病院 59巻7号 (2000年7月)

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 広井(司会) 本日は,なぜ今,患者を医療消費者ととらえることが大事になってきているのか,また今後どのような対応をしていくべきかについて様々な側面からお話しいただきたいと思います.

 まず,消費者という点に関して,実際の病院運営において先駆的に様々な取り組みをされていらっしゃる望月先生にお願いします.

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医療の「あいまい」の克服—双方向性の時代

 世界一を誇る「電子カルテ・システム」をこの目で確かめたいと,1999年8月1日に新築移転オープンした島根県立中央病院を訪ねました.

 院長の説明を受ける前に院内見学をしたい旨を申し出て,許可を得たうえで玄関ホールや外来診察室周辺のハード面や職員スタッフの対応などソフト面も見学させていただきました.総合案内や受付カウンター,院内の掲示物などあちこち見学する中で,薬局カウンターの女性スタッフの患者対応に妙な違和感を覚えました.

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病院に対するニーズ

 本特集で筆者に与えられたテーマは,「消費者ニーズの把握と病院経営」ということであるが,病院に対するニーズは大きく分けて三つあるというのが筆者の考えである.一つは地域住民のニーズ,二つは間接利用者ともいうべき地域医療機関のニーズ,最後は研修・実習などを担う医育機関,つまり大学や看護学校ならびに行政からのニーズである.今回は1番目と2番目が論点であり,3番目は別の機会に譲ることとしたい.また,われわれ公立病院に対しては納税者や理事者側から赤字を出すなというニーズもあるが,ここでは触れないこととする.

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医療サービスの消費者はだれか

 物やサービスを購入し,その代価を支払う行為が消費であり,その実施者が消費者である.医療サービスの場合,病気やけがをして,その治療のため医療サービスの提供を受ける患者は,窓口での支払い(一部負担)は老人の数パーセントから多くても30パーセントにとどまる.

 最近,悪徳商法から消費者を守る消費者契約法案が国会に提案される動きに対して,医師会は「患者を消費者と呼ぶのは非常に抵抗がある,医者はバナナを売っているのとは違うから」とか「医療機関は患者から診療報酬の一部しか受け取らない,診療報酬は健保組合との契約だから法案の対象外」との主張である(平成12年3月7日朝日新聞).確かに上記のように患者は一部しか現金を払っていないが,保険料の負担という形で医療費全体を支える保険の理論からすれば消費者である.また,医療サービスを受ける当事者は患者であり,最近多発している医療ミス,医療過誤などの被害を被るのも患者であり,消費者として保護されなければならない.

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 ものごとは不均等に発展するので,あるところでは当てはまることも別のところではまだそうなっていないことも多い.しかし大きな流れで見れば着実にある方向に,時差こそあれ,向かっているものがある.医療についてみれば「患者本位の医療へ」がまさにそのようなものとしてある.20年前に当惑と不快で迎えられた「インフォームドコンセント」は今では当たり前のことになった.「医療の質」や「病院サービスの質」は患者のニーズや満足を抜きにしては語れなくなっている.こういった流れの源流はアメリカにあった.日本でこのような変化が受け入れられるようになったのはつい最近のことだが,今では世界の医療がその価値観を共有しつつあることを考えれば,現代医療が必要としたものであることは疑いない.

 「患者本位の医療」が大きな潮流になったのには様々な理由があるが,特に重要なのは,技術革新に伴って「医療」の実態が大きく様変わりしたことと,健康と医療に主体的にかかわろうとする市民社会の活動があったことだろう.例えば,患者の権利運動,(消費者運動の一環としての)医療消費者運動,その他の様々な市民ボランティア活動などが,医療に患者と市民の声を持ち込むことに貢献してきた.これらの運動はテーマや目標は異なるが,いずれも「オートノミー(自律性)の尊重」と「医療における情報開示」を実現しようとした点で共通していた.

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はじめに—消費者と組合員

 今回のテーマである「消費者」という点に関していえば,医療生協の組合員は「消費者」にはとどまらない.自らの健康の主権者,主人公であり,ある時は医療サービスや医療行為の生産者でさえある.保健活動や慢性疾患での治療においては患者の位置はいっそう高まる.

 消費は生産と対局にあり,消費者は生産者と区分され対立した存在となっている.これまで医療サービスの提供側つまり生産者が主導権を握り,消費を行う国民には十分情報公開されず,不利な立場に置かれ,患者は健康について自発的な態度をとることが困難だった.民主主義とは「参加の制度的保証である」という定義がある.わが国の場合,住民が医療に参加できる場は多くはなく,消費者と生産者の協同が成り立ちにくい.このような状況を改善するうえで「消費者」という視点は一定有効ではあろう.消費者の意向に基づいて生産者が工夫や調整を行うのが一般的なのだから.

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1)代表者など 2)連絡先 3)活動趣旨(目的)および主な活動(現況) 4)医療相談などの活動日・時間帯

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 地域ぐるみの健康まつり

 5月中旬とはいえ強い日差しの日曜日,医療法人黎明会主催の「第3回健康まつり」が地域の住民約1千人の参加を得て,北出病院の中庭で開催された.この健康まつりは,地域との結びつきをより強くし,病院および関連施設を知ってもらおうということで一昨年から開催され,今回で3回目を迎えた.地域の人々の参加も年々増加し,黎明会の年中行事のうち大きなイベントとして定着してきている.

 この健康まつりの前日(5月13日)には,昨年来進めてきた北出病院の増改築のオープンセレモニーが開催された.増築された療養型病床群およびリハビリテーション部門の地元住民へのお披露目を行うとともに,高齢社会におけるリハビリテーション医療の重要性をうたった「高齢者のリハビリテーション介護(寝たきり予防と自立を目指して)」の講演会が開催された.

HOSPITAL INDEX

エイズ拠点病院・2

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グローバル化とは

 グローバル化またはグローバリゼーションという言葉が新聞やテレビに頻繁に登場するようになって久しい.しかし,この用語は,常に正しく理解されているとはいえない.グローバル化とは,一般に,「情報技術革命によってもたらされた時間と距離の短縮に起因する経済・政治・文化・思想などを含む人間活動の多次元的かつ高速な全地球的流れ」であると考えられている(L.C.Chen,1998).その意味で,グローバル化は近年に注目を集めるようになった特徴的現象を示す概念である.したがって,単に街を歩いている外国人が増えるとか,学校で皆が英語を学ぶとかという表層的な意味で安易に使われる「国際化」という言葉とは明瞭に区別されるべきである.

 グローバル化という概念を巡っては別の誤解もしばしば見られる.それは,グローバル化があたかも自由主義市場経済による世界の席捲,あるいは,米国系の大企業による世界経済の支配と同義に用いられ,かつ一種の価値判断を含んで使われる場合である.さらに転じて,特定の企業が海外に進出すべきかどうかという政策上の選択肢についてグローバル化という言葉を使う人々もいる.

特別寄稿 実践から病院情報システムの功罪とそのあり方を考える

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 前回は,情報システムのデータを活用するには「非定型的データ分析」と「定型的データ分析」の二つの形があることを述べた.

 前者は直面する問題に対して様々なデータや複数のデータベースを既存の情報システムから流用し,試行錯誤の解析のうえ,適切な問題解決の方法を見いだし対応することが特徴である.後者はデータ活用の目的,解析方法,収集方法などがシステム構築の最初から具体化されており,それに沿ってデータベースが構築され,運用される.したがって一般的には一定期間のフィールドワークやテストバッテリー,および非定型的データ分析を経てシステムとして構築される.

レポート

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地方公共団体に対する外部監査とは

 地方自治体の外部監査は,平成9年度の地方自治法改正で,「監査委員監査制度」を補強するものとして導入された.

 外部監査の種類には,包括外部監査と個別外部監査があるが,今回の外部監査は包括外部監査契約に基づく外部監査である.この包括外部監査は年1回以上実施されるものであり,平成10年度より先行実施した北海道などの一部の自治体に続いて,平成11年度からは,全国の都道府県,政令指定都市,中核市などの自治体で実施されている.

病院ボランティアの提案—東札幌病院・13

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カバーで変身—ポータブルトイレも気にならない

 当院ではソーイングボランティアのアイデアで,患者の生活を支援するこまごまとしたアイテムが数多く生まれている.今回ご紹介するのは排泄用具のカバーである.

 平成7年からボランティアをしているKさんは,神経難病のMさんと9か月間ボランティアとして共に過ごす体験をした.当初Mさんは車いすで散歩をしたり,院内のコンサートなどにも参加するなど,かなり日常生活動作も自由だった.しかし,病状の進行とともにMさんの行動範囲も限定され,いつの間にかポータブルトイレがベッドの脇に置かれるようになった.むき出しになっているポータブルトイレをみて心を痛めたボランティアのKさんは,早速Mさん好みの品のよいカバーを作った.

病院管理フォーラム 看護管理・28

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 昭和54年に開院して以来,永遠のテーマであり身近な目標でもある患者サービスは,5月号の「看護部からみた病院機能評価」の中で紹介していたように,看護研究のテーマとしてあらゆる角度から試みてきた.

 多くの高機能病院に隣接する地域の中で,中規模病院の看護部がそれなりに特徴を出していくには,アイディアに富み,小回りが利き,患者の要求にきめ細かに答えることだと考えている.

病院管理フォーラム Hospital Administratorへの道 part 2・7

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 日本の病院とQCサークル活動とのかかわりは,企業系病院での取り組み以来20年以上の歴史を有している.しかし,製造業における「品質管理」の考え方を「人」を相手にする医療に応用するには無理があるとの意見に代表される(医師を中心にした)反発の声を前に,「医療の質」を改善するための手法として全面的な認知を得るには至っていない.

 そんな中,当院では1987年度にQCサークル活動を導入して以来,現在まで13年間にわたって活動を継続してきた.最近,「医療の質」に対する関心が高まるとともに,病院でのQCサークル活動も広がりをみせ,国内でも100近い病院において取り組まれるようになってきた.しかしながら,日本の医療の実態は,病院が提供する「医療の質」の定義においてすら統一したものがなく,医療の質を測定する基準となるべき数値も比較すべき対象も(公的には)ないほど整備が遅れている.個人的見解としては,病院で行われる業務はすべて「医療」を構成するものと考えるが,データを重視するQC的思考法が医療の質改善のために有効であることを証明するために,一日も早く医療の質の定義が確立し,測定と比較が可能な統一的な数値データとして整備されることを期待するものである.

癒しの環境

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日本の病院の平均在院日数は欧米諸国に比較して著しく長い

 1996年の統計では,日本の病院の平均在院日数は33.5日で,米国では7.8日と,日本の8分の1で著しく短い1).急性期の病院のそれを比較しても,日本は長いといわれる.この原因の一つとして,身寄りのない老人の入居するようなケアハウスなどが不足し,医療が必要でないにもかかわらず医療保険で入院を続けている老人患者がいることが上げられている.

 日立総合病院では,約10年前から救急医療への取り組みを強化し体制を整えてきた.その過程の中で,救命救急センターとgeneral ICUを新設して病床の不足を補う計画が立てられたが,資金や場所などの問題が解決できず,すぐには計画を遂行できなかった.

Principle 病院経営・19

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 前回に続き,費用についての考え方を述べよう.

 病院で発生する費用を,技術提供業,材料販売業,施設提供業という三つの事業と,医師,看護婦,薬剤師,検査技師などの職種という二つの次元で分解することを提案した.その分類に従って,費用だけでなく収益も分解すれば,管理可能性を維持しながら,病院を構成する部分部分の採算性を探ることができるわけである.

連載 事例による医療監視・指導・7

苦情への対応(1) 桜山 豊夫
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 広い意味で医療監視の業務に入るものに,病院などへの苦情への対応があります.苦情にも,受付けの対応が悪いといったものから,医療過誤を思わせるものまで様々ですが,代表的な苦情を紹介し,その対応について解説します.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第69回

公立中小病院2題

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南会津病院の概況

 福島県立南会津病院(写真1)は,田島町の市街地にあった旧病院(旧称,田島病院)が,およそ1kmほど離れた新敷地へと移転新築されたものである.

 当院がその中核病院として位置付けられている南会津地域保健医療圏は,神奈川県に匹敵する面積を持ちながら,人口は4万人にも満たぬという過疎地である.老年人口比率も高く,保健医療サービスの供給状況は総じて弱体であり,施設数,一般病床数,診療所数のいずれについても全国平均をかなり下回っている.特に圏域での入院自足率は平成2年当時で11%と低く,隣接する保健医療圏への患者流出が顕著であった.

連載 医療の政策評価・6

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 前回までで「効果」と「効率」からの評価について,その考え方や方法について論じてきた.今回は「公平(equity)」について,概念整理を行ったうえで,政策評価に用いる場合の具体的な評価基準,および公平の測定の実際について論じたい.

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〔ケース〕

 Pさんは日本人を夫に持つ24歳の外国人女性である.2年前に来日し,日本語はほとんど話せない.近医にて初出産時HIV陽性と判明,内服治療開始するも外来通院を中断した.その半年後,頭痛,嘔吐などで受診し,脳に多発性病巣を生じたトキソプラズマ脳症で入院した.自国語しか話せないため電話通訳(NGO)で,病名告知を含め対話した.治療で全身状態が改善し,病棟内歩行も可能になった.主治医は医療費や環境などから,その後の治療は出身国が適切と考えた.主に夫と相談し乳児は在日中の実妹夫婦に託すこととし,本人の承諾を得て退院,帰国とした.本国では外来通院となった.その4か月後,驚くべきことに,かなり悪い全身状態で突然外来を受診した.医師側は今までの努力を考え動転した.彼女はなぜ日本に戻ったのか? 何が問題だったのだろうか?

基本情報

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病院
59巻7号 (2000年7月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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