病院 75巻11号 (2016年11月)

特集 期待される地域包括ケア病棟・療養病床

巻頭言 松田 晋哉
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 今後,各地域で整備が進められる地域包括ケアネットワークでは,良質な回復期病床と療養病床の存在がポイントになる.そこで本号では,地域包括ケア病棟および療養病床に焦点を絞って特集を組んだ.

 眞鍋論文では療養病床・地域包括ケア病棟の制度的位置づけが歴史的経緯を踏まえて記述されている.厚生労働省としては,療養病床については介護施設との関係性からより重度でかつ長期の慢性疾患患者の療養を,そして地域包括ケア病棟については多様な疾患を対象に軽度の急性期入院医療から在宅支援も含めたマルチな機能を,それぞれ重視してきたことが示されている.江澤論文では医療介護複合体をまちづくりの視点により経営している立場から,データに基づいて地域における医療機関の役割を再検討する必要性が論考されている.地域包括ケアシステムは「若者や子どもたちを含めた全世代のために構築されるものであることを誤解してならない」という提言は重要である.仲井論文では,地域包括ケア病棟を高齢社会において使い勝手のよい施設群と評価した上で,ポストアキュート,サブアキュート,周辺機能,在宅復帰支援の4つの基本機能のそれぞれについての現状と課題が,各種調査結果と自施設の経験を踏まえて説明されている.POCリハ,認知症対策,多剤処方への対応,栄養改善,患者フローのマネジメントなど地域包括ケア病棟の医療の質向上のための取り組みは参考になる.藤山論文では,回復期および慢性期の病床の機能を十二分に発揮するために不可欠な看護師とソーシャルワーカーによる連携の重要性が論考されている.待ちの姿勢ではなく,アウトリーチとして積極的に地域社会に働きかけていく姿勢が必要であることが強調されている.戸次論文では福岡県医師会の調査結果をもとに,療養病床の地域における役割の再評価が必要であることが述べられている.退院可能な患者は医療区分1の50%程度であること,しかもその条件である「家族の受け入れ」と「介護サービスの充実」が,地方では対応困難であるという指摘は重要である.また,在宅医療の提供可能性を地理的に分析した結果も興味深い.松田論文では在宅において認知症を合併したがん患者など難しい症例が増えていること,医療と介護とが双方向で複合化していることなどをデータで示し,緩衝帯としての回復期病床が重要であることを示している.

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●長期の入院療養を必要とする高齢者の受け入れ先については,昭和末期から制度的な位置づけと診療報酬による評価がなされてきており,平成18年度診療報酬改定において医療区分・ADL区分による患者の疾病・状態に応じた評価が導入されている.

●急性期後の地域包括ケアシステムの医療の中核を担う病棟類型として地域包括ケア病棟入院料が平成26年度診療報酬改定において導入された.

●介護療養,医療療養[療養病棟入院基本料2(25対1)]の在り方について,現在検討が行われており,本年末にとりまとめが行われる予定である.

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●超高齢社会の進行による医療介護の複合化により,急性期以後の病床の役割が重要になっている.

●在宅医療を進めるためにも,それを支える回復期・慢性期の病床の役割が重要となる.

●そのことを確認する場所として地域医療構想調整会議の場が重要である.

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●地域包括ケアシステムを活性化し,地域医療構想で回復期機能を期待されている地域包括ケア病棟は,ポストアキュート,サブアキュート,周辺機能の3つの受け入れ機能と2段階の在宅,生活復帰支援の4つの機能を持つ.

●院内多職種協働では,リハ包括算定を活かしたオンデマンドの生活回復リハであるPOCリハやリハ栄養,認知症対応,多剤併用の減薬などが重要である.

●地域内多職種協働では,規範的統合の下にハブとなる地域リーダーがフォーマル・インフォーマルサービスを緩やかなネットワークで活性化する.

●2016年度診療報酬改定により,使い勝手が良くなる最大で最強の地域包括ケア病棟が,「ときどき入院 ほぼ在宅」を促進する.

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●療養病床入院患者の重症度が正しく理解される必要がある.

●療養病床は地域包括ケア体制構築のための重要な地域資源である.

●療養病床削減の前提となる在宅医療体制の推進可能性は地域条件によって大きく異なる.

●療養病床が地域の連携体制の中核になるための診療報酬上の配慮も必要である.

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●2016年4月の熊本地震で被害の大きかった益城町の避難所へ,当院ソーシャルワーカーが支援に入った.この活動を通し,被災地・病院での支援においていくつかの共通する課題を見いだした.

●見いだされた課題として「ソーシャルワークとしてのアウトリーチの必要性」「自助・互助の意識とストレングスの視点」「生活ステージのシームレスな移行のための内部・外部連携と情報収集」「地域包括ケアシステムにおける支援者としての関わり方」の観点から,連携部門の役割と課題について論じていく.

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●地域包括ケアと地域医療構想は,相補的かつ密接不可分な関係にあり,一体的に論じられる必要がある.

●地域医療構想の必要病床数は,医療機関の共倒れを防ぐための「救済データ」であり,地域医療構想の実現は,医療機関の連携を超えた「協働」につながる.

●地域包括ケアの他職種連携は,地域住民との「異業種・異分野連携」が中心となる.

●国民参加型の社会保障に関する議論が不可欠であり,喫緊の課題となっている.

●医療機関がまちづくりに参画することは,地域包括ケアの推進に有益となる.

●患者の意思を最大限に尊重し,生活の視点を重視した医療の重要性がますます高まっていく.

●ボランティアらの地域交流を通じて,高齢者住宅に地域の「目」を入れ,「見える化」を図っていくことが今後重要となる.

●住民とのパートナーシップによる地域づくりは,「尊厳の保障」の積み重ねの集大成で具現化する.

対談

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超高齢社会では,急性期治療を終えた後を担う医療機関の役割が重要になる.

日本慢性期医療協会の会長として,先進的な取り組みと提言を行っている武久氏に今後の地域包括ケア病棟・療養病床のあり方について聞く.

連載 Data mania・23

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調査概要

 今回は本連載第5回で取り上げた「看護関係統計資料集」の平成27年版を中心に分析を行います.本調査は厚生労働省(以下,厚労省)による「病院報告」や「医療施設調査」などを基に看護に関する諸指標の経緯と現状を明らかにし,将来展望に資することを目的として日本看護協会が取りまとめているデータブックです.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・23

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■はじめに

 特別養護老人ホーム「いなさ愛光園」は2016年に開設20年目を迎えた.同園は静岡県浜松市中心部から北に約20kmの旧引佐郡引佐町に位置する.2005年に浜松市に編入合併し,現在に至る.新東名高速道路のインターチェンジも近くに整備されるなど,周辺を取り巻く風景はこの20年で大きく変わった(図1).

 当時,高齢者保健福祉計画の具体化のため,特別養護老人ホームの設置を必要としていた旧引佐町では町有地を無償貸与する形で,社会福祉事業運営に実績のある社会福祉法人聖隷福祉事業団に設置・運営を依頼した.キリスト教精神に基づく「隣人愛」が理念の同法人は,昭和初期,結核治療と予防に尽力してきた.その後は時代と地域ニーズに応えながら大きく発展し,現在では浜松市を本拠地として145施設,297事業を1都8県で展開,職員数13,500名余を抱える大法人となっている.聖隷三方原病院(934床)は有名だが,保健,医療,福祉・介護サービスを柱とする「ヒューマンサービス」を広く実践・展開している.高齢者介護サービスでは,「いなさ愛光園」を含めて特養18カ所,老健3カ所,有料老人ホーム12カ所などを運営している.設計は医療福祉建築の設計に実績のある公共施設研究所があたった.

連載 医療・病院をめぐる文献ガイド・9

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■医療の質評価に関する動向

 医療の質評価に当たって,「質」とは何かということを定義しなければならない.しかしながら,医療提供者,医療機関,行政,患者らのそれぞれの立場によって,医療の「質」に対する捉え方には相違がある.このため,医療の質を評価する目的にも違いが生まれ,定義も異なってくる.例えば,医療提供者であれば,実際に提供した医療とその成果を評価し,治療方法の改善を図ることが必要か否かを検討することに関心がある.また医療機関にとっては,組織存続のために,患者から高い評価と信頼を得られる公表結果となっているかが大きな関心事である.患者にとっての関心は,安心かつ安全な治療によって自分が期待する効果を得ることができるかどうかである.

 しかし,医療の質を捉える立場がどうあれ,医療の質を定量的に測れるように指標を作成し,質の良し悪しを判断する基準(規範的な行動とそれによって保証される成果)を設定することができなければ,医療の質評価を通じて,それぞれの立場から必要とされる改善につなげることはできない.そこで,医療の質とその評価手法を踏まえながら,日本国内外における医療の質評価の活用の実際を知り,今後の課題を検討することに役立つ文献を紹介したい.

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・11

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■病院の概要1)

 医療法人共和会小倉リハビリテーション病院は,198床からなる回復期リハビリテーションを主機能とした病院である.病棟構成は一般病棟40床(障害者施設等一般病棟40床),療養病棟158床(回復期リハビリテーション病棟158床)で,診療科目はリハビリテーション科・内科・整形外科・皮膚科(外来のみ)・神経内科(新患受付なし)・歯科となっている.

 小倉リハビリテーション病院は,前院長(現名誉院長)の浜村明徳先生の地域リハビリテーションの理念とその実践を具現化した組織である.昭和50(1975)年に長崎大学医学部を卒業した浜村名誉院長は,卒後整形外科学の教室に入局,地域でのリハビリテーション活動に参加し,その後勤務した国立療養所長崎病院でさらにその活動を広げられた.そして,維持期リハビリテーションの拠点として1987年日本で最初に老人保健施設伸寿苑を創設した故・矢内伸夫先生に請われる形で,共和会に赴任し現在の小倉リハビリテーション病院をその基礎から作り上げられた.浜村名誉院長の地域リハビリテーションに対する思いは一貫しており,「地域リハビリテーションとは,障害のある子供や成人・高齢者とその家族が,住み慣れたところで,一生安全に,その人らしくいきいきとした生活ができるよう,保健・医療・福祉・介護及び地域住民を含め生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行なう活動のすべてを言う.(日本リハビリテーション病院・施設協会:2016年改定予定案)」2)としている.そして,表1に示す2016年改定予定案の地域リハビリテーション推進課題(日本リハビリテーション病院・施設協会)2)に沿う形で,共和会の活動が組み立てられている.

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・12

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 前編では,木村眞司院長ら職員の努力によって医師・医学生研修のモデル病院となり,財務状況も大幅に改善した松前町立松前病院の医療再生の過程を紹介した.しかし,病院運営をめぐる町議会・町役場との対立の結果,2016年7月31日をもって木村氏は病院を退職するという結果となった.本稿では,なぜこのような事態にいたったのか報告したい.

連載 病院勤務者のためのDPCデータ解析入門・8

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 今回はビジネス・インテリジェンスツール(以下,BIツール)を用い,前回作成した拡張ファイルの可視化を行う.BIツールを用いることで,簡単にデータを可視化し診療プロセスの分析を行うことができる.また,病院全体から診断群分類別,個人別というように分析するレベルを変えて掘り下げること(ドリルダウン)で洞察を得ることも可能である.さらに,BIツールの多くは簡単な操作でデータ同士の結合を行うことが可能である点も魅力的である.

 今回はプロセス分析のためのアプリをQlikSense(クリックセンス)を用いて作成する手順について解説する.前回作成した拡張ファイルとQlik Senseをインストールしたコンピュータを準備して読み進めていただきたい注)

 なお,今回の作業に必要なデータおよび完成後のQlik Senseファイルについては,筆者の教室のウェブサイト1)からダウンロード可能である.

連載 病院組織コーチング・6

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 医療の現場では,日常業務で患者の急変や手術など緊急かつ重要度の高いものは優先順位が上になる一方,部下の育成,チーム医療連携の強化など組織の強化,院内の風土変化に対する取り組みは,重要度は高いとわかっていても緊急性は低くなりがちである.しかし,放っておけばおくほど後にかかる育成期間は長くなるわけで,将来を見据え,時間をかける価値を認識して早い段階からとりかからなくてはならない.特に多職種で構成されるチームで動くことが不可欠な臨床の場で“人を育てる”際には,知識やスキルを習得させるだけではなく,組織の中で自らが主体的に行動でき,自分自身を活かし,組織力を上げるための力を備えさせることが重要となる.そのためには人との関わりの中でコミュニケーションを上手に取ることが必要となるが,この人との関わりの部分にコミュニケーションスキル・コーチングが活用できる1)

 コーチングとはコーチ(相手の目標達成を支援し共に歩む人)がクライアント(コーチングを受ける人:対話相手)の目標達成に必要な能力やスキル,ツールが何であるかをクライアント自身に気付かせ,備えさせることで自発的な行動を促進させるコミュニケーション・スキルである.さらにクライアントの持つリソースを最大化し,目標達成に向かうスピードを上げることも可能にする.コーチング手法を使う上でポイントとなるのは,「クライアント自身が気付かない思い」を引き出すために,コーチが“相手の成長を願って”関わることである.コーチングが機能する関係性には信頼関係も築かれていくため,組織力がさらに強化されるという好循環が生まれる.

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■変革期にある医療制度

医療制度改革と法改正

 100──それは過去3年の間に制定された医事関係法令の年平均数である注1).この100という数字を多いと感じるか少ないと感じるかは,人それぞれであろう.しかし,忘れてならないことは,この数字はあくまでも氷山の一角でしかないということである.例えば,2014年6月25日に法律第83号として制定された「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(以下,「医療介護総合確保推進法」)をみてみよう.この法律は,いわゆる「整備法」といわれる法律─ある特定の政策を実現させることを目的として,その政策と関わる一連の法律を改正するために制定される法律─である注2).つまり,医療介護総合確保推進法という法律の内実は,地域包括ケアシステムを導入するという目的のもと,その数,実に44にもなる関係法律をまとめて一度に改正することをもくろんだ法律なのである.それだけではない.この44の法律の改正により,波及的に,それらと関わる政省令や通達等も新設されたり改廃されたりしたのである.かくして,医療介護総合確保推進法という新たに制定されたたった1つの法律の背後で,膨大な数の法令等が変わったのである.

 近年,なぜ,かくも数多くの法令の新設・改廃がなされているのであろうか.改めて言うまでもないが,2025年に団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり,以降,今までの医療制度ではどうにも対応できなくなる時代が到来するからである.

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病院
75巻11号 (2016年11月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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