病院 76巻1号 (2017年1月)

特集 新時代に備える病院のあり方

巻頭言 渋谷 健司
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 2016年は激動の年であった.英国のEU離脱や米国の大統領選挙結果は,「何が起こるかわからない」という衝撃をもたらした.不確定な要素の大きい時代に求められる態度は,いたずらに不安を煽ることではなく,また,根拠のない楽観論を振りかざすことでもない.

 2017年は診療報酬・介護報酬のダブル改定に向けた議論,医師の需給や偏在対策,支払基金改革など多くの重要案件が並行して進む年になるだろう.もちろん,こうした短期的な制度変更に対応することは必要である.しかし,パッチワーク的な制度改正による部分最適を繰り返してきた日本の社会保障制度は,長期的な視点に基づく変革が必要であり,単なる負担増と給付削減による現行制度の維持ではなく,価値・ビジョンを共有し,保健医療を再構築する時期に来ている.

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●「身近な環境で安心して保健医療のサポートを受けることができる」「高度な対応が必要になった場合に,最善の治療を受けることができる」という2軸は「地域包括ケアシステムの構築」と「地域医療構想の策定」が政策の両輪となって実現をめざすべき理念である.

●病院間の役割分担も踏まえて,地域として最善の医療を目指すことは重要である.一方で,この地域医療構想の実現に向けては,個々の病院の健全な運営との両立の中で,連携やサポートを考えていく必要がある.

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●2035年に向け,地域の医療機関は,専ら医療を提供する場所から,地域の経済社会に不可欠な「社会システム」としての役割を担い,それにふさわしい投資と機能を持つべきである.

●「保健医療2035」の示したパラダイムシフトを踏まえ,これからの地域の医療機関は,データを活用し,人材を産み出す地域の複合的な事業体,いわば「プラットフォーム」へと脱皮していく,いわば「攻めの地域医療」が必要となる.

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●「重症度,医療・看護必要度」や「在宅復帰率」の導入とあいまって,病院と診療所,病院同士の機能分化と連携の様相は抜本的に変わりつつある.

●高齢化の進展と社会保障費効率化の要請により,地域包括ケアシステムの整備が推進され,在宅医療の重要性は高まっている.

●病院の生き残りのためには,地域包括ケアシステムの流れに乗ることが必須である.

●今後の病院は次の3つの視点を持つことが迫られる.①連携を強化する,②地域包括ケアを支える病院となる,③在宅医療のプレイヤーとなる.

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●ICTを活用した病院マネジメントにおいて,次の3つの重要なシステムの取り組みが必要となる.

●病院・医療システム:電子カルテ,オーダリングシステム,レセプトオンラインシステム,地域連携医療システム(EHR)や病院ホスピタリティなどの病院・医療に関わるシステム.

●診断・治療システム:IoTデバイスや人工知能(AI)技術を用いた検査・診断・治療システムや遠隔診断・治療補助システムなどの実際に診断・治療するシステム.

●健康・生活システム:パーソナルヘルスレコード(PHR)として,個人が生涯にわたり自分自身に関する医療・健康情報を収集・保存し活用できるシステム.

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●グローバル化自体には是も非もないが,もはや必然であり,それによって日本の医療の良い部分も悪い部分も増幅される可能性がある.

●日本の病院は,世界的にもトップレベルの医療を提供してきた.グローバル化の波に呑まれるのではなく,むしろグローバル化を利用して,世界の医療の向上に貢献することが期待される.

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●訪日外国人が増加するにつれ,その医療ニーズを取り巻く多言語化という環境の変化に対応するため,外国人患者,医療従事者,医療通訳者の三者がアクセスすることができる新たな遠隔医療通訳システムの構築が求められている.

●本システムは,今後のさらなる多様性ある社会の実現に向け,全セクターで支える持続性の高いものであるべきだ.言語障壁の高い日本だからこそ生まれた医療イノベーションとして,本システムの構築が,世界中の同領域の課題解決に貢献することを目指す.

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ともすると経営者や医療提供者側からの視点で議論されることが多い病院のあり方であるが,忘れてならないのは患者の視点であろう.

医療をめぐる環境が激変しても,変わることなく病院に期待される機能・役割とはどのようなものか,患者の立場から提言し続ける天野氏に語っていただく.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・25

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今回は特別編として,医療福祉建築の専門家がこれからの病院建築のあり方を展望します.

連載 事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・1【新連載】

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■はじめに:連載の目的

 平成28年度の医療機関におけるトピックスとしては,診療報酬改定が一番に挙げられるだろう.独立行政法人福祉医療機構(以下,機構)が平成28年8月に実施した診療報酬改定に係るアンケート1)では,約半数の病院が医業収益,医業利益ともに前年度より「減少」したと回答しており,改定後の経営は厳しい状況にあることがうかがえる.

 では,今後,各病院において経営状況を改善もしくは維持していくためには,どのような点に留意すればよいのだろうか.残念ながら,これに対する解答を出すのは容易ではない.なぜなら,地域によって置かれている状況がさまざまだからである.

連載 病院勤務者のためのDPCデータ解析入門・10

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■はじめに

 これまで8回にわたりDPCデータの具体的な分析方法とともに,分析ツールの使用方法について学んできた.DPCデータを分析する意義は,自院の医療活動を可視化し評価することである.DPCデータは患者の一入院単位に着目すると,それは「診療プロセス」の分析となるし,月単位の切り方をするとそれは「コストボリューム」の分析となる.つまり,DPCデータの分析は病院経営の分析といっても過言ではないが,良質な病院経営を行うためには「臨床の質」「経営の質」「制度の質」という3つの「医療の質」に対する指標評価が必要であり,DPCデータだけではその評価を行うには限界がある.したがって,各医療施設は自院の現状や機能を評価するために必要な指標を検討し,それらがDPCデータやレセプトデータなど現在収集できているデータ類で十分に評価できていない場合は,その指標を新たに作成して収集する必要がある.

 今回から2回にわたり「分析結果の実務への応用」という内容で,これまで学んできたDPCデータの分析手法をもとに,「病院経営陣に必要な指標の作成方法」と「医療職全員で共有する分析結果の使い方」について学習する.今回は「病院経営陣に必要な指標の作成方法」として「DPCデータからは得られない指標の作成方法とデータの質」について学習する.

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・13

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■何が問題だったのか

①老朽化した病院,大学医局からの医師引き揚げ

 下呂市立金山病院(2009年当時113床.以下,金山病院)は,岐阜県下呂市が開設する自治体病院である.1944年に日本医療団金山病院として設立され,日本赤十字社病院を経て1957年に旧金山町立金山病院となり,2004年に市町村合併で下呂市立の病院として旧金山町周辺の地域医療を支えてきた.

 ご多分に漏れず,2004年の新医師臨床研修制度導入を契機として金山病院も地元大学の医師引き揚げによる医師不足に直面した.2005年に4名在籍した内科医が2007年には3名に,外科医も5名から3名に減少する(病棟持ちの外科医数は2名に).小児科医1名を合わせて総医師数は10名から7名に減少する.

連載 病院組織コーチング・8

医療安全とコーチング 小野 眞史
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■医療安全に対するニーズの変遷

 医療界は1990年代から現在,そしてこれからの近未来にわたり非常に大きな変革を遂げると考えられている.医療安全におけるニーズの変化は2004年のWHOによる「患者安全」(Patient Safety)の提唱から始まり,「ヒューマンエラー」を前提とし,従来の訴訟回避のための「リスクマネジメント」と区別して,「セイフティマネジメント(安全管理)」の語が提唱されるようになった.時間的な対応も従来の事後対応から事前の予防,セイフティマネジメントが提案され,その後「質と安全」概念の統合が提唱されるようになった1)

 本邦では医療訴訟が1990年頃より急速に増加したことから,リスクマネジメントの重要性が再認識され,加えて前述のセイフティマネジメントの必要性が提唱された.さらに医療費の増加と相まって,現場の限られた人的・金銭的・時間的資源の制約から,医療の質の低下が問題視されるようになり,「クオリティマネジメント」のニーズが高まった.本邦のような国民皆保険制度の下で,欧米において提唱されるこれらのマネジメントを全て医療者が同時に高品質に行うよう求められるようになったことが,一部の組織破綻につながり,医療崩壊といった言葉がささやかれるようになった一因ではなかろうか.いまや医療従事者の疲弊は医療界にとって大きな問題となっている.先に提唱された「患者安全」の提言は非常に重要でかつ大きな変革ではあったが,現状ではそこからさらに一歩進み,「医療安全は誰のためのものか」も再考する必要が生じ,本連載第7回で吉田2)が述べたように,持続可能でそこに参加する全ての人々が不平等でない医療を実現するためには「複数の医療者と患者,家族」のための円滑なコミュニケーションを持ったチーム医療の概念の重要性も提唱され始めている.このように,「医療安全」という文言一つにおいてもさまざまなニュアンスおよび時代によるニーズの変遷があることをご理解いただきたい.

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■公立病院改革による経営改善効果についてレポート公表

 2016年8月16日,内閣府政策統括官(経済財政分析担当)は,「公立病院改革の経済・財政効果について─地方公営企業年鑑による個票データを用いた分析」というレポートを発表した.

 分析は,近年の公立病院改革による経営改善効果を個別病院の経営データによって検証するというもので,分析に当たって有識者研究会が設置され,筆者は縁あって委員となった.本稿ではこの分析について解説する.

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病院
76巻1号 (2017年1月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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