(Quality indicator:QI)の作成を行う.2014年11月に「OECD医療の質レビュー」で提言された日本の医療の質改善策の一つに「病院部門における質の監視と改善の向上」がある1).この中でもDPCデータなど既存のデータを有効に活用することが求められている.また,「病院情報の公表」が平成29年度より機能評価係数Ⅱにおける保険診療指数の中で評価されることとなった2).2011年から開始されている医療の質の評価・公表等推進事業(厚生労働省医政局)を契機とし,各医療機関の自主的な取り組みが拡大しており,質指標の公開が医療の質改善に寄与する事例も認められるようになってきている.医療の質指標の公開は医療機関の経営のみならず医療の質にも良い影響を与えることができる.DPCデータを継続的に分析し,各地域の実情に合った質の高い医療提供体制構築を目指していただきたい.

 今回の参考資料「病院12月号.zip」もこれまで通り産業医科大学公衆衛生学教室のウェブサイト3)からダウンロード可能であるので,作業をしながらお読みいただきたい.

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「病院」第75巻 総目次

基本情報

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病院
75巻12号 (2016年12月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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